キャリーオーバー

雑誌「ダ・ヴィンチ」で小説家デビューした乃木坂46のメンバー、高山一実先生の処女小説「キャリーオーバー」を上から目線で寸評するコーナー。

※ 乃木坂46・高山一実さんの初小説を公開

あらすじ(僕的要約)
幼いころから貧乏で馬鹿にされてきた主人公は、カネに執着するあまり歪んだ性格をゲット、友達なし、彼女なしの絵に描いたような陰キャに成長。
でもって初任給で百億円が当たる宝くじ(しゃべる)を買うが、すったもんだのすえ母が病死。宝くじは当たるも時すでに遅しで絶望しているさなか、母からの手紙を見つけ本当の幸せとは何かを悟る。
気づけば隣には「いつもそばにいるよ」とのたまう宝くじ。
だから宝くじは換金しない、カネより大切なものもある。おそらく他の購入者もそうだろう。だからキャリーオーバー八兆円になったよ(おわり)

1. 文章力
粗削りながらも書きなれた文体。一人称単視点というもっとも書きやすい人称のチョイスで無理をせず、てらわないところに好感が持てる。女性作者特有のソフトな表現と心理描写には伸びしろを感じるが、やはり文章は稚拙と言わざるをえない。

2. 発想力
キャリーオーバーが発生する理由が「宝くじと友達になったから」というのはなかなか面白い着眼点。このレベルの短編を量産できるならタレント作家としては十分だが、できれば「ただのいい話」で終わらないためのもう1ギミックが欲しかったところ。
僕なら最後に「これでまたキャリーオーバーだ、ちょろいぜ」みたいなことを言う謎の組織を出して陰謀論っぽく締める(3点)

3. キャラクター性
主な登場人物が三人(実質二人)と非常に少なく、全体的にコンパクトにまとまっているが、それゆえにキャラの弱さが目立つ。できれば主人公と宝くじの友情が深まる大きめのエピソードがもう一つぐらいは欲しかった。
例えば昔のいじめっ子に復讐(物理)しようとするところを宝くじに止められる的な。
なにより主人公はもっと陰キャに、宝くじはもっと魅力的に書かなければ「カネよりも大切な本当の幸せ」の説得力が薄くなってしまう。
僕なら宝くじを金髪碧眼の美少女にして(以下略)

【総評】
二十歳そこそこのアイドルが仕事の合間に書いた短編ということを鑑みれば、これはもうまぎれもなく非凡なものを感じる。言葉の運びにつっかかりがないこを考えても、相当な読書家であることがうかがえるし、おそらく今までにも何作か書いたことがあるんだろうなという印象。
芸能人作家特有の、純文学・私小説の体裁を借りたエッセイではなく、きちんとエンターテイメントに昇華させようとしている意気込みもよし。文章力そのものは確かにアレだけど、連載をいくつかこなせば格段に向上することは請け合いのポテンシャル。

そんな高山先生の新作「トラぺジウム」はダ・ヴィンチにて好評連載中(ステマ)
2017年07月10日 (02:42)│ etc