2006年01月03日

リリカル・ミステリー 『白い花の舞い散る時間 〜ガールズレビュー〜』 『春待ちの姫君たち』4

 ひさびさの小説レビューです。

白い花の舞い散る時間 〜ガールズレビュー〜
春待ちの姫君たち

 著者は友桐夏さん、挿絵は水上カオリさん。
 文は書き慣れている感じで読みやすく、絵も表紙絵でもわかるように、非常に美しいです。

 なおミステリなので、紹介に最低限必要な情報を除き、内容の引用などを避けて紹介します。



 では紹介を。


 この2冊は両方とも『リリカル・ミステリー』と銘打たれていますが、キャラクターを共有したりといったことは特にありません。

 しかし続き物などではないのですが、読んでみると確かに、共通する独自の “色” が感じられます。
 これは恐らくまさに著者、友桐夏さんの個性なのだと思います。



白い花の舞い散る時間 〜ガールズレビュー〜

 導入部は、端折りまくるとこんな感じ。



 主人公の『ミズキ』は、いくつもの支部を抱える大手塾に通う高校生。

 この塾では現役塾生に固有の ID と pass を発行しており、それによってのみ入れる HP のチャットページでの塾生同士の交流も盛ん。
 そこで特に人気者となっている人たちがミズキを含めて5人おり、彼女たちはリーダー格の『アイリス』が作った HP に招かれ、そこでさらに親交を深めていました。

 そんな彼女たちは、たった一度きりの、5人でのオフ会を企画します。

 仮に間違いがあっても今の理想的な関係を崩さないよう、チャットで使用しているハンドルネーム(HN)をあえて使わず、そのオフ会の期間のみ1人1つ提案した HN を、ランダムに割り当てて使うという方法を採るのですが――。




 二重の HN によって正体がぼやけていることや、少しずつ集まっていく情報が繋がって、奇妙な絵を成していく様が面白いです。
 いろいろ考えながら読む人なら、最初は靄(もや)にしか過ぎなかったものが、形を為していくのを楽しめるかと思います。

 ――と言うかこれ、『謎は全て解けた!』とか、『皆さんをリビングに集めてください』といった、作者さんサイドからの、『これから謎解きをしますよ』宣言がないので、考えずにただ文面を追っていく人には不向きな作品かもしれません。



 独断評価  星4つ。
 これはなかなか良いですよー。



春待ちの姫君たち

 1作目が良いと、2作目にも期待しますよね?
 シリーズ名が付いているなら、尚更です。

 と思って読み始めてみると、キャラクター総入れ替え。
 と言うか、完全に別作品。

 でもこれが、実に面白いのです。



 エスカレーター式の女子校の中等部に通う、『赤音』(あかね)が主人公。

 赤音は、たったひとりにしか下の名前で呼ばせないという、風変わりな親友がいました。
 その権利をプレゼントされたのが赤音。
 彼女にとって、自分だけが特別。
 その思いが、苦境の赤音を支え続けることになります。

 そんな赤音の苦しみは、リーダーシップを強力に発揮する『舞』との出会いによって始まりました。
 赤音は何をするにも中心的存在の舞とうまくやっていくことができず、そのことで同級生のほとんどを占める舞の支持者たちからも孤立し、質の悪い嫌がらせの標的となりました。

 たったひとりの親友は、表立って助けてはくれませんが、他に誰もいないときにやってきて、赤音を励まし、慰めてくれます。
 赤音もたったひとり呼ぶ、その名で彼女を呼んで答えます。

 しかし――。




 文化祭で行うことになった奇妙な演劇、『春待ちの姫君たち』。
 たったひとりだけが名前を呼ぶ権利を持つ親友。

 それらが絡み合って、風変わりなストーリーを描き出しています。



 独断評価  星5つ。

 ……これまた前作同様に、いろいろ考えながら読む人向けです。
 ひとつだけでは何の意味も持たないピースが合わさっていくのを眺めるのではなく、自分で組み合わせてジグソーを完成させられる人なら かなり楽しめるのではないでしょうか。

 個人的には、この作品はお勧めです。


natsu_ki00 at 20:13│Comments(0)TrackBack(0)clip! | 小説

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Categories
Archives
Blog 内検索
Google
www を検索
このブログ内を検索
Recent TrackBacks
Recent Comments