心 象 写 真
宇陀川ねじ
第一話 本のある風景 カップルの電波は有害電波?
好きな人がどの本を手にするのか見ていた。
このコのアンテナに引っかかるのは
どんな本なのか知りたい。
僕の存在に気付いて、二メートル向こうから
僕だけが気付くサインを送ってくれる。
両目をぎゅっとつぶって見せて、それから、
「なんで、君がいるの?」という顔をする。
本屋さんでの待ち合わせを言ってきたのは、
このコのほうなのに。
一冊の本を手に取って、レジカウンターに向かう。
大きなひまわりと小さなひまわりが
プリントしてあるブックカバーも買って店を出た。
本屋さんの入り口のガラス戸の前で
今、買ったばかりの本とブックカバーを渡された。
この時君が真剣だったことを、
僕にたいして本気だったことを、
僕が知るのは、もう少し先の話。
「はい、これ。」
「なに・・・」
「プレゼント」
「え?」
「読んだら感想聞かせてよ」
「うん」
「次は君の番だよ」
今度は僕がこのコに本を選んであげるのかと思うと、
胸がドキドキした。