2009年11月23日

11/23 御真仏薙アルパインクライミング

PB230128 "初公開、冬の御真仏薙" 

まず長い能書きから:

 当初富士か裏同心予定だった、三連休後半の2日。富士は先週末からの降雨降雪気温推移などから想像するに、アイスバーンと新雪が交互に重なったモナカ雪ぽい気がする上に、日曜は終始雲の中で、もう何度も登った冬富士、いかにトレーニング目的とはいえ、至近の古賀志ならともかく、わざわざ数時間もかけて遠出して、展望もない中黙々と単調な登りを続けるのもねえ。さらに日夜にまた降雪で新雪がアイスバーンに乗りそうだし、月曜は天気回復するものの、帰路3連休最終日の大渋滞を覚悟しなくてはならないし。

 じゃあ裏同心はどうかというと、ここまで11月初めにかなり冷え込んだ以外は、寒さは持続せず、どうみても去年の11月22日のようなグッドコンディションは期待薄。21日に0さん、Fさんパーティーが氷初めで裏同心入りしたので早速土曜夕に電話で様子を聞くが、上部はスクリュー入れられるほどの氷だったようだが、F1はまだ登れないという状況でやはり去年ほどではない気配。そもそも裏同心は氷自体は、氷初めのご挨拶程度の難易度と規模であって、あそこへシーズン入り前に行く主目的はむしろF1までの歩きにくい沢と、ルンゼぬけたあとのこれまた歩きにくい大同心稜までの登りをアイゼンであるいてへろへろになって、「すんません、ことしも冬入り前の歩き込みが不十分デシタ、でへへ」と10年一日のごとく進歩のない反省をするためなのであって、なのになまじ去年あんなに良い氷の条件で登ってしまうと、それ以下の状態とわかっていながらわざわざ天気の悪い日曜や、帰りの渋滞が気になる月曜にいかなくても良いんじゃないかなあと、どうもモチがそっち方面へ向かない。
 どうせ脚力強化が不十分というか衰退をとめるのがやっと、いやそれもそろそろ厳しくなって来ている昨今、富士山だ裏同心だと騒ぐ前に、もっと優先順位が高いトレーニングを地道にやるべきじゃないだろうか?と内省的な気持ちなのか、やるべき事をやらずに済ませようとする怠惰の心なのかはわからねど、そう思いつつ、近場で良い冬山/氷/脚力トレーニングできるところはないかいなと頭を巡らせる。

 で、先週の白根からみた黒い日光連山のイメージが頭に残っていたのだろうか、さして悩まず「御真仏薙」を思いつく。そもそも初めてここを遡行した2001年10月にすでに上部の滝にはベルグラがついており、アイスクライミングの可能性を考えてそのあと2月末にクロスカントリースキーで入り口まで下見に行ったのだが、さすがに雪が深すぎで最初の滝にたどり着くだけで一苦労だし、遡行は雪崩の危険があるので無理と判断していたのだった。
 しかし、今週末はどうだろう?日曜夜は平地は雨でも奥日光の山は雪になるだろう。しかし雪崩を警戒するほどの積雪量とはならない筈だし、標高的には裏同心と同レベルなので、水流があれば裏同心程度には凍っているだろう。まだ根雪になっていないこの秋と冬の狭間の、貴重なワンポイントチャンスを掴んで、面白い冬期登攀ができるんじゃなかろうか?
 たとえ氷がなくても終始アイゼンで遡行すれば、標高差1000mほどで且つ半分は岩場なのでアイゼントレ/脚力トレとしてはうってつけだろうし、と急速にこのアイディアが輝き始め、09にも土曜夕に連絡してこの方針で決定。日曜17時の気象情報で、月曜は早朝から晴れになる事を確認して、無事予定通り決行となる。

計画書:
メンバー:09、00
行動予定:月曜日午前4時日光清滝集合ー5時半志津乗越1台デポー6時湯殿沢橋ー御真仏薙ー13時山頂ー15時志津乗越

登攀装備:8mmx30mロープ1本、平爪アイゼン、ピッケルとサブバイル(溶岩に打ち込んでも惜しくないもの)、ハーネス、ヘルメット、アルパインヌンチャク各自2本、小〜中サイズカム各自2つ、ウエーブハーケン2、アイススクリューなし、長スリング各自3本、ルベルソ、環付きビナ2


以下行動記録と写真:

 林道に入るとまもなく路面には雪がみられるが、スタッドレスタイヤで志津乗越まで問題なく進入し00号デポ。湯殿沢橋にもどって支度をし、予定より早い5時25分、アイゼンつけずに出発。空には星が出ていて天気はOK。
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 ヘッデンで堰堤の連続帯を越え、ゴルジュ入り口近くで明るくなるのを待ちがてらアイゼン装着。ちょうどいいタイミングで明るくなって来てヘッデンはしまって、ゴルジュへと向かう。するとゴルジュ手前で小滝に氷発見。うれしくなりとりあえず、アイゼンアックスでとりついてみる。さすがに薄すぎて縦走用ピッケルとアイゼンでは3、4歩が限度。
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 そしていよいよ「困難な滝」へと向かう。このゴルジュ帯最初の滝、初めて来たときに、シャワークライミングを嫌って、左側の岩壁を登り、これが結構苦労だったので、2回目、3回目はアタックせず左岸から巻いて抜けていたのだが、今日は水流はなくベルグラ程度の氷がついていて、「困難」ではなく登れそうなので、早速ロープをだして、00リード。
 5mほどの滝の一段登ったところに程よいクラックがあり、カムセットで一安心。しょぼい氷にストレートシャフトのピッケルとサブバイルを打ち込んで身体を上げ、ステミングで姿勢を安定させて、落ち口の岩の隙間に2つ目のカムをセットし、ピッケルを岩に引っ掛けて抜け、09後続。
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 すぐ上に次の滝。ここも00リード。こっちも5mほど。ただしカムもピトンもセットできるところがないので、落ち口をいろいろ探って凍った土や岩角、倒木にピッケル、バイルを引っ掛けて、ランニング取らずに抜ける。アイスクライミングではなく、ミックスクライミング。低い滝といえ、落ちれば、アイゼンなのでねん挫は免れないぜ、と緊張はするが、いろいろあの手この手と工夫して登るのがとても面白い。
 
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 とりあえず最初にして最大の核心だとおもっていた「昔困難だった」滝二連を無事クリアして、ほっと一息だが、もう7時過ぎで2時間近く経っている。あれま、これじゃ頂上まで8時間かかっちゃうかも。ま、下山は問題ないし暗くなる前には降りられるでしょ、と慌てず、狙っても滅多に訪れないだろうチャンス、登れる滝と言うか氷はなるべく丁寧に登って行こうじゃないのということになる。
 その先もみなスケールは小さく、ロープをだすほどではないが、次々と氷瀑が出現し、お遊びでやったことしかないミックスクライミングの実践というか、マルチピッチアルパインアイスボルダリングとでも言う感じで、あの手この手、道具も手も足も膝も頭もフルに使って、嬉しい悲鳴、一部ホントの悲鳴をあげつつ越えて行く。

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 夜が明けても一切日の光には縁のないこの薙だが、背後には薄雪をかぶった太郎山がいつも見守っていてくれるようで、何がなし心強い。
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 夏も右岸を巻いたチョックストーン滝。上手く成長すればそこそこのバーチカルアイスになりそうだが、今の状態ではとても無理。ここはやはり右岸巻き。ただ右岸を上るのも岩壁のスラブなのでデリケートな立ちこみを要求され気楽には行かない。無事に登り上がって、上のハング下のバンドを這って抜ける。
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 一つ越えるとまた次の氷があって、飽きないというか殆ど飽きそうなんだけど、結構一つ一つ違った創意工夫で登って行くのが面白く、やっぱり飽きないんだなこれが。氷だけでなく、無雪期はII級から精々III-級程度の岩も、雪が載ってアイゼンでとなるとそれなりに集中力を要求されて、これまた飽きない。
 「赤い岩の滝」がどうなっているか楽しみだったが、スラブ滝でもあり雪に埋もれた平凡な斜面になっており氷もないので、左岸の凍土に急なルンゼにアックス、アイゼンを打ち込んで通過。
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 飽きもせず岩と氷を乗り越えて行くうちに、9時過ぎ、いつしか「見張り岩」まで登って来ていた。ちょうど見張り岩が日陰の世界と光の世界の境になっていて、ここから先はところどころ眩しい日差しを浴びて遡行を続ける。傾斜がゆるみさしたる滝もない筈なので、ピッケル/サブバイルからピッケル/ストックにチェンジ。
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 3m弱の小滝だが、窮屈で足さばき不能に陥り、身をよじるように苦労してシングルアックスで抜けた氷瀑。
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 この夏、チッピング?して登った「粘土の滝」は雪に覆われ、アイゼンだと何の事なく通過。
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しかし吹き溜まった雪はこの辺りがもっとも深く、傾斜は緩いのに膝下ラッセル且つときどき岩や石を踏んでよろめいたりと楽をさせてくれない。






 噴火口に入り、標高2100m近くなっているのに意外や、か細い水流は夏とさほどかわらずだった。休火山といえなにがしかの地熱が水温をあたためているのだろうか?雪がすくないまま冷え込みが続けば結構氷が発達するんじゃないかと、そんなチャンスをまた夢見たいところ。
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 最後の難関の脆い涸滝。凍っていて簡単に抜けられんじゃない?なんて言っていたが、実際には、ランニングは無論とれず、脆い岩と岩の隙間のわずかな凍土を探してバイルを打ち込み、スラブの岩にきわどく立ちこんでの、本日一番のきわどい登攀となり、00必死でぬけたあと、ロープをだして途中まで登って来ていた09を確保。一汗いやふた汗掻きました。
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 いよいよ、頂上稜線が見えてくる。青空と充実の登攀に意気揚々だが、アイゼンラッセルと再び増してくる傾斜に足は結構おつかれで、牛歩に終始。このあたりとても富士山的で、息が続く運動強度をたもって休まずペースを変えずゆっくりと登る。これで富士に行かずとも富士トレ疑似体験ができたってところ。そういや男体山は別名野州富士だから、これも立派な富士山トレでしょう。
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 折角の積雪期初登攀なのでフィニッシュは美しくと、頂上直登を狙って、これまでの本流沿いではなく、最後の分岐で右にそれて、宝剣の立つ岩峰を目指す。
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 夏は脆いガレだろう浅い谷を登り、最後の岩場部分で、また慎重なアイゼンワークが要求される。登攀というほどの傾斜ではないが、、まあ富士山の9合目から上の傾斜。心の底から滑落したくないという気持ちにさせられるラストセクションだが、もうすぐゴールになってしまうのが惜しいような気持ち。そして展望はますます開けてきて、不安定な姿勢のままいろいろカメラに収めたくなる。
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 このセクション、やはりそこそこ緊張したという09。
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 ここで白根山本日初お目見え。先週から一転、冬の装い。
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 最後身長ほどの岩の段差。直登も可能とはおもったが、落ちれば身長の30倍くらい転げ落ちそうなので、損得勘定をすばやくおこなってすぐ脇の草付きを登り再び岩場に復帰。
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 すぐ横に神社の建物がみえる。
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 名残を惜しみ、ことさらゆっくり足を運びつつ、12時30分に山頂到着。7時間、用意した装備をまんべんなく使い、それだけでなく、不十分ながら09、00とも日頃まあまあまじめ且つ地道にトレーニングして来たもろもろがこれまたまんべんなく役に立った氷と岩と雪のミックス登攀、ラッセル登高、ルートファインディング、ペース配分、気象分析。冬山の要素がすべて盛り込まれていて、今の自分たちに取ってハードすぎず、易しすぎず、身の丈にあった達成感のある、そしていかにもアセントクラブらしいアルパインクライミングだったなあと、幸せな気分で7時間の登りを思い返す。
 ピンポイントのワンチャンス。こんな山行ならまた来てみたいが、たとえそういうチャンスが巡って来たとしても、もう今日のこの初めてのときの感動は二度とないだろうことも、容易に想像できる。

 山頂に抜けて、まず最初に確認したかったのが、この中禅寺湖の眺め。勝道上人が苦難の末初めて立ったこの山頂から中禅寺湖を見下ろしたときの感激を、すこしだけ追体験できたような気分。
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 先週立った山頂にあらためて冬のご挨拶。
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 風はあるが、日差しが暖かく気持ちがよい。
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 特別な登頂だったので、滅多にやらないセルフタイマー撮影などもしたり。30分ほどものんびりとして13時、登頂報告をメールした後、下山にかかる。
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 途中、前回と前々回に登って来たルートを見下ろす。今回のルートは、この一本左側のルンゼ。
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 女峰も雪化粧でくっきりと青空に映える。
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 アイゼントレなので下りもアイゼンは外さず。しかし雪のおかげで歩きやすく、ノーレストで淡々と下り、14時半、志津乗越到着。志津小屋脇の乏しい湧水はまだ凍っていなかった。
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 のろっちい登攀だったが、終わってみれば、計画書に書いたコースタイムとほぼぴったりだったこともなんだか嬉しい。入山地点に戻るとスタート時の雪は既に大分溶けていた。
PB230178 というわけで、「もっと体力つけてスピーディーに登れないとなあ」という永遠不滅の未達成課題はあるものの、二人とも「これは今年のベスト山行にまちがいないしでしょう」というポジティブな気持ちがそれを遥かに凌駕。
 いや今年と限定しなくても、トータルバランスという点でアセント史上でもトップ10に入る山行じゃないかと、能天気に考えつつ、"Music is worth all the pain (Graham Nash)"を芸なくモジって、"Mountain is worth all the pain"なんて言葉を衒いもなく思い浮かべたりもして、帰途についたのであった。

nccnet1 at 18:33│Comments(1)TrackBack(0)活動記録 | 日光/足尾/安蘇

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この記事へのコメント

1. Posted by 09   2009年11月24日 22:33
夏は巻いてた滝も登れることができ、こんなに滝があったのかというほど小さな滝が出てきて、緊張しながらも一つ一つこなしていくことが出来た。01の形見のサブバイルは、薄い氷にもきっちりと刺さって安定して、見守ってくれているようで安心感が出た。途中はそれほどバテるということも無かったが、稜線に出る手前は、斜面もきつく、高度感もあって、アイゼンが滑ればちょっと手痛いことになるかもと思うと、一番緊張して喉もカラカラになってしまった。ようやくピークに出て、ガスも無く360度の展望は久しぶりでいい気分。
下りはアイゼンと雪でぐんぐん下っていけたが、疲れの蓄積も倍速でたまり、アイゼンの引っ掛けも何度か。制御不能になりつつある筋肉と、暑さで一番汗をかいて下山。
トレーニング気分で臨んだが、雪と氷の裏男体、天気も良くて気持ちよく充実した山行になった。

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