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翻訳ミステリー福島読書会AtoZ

2012.2.26~2018.8.26 <過ギニシ翻訳ミステリー福島読書会AtoZハタダ名前ノミ、虚シキソノ名ガ今二残レリ>

「『Yの悲劇』を読んでいない位なら『Xの悲劇』も『Zの悲劇』も手にとったことはないだろう。そしてまた『ABC殺人事件』も覗いたことがないだろう。つまり探偵小説のAからZまで知らないだろう」という丸谷才一氏の文章をヒントに、アルファベットのAからZまでの作品を課題書に2012年2月26日にスタートした福島読書会AtoZは、大団円読書会と名付けて開催した2018年8月26日に 「Z」に到達、終了いたしました。これまでのご厚情に感謝申しあげます。ありがとうございました。

最後の読書会に配布した「アルファベットシリーズまとめ冊子」とは一部内容の異なる、ブログバージョンをお届け致します
ABC1

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ABC最後


2012年2月26日にスタートした翻訳ミステリー福島読書会は、2018年8月26日で大団円を迎えました。これまでのご厚情にこころから感謝いたします。これまで本当にありがとうございました。

7月29日に開催した横溝正史『女王蜂』読書会が、国内ミステリを課題書にする特別編最終回。その席上、これまでの課題書を総まとめにした冊子を配布しましたので、ブログでもこっそり公開致します。

「二本松の菊人形de犬神家の一族」読書会とか、奥州探題畠山家菩提寺の本堂を借りて開催した「お寺de鉄鼠の檻」、昼の課題書『細雪』が文庫本3冊、夜の『絡新婦の理』が4冊、1日で課題書7冊4姉妹つながり(だけじゃない)読書会「福島市旧御倉邸de霧越邸殺人事件読書会」などなど、内容はともかく企画だけは斬新、我ながらよくそんなことおもいついたなというイベントの数々。なかでも世界初だと自負しているのが、「刺青殺人事件&占星術殺人事件W読書会」での実証実験。人の形に焼いてもらったパンを(以下自粛)して、あのトリックが実現可能なことを証明しました(笑)
これまでの
読書会特別編にご参加いただいて方はもちろん、ツイッターなどで開催告知にご協力いただいたすべての皆様に、改めて感謝申し上げます。

特別篇表紙

特別篇2

特別篇3

特別篇4

以下はまとめそこねた画像集です

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2016年の特別篇



課題書 アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』田村隆一訳
295p
「(略)殺人は、そのずっと以前からはじめられているのです。殺人とは、ある一定の時刻に一定の場所へと集中された数多くのさまざまの条件が累積した極点なのです。人々が世界のさまざまな土地から、予測できない理由のために、その地点へとはこばれてくるのです。(略)殺人そのものは、物語の結末なのですよ。つまり、ゼロ時間です」
「いまが、そのゼロ時間なのですよ」

「読書会は、そのずっと以前からはじめられているのです。読書会とは、ある一定の時刻に一定の場所へと集中された数多くのさまざまの条件が累積した極点なのです。人々が日本のさまざまな土地から、予測できる理由のために、その地点へとはこばれてくるのです。(略)読書会そのものは、読書の結末なのですよ。つまり、ゼロ時間です」
「読書会が、そのゼロ時間なのですよ」(読書会参加者、中学校2年生)



課題書 ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
下巻393p
写字室のなかは冷え切っていて、親指が傷む。この手記を残そうとはしているが、誰にためになるかわからないし、何をめぐって書いているのかも、私にはもうわからない。<過ギニシ薔薇ハタダ名前ノミ、虚シキソノ名ガ今二残レリ」


「ドトールのなかはすずしくて、ペンをもつ指が傷む。この感想を残そうとはしているが、誰にためになるかわからないし、何をめぐって書いているのかも、私にはもうわからなくなってきた。<過ギニシ本ハタダ感想ノミ、表現シ難イ感想ガ今二残レリ」(読書会参加者、中学校2年生)

まとめを作成致しましたので8月大団円読書会ご参加のかたはご活用ください 開始時間がこれまでの告知より30分早くなっております よろしくお願いします
なお、読書会は定員をオーバー、募集終了致しました 多数のお申込みありがとうございました 
福島読書会は8月25、26日の読書会をもちまして終了致します。以降の開催はありません。これまでのご厚情に感謝申し上げます。


8月25日(土)ウンベルト・エ―コ『薔薇の名前』読書会
午後2時受付 午後2時30分開始 (開始時間を早めました ご注意ください)
開場午後1時 
午後1時半受付 
午後2時開始

午後4時30分終了 午後5時撤収 

参加費500円 学生無料(注)
会場はJR郡山駅西口すぐ ビッグアイ7階会議室 
いつもの和室ではありませんのでご注意を

大団円前夜懇親会は午後6時より午後7時30分まで 参加費4320 訂正3980円 
お店は参加者のかたへ直接ご連絡差し上げます

二次会あり 福島読書会ご用達、あのフルーツカクテルのお店を予約済 みなさんであのお店へ行くのもこれが最終回かと思うと涙を禁じえません


  

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8月26日(日)アガサ・クリスティ『ゼロ時間へ』読書会
午後2時受付 午後2時30分開始 (下記のように変更になりました 
午後1時開場
午後1時30分受付
午後2時開会
 


午後4時30分終了 午後5時撤収
参加費500円 学生無料(注)
会場はJR二本松駅から徒歩30秒 市民交流センター2階創作スタジオ

夕食会は午後5時より 交流センター1階杉乃家で 会費は各自注文した分をそれぞれお支払いいただくシステム 浪江やきそば以外にもメニューあり
クリスティー『ABC』と浪江焼きそばでスタートした福島読書会は、クリスティーの『Z』と浪江焼きそばで完結するのです

(注)2日間ともご参加のかたは参加費無料です

***受付時間からおしゃべりがはじまるのが福島読書会。ぜひお早めにいらしてください。会場内に荷物を置いてから買い物に出かけるのもOKです。


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ミステリ映画邦画篇

1  事件

   大岡昇平の原作が突如創元推理文庫にはいったのは一寸した驚きでした。まあ木枯らし紋次郎が入ったことに比べればに比べれば、何の不思議も無いといえるかもしれませんが。
  野村芳太郎作品で一つとなれば「砂の器」の方が適切なのでしょう(盤上の向日葵効果で、再見。さらに加藤剛追悼で見返したばかりでの橋本忍訃報!)。実に見事すぎる名作で、オールジャンルでも上位ランクイン必至ですもの。まあそうはいってもミステリ側からの視点で難癖を付けてしまいますが。原作と引き合わせてみると基本的な筋道はほぼいじっていない一方で、シナリオ上の割り切り方がとんでもなく潔いのですね。加害者以前に被害者の身元を追うフーダニットが冒頭にあるもののそれは倒叙物ではないというぐらいのもので、原作にはまだ存在していたレッドヘリングや(読者側のメタ視点でですが)犯人の絞り込み等がほぼ無いんです。まあ、原作終盤に登場するスーパー技術兵器 はオミットするのが当然ですが。
 そして、原作に確かに存在する(これは極めて評価すべき事ですが)或る要素を最大限に押し広げた展開は、私なんぞが改めて挙げるまでも無い名場面です。
(どうしてもネタバレ防止で、アレなりソレなり指示語が増えてしまうのが、物忘れの激しくなってきたおっさんじみてみっともないですが、ご容赦)
 と、長々砂の器について書き連ねてしまいましたが、「まあ名作なのでしょうが無い」
 本題の「事件」ですが、所謂ラショーモン・シチュエーション風に事件を追うスタイルは、法廷シーンとのカットバックで、きっちり引きつける手堅い作り。
 どちらかというと逆なんじゃないのかと感じさせる検事と弁護士の芦田&丹波。狂犬俳優から軽みがみえる渡瀬恒彦。(メイキングによると、実況見分のシーンで寝転がるのは佐分利信に芝居を受けさせようとした渡瀬のアドリブだそう)端役もいいところに森繁投入という豪華さなど、キャスティングの妙が全面的に光ります。
 なお小学生の私は、佐分利信を、佐分・利信さんだと思っていました。
 今回、原作の連載時タイトルが「若草物語」だったことは初めて知りました。細雪を日本版若草のつもりで読んでけっこうギャップに驚いた自分としては、これも興味深い。(アニメ世界名作劇場シリーズのファンなのです)
 脱線ばかりですが、さすがに「配達されなかった三通の手紙」や「危険な女たち」についてとかやりだすと長すぎるうううう。
                                                       
2 悪魔の手毬歌
  金田一映像については、先日の「女王蜂」読書会で、ある程度共通コンセンサスがとれたのでは、と勝手に思っているのですが(少なくとも飛鳥部長とは……えっ単なる気のせい?)
 獄門島は、堂々の国内ミステリ最高峰の一つであるがゆえに、映画がどこまで迫るかという形になり映像化による引き上げが無い。逆に女王蜂などはむしろ映画の方が原作補完や変更等含めて優れているかもしれない。(視覚面では、箱根細工や毛糸とか、まあ、原作関係なく六分割とか色々やってますが)そうした点で原作とのバランスが良いという言い方はできるのかもしれません。
 (女王蜂が駄目といっているわけではないのです。お許しください。読書会ではやや挑発的に聞こえたかもしれませんが、重ねてお詫びします)
獄門島と双璧をなす見立ての映像化(原作の話をしてしまえば、トリックと何重にも結びついている点もふくめて獄門島が一枚二枚上なわけですが)、そして手毬歌がちゃんと歌われるのは、結構大きい 。ビートルズじゃ駄目なんですよ(あれが良いって人もいるだろうが)
 そしてなにより、二大警部対決。まあ若山富三郎ですよ。富三郎。これだけで反則級。
  チャンバラやってるときの富三郎が一番好きですが、泣かせに来るときの富三郎も凄い。
「衝動殺人 息子よ!」はなまじ実話ベースなのであれですが、これで引退したカルメン・デコちゃん(高峰秀子)との殺人被害者の親夫婦は胸に来ます。
 そういえば高峰秀子と市川崑の交流は、若い頃の下宿の話や、映画「東京オリンピック」の擁護など深い一方で、殆ど作品出演は無いのも意外。一寸したタイミングとかなのでしょうが、金田一シリーズで観たかった……というか、妄想逞しくするとW高峰が観たくなるし、女王蜂は婚約者軍に妙に特撮臭がするのだから、いっそウルトラマンA高峰圭二をだしてトリプル高峰に……何の話だ。
 くだくだしく書き連ねましたが、ミステリファンとかいう変な人たちを除けば、ゴムマスクと菊人形と倒立した死体の三題噺(つまり、内容までは知らないひとが意外に多い)で犬神家がナンバーワン扱いなんですが。
 そういえば洋画で「薔薇の名前」をいれませんでした。というか、読書会課題の薔薇が全然進んでいない!                                
                         
3 RAMPO
  映画界の巨人たちというと、どうも監督にばかり目が行きがちですが、制作側にも負けず劣らずの個性の持ち主がズラリとおります。
 角川映画という、新しい興行の形を生み出した角川春樹辺りがその筆頭でしょうか。他には、永田ラッパとか、徳間ラッパとか……
 そうした面々に比べればやや小粒かもしれませんが、平成前期、松竹の御曹司として奥山和由という人が台頭してきます。プロデューサーとして携わった作品の数々をみれば、業界に新風を……というのは間違い有りませんが、社長子息かつ専務ゆえ会社を半ば私物化したという見方もされ、父共々解任されるクーデター。毀誉褒貶あるはやむなしというか、まあ棺覆いてこと定まると言う言葉もありますが(むしろ、死後に創作物の登場人物になった影響でころころ評価が変わる昨今……)まあアイデアマンで、ユニークな企画の様々を通した点は評価しなくてはならないいのでは。もっともこの人は大会社の経営者であったわけで、その点を無視するわけにはいかないんだよねえ。(上に挙げた面々も 全員経営者です当然)
 画期的と言えば画期的ですが、中編映画で入場料千円、しかも坂東玉三郎に監督で吉永小百合主演で泉鏡花の「外科室」とかATGかよって企画ですよ。なおコピーは「永遠の60分」。うん、本当に60分が長かった。
 松竹のプリンスという立場は失ったものの、現在も映画プロディースとして活躍は続けており、最終的判断はまだ下せないのですが……
 その奥山由和の(解任劇以外では)最大級の騒動が、RAMPO取り直し問題。
 詳細は割愛しますが、黛版と奥山版の二本がいわば競作的に公開された。(最終的にインターナショナル版も公開。都合3種)
 基本的骨子は同じで、乱歩(竹中直人)、横溝正史(香川照之)等現実の世界と、作中人物の明智(本木雅弘・モっくん)、変態侯爵(平幹二朗)等が、夫殺しを疑われている未亡人(羽田美智子)を軸に交錯していくというもの。
 黛版は、幻想的だがある種手堅い作り。
 奥山版は、豪華な追加キャストや、冒頭の「お伊勢登場」アニメーション等で外連味が強く、制作経緯も含めて話題性が高い。
 個人的には、黛版の方が好きです。
 黛版が優れているというよりは、奥山版の出来が……。
 豪華著名人を集めたパーティシーンに話題性以外のどんな意味があるのか?
 大槻ケンヂのタクシーのシーンなど、稚拙の極み。イメージの幼稚さの露呈だと思います。    
 黛バージョンのラストシーンは十二分に美しいといえる物だと思いますし、少なくとも脚本演出共に、形にはなっていますから。
 奥山バージョンは、難解や複雑ではなく、とっちらかった脚本なだけです。
 無論、本人が招いた自業自得ともいえますが、一応擁護するならば、撮影にしろ脚本にしろ編集にしろとにかく時間が無かったということは確かですし、そもそもが急場での初監督発演出だったという点でしょうか。
 乱歩生誕100周年記念作でしたが、乱歩没後50年で出版業界がそこそこ動いたのに対して、本作は、未だDVDも未発売のまま。松竹との決裂が根深い証左とも言われていますが、出来はともかくもう一度観たい作品ではあります。
 (出たら出たで、やたらお高い値段が付けられそうですが)
キャスト面では、モッくんが素敵。美青年です。羽田美智子は奥山のお気に入りなので……。竹中はやはり頭髪で選ばれたんでしょうかねえ。この頃の香川はまだ怪優にはほどとおい。
むしろ平幹二朗は平成はいってからのある時期は、これこそ怪優といわんばかりの変な役が多かった印象です。本作以外にも林海象のジパングとか、鈴木清順最晩年の二作品とか。NHKで、再ブレイク寸前の有吉辺りと出てた「世直しバラエティカンゴロンゴ」では、仙人風衣装で、論語もじりラップに合わせて踊る姿がとてもショッキングでした。

人でなしの恋

  前項の奥山由和プロディース作品。
  「何も足さない。何も引かない」というのは、某社ウヰスキーの宣伝コピーですが、この作品は、珍しくソレができている乱歩原作映像化です。
 大体複数の原作を混ぜたり様々なアレンジを加えられることが多い乱歩作品。天知茂の土ワイ版も、まあモチーフだけの実質オリジナルってのが少なからずありますし(鰐淵晴子がゲストヒロインの「白昼夢」が代表例か)
 故に、原作の嘆美なイメージが実写化できてるかどうかだけになるんですが、そこは最低限のハードルは越えていたんじゃないでしょうか。話題にはなりませんが。
(この辺り、悪名は無名に……って事になるでしょうか)
ヒロインは例によって奥山お気に入りだった羽田美智子。 
                                                           

黒蜥蜴
 正統派は深作&美輪版ということになるんでしょう。まあ普通に見れば、これだってかなりのキワモノのはずですが。美輪明宏という存在が世間に認知され、許容されているという事実は、改めて考えると、凄まじくとんでもないことの様な気もしてきます。
  もっとも本稿で取り上げるは井上梅次版ですが。
 深作版に一言言及すれば、舞台で見たいよね。と申しますか、当時はその発想がなかったにせよ近年登場した舞台中継映画の方が映えたであろうという身も蓋もない感想が……
 京マチ子主演の本作は中途半端にミュージカル仕立てになっているのですね。
 ホテルから逃げる黒蜥蜴が華麗なスッテプを披露。照れる令嬢の顔にピンクの照明。手柄を立て褒められると踊って喜ぶ黒蜥蜴配下。「爬虫類の称号」って何なんだよお。
 明智を演じるは藤田進。「頑張れ日本一」。
 圧巻なのは用心棒の歌。「用心棒ったら食いしん坊~」みんなの歌に採用されてもおかしくないのりです。

恐怖奇形人間

 黒蜥蜴を見ると、こちらも見たくなる。同じ藤田進の明智だし。
 今となっては、田中泯の師匠筋といったほうが通りが良い舞踏家・土方巽が大活躍。
 日本有数のカルトムービーでしょう。
 原作は、パノラマ島と、孤島の鬼が中心。
 ラストの花火など、名シーン珍シーン枚挙に暇がない。
 兎に角見てくれとしか言い様がない。
 今は無き邦画系名画座の雄・大井武蔵野館の定番。二度ほど行きましたが、ひょっとすると証明さんの一回ぐらいすれ違ってるかもしれない。
 最近遂に国内盤DVDが出たので、廃盤にならないうちに。
流石に乱歩ばかりなので、実相寺の二作品は無し。

39

 堤真一の最高演技は「容疑者X」という風潮。一理あると思います。
 でもこちらの狂人演技も中々。
 まあ、冒頭の取調室で、柏手打ってる菅原大吉のほうが不気味ですが。
 ああ、菅原大吉! 
 「あまちゃん」では、「菅原」役の吹越満と、「大吉」役の杉本哲太に挟まれて所在なげにたたずんでいた菅原大吉!
 「相棒」に何度も小さい役(といっても犯人もやってるけど)でゲスト出演し、遂に劇場版4作目では、ポスターに名前が載る役まで出世した菅原大吉!
 森田芳光監督作品。同年制作の「黒い家」の影に隠れがちですが、こちらも悪くない。
でも、大竹しのぶには勝てないかぁ
 そして「模倣犯」……

眠らない街 新宿鮫

 大極宮の大ってなあに?
 大沢在昌のヒットシリーズといえば、新宿鮫が筆頭でしょう。
 本人が、節操の無い映画「ボディーガード」のイタダキだと認めているのですが、言うまでも無く基本設定が影響下にあるものの、個々の事件は別個。
 まあ、映画「ボディーガード」が大ヒットはしたものの、それほどかと言われれば。そも、映画「用心棒」見るプロのボディガード言うのが冗談の様なもの。(言うまでも無く黒澤の用心棒を見て、ボディーガードを目指したり、参考にしたりする人がいたら頭がおかしい)どうせならいっそ黒蜥蜴の用心棒の歌でも口ずさんでる方がよっぽどらしい。
 さて映画新宿鮫ですが、公開時から売りの一つは、バンキッド奥田瑛二と、主演・真田広之のキスシーンでした。魔界転生のジュリーとのソレとちがい、結構生々しいのがあれだが。奥田演じる木津は、天才的改造銃職人で、ショルダーフォン型銃とか、007の秘密兵器的な奇抜さえを持つ銃を制作するホモである。
 木津にとらわれた主人公鮫島は、さっそく貞操の危機に陥るのだが……
 まあ、美男子同士なので、これはまあいい(そういう問題か?)
 問題は、序盤のサウナのシーン。六平直政演じるホモでサディストな警官が、相手役の青年に暴行を振るい、鮫島に止められるシチュエーションだ。世の中にはいろんな人がいるもんですが、それはともかくとして、ストーリー上全く必要性の無いシーンで、別に鮫島の内面に迫ったりしてるわけでも無く……しかもこれ原作に或るシーンだったりする。何なんだよお。
 この映画が公開した時点では、ほぼ無名だった俳優で、これはという鮮烈な印象をのこしているのが二人。一人目は、この直後の「119」でも真田と共演。さらに共に海外で活躍する日本人俳優となる浅野忠信。
もう一人は、短い登場シーンながら異様な迫力をもつやくざ真壁役の高杉亘。
映画とは関係ないだろうが、この真壁は後にシリーズ続編の一つに再登場する。所謂ゲストキャラでの再登場は彼だけ。原作からして印象的なキャラだったと言えばそれまでだが、それをきっちりと具現化した演技で有り演出であった様に思われる。
 ヒロインのロックシンガーヒューストンじゃなかった晶役は、田中美奈子。主題歌は彼女最大のヒット曲である
なお、晶のイメージ元ネタは川村かおり。これはNHKドラマ版でかわむらが晶を演じるという形でフィードバックされた。川村の早世はまことに残念です。
 しかし、年の差カップルで、「ロケットおっぱい」とか言う発言。おっさんだなあ。
 
tvの連ドラから2つほど
沙粧妙子 - 最後の事件
 浅野温子主演のサスペンスもの。
 自らの手は汚さず、次々と殺人犯を操る黒幕というのは、今となってはそれなりに手垢が付いた設定だが、連続ドラマというわけでは、かなり先鋭的。またギリギリな、装飾された死体などもかなり攻めている。
 キャストは、浅野以下、柳葉敏郎など、当時でもそれなりに豪華だったが、後に売れた人が多いのも特徴で、反町隆史や広末涼子あたりはちょっとしたお宝映像っぽくもある。
     
     
ジャングル
 ミステリのジャンルの一つに複数の同時進行する事件を扱うもの・モジュラー型というのがあります。映画ならグランドホテル形式として評価されるのに対し、一部本格ファンからは、「無茶でも全てを一人の犯人の脳髄から生み出される犯罪こそが美しい」と駄目だしを食らいやすいもので、どちらかというと、社会派や警察ミステリ内のサブジャンルとして、僅かに命脈を繋いでいる感じ。
いわゆる本格の中にも無いわけではないのですが。
 70年代はやたらぎらぎらしていた鹿賀丈史が(Gメンの末期レギュラーだった事は意外と知られていない)、私鉄沿線97分署(凄いタイトルだが、アットホーム系刑事物。やたらキャスト入れ替えが多かった87分署とは当然無関係)あたりから、一寸肩の力を抜いたキャラが増えてきたのは周知のこと。そのご、料理の鉄人やウゴウゴルーガでのハイテンションを経て吉敷刑事役に就任するのだから世の中は判らない。
 その鹿賀丈史主演、あの「太陽にほえろ!」の後番組が本作ジャングルで或る。
あまり話題にならない物の、当時としてはかなりリアル寄りを目指したつくりで、そういう面では、「踊る」や、「相棒」と同等以上の評価を得ても良いはずだが、そういうところが、低視聴率を招く。
通常の刑事ドラマよりも大目で雑多なレギュラー陣。モジェラー型で、複数回続くエピソード。メイン事件意外を追うレギュラー。本庁が仕切る捜査本部。パトカーや発砲への縛り。サラリーマンであり家庭を持つ刑事たち。すぐ、袋小路にぶち当たる捜査。やはり早すぎたのか?
モジェラースタイルは早々と無くなり、普通の刑事ドラマに。それでも持たず一年弱で、仕切り直し。「NEWジャングル」と看板を変え、江口洋介プロモのような、群像劇否定になってしまったのはとてもとても残念。
 なお、レギュラーの中には、声優としての活動が多く知られる安原義人もおり、これの出演のため、原作者の推薦も有り内定していたシティーハンターの冴羽獠を断っている。神谷明の代名詞の一つになった事を考えれば複雑だが(神谷の個人事務所名が冴羽商事)、むしろイメージ的にはこちらの方があっているだけにファンとしては実現して欲しかった。さらに、山田康雄逝去時も、銭形役の納谷悟朗推薦でルパンに内定していたが結果はご存じのとおり。未だに人気キャラらんきんぐで、この二つが上位に来ていることを考えると、やはり不運だったということにはなるのだろう。なお本作では、やる気の無い中年刑事亀さん役。しかし明石亀男で亀さんは酷いあだ名だ。
 それ以外のレギュラーで注目は火野正平。甘ったれたC調キャラがおおかったが、本作では、教師上りの刑事役で、長髪だが、酸いも甘いもかみ分けた不良中年の味をだしていた。NEW一話で、坊主頭にイメチェンこれもかっこよかった。
 レギュラー数が多いので、細かくは語らないが、主人公の上司・江守徹、本庁の刑事・竜雷太、主人公の同期で、部下、まとめ役・勝野洋、おぼこい若手・田中実、元丸暴・セクシャルバイオレットNO1桑名正博等の布陣。
  ソフト化してほしいもんです。
       

 きりが無いのでとりあえずこの辺で。

三杯目はそっと出し

ええい、まだ足らない。山風おかわり!

いっそ全作品やるつもりかといわれそうですが、多分これが最後。居候のようにそっと、コンパクトに……
独立短編を除く方針だったため順位は低いですが、妖人伝以下の同ジャンル同テーマで纏められた連作短編集は、皆クオリティ高し。

21 幕末妖人伝

忍法帖から明治物の架け橋。時代の狭間に現れた奇妙人たちを描く。
ラスト一行につなげるための構成は見事!

22 信玄忍法帖

最強忍法の呼び声高い「時よどみ」登場作。上泉伊勢守最強説もここから。
けっこう勝頼に好意的。主要人物の真田昌幸はあまりらしくないか。

23 明治バベルの塔

漱石の文体模写がひかる「牢屋の坊っちゃん」。
人間の性質を四つのパーツで考える。「四分割秋水伝」。
万朝報の黒岩涙香・幸徳秋水が出す暗号とは。黄金虫。二銭銅貨もびっくりな暗号物表題作「明治バベルの塔」。
そして、牛鍋大チェーンが火葬場経営に繰り出す、怪人・木村荘平をえがく「いろは大王の火葬場」
全て外れ無し。

24 風来忍法帖

忍法八犬伝と対とも言える作品。もっとも、こちらはそれ以上にずぶの素人。風魔の三凶人相手に無謀なまでの勝負を挑む。
忍城攻めをいち早く題材にとったところも面白い。

25 柳生忍法帖

せがわまさき 「Y十M」原作としても知られる十兵衞三部作第一作。
会津藩の堀主水事件に端を発する。七人の怪武芸者軍「七本槍」と対するは、たとやかな七人の女人。そして直接助太刀無しの用心棒にして指南役・般若侠。
ところで、大名行列をおちょくった軍学者(?)は何者

26 室町御伽草子

笑える技名数あれど、その最右翼たる妖術が炸裂する。戦国末期大立て者たちの若き日の邂逅。追放された信玄の父信虎が元気そうで何より。山風世界のアンタッチャブル、塚原卜伝と上泉伊勢守も遂に……
文庫につけられた副題「青春!信長・謙信・信玄卍ともえ」が珍しく良い仕事をしている。
珍しく、明るいノリの山風作品。エンタメ性高し。

27 明治波濤歌

六つの中編を収録。山風読書会の大物ゲストどらさん一押し短編集。
巴里で怪事件に遭遇する川路利良。鴎外を追って来日したエリスが名推理と二つの日本人評を披露。南方熊楠と自由党の若者たちと束の間の出会いそして彼らの後半生……。樋口一葉が巻き込まれる密室。
ちなみに、熊本の蔵元があやかって焼酎「明治波濤歌」を発売。

28 外道忍法帖

忍びの卍の項で述べたとおり、ある意味その対局。
三陣営で都合47人の忍者が入り乱れるのに、かなりページ数が少ない。
正直、最初からあのペースなら、数段評価が上になる。快感すら感じる急展開の数々。ラストも度肝を抜かれること間違いなし。

29 修羅維新牢

首の座に着く10人の男たち。その瞬間へ向かう各々の人生の無常。
山風のパターンの一つに並列的に物事を並べ、いわば対照実験の如くに、人間性を あぶり出す。ものがあるが、その北極とも言える長編。

30 魔天忍法帖

山風版異世界物。まあ、その切り口なら、じつは「神曲崩壊」のほうが面白いのだが。
パッとしない江戸の忍者が、パラレル戦国へ……。家康から信長が逆に現れるのが可笑しい。
異世界で無双といかないのが山風流(「江戸にいる私」も、戦国自衛隊より前なんだよねえ)
実は、山風的死生観や、達人論(大量生産の物量の前に、一個人の武術など無力)が一番色濃く出た忍法帖。同テーマでいくと海鳴り忍法帖なども。
某掲示板の強さ議論などだと、相性やシチュエーションで覆る山風世界を理解しているとは言い難い論が横行。「銃は忍者より強い」となると、馬鹿の一つ覚えで、ソレしか言わない。じゃあ軍艦忍法帖や銀河忍法帖はどうなるんだい?
ビアスのアウルクリークまんまではあるが、そこに繰り広げられる幻視の面白さはやはりひと味違う短編「明智太閤」も併読すべし

別枠 同日同刻

ドキュメンタリー枠。
開戦はじめの十五日間。そして最後の一日の様々な事象を時間列でそろえた、一つの太平洋戦争史。

正直、まだまだいくらでも山風の話はできるのですが、(例えば、映像化やコミカライズについて等も)一応、ここまで。

一人でも多くの山風ファンが増えることを願います。


好きなミステリ映画10作を考えてみます。

 映画としての面白さを優先すれば、『ナバロンの要塞』『荒鷲の要塞』『ジャッカルの日』『007ロシアより愛をこめて』『ゲッタウェイ』(もちろんサム・ペキンパーのほうです)はハズせない。でも、原作がどれも広義のミステリとはいえ、ここでのベスト10入りは涙ながらにあきらめる。『第三の男』『M』も同様。
 あきらめたといえば『マダムと泥棒』『暗闇でドッキリ』『名探偵登場』の喜劇映画。これも泣く泣く除外して、まずはヒッチコック。

 英国時代の『バルカン超特急』『第三逃亡者』、渡米後の『海外特派員』『逃走迷路』『疑惑の影』、さらに『見知らぬ乗客』『私は告白する」、『サイコ』『裏窓』『ダイヤルMをまわせ』、『北北西に進路をとれ』、晩年英国に戻って撮った『フレンジー』、どれも矢鱈に面白い傑作揃い、ミステリ映画のベスト10すべてをヒッチコックで埋めたい誘惑にかられますが、1作に絞れば『めまい』 キム・ノヴァクが最高です!

 あまたあるハードボイルド映画はジョン・ヒューストン版の『マルタの鷹』にトドメをさします。  
ハワード・ホークスがレイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』を映画化した『三つ数えろ』も甲乙つけがたい傑作。

 クリスティ原作ではシドニー・ルメット版『オリエント急行殺人事件』
クリスティならルネ・クレール版『そして誰もいなくなった』やビリー・ワイルダー『情婦』も名品だし、ルメットといえば『十二人の怒れる男』も素晴らしいのですが、ここは文字通り、掛値なしのオールスターキャストをひとりで受けて立った(イミはおわかりですね)被害者役のリチャード・ウィドマークに敬意を表して、寝台車の席を譲ってもらいましょう。

 そして、『探偵 スルース』。内容を全部知ってから見ましたが、それでも面白い!もちろんオリジナル版のほうです。リメイクのほうは見ていません。

 無声映画の名作『吸血鬼ノスフェラトゥ』もどさくさまぎれに入れておきたいのですが、さすがにミステリ映画と強弁するのははばかられます。しかし『カリガリ博士』は無理矢理にでもねじこみたい(笑)

 海外編の最後に我が偏愛作品『非情の罠』を滑り込ませます。スタンリー・キューブリックの映画ではこれがいちばん好きなんです。

 日本映画ではなんといっても横溝正史。リアルタイムで横溝ブームを体験した世代としては1976年版『犬神家の一族』がいちばんです。石坂金田一のシリーズ5作品は、どれもテレビを録画したビデオテープやLD,DVDで暗記するぐらい何度も見返しました。

 
松本清張原作では『黒い画集 あるサラリーマンの証言』、『点と線』も捨てがたいのですが、私が選ぶのは『張込み』 

 そして、忘れてはいけないのが黒澤明のミステリ映画。『天国と地獄』も素晴らしいですが、ここでは『野良犬』 三船敏郎に見とれてください。

 映画化自体に拍手、見たら面白くて再度拍手したのが『ドグラ・マグラ』 この脚色は見事。

 曽根中生監督が坂口安吾の原作を映画化した『不連続殺人事件』も忘れてはいけません。9月に新潮文庫からリリースされるようなので、顕彰の意味も込めてリストアップ。ただし、くれぐれも読んでから見てくださいね。

以上、私が好きなミステリ映画10作品でした。

めまい
 1958年 原作ボアロー・ナルスジャック 
脚本:アレック・コペル サミュエル・テイラー
マルタの鷹 1941年 原作ダシール・ハメット 
脚本:ジョン・ヒューストン
オリエント急行殺人事件 1974年 原作アガサ・クリスティ 
脚本:ポール・デーン
探偵 スルース 1972年版 
原作・脚本:アンソニー・シェーファー
カリガリ博士 1920年 
オリジナル脚本:ハンス・ヤノヴィッツ カール・マイヤー フリッツ・ラング(非クレジット)
非情の罠 1955年 
オリジナル脚本:スタンリー・キューブリック ハワード・サックラー
犬神家の一族 1976年版 原作横溝正史 
脚本:長田紀生 日高真也 市川崑
張込み 1958年 原作松本清張 
脚本:橋本忍
野良犬 1949年 
オリジナル脚本:黒澤明 菊島隆三
ドグラ・マグラ 1988年 原作夢野久作 
脚本:松本俊夫、大和屋竺
不連続殺人事件 1977年 原作坂口安吾 
脚本:大和屋竺、田中陽造、曾根中生、荒井晴彦

あれ?11作ある!

前項で終わって良いはずですが、前回女王蜂読書会及び懇親会で、ワイルダーの「情婦」とかについてしゃべったりしたのでその辺補足を。一応改めていうと、鉄火のマキちゃんはアンパンマンに助けてもらったのに「このパン野郎!」と吐き捨てるように言う点あんまり感心できませんね。
 また、オススメ漫画として、篠房六郎「おやすみシェヘラザード」を挙げましたが、この漫画のウリについて、絵がエロっちいとか、百合展開がとか、小ネタギャグが……等々言葉を重ねるよりも、一話でのシチュエーションを述べるのが一番早いと思われます。
 想像してください。説明が致命的に下手な人物が、全く興味の無い相手に、必死で「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」のストーリー(それも映画版)を微に入り細にわたってする地獄絵図を。
 なお「裏切りのサーカス」はランキングに入れておりません。

情婦
   クリスティ原作映画での高評価御三家は、これと『ルメットが撮った』(ここ大事!)  オリエント急行。それに最初の「そして誰も~」といったところでしょうか。
    本作はまたこの邦題どうにかしろよ系作品としても有名で、個人的にはワイラーの「探偵物語」と双璧をなすかと思われます。(近年だと「そして誰も~」のいくつめかの映像化で「サファリ殺人事件というのがありますが、猛獣てんこ盛りのジャケットと相まってモンスター系ディザスタ映画に錯誤させる気満々です」)
    「検察側の証人」の映画化です。大女優マレーネ・ディートリッヒと、名優チャー-ルズ・ロートン出演。
     長らく、デートリッヒが○○もやったのかがよく議論の的になったとききますが、一応、やってないが正解だそうです。
     映画は、基本的には原作通りです。
    しかし、博覧強でならした故瀬戸川猛資が、ラストシーンに隠されたある事を言及する大事件が起こります。
     これは、和田誠・川本三郎との対談本「今日も映画日和」にのっていますので、是非読んでいただきたい。映画大好きおじさん三人組が楽しく映画の話をするだけの本ですが、めっぽう面白いので読んで損はしないはず。
     本作を視聴後、瀬戸川説を聴いたら、絶対もう一回観たくなります! これは太鼓判押しますよ。
     というわけで、理想的なのは、リバイバルでもDVDでも観る機会があったら、これも用意しておいて、観る→読む→観る です。
      正直、見巧者と言われる人たちでさえ殆ど気付かなかった、そして見直したら皆感心するエピソードですから。
     (まあ、情婦観たよって一報有ったら、ネタバレ防止でコッソリ教えますが)
   
   
探偵物語
    名前を出したので一応こいつもやっつけるか。
    刑事物映画の古典的名作。
    刑事物なのに探偵物語なのは、言うまでも無くあの単語をそのまま訳したからですね。古い翻訳で「警視庁の探偵~」とやってるのと同じ事ですが、やはり知らずに観ると面食らいますね。我が国だと、松田優作と武田鉄矢ですから。
     一応、「あるパターン」を見事にやってる先駆けではあるのです。個人的には嫌いなパターンですが、ハマるとやっぱり見事。
     同等の物でおそらく国内で一番有名なのは映画では無いもので、ネットでも結構ネタにされるのですが、それなんかよりは相当古いのに洗練されています。
   
テキサスの五人の仲間
     七曲署に配属された三人目の新人刑事テキサスを迎えたのはボスこと係長の藤堂以下、山さん・長さん・ゴリさん・殿下の五人だった。
    着任一年、前任の二人同様殉職かと思われたが、後輩ボンが登場。こうしてテキサス+5人体制は終了し「テキサスの六人の仲間」となる。
    主演ヘンリー・フォンダ。ジョアン・ウッドワード。
    なお、原題直訳すると「小さな貴婦人の大きな手」となる。
    コンゲームものの名作。
   
    「千早振る」ですか?
     ああ、競技カルタ漫画の?
     いえ落語の
     えっ?
     えっ?
   
 赤い影
 デュ・モーリアといったらヒッチコックといいたいところですが、こちらはニコラス・ローグ。その邦題に恥じぬ効果的な色彩は結構強烈。もっとも、町並みは赤くない。あたりまえか。以外に黒のイメージも……
 なんというか、本編と関係なくあれな点での下世話な話題性があるのはなんとも。国内だと、藤竜也や佐藤慶と同じですネ。
 ラストシーンは衝撃的ですが、まあ本格ミステリじゃあござんせんで、あしからず
 なお豹頭王のラストについての感想は、「あんなのわかんねえよ」とのこと。そりゃそうだ。

シーラ号の謎
  戦争のはらわた大好き人間な証明さんがニコニコしながらDVDもってきた一品。
 ジェームズ・コバーン好きに悪い人はいない。
 家人が留守にしているひとりの夜に、再度観たのですが、その同じ日に読んだ三津田信三の短編集の一篇で、訳あり洋館で一人留守番のバイトをして事件に巻き込まれる主人公が、「シーラ号」を観ているシーンがあり、とんでもない偶然に驚いた事があります。
他にも、生まれて初めてカプセルホテルに泊まったその日に、買った短編集にカプセルホテルが舞台のものがあったり(正直このときは鏡を見るのに一寸躊躇)、
 何故か凄い勘違いで、ホラー「禍家」が映像化されたのかと思って稀代の駄目アニメ「マヨイガ」を観てしまったりと、
 三津田作品には変な因縁があります。最後のは違いますが。
話を元に戻しますと、結構豪華なキャストで、まともなミステリになっております。
因みにS藤さんの感想は「落ち目の人が集まって色々やったけどやっぱり駄目って感じ」結構辛辣だな。

「本格ミステリと映像は実は食い合わせが悪い」
 もはや定説化しているこの箴言に抗うつもりなど毛頭無いというか、常日頃自分でも同じ主張をしております故、むしろサスペンスやホラーの冠が付けられる方がふさわしいものも入っておりますが。
また、その時の気分で、結構入れ替わったりするので、あくまでいまの段階の気分によるランキングであります。

1位 探偵スルース
これはどうやっても外せない。ひねた映画小僧の定番でもありますね
私の中ではマイケル・ケインは変なミステリに喜んで出ているヒトです。例えば「迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険」での実は優秀なワトソンが雇った三文役者が演じる名探偵ホームズとか
いつの間にか名優枠にはいってしまいましたが、未だにコメディ等にも参加しているようで嬉しい限り。まあ、「サイダーハウスルール」とかでないと賞は取れませんが、「ペテン師と詐欺師」みたいのが良いんですよ!
アンブリン制作ビデオスルーのコメディ「カーテンコール」も傑作です。
オリビエVSケインの芸達者二人芝居。舞台劇からの映画化。登場人物や場面展開の少なさはいかにもですが、その一方迷路庭園や、小道具(あの像は……)など映像作品としての視覚イメージも評価ポイントが高いといえるでしょう。後にブラナー版リメイクで、ケインVSジュード・ロウをやってますが、まあ……
前述の迷路庭園にはあこがれます。
                                                                             
2位 サスペリア2
イタリアホラー界の巨人アルジェント作品ですが、これはミステリ
(被害者のテレパスが殺人者に感応してるので、スーパーナチュラルな要素が無いわけでは無い)
ご存じの通り「サスペリア」とは無関係の作品ですが、勝手に続やら2やら付けてシリーズのように錯誤させるへっぽこ叙述トリックまがいの手法は昔はよく見られました(逆にシリーズなのにナンバリングが外れて判りづらいのもありますね「ピンクパンサー」とか)。未だに続けるセガールの沈黙シリーズは、最強のコックさんで3作目を作らなかったのが不思議ですが。
討論会に参加したテレパス・オルガは、会場で殺人者の念波を受信するがその夜何者かに惨殺される。殺害を目撃した作曲家・マークは事件に巻き込まれていく。
視覚的手がかりの極北。映像の力です。なおブルーレイでは画質UPで見え過ぎちゃって困るの
それにしても中盤の殺人シーンに登場する『あの人形』はどっからもってきたのやら?
             
3位 カンバセーション盗聴
コッポラ作品のなかではやや地味目であまり話題に出ないかもしれませんが第一級のサスペンス。ゴッドファーザー1と2の間の作品。
ラストシーンの孤独感はたまらない。あそこだけで、もうたまんない
 静かなプロフェッショナルを代表作フレンチコネクションとは全く違うアプローチで演じる主演ハックマンが見事なのは言うまでもありません。売れる前のハリソン・フォードもチョイ役ですが良い味だしてます。
ジョン・カザールは確実に早折が惜しまれる俳優でしょう。

4位 愛と死の間で

ケネス・ブラナーの多才さは言うまでも無いのですが、アメコミアクションまで手がけるとは……。
そのブラナーの監督第二作目。後にスルースやオリエント急行のリメイクを撮ると思えば意外では無いのかもしれませんが、当時はいきなりシェイクスピアから離れてのサスペンスで、しかもヒッチ風の高いクオリティにびっくりしたものです。アンクレットの使い方などたいした物です。
過去・現代で二態の演技を見せるアンディ・ガルシア。煙草の吸い方も二種ありますが、実にペーソスとユーモアに満ち満ちております。
若き天才シェイクスピア俳優ブラナーの一時の凋落は映画ハムレットの失敗にあると思いますが、その直前のコメディ「世にも憂鬱なハムレット」がそこそこの良作であっただけに何とも複雑な思いがしたものです。もうシェイクスピア映画化はやらないのかしら。
3月の叩き台から選出映画自体は変えていないのですが、これを挙げている方が思いの外多くて、嬉しい驚きです。

5位 カプリコン1
所謂都市伝説・陰謀論が大一級品サスペンスに化けた快作。
本当に人類は月に行ったんでしょうかねえ?
初の火星行き有人ロケット打ち上げ直前、極秘裏に降ろされるパイロット3名……
二機のヘリがとにかく怖い。髪の有るテリー・サヴァラスが不思議におかしい。はまったときのエリオット・グールドはかっこいい
マイケルベイの某SFサスペンスで、追跡シーンがまんまだったのはまあオマージュということで。

6位 ミュート・ウィットネス
異国ロシアを仕事で訪れた聾唖者の特殊効果スタッフであるヒロインが、深夜の撮影所でスナッフビデオ撮影を目撃……。
言語と障碍二重の意味で言葉が通じないという展開、迷路めいた舞台裏感ある撮影所内の追跡劇、終盤なんでやねんといいたくなる大物俳優登場など、マイナーだけど好きな映画。
 暗くなるまで待っての耳バージョンというには一寸格不足か。最近のサイコ系ホラーの秀作「ドント・ブリーズ」とは似て非なる発想からじゃないですかねえこれは。
何故か単館系映画館最右翼ユーロスペースで上映してた。そういや「ユメノ銀河」もここだった。
一度しか見てないので、もう一度見てみたいが、きっと評価がガクッと落ちるで有ろう事がわかってるのがなあ……

7位 トレスパス
 ウォルター・ヒル低迷期の作品と言われるが、むしろ早すぎた作品では無いか?
 出動現場で、宝の地図を手に入れた二人の消防士は、一攫千金目指して廃ビルに向かう。しかしそこで、黒人ギャング団の取引に遭遇してしまい……
地味さで定評のある演技派ビル・バクストンと、ダイハード2の悪役で瞬間的に知名度の上がったウイリアム・サドラーが消防士。ギャング側は、アイスTとアイス・キューブの二大ラッパーが演じる。他にやはりダイハード2にも出ていたアート・エバンス等。
ワンアイディアからの閉鎖型サスペンス。
上のミユート・ウイットネス同様、リアルで観た人に会ったことが無い。
               
8位 アパートメント
ホワイトライズのオリジナル作品として知られる。
当時はまだ無名といっていいモニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセル夫婦の馴れ初めとなった作品でもある。この二人やたら共演が多かったが2013年に離婚。なんだかなあ。
当時は人気だったロマーヌ・ボーランジェ主演という扱いだが、逆転。ベルッチの美貌はたいしたもんだ。
4位に入れたブラナー作品なんかもそうだが、とにかくヒッチスタイルへの目配せは多い。
海外出張直前の主人公は、レストランの電話室で、かつての恋人の声を聞く。しかし追った先にいたのは、彼女と同じ名を名乗る別人だった……
               
 9位 乙女の祈り
後にロードオブザリングシリーズを撮ることになるピータージャクソンの初期作品(こんなんばっかだな)
実際に起こった少女二人による親殺しを題材にした作品。
ケイト・ウィンスレトが演じた少女ジュリエットのモデル、アン・ベリーは、後にミステリ作家になり、さらに自分の過去の罪を告白。なお彼女の著作は創元推理文庫から日本語訳がでたものもある。私は未読ですが
こうかくと、センセーショナルなキワモノととられるかもしれないが、まあ、本来ジャクソンて、そういう方じゃないですか? 一応、思春期のエキセントリックな少女の心理をちゃんと描いてはいると思いますし、その空想シーンの映像化はかなり面白い視覚効果があったと言えるでしょう
同事件を扱った映画としては、先行作の「小さな悪の華」の方が上映禁止問題などもあり有名かもしれない。
オーソンウェルズはかっこいいですか?
                 
10位  殺人ゲームへの招待
2月の読書会「三人の名探偵のための事件」の際は当日病欠ドタキャンご迷惑おかけしました。
その際に、ネタ用に用意していたのが、本作と「名探偵登場」の二作品DVD。まあ、わかりやすいチョイスですな。
パロディ性の高いコメディということにはなりますが、ミステリとしてのクオリティはさほど低いわけでもなく、且つ本来は一種のおちょくりともいえる部分が、本格ミステリにおけるある問題の一つの具現化となっているのが実に面白い。
劇場公開時のエピソードは、その部分の実質ネタバレに等しいので、ここでは割愛。



この手のランキングで困るのがヒッチコックの扱いです。
(邦画オールタイムベストにおける黒澤明問題と双璧ではあるまいか)
一作品に抑える辺りが普通でしょうし、あえて入れないという向きも少なからずいるでしょう。逆にランキング全部ヒッチコックみたいな天邪鬼もおるかもしれませんが。
 まさか、中二病をこじらせすぎて、ガスヴァンサントのリメイク版サイコ(ヒッチのオリジナルをカットレベルで完コピするというネタ映画)や、メル・ブルックスのアレをランクインさせるとか……(とわざわざ言及するのが駄目なとこだぞ)
 個人的に一作品だけといわれれば、
「断崖」 でしょうか。
おそらく、「北北西」「めまい」「サイコ」「裏窓」辺りの方が一般に上でしょうし、ヒッチ作品ランキングであれば私もこれらを上におくでしょう。
 この評価は、初見時に、一番怖かったものというところにかけています。
 はじめてこの作品を観た小学生の私にはあのラストシーンはバットエンドにしか思えなかったのです。そしてその思いは、何度再見しても薄れないのですね。まあ、ただの思い込みや誤読と切り捨てられるかもしれませんが。
 もっともヒッチの私的思い出としては、「サイコ」を全くの白紙状態で幼少期に視聴出来たというほうがネタ度は高いかもしれません。これは衝撃的な体験でした。ある種シナリオ術的にはおかしな事をやってる訳ですが、この物語の変質が恐ろしい。
 これの大オマージュはデ・パルマの「殺しのドレス」ですが(ほら、ここにもマイケル・ケイン! こういうのですこういうの)、ロドリゲスのフロム・ダスク・ティル・ドーンも明確にこれを狙っていますよね、残念ながらこのオマージュは宣伝段階で不発に終わってしまってるんですが。
 こういう視聴体験は亡き母の差配に依るところが大きく、けっこう子供の時分に古典にふれられたのは大きかったと思います。もっともこの一種の英才教育のおかげでどこか道を踏み外した感もありますが……と、人のせいにするのは良くないぞ。
 
 と、ここまで復元できた3月のメモを元に書き直していたのですが、論創社から絶妙のタイミングでフレドリック・ノット著「ダイヤルMを廻せ!」オリジナル戯曲が刊行!(いやまあ、実は結構前ですが)
 ヒッチの映画以前にこのオリジナルのクオリティの高さを確認しました(解説によるとおそらく初の訳出)
 戯曲の常で、本編のボリュームは少なめですが、序文代わりの三谷幸喜による演劇人・演出家サイド視点によるイントロと、町田暁雄氏による30頁強に及ぶ解説がついています。特に町田氏による解説は、ヒッチ以外の映像などにも言及。本作のみならず、ちょっとしたヒッチ論、ノット論としても読み応えがあり、これだけでも読む価値あり。
 改めてヒッチコック諸作品を確認したくなります。
 因みに、最近見直しましたが、「めまい」のもう一つのエンディングは酷すぎますな

山風の魅力を語るには十冊では少なすぎるので、後10冊+1おかわりです。
  全てが傑作、とは言いませんが、山風には露骨な駄作が少ないのです。ベスト30ぐらいなら無理せず心からオススメ出来るぐらいのラインナップはありまあす。(小保方風に)
無論、個人の趣味はありますし、そもそもジャンルごと否定されることも少なくないのですが。それとバットエンド率の高さが駄目な人は駄目かもしれません悪しからず。
 またやたらと代名詞のように言われるエログロナンセンスですが、そんなに当てはまりますかねえ?私ははなはだ疑問です。
(そう評されるべき作品が無いとは言っていない。ただ、一見ナンセンスに見せて十二分に風刺や世の哀れが織り込まれたものも多いんですぜ)
 個人的意見かもしれませんが、一番脂がのりきっているのは、明治ものの頃だと考えます。忍法帖がつまらないのでは無く、他がもっと面白いのです。いやまあでも、忍法帖下位には、正直出来が良くないものもありまあす
 これもよく言われる「長いほど面白い」も、実際はそうでも無いし(例えば忍法剣士伝)魔界転生を断トツの最高傑作とも言い難いと考えますが、。

11 笑い陰陽師
 笑える忍法帖。
 甲賀者の果心堂と元伊賀者の女房・お狛の元に持ち込まれる相談の数々……
 山風の逸話に、乱歩に向かって「先生は眼高手低ですな」と言いはなったという物がありますが、自作評価をみると、山風はどうもその反対、さしずめ眼低手高(そんな言葉はありませんが)とでもいいましょうか。いきなり自己評価Pとか言い出しますからね。
 その山風自身による忍法帖評価トップのひとつが、この連作短編集です。
 面白いんだけれど、ノリがエロコメのごときで、人によっては怒り出しそうですし、明るい忍法帖というのも異質。
 結果として笑えるのでは無く、普通にコメディですからこれ。
 それでもラストに悲劇の影が見えてしまうのがやっぱり山風。
 忍法帖の理屈のなかでは有名な部類に入る「出産時の赤子の如くに頭蓋骨の縫合を外せは省スペース化が図れる」(忍者月影抄に収録)もビックリの、人体にあるもう一つの縫い目についてとか、頭がおかしすぎます。しかものの字のの字の代わりに畳の目を使ってはにかむとか、お狛さん強烈すぎです。
 そういえば、一頃ネット上では、この二人が甲賀主人公カップルの生き延びた姿ではないかという都市伝説めいた説がやたら支持された時期がありました。やはりみんなバットエンドは嫌いなんでしょうね。私は、そんなわけあるかいと一蹴しますが。
 まあ桜花忍法帖騒動で、皆ふっとんじゃいましたけどね。

12 叛旗兵
 山風の特質の一つに、先駆性があること、誰もやらないジャンルに踏み込むことは、太閤記や誰にでも~の項であげたとおりですが、パクリとか、パクラれとかの低次元の話で無く、「これも山風がやってる」が相当多いことはまさに圧巻であります。
 また、歴史上の奇人変人への眼差しも鋭く、他よりいち早く題材に選ぶことが多いのです。
 斉藤一の後身、巡査・藤田五郎を警視庁草子で昭和四十年代にいち早く登場させ、。
 遠藤周作の沈黙よりはるか前にフェレイラが活躍する切支丹もの山屋敷秘図を上梓(ついでに言えば、外道忍法帖も)
 そして、前田慶次も、一夢庵風流記、花の慶次より先に手がけています。
 もっとも、こういうところを箇条書きにして下手にネットで語ると、一部分だけを切り取られたあげく、対立叩きのネタにされてしまう恐れがあるので危険なのですが……
 直江兼続配下の4人の豪傑達が、豊家を見限り徳川になびいた諸大名家に悪戯を仕掛ける。
 舞台の影で暗躍する白覆面の正体は?
 そして兼続の娘・伽羅と、その花婿である大谷刑部の遺児の運命は?
 山風あるあるの、強大な権力者に敗者側が痛快なしっぺ返しを試み意地を見せるシチュエーションですが、関ヶ原直後を舞台に繰り出される登場人物が強烈です。
 エロではない方の下ネタ好きな山風の餌食になる加藤清正。
 麻雀にハマっカモられる武蔵&小次郎コンビなぞ、阿佐田哲也の雀友山風の面目躍如(編集者時代の阿佐田哲也こと色川武大は山風の担当でした。因みに数十年来の麻雀狂にかかわらず山風は点数計算が出来なかったという)
 あげく、吉良の先祖が浅野の先祖に斬りかかる逆転忠臣蔵など、まさに奇想天外の大エンターテインメントです。
 また主役である前田利益以下の四天王の面々も個性的で、負けてはおりません。女嫌いの剣豪や、バクチ狂の切支丹とか一筋縄ではいきません。(もっとも、山風の常でストレートなヒーロー像からはかけ離れているのですが。この点において柳生十兵衞がいかに特異な位置を占めるか)さらに、彼らの後ろにいる直江兼続の存在感。そして、本多正信の次男・政重の影……
 どちらかと言えば、武闘派に描かれる事の多い本多政重ですが、彼の遍歴は確かに面白すぎます。政重をうまく使った伝奇物として、羽太雄平の「本多の狐」もついでにオススメしておきましょう。
  ただ本作は、本来山風が禁じ手にしている歴史的事実は動かさないは一応クリアしているものの、本来既に死んでいるはずの人物を、実は生きていたを複数人やってる、それもメインキャラで、ところが傷といえるかもしれません。(信玄忍法帖の山本道鬼斎勘助もそうでした)
直江兼続と四天王は、せがわまさきの山風短1巻、くノ一紅騎兵でビジュアル化されています。
 大河・天地人に合わせた復刊の際に、妖説直江兼続の副題が付けられましたが、正直蛇足でありましょう。
 しかし、天地人の原作者・火坂雅志が編集者時代は菊地秀行担当だったのも面白い偶然といえるでしょう。夭折が惜しまれる作家の一人ではありました。

13 十三角関係
 山風のミステリ時代におけるシリーズキャラクター探偵・ 荊木歓喜登場であります。 これは、ホルモンが食べたくなる。
 先日亡くなられた土山しげるは忍法剣士伝コミカライズより、こっちの方がはまったのでは? いや、嘘です。たぶん金瓶梅がベストマッチ。
 ホワイダニットに特化。山風がじつはけっこうな量を手がけている或るジャンルの一篇としてみることも出来るでしょう。
 なお、荊木歓喜が登場する短編が併録されている形の復刊であることがおおいのですが、歓喜もの最高傑作とされる短編・帰去来殺人事件も一緒に抑えていただきたい。
 光文社のミステリ全集2巻は、なぜか2刷3刷のみ、帰去来がカットされているので、探す際は初版を狙いましょう。

14  地の果ての獄
 ゴールデンカムイのアニメはどうですか?私は見ていませんが。
 色々ありましたが、連載復活したるろうに剣心北海道編とか、やたらと明治の蝦夷地があつい今日この頃ですが、明治期の蝦夷地・樺戸集治監(監獄ですな)を舞台にしたのが本作。
 このあたりも手を付けている山風。ようやく時代が追いついたのか。
 るろ剣作者・和月という人は、自作の元ネタに関しては、馬鹿正直にコミックスに書いてしまう人(それ以上に、デザインが元ネタまんま)なのですが、山風については語ってないので、これも偶然或いは間に別のものが入った孫引き状態なのだと想います。
 主人公・有馬四郎助は、一見個性が弱いようにも思えますが、この実在の人物の将来は、一寸真似の出来ない傑物で、ある意味山風らしくないかもしれません。一般知名度の低さはじつにらしいともいえますが。
 他に「明治十手架」の主人公も登場。山風と耶蘇教は本当に親密です。
 そして、主人公の地味さを補うわけではないですが、飲んだくれ医師・独休庵(ひとりきゅうあん)が凄い。ああ、OK牧場のかれがモデル……と思いきや、そんな簡単なはなしではない! (風貌はほぼ荊木歓喜なんですが)
 山風の自己評価が低めなのは、時代とのすりあわせが少ない閉鎖された舞台だからかもしれません。

15  妖異金瓶梅
    山風が忍法帖を手がける切っ掛けのエピソードと共に語られることが多い作品ですが、只の通過点などでは有りません。
 これも、十三角関係とは全く違った意味でのホワイダニットが肝。
 さらにミステリにおける極めて重要な要素を、高い次元で無効化してしまっているのも心憎い(しかもその感想はあくまでメタ視点で初めて言えるわけで……)
 山風には女性キャラが大量に出る場合、同数の男性陣より没個性的になるきらいがありますが、これは男性陣が異形の徒をあてられるのにたいして、基本美女ということにもよるのでしょう(故にくノ一忍法帖の丸橋がとても輝く)、エドの舞踏会や棺の中の失楽と並んで女性が生き生きと描かれている作品と言えるでしょう。まあ、そんなほのぼのとした話では無いのですが。考えれば、山風屈指のカタストロフィが待っている訳ですし。
 山風エロの極北でもあります。これを読んだわたしは中1でした。うひゃあ。
 無理矢理ケチを付けると、水滸伝ファンから見た際、武松を助けにくる面子は二竜山メンバーで固めた方が(九紋龍は魯智深との絡み上有りだが)とか、母夜叉の描写がむしろ 顧大嫂っぽいとか……ぐらいでしょうか。
 しかし応伯爵の幸せが切なすぎる。
 余談ですが、ネット連載スタートより約二十年。方臘戦にはいり次々と好漢達が散っていくキノトロープの水滸伝絵巻、先日ついに扈三娘が退場。
おめでたとか、「私は幸せ」と言い出したりとか、散々フラグをたてたうえでしたし、絶対的に原作通りの展開なのでしょうがないとはいえ、実に無残でありました。
ちゃんと顔面に攻撃うけるんだもん……

16 忍びの卍
     「長いほど面白い」とは限らないといいましたが、何故か「長いほど忍法の数が少なくなる」という不思議な現象が忍法帖シリーズでは起こるのです。
     15VS15VS15+2で、47人もの忍者が登場する外道忍法帖が薄い本(同人誌の意にあらず)なのに対して、一冊組では最大級の本作など、登場するのは僅か3人。
     これで支えられるのかとお思いでしょうが、あに図らんや、一つの技のバリエーションで変化を付けるのは、並みの組み合わせよりはるかに複雑怪奇だったりします。
     大上段から正義を問う展開ですが、少数精鋭ゆえ、どのキャラも一筋縄ではいかないので、微妙に哲学的薫りが漂っているかも。
     三代将軍になれなかった方、弟の駿河台納言が重要人物として登場しているため、バジリスクファンが続編として扱いたがったり、まるっきり関係ないシグルイファンが忠長は危ない人と決めつけてしゃしゃり出てきたりと、地味に駄目なコミカライズファン(言っちゃった!言っちゃった!)にうんざりさせられる事があるのが残念。
     十兵衞三部作や、銀河忍法帖と忍法封印二部作などを見ても判るように、原則山 風作品は一つ一つが単独作として完結しています。そうした点では、せがわまさきの別作品に登場しても同じ人物として描くのは、あまり意味が無いというか、かえってマイナス要因とも思えます。
      こういう共通した世界観が人気があるって言うのは凄く判るんですがね。
    それと、千街 晶之氏が優れた論客であるのはいうまでもないのですが、マストリードミステリ(文春のベスト100外から選ぶ企画本)で、わざわざこれを選ぶのは一寸……。いや、ミステリマインドを感じるのはいいんですけど、忍法帖以外を推してほしかった。どうせ忍法帖ならまだ読む人はいるんだから。
   
   
17 忍法八犬伝
 これを読む前に、「八犬伝」の虚の部分を読んで予習するのは有りだと想います。
 実のところ、普通の人はくノ一八人のネーミング元ネタ半分ぐらいはわからんでしょうし。
 プロ対アマというシチュエーション、聖女の如き女性を守るため命を棒に振る大男達と、風来忍法帖と、対になったような作品。
 (山風には、同じような構成を二作画くところがあります。二作というところがミソで、どれを読んでも同じというマンネリにはならないのです)     
  八つの珠の奪い合い。千秋楽は三月三日。
  八対八の対決ですが、キャラによって扱いの差が大きいのが玉に瑕か。犬村大角がとんでもない萌えキャラです。
    偽の珠にかかれた文字が中々凝っています。
    「乱の珠をくれたが運の尽きよ」は山風全編においても上位に来る名台詞でしょう。
コミカライズ・「エイトドックス」は、きちんと完結したことも含めて、良作といっていいでしょう。
 因みに、魔界転生を映画化した深作による構想10年のアクション映画「南総里見八犬伝」は、映画本編はそれなりでしたが、鎌田敏夫によるノベライズはかなりアレだった 。無駄に濡れ場を作るため、生け贄の姫は純血という王道では無く、「性の喜びを知った頃が最適 」という頭の悪い設定は斬新でした。
 それと、毒手(自分も毒がまわる)設定の毒娘。よって古くなったら処分とか、山風作品よりよっぽどエログロ思想に満ちてるんですが、どうなってるんでしょう金曜日の妻たちは。
晩年の山風の幻の企画に、三本目の八犬伝がありましたが新保氏とのインタビューで「8人×2回=16の闘いのアイデアが出ない」と述べられていました。
この数から考えると、相討ちパターンでは無く、敵と交互に倒されていくパターンに思えますが、おそらくシノプシス等もなさそうなので真意は永遠に不明です。
 山風はまごう事なき天才ではありますが、きちんと資料にあたり、きちんと制作ノートを付けるかなり合理的執筆法でした。
 どこかからまた原稿なりがでてくるようなことがあればとも思いますが、望み薄でしょうなあ。

18 夜よりほかに聴くものもなし
     山風屈指の社会派ミステリ。連作短編集。
    「それでも……おれは君に、手錠をかけねばならん」
     真面目に連続ドラマで見たい作品。まあ、実際やったら改悪されまくりになりそうですが。
     定番の決め台詞がびしりとハマるというのはじつは意外と少ないのですが、これの毎回ラストの台詞は神がかりです。
     比肩しうるのは、中村梅之助の「ヨヨヨイ ヨヨヨイ ヨヨヨイヨイ めでてえなあ」ぐらいのものでしょう。もっともこっちは、常に沈鬱な敗北感に満ちたエピソードばかりで、全くめでたくなのですが。

19 幻燈辻馬車 
     筒井康隆が一押しの作品。そして最晩年の岡本喜八が映画化を目指した作品。
     仲代達矢主演で、仇役が緒形拳。これは本当に観たかった。
     もっとも、映画一本にしようとするとかなり脚本が難航しそうでもあるのですが。
    「幼子の声に呼応して黄泉より現れる幽霊」というアイディアが既に尋常ではないのだが、出てきても、そこまでの能力があるわけでもないというのがまたおかしい。
    自分を殺した相手と対峙して恐れ震える幽霊! このセンス!
   
     山風と喜八はほぼ同時代人、自宅も比較的近かったが、生前は一度も相まみえる機会が無かったとされます。これはこれで、明治もののすれ違いとは正反対で妙に感慨深くも感じられます。

20  魔界転生
     十兵衞三部作の不思議なところは、どんどん奇想の度合いが増すのに対し、実は十兵衞先生のキャラが読者の望むものからどんどん外れていく事。
     柳生忍法帖のアイディアも芦名銅伯と天海の関係や、七本槍のキャラクター造形、基本は助太刀とか、十二分に非凡ではありますが、女を守るスーパーヒーローが特異な技の怪人達と戦うという点でみれば、山風で無くてもある程度書ける人材はいそうにも思えます。
     しかしこれが魔界になると、もう山風独壇場。まず普通の人には思いつかない
     忍法魔界転生おそるべし
    しかし、しかしですよ。
    これ普通の人なら、単に死亡時期に眼を瞑るパターンでしょう。
    たとえば、由井正雪の乱を十兵衞が鎮める、あるいはそれ以降も十兵衞が存命ということにする時代劇や小説は複数あります。
    また所謂御前試合シチュエーションなどでも、細けえ事は良いんだよとばかりに生年や歿年を無視している創作物は少なくありません。
     更に言えば、荒木か坊太郎のどちらかは無理が出るでしょうが、単に天草の乱より前に時代を設定すれば、全盛期は無理でも生前対決自体は出来ます。
    このあたりを突き詰めるとそれは忍法剣士伝!ということになりそうですが。
    魔界において、十兵衞は一見そこまで変質してはいないように見えますが、但馬がらみなどで、明らかに柳生忍法帖の時よりも、屈託の有る人物になっています。
     まあ、あのシチュエーションで動転するなというのが無茶な話ですし、さして違和感が残るほどでは無いのですが。
   
     問題は三作目であり、死すの時の十兵衞は嫌いだという人も少なくないでしょう
     事実「こんなの十兵衞じゃ無い」的感想も目にしたことはあります。
     転生する必要も意思も無かった魔界の十兵衞との落差は、この二篇の間に、もう一つの魔界転生ともいえる武蔵野水滸伝が書かれていることにも関係しているとおもわれますが。
 
 あえて、あまり論じられる事の無い切り口からから、寧ろ否定的な指摘をしてみたりしましたが、我が国の伝奇史上に燦然と輝く名作であることは紛れもない事実です。
 先に挙げた点も、「そこでそうするのが山風なのだ。」という褒め言葉の裏返しでありますし。
 死すについてや三部作総括はいずれやれるときがあればそのときにでも、きっちりと。
 (柳生忍法帖と魔界転生は、ずば抜けてレビューが多いので、搦め手で良いよね)

別格2  戦中派不戦日記
   まず日記文学というジャンルがあり、先の大戦時においても記録として幾人もの文筆家の日記が発表されていますが、本作の特異性は、本来発表される事を予定されぬその段階では職業作家ではない一般人の学生によるものだということ。そして、原則的に当時のまま、何も足さない何も引かない状態で刊行されたと言うことです。
 理屈上、「アンネの日記」よりも生の声が聞こえる戦争の記録といえます(アンネのそれは複数の意味で、加工修正が指摘される)
 どちらかと言えば、戦争に懐疑的で、脳天気に日本の勝利など考えてはいないインテリなれど、同時に無力な一青年の記録ですが、そのかれをして、そうせねばならなかった、8月15日の記述はまさに白眉であります。
 幾万の文字を凌駕する沈黙の力がそこにあり、全ての第二次世界大戦日記物で頂点ともいわれる瞬間です。
 既に両親は亡く、守るべき家族を持たず、ただ医学生というだけで、戦地に召集されなかった枠外の人という感傷が「戦中派不戦」の言葉をうみだします。
 奇想の人というのが山風を指す言葉としてよく使われますが、昭和二十年の不戦こそが、山風生涯の本質をつくったといえるでしょう。
 第一級史料ですが、21年分以降は、生前に出さないといった物を死後出版。この辺りは痛し痒しです。
 子育て日記や、虫けら日記は本人が出してるので問題なしよ。


7月29日に開催した特別編最終回、横溝正史『女王蜂』読書会で、参加者自己紹介の代わりに挙げてもらった各自の2018年上半期のベスト本をご紹介。

5

トーマス・マン『魔の山』上下 新潮文庫
シルヴァン・ヌーヴェル『巨神計画』上下 創元推理文庫
リチャード・フラナガン『奥のほそ道』白水社
フィリップ・ロス『素晴らしいアメリカ野球』新潮文庫
ケイト・モートン『忘れられた花園』上下 創元推理文庫
岡田芳郎 『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』講談社
井上真偽『探偵が早すぎる』上下 講談社タイガ
小島信夫『うるわしき日々』講談社文芸文庫
椹木野衣『震美術論』 美術出版社
連載再開された『テラフォーマーズ』作:貴家悠、画:橘賢一 集英社
アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』各社文庫
ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』水声社
ヘニング・マンケル『ピラミッド』創元推理文庫
浅田次郎『天子蒙塵』現在3巻まで 講談社
宮内悠介『超動く家にて』東京創元社 
篠房六郎『おやすみシェヘラザード
ハリー・カーマイケル『アリバイ』 論創社
三津田信三『碆霊の如き祀るもの』原書房(2名)

映画を観る習慣がないため、「好きなベスト3ミステリ映画」と聞かれても、「ベスト3が脳内決定するほど観ていない!!」と相当頭を悩ませました。

という訳で視点を変え、今回はベスト3ではなく、これから観る方々におすすめしたいミステリ映画をご紹介します。

 

 

1  容疑者Xの献身(原作:東野圭吾)

 

【おすすめポイント】

・ほぼ原作と相違ないシナリオ、キャラ設定、豪華な俳優陣

・イケオジ役が多い堤真一の、冴えないおじさん役渾身の演技

・湯川先生を安易にキャラ探偵化していない

 

この映画の何が素晴らしいかというと、まずは石神先生役の堤さんの名演。

天才的な数学者でありながら、周りの環境に恵まれず、まるで湯川先生と対極的な孤独な男を演じます。

そのみすぼらしさを表現するために、堤さんは自分の髪の毛を相当抜いて役に挑んだとか。

 

そしてこの映画一押しのポイントは、『ガリレオ』シリーズにあった、湯川学のキャラ探偵化を極力抑えていることです。

謎の数式をそこかしこに書き殴る推理癖は封印。イケメン・完璧なシーンもほぼ排除し、石神先生との密かな暗い友情を強調しています。

監督は、当初「容疑者Xの献身」を映画化するにあたり、原作がほぼ石神目線で進行するため、「映画前にガリレオをドラマ化し、湯川のキャラを視聴者に印象付けた上でこの映画を封切って、石神との対極性を強調しよう」という計画だったそうです。

まさに完璧な計画。

 

 

2  犬神家の一族(1976年版)(原作:横溝正史)

 

いわずもがな、ミステリ映画の名作。

ここを読まれる方はほぼご存じだと思うので割愛。

 

【おすすめポイント】

・石坂金田一が可愛い

・生卵

 

 

3  病院坂の首くくりの家(原作:横溝正史)

 

原作と差異はありつつも、その犯行動機の生々しさ・人間臭さが印象に残った作品。素晴らしいと思いつつ、あまりにもあれやこれやが鬱過ぎて二回目観る気が起きない作品。

 

【おすすめポイント】

・石坂金田一の原板を割る瞬間の表情がアンニュイ

・加藤等々力の「そんなものあったか?」の漢気に惚れる

・犯人の死に際が異常なほどに美しい。泣く。


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