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私の耳と目と心と記憶の4点を結んで、私の中に美しい四角形を作ったバンド。
それが「My Hair is Bad」だった。



思い出話を、少し。



去年の2月に、‘‘最近のこと”という曲のMVを観た。


最近のこと / My Hair is Bad



6分強のこの映像と音を自分の中に取り込んだ後に思ったのは、「なぜこのボーカルは、こんな表情で歌うのだろうか」ということだった。
辛いのか、苦しいのか、申し訳ないのか、弱いのか、目が泳いでいて、なかなか正面を向かない。


歌詞を見たら、どうやらこの曲は一人の女性に対する想いを綴った曲らしい。
その歌詞がリアルなものだったので、この人には彼女が居るのだろうか?と考えた。
そして、もしそうならば、一体どんな恋愛をしていたらこんな表情ができるのか。
なぜ、真っ直ぐに前を見ないのか。
何に怯えているのだろうか。

なのに彼が映像の中でマイクの前に立つ時は、しっかりと前を見据えている。

直感で、この違和感に興味が湧いた。
「もっと聴きたい」「もっと観たい」と思った瞬間に、私の人差し指は携帯電話の画面を滑り、彼らの直近のライブ日程を探していた。


初めて彼らのライブを観た時のことは、よく覚えている。
それはあまりにも生々しかった。
決して悪い意味ではない。
ただ自分たちの持ち曲を聴いてもらう為の25分ではなく、My Hair is Badというバンドが、今をどう生きているのかを知るための25分間だった。

朝起きて、ご飯を食べて、寒いのに外出るの面倒だなぁなんて思ったり、好きな人にメールをしたり、今日いい日かも、なんて思って過ごして、仕事でお客さんに文句言われて、あー、やっぱりなんか今日は悪い日だわ、なんて思ったり。
バンドも同じなんだなあ、と思えた。
良い日も悪い日も、なんとなく過ごす日もあるんだ、と。

ステージ上で気丈に振る舞う訳でもなく、聴いてくれるみんなにありがとう!と言う訳でもなく、俺らを見ろ!と誇示する訳でもない。
なんというか、彼らの「日記」というような、日々を綴ったものだった。

曲のメロディと歌詞は変わることはないのに聴こえ方が毎回違うのは、その日の気分や体調によって日記を綴る時の筆圧が異なることと同じなのだと思う。
同じ一日は二度と無い。
同じ音は二度と鳴らない。
そんな刹那を感じさせる音を、彼らは奏でる。


明日をどう過ごすのだろう?そして、明日はどんなライブをするのだろう?これから出す曲はどんな歌詞で、どんな音にするのだろう?
そういう聴き手の興味を上手に誘い出す音を鳴らす。


一度ライブを観たら、きっともう一度観たくなる。そして、夜の帰り道でイヤホン越しに彼らの音を聴きながら、大切な人を想って泣いたりするんだ。
少なくとも、私はそうだった。



彼らによって繋がれた4点を結ぶ四角形の中から、私はきっとずっと逃れられないのだろうと思うし、もっと広げて色々な人に知ってほしいと思う。

私にとって、彼らの音楽を知れたタイミングは最高に良かった。

これからまたどんどんと大きくなって、たくさんの人のタイミングを掴んでいくのだろうと思う。


2月に出る新曲が待ち遠しくてたまらない。
きっとまた、なんとも言えないような色で、想いを綴ってくれるのだろう。



My Hair is Bad 1st single『だまれ』全曲Spot映像




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