2006年01月21日

エリック 優雅なる生活 第2章 あれから5

第2章 あれから

エレナさんには、子どもが5人いた。男が3人、女が2人。エリックさんは、

その3番目の息子で、オーストリアでチョコレート工場を経営していた。

そこで作ったチョコや自家製のパンやケーキを揃えた店、ERIC(エリック)をオーストリアに7店舗、ドイツ、イタリア、フランス、イギリスなどヨーロッパ各地に12店舗展開していた。

長男は、エレナ婦人の店を引き継ぎ、お菓子屋を営み、次男は、靴職人を営んでいた。

 

エリックさんは、僕と同じテーブルに座ると、スタッフにカプチーノを注文した。

「元気そうだね、長旅はどうだったかな」

穏やかな口調でエリックさんが口を開いた。

「えぇ、大変でしたが、いろんなところでずいぶん鍛えられたおかげで、

何とかここまでやってこれました」

 

「母の話では、職場で大変だったそうだね。

僕も母からの手紙を見て、心を痛めたよ。

そういうことは、日本だけでなく、ここオーストリアやヨーロッパでも

あることだからね」

「え?そうなんですか?

てっきり、ヨーロッパの人はみんな紳士でやさしいとばかり

思っていました」

「そんなことはないよ、どこでも皮肉なやつや嫌がらせをするやつは

いるものだよ。それはどこでも一緒」

「そうだったんですね」

僕は、どこか遠くへ行けば、自由があると思っていた。

だけど、職場の状況はどこでも似ているようだ。

 

「まぁ、日本人よりは、はっきりとものごとを言うとは思うよ。

だから、余計なストレスは少ないとは思うけれど、

言われる方も言い返すから、ケンカは耐えないよ。

あそこをみてごらん」

 

エリックさんが目をやる方向を見ると、

プラカードを持った人たちが何やら声を出しながら、

行進していた。

 

「あれは、何ですか?」

「リストラされた人たちが、会社や国に文句を言っているんだよ。

勝手に辞めさせられたことに腹を立ててね」

その一行が目の前を流れて行るのを眺めていると、

エリックさんが問いかけてきた。

「ここまできた旅を聞かせてくれないかな」

聞き上手なエリックさんのことばに誘導され、

僕は、あれからのことを語りだした。

 

 



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