2014年08月

2014年08月26日

くるぶしから下が白い

あつこさんとデートだ。





彼女はうちの中学校の陸上部のエースでヒロインだ。
真っ白なタンクトップとショートパンツでグラウンドを走る。 
すごく細くて、かっこいい。

なんで、俺なんかの文系野郎のデートの誘いに
乗ってくれたんだろう。

ああ、もちろん策は弄したさ。
彼女が好きなアニメのタイトルを聞いて
その映画のチケットを買って誘ったわけだい。

でも、彼女は素直に
『わー、うれしい』って言ってくれたから、
なんかすごく自分が汚れた奴になった気がする。





で、約束の日に国際会館の大階段の下に行くと
あつこさんがいない。

ちぇー、振られたかぁ、と思って帰ろうとしたら、
『やましたくーん』という声がする。
え?と思って振り返ると、彼女がいた。

彼女は、真っ青な半袖シャツに、
白いミニスカートを着ている。
スカートにも、青のボーダーが何本か入っている。




タンクトップと、ショートパンツの、
『白』のイメージしかないからわからなかった。

いや、まあもちろん、
そんな恰好でデートに来るとは思わなかったけど、
『青』っていうのが意外だった。

つるんとした化繊の青じゃなくて
生成りに幾重にも重ねていったような深い青。





そして、この『青』が焦げ焦げに日焼けした、
彼女の茶色い肌に似合う。

あわあわして、挨拶をして彼女の顔を見ると可愛いなあ。
ボーイッシュも過ぎるんじゃないか?というくらい短くした髪型は
肩にとどかないくらい短いんだけど、眼が大きい。

ふわあ、と思って全身を見降ろすと、
彼女も恥ずかしそうにしていたから
おしゃれしてきてくれたんだろう。






うれしい。

でも、なんか違和感がある。







手を引く、なんてできないので先に立って歩く。
チケットを交換して、座席を確保して
『なんか買ってくるから、席を見ててね。』
と言ったら、不安そうな顔をした。




かわいい。




しかし、なんだろう、あの違和感。
と思ってロビーに出ると







『さっき裸足の女の子いなかった?』
『あー、いた。』
という会話が聞こえた。













それだ。





あつこさんは腕から脚から、もちろん顔もきれいに
陽に焼けている.。
でも、くるぶしから下が白い。

陸上部の彼女は、全身こんがりと焼けるんだけど
シューズを履いている部分だけは焼けない。
だから、くるぶしから下が白い。

その彼女が白いサンダルを履いてきたから
違和感があったんだ。



っていうか、もとの色はそんなに白いのか。















でも映画館の中なら関係ないもんね。

俺が山盛りのポップコーンと
コーラを持って帰ると、彼女は眼を輝かせた。














アニメ映画でこんなに泣く人を初めて見た。
ちくしょう、かわいいなあ。


『ありがとう。またね。』って言って帰っていく彼女は
夕方の光の中で、青い服が綺麗だ。







次のデートに誘う時には、
サンダルの色を変えるように言うべきだろうか。


いや、二回目じゃ早いだろう。


























何回目ならいいんだ?





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natsu_0117 at 09:24|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年08月15日

スイカを丸ごと食べる

これってさあ、子供の頃、みんなやってみたいと思ったよね。






帰省した。
『お盆だから帰って来い』って母親がうるさい。

あたしはこの春に東京の大学に入って
一人暮らしをゲットした。
だから、夏休みの東京も楽しくて
帰りたくなかったんだけど、帰りました。







ばあちゃんちは広いな。
それでも、おじさんや叔母さんや
甥っ子や姪っこがいると大騒ぎだ。


ばあちゃんがスイカを出してくれる。
これがやっぱり櫛形に切ってあるんだよなあ。
でも、ものすごく分厚いし、たくさんある。
美味しい。


これを、姪っこたちと縁側で並んで種を吹きながら食べる。
あははは、
なんか、トトロのサツキになったみたいじゃないか。

あああ、なっちゃん。手づかみで食べちゃだめ。
その手で、『なかよし』しないでー。







一週間の帰省を終えて、下宿に帰ってきた。
『りっちゃんも帰るのかい?』って、ばあちゃんに言われて
うるっときたけど。










さあ、スイカだ。
でも、ばあちゃんちで思い知ったけど、スイカってでかいよね。

なっちゃん以下、5人の姪っこ甥っ子と一緒に食べたけど
たぶん一個の半分も食べてない。



スーパーで悩む。
大玉なんか、でかいな。
直径が60cmくらいありそうだ。

つーか、冷蔵庫に入んないよ。
やっぱ冷やして食べなきゃ。

うろうろしてたら、『小玉スイカ』ってのがあった。
直径は30㎝くらいか?

うん。かわいい。
これ買って帰ろう。






炎天下の帰り道に出ると、
やっぱりスイカの袋をぶら下げている人がいる。

あたしと同い年くらいじゃないか?
しかし、どう見ても彼が持っているのは、
『大玉クラス』の60cm級だ。




へー。




と、思って帰ると、なんと彼はお隣さんだった。
間取りはうちと同じはずだから、一人暮らしだろう。
友達を呼んで、夕ご飯でも食べるんだろうか。
一人じゃ食べらんないよ、そんな大きいの。ってか、
あんたんち、その大きさのスイカが入る冷蔵庫あるんだ。

いいなー。







さて、帰省のあいだに、しおしおになった、
キャベツ君、レタス君。
芽が出てマンドラゴラみたいになっていたジャガイモ君を捨てて
こだますいか君を入れる。

ジャストフィット。
いや、ジャースート、フィットーて
気合を入れて閉めれば閉まるわ。

なんかパキッとかいう音がしたけど聞こえない。





一日経った。

冷えてるだろう、冷えてるよね。と
野菜室の扉を引いたら、メキっという音が聞こえたけど、
聴こえない。












わあい、すいか。

まんまるすいか。
まるごとすいか。
つめたいすいか。

皮にね、いっぱい滴がつくの。











でね、目の前に人生初の丸ごとスイカがあるわけですよ。
どうやって食べよう、という時に、はたと気がついた。

半分に割ったら、それ、もう普通のスイカだよな。

『まるごと』の意味がなくなる。
うん、こう限りなく、『球』じゃなくっちゃ、嫌なんだ。



うーん、と悩んで、へたの部分、
つまり頂上を1/4ほどを切り飛ばした。

まずは切り飛ばした部分から頂く。
うわっ、美味しいじゃん。

ばあちゃんちのスイカは、「田舎の縁側のスイカ」で
それは豪快にざくざくと美味しいんだけど、
このこだまくんも、都会の冷蔵庫の一品、として、ちまっと
いとおしく美味しい。





さあて本体だ。
スイカっていうのは、真ん中が甘い。
でも、いきなりそこに行くか?
まずは皮のそばから攻めるか?

そもそもスプーンが入んないっすよ。
つーか、あたしが憧れてた『まるごと食い』はこんな、
ベトナム料理で孵りかけのアヒルの卵をせせるホビロン、
みたいな食い方をしなくちゃいけないのか?


あれこれ悩んで
メキシコの古代遺跡の発掘現場みたいになった
きたない喰いかたに疲れた。










飽きた。










ってことで半分に割っちゃった。
スイカなんて、ほとんど水なんだ…

直径30㎝ということはですねえ、
半径15×15×15×3.14×4/3なので
体積は…14000ccちょっと。
一升瓶、およそ8本弱。







ええっ?

食えるわけねーじゃん。








食ってから気付くなよ。

げぷっ。







どうしよう。
まさか大学に持っていくわけにもいかないし
そもそも夏休みだ。

なんか、フルーツを使ったスイーツが自慢で彼氏をゲット、
とか言って自慢していた絵里ちゃんにメールすると、
『彼氏と旅行中。親父には言わないでね。』、だと。





好きで買ったとはいえ、限度がある。
もうスイカの顔を見るのも嫌なんだよ。

誰か、スイカ好きな人いないか?

と思った時、60cm級のスイカを買っていた、
隣の男の子を思い出した。
貰ってくんないかな。






あたしが30㎝級のスイカの半分を袋に入れて玄関を開けた時
隣の家から、60cm級のスイカ、1/3を抱えた彼が出てきた。

『冷蔵庫がないんです。食べてくれませんか?』。









やっぱり、一人暮らしの最初の夏には、
『スイカ丸ごと食い。』をしたかったんだって。
笑った。

そこまで食うとは、頑張ったな。


























いま、あたしたちは
『ウォーターメロン カップル』って呼ばれている。






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natsu_0117 at 22:37|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2014年08月07日

なかよし

ぺたぺたぺたぺた、畳の上を歩く音がする。
なっちゃんだ。
姪っこだ。ちょっと太ってるけど可愛い。



帰省した。
だから実家の仏間に接した縁側に寝転んでいる。



今朝の新幹線に乗って、夕方に着いたんだから
もうちょっと寝かせてよ、
と新婚の旦那のような気持ちにもなるんだけど、
ぺたぺたぺたぺた、
無条件になっちゃんは可愛い。

『なかよし―』と言って、ぎゅうってしてくれる。


肘とか膝とか内側にまがる関節が
全部むにっとして、むにっとしている。

可愛い。









ぺたぺたして、なにをお話してくれるか、というと

『なつねー、さくら組さんなのー。』
『ももこせんせいがいるのー。』と一気にしゃべる。
すべて、さくら組情報だ。

真っ青な畳にぽとんと座って、
真っ黒な瞳でまっすぐに見つめて話してくれる。

このまま保育園に行ってももこせんせいに
ラブレターを渡したくなるくらい、
さくら組に詳しくなった。

可愛い。








しかし彼女の話題は保育園から出ない。

そうか。
そうだよな。

義兄さんも、姉貴も働いているから、
朝から夜まで、彼女は保育園にいる。
二歳の彼女の宇宙は、『さくら組』なのだ。

兄妹もいないので『家ではどうしてるの?』って訊いたら
『ママ、こわい。』って言ってた。


姉貴、やさしくしてやれよ。
















従弟が来た。
新婚だからお嫁さんと来た。、いいな。


なっちゃんも、
ぺたぺた浮気しに行く。
さくら組のことを話しに行くんだろう。






ちがうな。
彼女は『お客さん』が好きなんだ。
『さくら組』しか知らない彼女は
『なかよし』してくれる大人たちが大好きなのだ。

うまくいえないけど
そういえば、俺にもなんとなく覚えがある。

お盆とか正月はその時にしか会えない従兄とかがいて
楽しかった。
帰らせないように、従兄をみんなで押し入れに隠した。














そのままうすぼんやりと、縁側で寝ていた。
『ごはんだよ』って言われて、起きると
そうめんの大ざると
山盛りのとうもろこしと枝豆があった。



『やあ、久しぶり。』と、
義兄さんが差し出す
滴のついた瓶ビールのむこうを見たら、
縁側の先に、まんまるな月が見えた。


























なっちゃんも、まんまるになって姉貴の横で寝ている。
いつまで、なかよししてくれるだろう。





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natsu_0117 at 08:40|PermalinkComments(0)

2014年08月02日

花火が見える窓。

花火だ。


ドン、ドンという音で外を見ると、パソコンのモニターの
眼の前の窓から花火が見える。

俺はこう見えても、このオフィスの所長だ。
所員は4人だけど。

だから小さなオフィスなんだけど窓際のこの席は
『特等席』だ。








もちろん雑然とした下町のオフィス街で
徹夜明けには、朝やけをぼんやり眺め
夕方には夕陽が綺麗だ。

そうか、今日はみなと祭りか。
夕方にコンビニに行ったら
浴衣姿の女の娘たちがいたわけだ。

わー、と思ったが、もう俺は老眼だ。
眼鏡を掛け替えないと見えないのよ。
ごそごそと眼鏡を取り出す。







すると真後ろの席にいる、治子さんが
『所長、花火見てちゃだめですよー。』という。
自分だって、モニター越しに花火見てたくせに。
やつは若いからクリアに見えるだろうさ。





来週席替えしてやる。
4人だけど。





それでも、目の前で、どんどんなるのだ。
気になるじゃないか。

そして、音が鳴った時に顔をあげても
もう花火は散っているのだな。

当り前か。
音より光が早い。



だから、不鮮明に緑とか赤とかのまあるいなあ、
という明りは、音が聴こえた時には
くず折れるように夜空に落ちていくんだよなあ。










くそっ。もうすぐ9時だ。
花火大会の最後に、なんかやけくそみたいに打ち上げるだろう。
スターマイン、っていうのか?
あれは見たい。

俺は、治子さんに笑われようとも眼鏡をかけ直したとも。





ほどなく大音響がして、ビルの谷間の夜空に
果てしない花火が打ち上がった。

俺も、治子さんも事務所にいたみんなが立ち上がって
窓のそばに集まった。

4人だけど。











花火が終ると、治子さんが、
『所長。みんなで飲みに行きましょう。』と言った。
うん、俺の仕事も終わってないし、今日中に集計するはずの
君の仕事も終わってないだろう。


『ね?』
と重ねていわれたので飲みに行くことにした。
























あした席替えしてやる。
俺の隣の席だ。





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natsu_0117 at 20:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
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