第6夜 巨根の悩み
巨根の悩み
 夫と別れて独立開業した美熟女原田みずき先生の経営する原田形成クリニック。若くて激カワ、おまけにエロエロな2人のナースと共に、夜のお悩み相談を解決する「実技指導」が評判です。ある日受診に訪れたイケ面男性に色めきたつナース達でしたが、彼の悩みは何と巨根過ぎて性行為が出来ないこと。すぐには解決策が見つからず、貞操帯を嵌めて通院治療を強要したみずき先生ですが……(約1万1千5百字)


1.包茎手術は百害あって一利なし(2904字)

 世に「性」の悩みをお持ちの男女は大変数多いようでございます。やはりデリケートな問題ゆえに、誰にも相談する事が出来ず、人知れず悩んでおいでなのでありましょう。こうした時、最近では誰でも手軽に検索し調べる事の出来るインターネットと言う便利なものが存在するのですが、これが又曲者です。特に「性」に関する知識など、いかがわしい俗説があたかも信頼出来る情報であるような顔をして流布されているものですから、ますます悩みは深まるばかり。その典型例は「包茎」に関しての俗説でございましょう。

 おそらく男性の方であれば十分ご承知でしょうが、「包茎」俗に言う所の「皮かむり」には大別して2種類ございます。包皮を剥き亀頭を露出させる事が可能な「仮性包茎」と剥く事の出来ない「真性包茎」です。「真性」の場合は性生活に支障を来しますので手術が必要ですが、「仮性」の場合手術の必要は全くありません。むしろ手術の失敗などによる危険性や、感度が減退するなどのデメリットの方がよっぽど大きく、「仮性包茎」の手術など百害あって一利なし。これが全うな医学関係者の常識でありましょう。少なくとも無条件で奨励する手術とはとても思われません。そもそも日本人男性の大多数は仮性包茎だと言われております。他の民族においても程度の差こそあれ、ごく普通の男性器の状態でございましょう。太古の昔から「仮性包茎」で何不自由なく過ごして来たわけでありますから、何をことさら肉体にメスを入れる必要があるでしょうか? 実際外国においては「仮性包茎」なる概念そのものが存在しません。文化的宗教的理由でメスを入れる事はあるようですが、包皮を再生する手術すら存在するのです。すなわち「包茎」こそがノーマルな状態であると認識されているわけですね。その通りだと思います。

 しかるに、ここ日本においては、俗説に惑わされ「仮性包茎」を手術してしまう愚行が跡を絶ちません。申し遅れましたが、ワタクシは原田みずきと申します。「原田形成クリニック」と言う個人病院を経営しております、女医でございます。形成クリニック~という奇妙な名称でおわかりかも知れませんが、実は連日のように「仮性包茎」にメスを入れております。言行不一致も極まれりと思われても致し方ありませんが、これも患者様のご意思なのでございます。どうかご理解頂きますようお願い申し上げます。

 さて患者様のご意思と申し上げましたが、ワタクシはもちろん手術前には十分な時間を掛けて「包茎」手術について説明し、仮性包茎の場合は手術をされないように、強くお薦め申し上げているのですが、それでも来院された「仮性包茎」の方のほとんどは手術をされてしまいます。ワタクシはまだ三十になったばかりと若く、女性でもある事からご信頼を頂けないのも無理はありませんが、同じ医療関係者として、世にはびこる悪徳業者の、包茎は悪、であるかのごとき広告宣伝の氾濫を憂えずにはいられません。間違いなく日本人男性の「仮性包茎」手術は、悪徳誇大広告の影響です。男性雑誌を開けば必ずと言っていいほど、「包茎」についてのコンプレックスを煽り、手術や矯正器具を薦める広告が目に飛び込んで参ります。これでは男性の方々が、包茎は恥ずべき事である、との大いなる誤解を植え付けられるのも無理からぬ事でありましょう。思い当たるフシがおありの方も多いのではないでしょうか?

  男性の方を責めるような事ばかり申し上げて参りましたが、実は女性の方の「包茎」に関する知識と理解のなさが大きな問題なのではないかと、最近ワタクシは思うようになって来ました。「包茎」手術をしようという男性の動機は、ほとんど女性です。嫌われるのではないか、というのがその典型で、残念ながら多くの女性の方も「包茎=悪」という俗説に毒されておいでのようですね。付き合っている彼女からバカにされた、とか、もっと直接的に「手術して」と言われて来院した、と言う哀れな男性にもたくさんお会いしました。中には「仮性包茎」の息子を連れて来られるお母さんすらいらっしゃいます。ワタクシは未成年者の「仮性包茎」は絶対に手術など致しませんが。一度だけ、ワタクシとほぼ同年齢の「息子」さんの包茎を手術してくれ、と中年女性がやって来られた時には、さすがにぞっと致しました。「包茎」の手術などより、マザコンを何とかした方がいいんじゃない?と、後からナース達と話したものでございます。

 未成年の息子さんを連れてやって来られたお母さん方に、「仮性包茎」は異常でも何でもなくごく正常なペニスの状態であり、手術の必要は全くない事、手術の失敗の危険性や、包皮を切ると感度が減退して不能に繋がる事すらある事をお話しすると、決まって怪訝そうな顔をなされます。どうやらお父さんのペニスは包茎ではないと誤解しておられるようでございます。実は仮性包茎の男性も、性交時はもちろん、入浴や排尿時には包皮を剥く習慣をお持ちの方がほとんどですから、パートナーの男性が包茎である事を女性の方が知らない事も多いのです。又、そのように包皮を剥く習慣を幼い頃から身に付ければ、包皮と亀頭の間に汚れやばい菌がたまったり、過保護な亀頭が早漏になり易い、などの仮性包茎にまつわる問題点は全て解決されるので、お母さん方や息子さんにそうお話し致しますと、中には納得して頂けるお母さんもいらっしゃいますが、変な事を言う医者だと疑いの目で見られる場合も多いのでございます。「包茎」に関する俗説は、よほど根深く世の人々を惑わしているものと思われます。

 さて、長々と余計な事を話してしまいました。現在ワタクシのクリニックに来院される患者様の過半数が「仮性包茎」に関する相談で、「真性包茎」の患者様は、実際年に数えるほどでございます。そして又、ワタクシが一念発起して開業した時はそんなつもりはなかったのでございますが、実は当院の患者様はほとんどが「性」に関する悩みのご相談にやって来られる、という状態で、本来の整形外科としての患者様はほとんどいらっしゃらないのです。これでは「仮性包茎」の男性の手術を全て拒否してしまったら、経営が立ちゆきません。医療関係者としての良心は疼きますが、不要なはずの「仮性包茎」の治療が頼り、というアンビバレンツな立場にワタクシは置かれているのでございます。

 いつの頃からか、包茎手術をするなら「原田クリニック」という噂が口コミで広がってしまい、それからなぜか整形外科の領域ではない、「性」の悩みで来院される患者様が増えて参りました。もともと大病院で雇われの勤務医だったワタクシは、週に2度の夜勤が常態化し、休日もまともに取れない過酷な労働条件に耐え切れず、無理をして開業に踏み切ったのが実情でございます。もちろん個人開業医の経営も楽ではなく、どんな患者様でもお受けせざるを得ないのであります。人の噂とは恐ろしいもので、今や包茎手術の原田から、性の悩み相談の原田、と思われるようになり、ワタクシはまるでセックスドクターのような生業となってしまったのでございます。


続く→巨根の悩み 2.性の悩みはアナルで解決


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