建築技術

2007年12月04日

Jコスト研究

昨日は研究機関のSさんと元ものつくり大学教授の田中先生の事務所を訪問して、Jコストに関する研究についてのアドバイスをもらいました。Jコストは田中先生が提唱する、コストに時間軸を組み合わせて生産効率を評価する考え方です。Sさんは、実際の建築物の生産でのJコストを試算して検証するという実証実験を予定しています。私はそのお手伝いです。

田中先生は元々はトヨタ自動車の生産管理部門にいた方です。したがって純粋な学究の先生方とは違って豪快な方で、ざっくばらんに意見交換をすることができました。

今回特に議論になったことは、BS/PLとJコストの違いについてです。結論としては、BS/PLは静止した状況のお金の状態で、その瞬間のお金の動く速さを考慮していない。それに対してJコスト理論で評価すると、お金のフローの速さを把握することができて、経営改善につなげることができるということです。

田中先生からは、ジャストインタイムとは、品質の良いものを素早く生産できる体制を整えてぎりぎり遅く作ることである、という非常に蘊蓄のある定義を聞くことができました。

来年早々にJコストの実施検証の打ち合わせに鹿児島に出張することになりました。



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2007年11月21日

超高層マンションの柱鉄筋不足

市川市の超高層マンションの柱鉄筋が不足しているとの報道がありました。住宅性能評価の中間検査で鉄筋の不足が判明したようです。大手の建設会社の施工物件での構造耐力にかかわる不具合ということで話題になっています。

この超高層マンションの柱鉄筋はなぜ不足していたのでしょうか。

意図的にコストダウンのために柱鉄筋を減らすという可能性もありますが、鉄筋を減らすことで削減できるコストに比べて、鉄筋不足が判明した際のリスクを考えると、意図的に柱鉄筋を減らしたということはないのではないかと考えます。

この超高層マンションはRC造で柱は現地で鉄筋と型枠を組み立てる在来工法で建てられているようです。しかし、在来工法とは言っても低層の建物の作り方とは違います。

柱の鉄筋を地上の鉄筋組み立てスペースで組み立てた後にクレーンで施工中の階の柱鉄筋に取り付けます。鉄筋の継ぎ手も通常のガス圧接継ぎ手等とは異なる機械式継手を使って取り付けられるのが通常です。

柱の鉄筋を地上で組み立る際には、施工中の上階の柱の鉄筋の同じ位置になるように組み立てる必要があります。そのためにテンプレートと呼ばれる鉄筋の位置決めの板に鉄筋を通して組み立てます。柱の鉄筋はテンプレートを使用して組み立てるので、通常は本数を間違えることはほとんどありません。

今回の柱の鉄筋の本数の間違いはテンプレートの作成時点で発生したと考えられます。テンプレートはCADで作図して、ベニヤかスチール板で作成します。作図作業はCADの普及で、手描きをしていたころに比べると格段にスピードが速くなりました。テンプレートの作図作業は、他の図面をコピーして相違点を修正するという作業になります。

今回の間違いは、テンプレート作成時のCAD作業の際の修正ミスか、誤って鉄筋の図形を削除したことが原因ではないかと思います。

超高層マンションの建築では、クレーンスケジュールを綿密に組んで作業効率を向上させます。このスケジュールは10階程度までの作業で修正が行われて、それ以上の階ではスムーズに作業が進むのが通常です。つまり、下部の階の建設工事では建設会社の職員は非常に注意を払って緊張した工事管理をするのですが、上階になるとその反動で気が緩む傾向があります。

今回の柱鉄筋不足は、単純なCAD操作のミスと、繰り返し作業に慣れた気の緩みからくる管理不足があいまって発生したのだと思っています。

今回、工事を担当する建設会社は柱鉄筋不足を補強する工事を行うことで対応すると発表しています。鉄筋の不足している本数は少ないので、構造設計を詳細に見直せばわずかな補強で建築基準法に定められた性能は確保できるのかもしれません。しかし、小手先の対応策では、この会社や広くは建設業に対する信用の失墜を回復することは難しいように思えます。

建物の不具合部分を解体して建て直すほうが良いのではないでしょうか。当初の費用は大きくかかっても、その会社の培ったブランドは損なわれないと思います。



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2007年09月12日

建物の維持管理 3

ジャーナリストの千葉さんからコメントをいただきました。千葉さんは以前からの知人で、新聞記者を経て独立した方です。以前に耐震偽装問題についてのシンポジウムに出席していただいたことがあります。

貼り付け始め
建物の維持管理は難しい問題ですね。金融商品取引法の施行に合わせて、不動産鑑定が問題になっていますが、そのなかでエンジニアリングレポートの標準化が進められようとしています。
 投資不動産の収益を上げるのであれば、プロパティマネジメント(PM)会社に徹底的に収益を追求させれば良いわけで、「不動産鑑定など必要ない」といった議論にもなりがちです。ただ、PM会社が建物管理会社に適正な管理をさせているかどうかを誰がチェックしているのでしょうか?
 そのチェック機能をエンジニアリングレポートがカバーするのが良いのかもしれませんが、エンジニアリングレポートはこれまで建築士の資格を持っていない人間でも書くことが可能なもので、その品質にばらつきが大きいことが問題視されています。
 不動産評価研究会では、そうした問題について議論されているのでしょうか?今度、機会があったら教えてください。
貼り付け終り

エンジニアリングレポートは不動産が取引される際の保証書として調査作成されています。以前いくつかのエンジニアリングレポートとその対象の建物の調査をしたことがあります。エンジニアリングレポートでは問題なしとされていたいくつかの建物に重大な問題があり、事故の起こる危険が大きい状態でした。

このエンジニアリングレポートの内容はBELCAのガイドラインに添って作成されたものです。リスク診断としてPML(地震時予想最大損失率)もありますし立地の土壌汚染調査もしています。しかし、建物自体が有するリスクマネジメントの調査という視点が抜けているのです。建物自体の欠陥で事故が発生すれば、その建物を使用する企業の存続も危うくなることがあります。エンジニアリングレポートの作成にあたり建物調査をした担当者は皆一級建築士でしたが、基本的な能力や問題意識に欠けていたのかもしれません。

以前に日本の不動産流動化の仕組みを立ち上げたという銀行員の方に、エンジニアリングレポートについて聞いたことがあります。その方は、エンジニアリングレポートでは、算出するPMLの信頼性が高い調査会社のブランドが重要で、不動産取引の際にエンジニアリングレポートの内容は分らないし読みもしない、とのことでした。実質の建物の性能やリスク管理を軽視した姿勢が気になりました。

不動産流動化の流れの中で金儲けをするということが強調されると、不動産の維持管理やリスク対策の費用が削られて、先日発生した渋谷温浴施設爆発事故のような建物事故の発生する原因となります。最近頻発する建物事故の遠因は、不動産流動化の背景に感じられる拝金主義かもしれません。

不動産評価研究会では、不動産の維持管理状況やエンジニアリングレポートを含めて、第三者監査をすることが重要だと考えています。



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2007年09月04日

6月20日以降の建築確認申請

6月20日に建築基準法の改正がありました。改正により建築確認申請の構造設計審査や確認申請内容の厳格化が求められています。申請者も戸惑っていますが、受け取る側の役所も戸惑っているようです。役所同士が横並びになり、お互いのの確認申請受理状況をうかがっているようです。

6月20日以降に確認申請が受領されて着工する物件が激減しています。本日建設会社の方から聞いた話では、新築工事の着工が出そろってくるのは12月以降ではないかとのことでした。つまり7月から12月の半年間は、確認申請業務の混乱により新築工事の着工が激減しているということです。

これは、非常に由々しきことで、日本経済の活性化の阻害要因となります。計画されている商業施設や生産施設の開業が大きく遅れてしまいます。また、建設業に従事する設計事務所や建設会社の経営に大きな影響を与えるでしょう。出来るだけ早く建築確認業務がスムーズに行われるようにする必要があります。今回の建築基準法の改正が後世に改悪の見本のように言われなければ良いのですが・・・



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2007年08月29日

木造住宅の耐久性能 3

昔の日本家屋は柱・梁の接合は木組みで行われてきました。しかし、最近では木造住宅は基礎・柱・梁の構造用の木材のジョイントに金物を利用することが一般的です。いわゆる金物工法といわれているものです。しかし、構造材の材木を材質の異なる金属で緊結することには無理が生じます。日本は湿度が高いために材木が乾燥収縮するのです。また、含水率とヤング係数が保証されてグレーディングされた材木はまだまだ少ないので、経年により含水率の高い構造用木材には乾燥収縮が発生します。

したがって、新築の金物工法の木造住宅は、構造用木材の乾燥収縮で金物のボルトが緩む可能性が高いのです。住宅の耐久性能を確保するためには、新築後からの定期的な点検をおこない、構造材の木材をジョイントしている金物の増し締めをすることが必要になります。構造材の維持管理のための点検や作業を行うための点検口の有無も重要な要件となります。

いかに高い耐震等級が確保された木造住宅でも、構造材のジョイント金物が緩んでいれば、想定された耐震性能は発揮できません。住宅を造り放しにするのではなく、十分な維持管理をすることが今後の住宅建築の重要な仕事になると思います。



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2007年08月25日

建設業の工期短縮 4

今日はものつくり大学名誉教授の田中正知先生とお会いしました。行政研究機関のSさんに設定していただいた打ち合わせです。田中先生はトヨタ出身で、生産システム評価の視点でJコスト理論を提唱されている方です。

田中先生のお話は、川砂利の採取の必要性から、トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一さんの昔話まで多岐にわたりました。特に印象的だったお話は、建設工事の工期短縮についての提言でした。

工事を施工する際に3チームを編成する。3チームのうち2チームが稼働して1チームは休む施工サイクルを作る。各チームの労働時間を12時間として昼夜2交代で24時間施工をする、というものでした。各チームは1日12時間労働になりますが、2日稼働で1日休みになるので、かえって休みが多く取れます。工場生産の考え方を建築生産に導入した、生産効率を最大に高める提言です。

いままでも24時間施工は行われなかったわけではありません。たとえば六本木ヒルズ建設のように非常に短工期を要求される現場では24時間施工が実施されてきました。しかし、非常にまれなケースで一般には一日8時間労働が基本です。田中教授の提言は、積極的に24時間施工に取組んで、工期短縮を図り、資金の回転スピードを上げようというものです。

田中先生には今後も建設工事のJコスト理論の勉強会に協力していただくようにお願いして快諾をいただきました。



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2007年08月24日

建設工事の工期短縮 3

今日は宇都宮で仕事でした。東京から新幹線に乗ったのですが、大混雑で自由席で座れなくて、宇都宮に着くまで車両の入り口で立っていました。最も乗車時間は1時間弱なので立っていても大したことはありません。夏休みの移動が続いていて、通常よりも交通機関が混雑しているようです。

今日の仕事の目的は、建設工事の工期短縮のコンサルティングです。しかし、会社による技術力のレベル差以上に個人の技術力のばらつきは大きいものがあります。基本的なプロジェクトマネジメントが出来ていないと工事のシステム化による工期短縮などは出来るものではありません。初めて工期短縮のためのシステマティックな工程構築に取り組みに挑む現場の担当者は悪戦苦闘中です。

文科系の方はシステム化というと標準マニュアルを作って、誰にでもできるようにすることが良い標準化であると考える傾向があるようです。しかし、マニュアル化は言い換えると、考えることの放棄につながり、改善の検討の妨げとなります。私はできるだけマニュアルを作らず、工期短縮のための考え方、取り組み方を理解することが重要だと思っています。最低限のマニュアルは必要ですが、むしろそのマニュアルを壊して、より良いものへと改善するために考え続ける姿勢と、それを継続することが重要です。

 



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2007年08月18日

建物の構工法

トラックバックの通知があったので、そのサイトを見てみました。そこは住宅に関する様々な質問に専門家等が答えるというサイトでした。掲示されていた質問内容に住宅を建てる際に、木造在来工法と金物工法はどっちがお勧めでしょうかというものがありました。さらに、地震に強い家を希望するとのことでした。

これは実に荒っぽい質問で、私に質問されたとしても、さまざまな設定条件が分らなければ答えることはできません。

建物を建てる地盤により地震時の入力が大きく変わるので、まず地盤柱状図を確認することを勧めます。また、地震強度を期待するならば、構造設計時の目標耐力を大きな値に設定すればそれでよいと思います。むしろ重要なのは、期待される構造耐力を保証する品質管理の能力がある設計事務所なり工務店を選定することです。

漠然と問いかけている「お勧め」とは、どのような品質に何を求めているかを明確にすべきです。要求する対象はコストなのか工期なのか品質なのか。また、地震に強い家とは何なのか。単に初期の構造耐力が大きくても、劣化対策が取られていなければ10年後には大きく耐力が低下するでしょう。また、堅固な地盤に建てられた住宅は構造耐力が多少低くても倒壊の危険性は少なくなります。目標とする品質をどのように設定するかが重要です。したがって要求品質の機能を展開して検討する必要があるのです。

ということで、私なら安易な質問には答えないでしょう。

とは言っても、世の中には親切な人がいるもので、金物工法のメリットについての、ちょっとピントはずれだけれども、親切な回答が掲載されていました。しかし、ネット上の対応ではこの程度の情報しか収集できないのかもしれません。

インターネットの世界では様々な情報が収集できます。しかし、本当に重要で有効な情報を集めることは難しいものです。

 



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2007年08月16日

木造住宅の耐久性能 2

木造住宅は木材が建物の構造を支えています。内外装や設備配管・機器は劣化につれて更新する必要があります。しかし、建物の構造材の劣化した部分的に取り換えるということはかなり難しいものです。構造材が劣化しないように維持管理をすることが重要です。

以前書いたとおり、木材は腐朽菌やシロアリにより劣化します。この原因は木材の水分によります。一般的に乾燥した木材には腐朽菌やシロアリによる被害は発生する可能性は低くなります。通風が悪く湿気がこもり易い環境では木材が湿潤状態になり、腐朽菌やシロアリが発生するのです。

日本に生息するシロアリは、大きく分類するとヤマトシロアリとイエシロアリです。ヤマトシロアリは水分がなくては生息できないので、その被害は主に住宅の基礎部分に集中します。しかし、イエシロアリは水分がなくても生息できるので、屋根まで被害が及ぶことがあります。日本のシロアリは種類毎に生息区域が分かっているので、住宅の立地に生息するシロアリの種類を確認してから対策を検討する必要があります。

木造住宅の基礎、外壁、屋根裏の通気性をいかに良くするかが、その長寿命化のカギとなります。木材の劣化状況を確認できる点検口を要所に設置することが重要です。木造住宅の外壁や屋根裏の通気も重要ですが、特に基礎の通気を良くして、定期的な点検を行うことができる点検口を設置しすることが重要です。定期的な点検とその結果により劣化対策を実施すれば、日本の木造住宅の寿命は飛躍的に伸びるだろうと思います。



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2007年08月09日

木造住宅の耐久性能

先日ある打ち合わせで、木造賃貸住宅の性能評価の中で、RC造のものとの優劣の比較が話題になりました。一般的に木造住宅は耐震性能や耐久性能、断熱性能がRC造に比べると劣っていると考えられているようです。

木造住宅の構造は木材でできているので、木材の劣化を防ぐ維持管理ができれば、上記の性能でRC造と同等の住宅を設計することは十分可能です。特に耐震性能は、条件によれば、木造のほうが軽量なのでRC造より簡単に丈夫にすることが可能です。耐力壁とその倍率を増やす検討すれば良いわけです。また、将来の改築の際も耐力壁を改造しやすいことから、生活様式の変化に伴う間取りの変更にも対応しやすくなります。

一般的に木造住宅の耐久性が劣っていると考えられている理由は、木造住宅は維持管理をしないと急激に各性能が劣化していくからです。特に主要構造物を構成する木材は、腐朽菌やシロアリにより致命的な被害を受けやすいものです。この被害は定期的なチェックと対策をすれば容易に防ぐことができまが、一般的に木造住宅に住む人は、定期的な維持管理をしていません。そのために木造住宅の寿命は非常に短いものになります。

裏返して言うと、木造住宅でも適切な維持管理計画を立てて実行すれば耐用年数を長くすることができます。最近の公共の木造住宅は70年程度の耐久性能を目標に設計されているものもあります。また、木造に限らずS造やRC造でも維持管理して資産価値を高めていくことは重要です。建物の設計性能とその性能を維持していく管理計画は対になって計画をする必要があります。今後はどのように住宅の寿命を延ばすことができるかを維持管理の観点から検討していくことが重要になると思います。



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