2013年02月20日
『ムーンライズ・キングダム』観る(ネタバレ注意!)
ウェス・アンダーソン監督の最新作『ムーンライズ・キングダム』観てきました。85thアカデミー賞脚本賞ノミネート作品です。
脚本は監督の盟友であのフランシス・F・コッポラの息子ロマン・コッポラ。
そしてルーパー、ダイ・ハード5に続き、ブルース・ウィリス出演作品です。いつも違う雰囲気に期待して観てきました。
キッズムービー独特楽しい感じの映画でコメディータッチですが繊細な子供の初恋成長物語でした。
時代設定は1965年、アメリカのニューイングランド沖にある全長26kmのニューペンザンス島が舞台。
出てくるのどかな景色、かわいい家、部屋の内装は素晴らしく、ドールハウスのようでした。
この映画に出てくる色はとにかく鮮やか、ティムバートンのある映画みたいに派手すぎない鮮やかさがよかった。飾られている絵、主役の男の子の描く絵もよかった。
冒頭のカメラアングルは
驚いたことに
大友克洋のアニメ映画『メモリーズ』の中の「大砲の街」という作品みたいに、対象と平行に動いたり、90度回転していく撮影方法をして、主役の女の子の家と家族の生活観を楽しく表現していました。
ジム・ジャームッシュのロードムービーみたいともいえます。
ゴーストバスターのビル・マーレイがその女の子のお父さんウォルト役。
ブルース・ウィリスは小さな島を守る警察のシャープ警部役。
12歳の女の子スージー・ビショップは母と警部の密会を双眼鏡で見てしまう。
サム・シャカスキーはボーイスカウト(カーキ・スカウト隊)のキャンプから置き手紙をして脱走。
問題視だった二人は一年前に出会い、文通を繰り返し、アウトサイダー同士に生じる不思議な共感をいだきつつ過ごし、ついに駆け落ちの計画を実行にうつすことにするが・・・
まるで「小さな恋のメロディ」的展開に・・!?
二人を探索しはじめるまわりの大人たちや、ボーイスカウトの子供たちがコミカルに描かれていき、なんだかほんのり笑えてもくるから、、実に楽しい。
が、子供のスパっといいはなつ言葉は深いものもあり、一瞬・・大人たちに、忘れかけてた何かをふと思い出させたり・・する。
フレンチ・タッチの演出が
きいてくればくるほど
かえって、
二人とも駆け落ちに対して
真剣であることが
強調され、、二人を変わり者と思ってた回りの人間も、その真剣に想いあう愛の深さにつられて応援してしまいたくなる!
カンヌでオープニング作品と
コンペティション部門に同時に選ばれただけあって
チャーミングでファニー、かわいいおかしな作品であるが
大人に反発して冒険したくなる子供時代独特の心を二人の男女を描いていて中身はいたって真面目な内容なことに観てると気づいてくる。
弧児として育った男の子の里親に愛情を感じない孤独と、恵まれた家庭環境で育ち厳格な父をもつ女の子が家を抜けだしたいという願望。駆け落ち的冒険を通して、二人の男女とまわりの人たちに人間本来の大切な感情を呼び起こしてゆく。
あの頃のアメリカの特有のゆったりとした明るい日々がベースにあると思いますが、楽しさの感じとしては、スタンド・バイ・ミーやトム・ソーヤの冒険、あらいぐまラスカルみたいなものに似ている・・とも感じました。
アライグマのワッペンとかの小道具もよかったです。
二人の子供の失踪という出来事から余計に感じることできることは、日常や既成概念からの脱却を試みるには、若さはかなりの武器になる、、と改めて感じました。大きくなっても好きに冒険できるのは、学生時代までが普通です。
1970年代、そして1980年代になると、同じような男の子と女の子がいなくなったら、もっと
大事になり、時代にあわせてもっと二人が悲しむことになるリアリティあるストーリー展開になってるかもしれません。
時たま、映画の画面が2Dの切り絵のようなシルエットになるシーンが印象的で新鮮でした。
手と手をつなぎ、人が人とつながっているあのラスト。この映画のポイントになってた気がします。
主役の男の子と女の子がとてもよい表情で、自然に背のびした感じの「のびのびした」シーンがたくさんあり魅力的でした。
ブルース・ウィリスが二人を静かに見守っている感じが
なんかほっとしました。
激しく戦うことばかりなので
こういう役は珍しくて
新鮮でした。
電気ショックを心配して
なんとか少年院送りを阻止しようと大人が頑張っているのに
サムはすでに稲妻受けていて
真っ黒焦げになりつつ、けろっとして立ち上がり走っていく。
サムという愛と自我に目覚めた子供の強さに、漫画的誇張はあったとしても、笑えるというより、もう感動というしかないものを感じ、、ました。
子供だけが気づくこと、
子供だけが知っていること
子供だけが感じる喜び、
それに大人が救われるという
ストーリーは、永遠に大切な深いメッセージがあるように思えます。
音楽は変わっていて
映像と離れて個性的で
独特だった印象がありますが
エンディングのいろんな楽器の解説入りの音楽は、聴いていて、なんか心地よく、気持ちよく劇場を後にできました。
この監督の他の作品も
機会あれば、観てみたい・・です。
2013年まだ2月だけど、ブルース・ウィリス三昧も悪くない。