2005年11月12日

第12章 海へ

 

お別れの日がやってきた。

屋久島にきて1ヶ月、

最初は、ぶっきら棒でどうなることやらと思っていた

屋久島の人たちとも、仲良くなった。

荷物をまとめていると、リョウタが話しかけてきた。

 

「行くんだね」

「うん」

「僕もね、ここじゃ年が一番若かったから、

肩身の狭い思いをしてたんだ。

それがいい話相手ができてうれしいよ。

オーストリアへ行っても、応援すっからね。

手紙出すよ。

着くかわかんないけど」

 

日頃、筆不精で、手紙なんか書いたことのないことは、

ヒロが一番よく知っていた。

だからそのことばがかえってうれしかった。

 

「ありがとう。

僕もリョウタのやさしさがなかったら、

いまここにいられたかどうかわかんないよ。

リョウタのおかげだよ」

ヒロはリョウタの目を見つめた。

泣いているようだった。

ヒロにも涙があふれた。

だがその涙は、何とも言えないさわやかな涙だった。

 

「ありがとう。ありがとう」

握手をしながら、いつしか固く抱き合った二人は、

離れても強い絆が生まれいていた。

 

周りの仲間たちから拍手の音が聴こえてきた。

単純にうれしかった。

「難しいことじゃなかったんだ。

僕は僕らしくいればいいんだ」

だんだん大きくなる拍手の音に、

ヒロは、自分らしさのセンスを芯から感じ取った。



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