2006年02月28日

『シナオシ』4

 久々の小説紹介です。
 先に独断評価を書き、『続きを読む』の後に紹介を書きます。



 『シナオシ』 著: 田代裕彦さん

 以下、折り返しの文から一部抜粋(本当に一部)。



 私はかつて「僕」だった。

 〜 〜 〜

 生前に犯した罪を後悔していた「僕」は、別人として生き返り、再びこの世へ舞い戻る。




 非常に風変わりなミステリです。
 少しオカルティックな独自設定が面白いです。
 同じ作家さんの、同様の設定を使った作品があるのですが、別段続編などというわけではなく、この作品単体で楽しめます。

 ちなみに「私」「僕」というキーワードから、いわゆるトランスセクシュアルものを連想される方は、半分正解です。
 間違ってはいませんが、精神と肉体の性差とか矛盾とかがどうこうといった話にはなりません。
(#ちゃんと設定上の必然性もあります)



 独断評価  星4つ。
 オススメです。
 ただし、この手の特殊設定が嫌いな方はその度合いに応じて星を減らしてください。

 この先は、評価本文となります。
 前提となる特殊設定に触れますので、先に内容を一切知りたくない人は、この先を読まないでください。


 

 この先は、前提となる特殊設定について触れますよー。



 と念押ししてから……、



 さて、ここから本文です。



 〜 〜 〜

 別人となってやり直す主人公の決意の強さはそのまま、その後悔の大きさ。

 やり直す目的はただひとつ。
 かつて犯した「僕」の間違いを、繰り返させないため。



 まれに肉体が死んでも、寿命を残している者がいる。

 そうした者は、生き返ることが可能。
 ――寿命が尽きた他人の肉体を利用して生き返ることさえも。

 「僕」の、たったひとつの目的のためには、間違いを犯す前に戻らなくてはならない。
 時間を遡って生き返ることは――、



 「案内人」は可能だと言った。
 ただし、そのときは「僕」の身体は使えない。
 中にはまだ、「僕」がいるのだから。

 だから「僕」は「私」になった。
 「僕」の間違いを止めるために。

 〜 〜 〜



 一部のみ要約すると、こんな感じのプロローグから始まるお話です。



 が、「私」の挑戦は簡単ではありません。
 生き返るとき、精神が引き継ぐ記憶よりも、肉体の記憶の方が強いからです。

(#精神と肉体の性差の話にならないのも、これが理由です)

 そもそも「僕」が誰かがわからず、あるときは目的があったことさえも忘れ、一体何を止めなくてはいけないのかもわからず――。



 そう、これは、どこかにいる “犯人候補” (?)を見つけ出し、 “犯罪” (?)をどうにかして防ごうと試みる、無力な凡人の探偵物語――。

 この特異な設定と、お話のいろいろな仕掛けとの融合で展開される物語は、かなり興味深いです。
 こうした仕掛けをことごとく見破ってしまうような読者にとっては先の展開は多少読みやすいかもしれませんが、それが致命的な欠点となるような作品でもないと思います。

 先の予想が付いた人でも、さほど興味を失わずに読み続けられる可能性は高いでしょう。



 560円(+税)。

 この作品には、値段分の価値は十分にあるかと。
 お気に入りです。


natsu_ki00 at 21:50│Comments(2)TrackBack(7)clip! | 小説

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1. シナオシ  [ Alles ist im Wandel ]   2006年06月10日 02:43
キリサキの続編……というわけではないそうだけど、 推理を働かせて自分で謎解きをするなら、既読であることが絶対条件な構成。 と、いうか。
2. シナオシ   田代 裕彦  [ 48億の個人的な妄想 ]   2006年06月10日 19:38
「私が考えていたのは、ずっと《僕》のことだけ。……でも、《僕》が誰かを殺して、そ
3. シナオシ (12/27読了)  [ 読了本棚 ]   2006年06月11日 22:42
生前に犯した罪を後悔していた「僕」は、別人として再びこの世に生きる事になった。それから5年後、<案内人ナヴィ>が目の前に現れる事で本来の目的を思い出した「僕」は記憶を頼りにかつて犯した犯罪を防ぐもの――シナオシとなった。
4. (書評)シナオシ  [ たこの感想文 ]   2006年06月12日 13:33
著者:田代裕彦 生前、人を殺めた事を後悔して賽の河原をさまよう「僕」は、「案内人
5. [田代裕彦] シナオシ  [ booklines.net ]   2006年06月12日 20:09
それはそこにいた。そして私は思い出した。 私は、「私」でない、ということを。 かつて「私」は「僕」で死んだのだ。比喩ではなく本当に。それも人を殺してしまったあとに。 だけど寿命が残っていたらしく、あち...
6. シナオシ 感想  [ しばいてぃてぃ ライトノベル 感想・人気投票 ]   2006年07月06日 16:01
   【名】 キリサキ  【籍】 富士見ミステリー文庫  【著】 田代 裕彦  【絵】 若月 さな  【売】 2005.12 + Amazon + BK1 +  【参考】 2006年ラノベ人気投票 【帯】 「それは全てを偽直す者の名」  【内容】  私は...
7. シナオシ 星4  [ アイボリッジ/小説感想ブログ版 ]   2007年03月18日 11:13
死・別の体で過去に生き返る・シナオシ・自分の殺人阻止・僕・案内人 ジャンル:タイムパラドクス・サスペンス 富士見ミステリー 作者:田代 裕彦 画:若月 さな ストーリー

この記事へのコメント

1. Posted by Miya   2006年03月01日 21:48
「私」「僕」というキーワードで思い出したことを。

東野 圭吾の「変身」という本では「僕」「俺」ってのがあったなーと。
自分はマンガ版の「HEADS」で読みましたが^^;

アマゾンのレビューにあるように「アルジャーノンに花束を」っぽい気もしますが
これはこれでありかなーと。

アマゾンで「東野圭吾 変身」で文庫版、「間瀬元朗 ヘッズ」でマンガ版が出てきます。
満喫に行く機会があればいかがかなーと。
買うほどじゃないかな?^^;
2. Posted by なっきー   2006年03月01日 22:05
5  Miyaさん、こんばんはー。

>東野 圭吾の「変身」
>マンガ版の「HEADS」
 お教えいただいてありがとうございます。
 脳移植系の作品ですね。

>買うほどじゃないかな?^^;
 でも、覚えておきますね(笑)。

 あと脳移植系では、「人造少女」をよく覚えています。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4049248182/qid=1141218045/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/
 これは性差うんぬんの話も出てくるわけですが……、まあこれも、買うほどではない作品とは思いますが。(ぉぃ

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