若い頃のある日、現在もお世話になっている人物に夕食を誘われた。
繁華街のビル内の自分には分不相応な店へ入店した。
そこへ中年男性と二人の若い女性がやって来て同じテーブルに。
お世話になっている人物の後輩との事で、
当時閣僚だった衆議院議員の地元私設秘書と事務員だと紹介された。
主は海外出張中と言っていた記憶がある。
雑談の中で、お世話になっている人物が自分の事を、
「彼はね、相当体を鍛えてるんだ」と紹介すると、
秘書が、「僕も学生時代相撲やってましてね」と、腕をまくって腕相撲
を挑むジェスチャーをした。
お互い組んで力んだところで、自分から「あっ、強いです、わかります」と言い、
自分の方から手を離した。
結局腕相撲はしなかったし、秘書も挑まなかった。
阿吽の呼吸と言うか、お互いの立場の違いをわきまえた。
女性事務員も同席している。
この場で腕相撲して勝っても何の意味も無いし、手加減も相手に失礼だと思った。
年齢差もあり毎日のトレーニングの量、質がぜん違う、正直余裕で勝てると。
ガンガンにストイックに鍛えていた自分が、組んだだけ強いですと言って腕相撲を
スルーした事で、お世話になっている人物も秘書も一応の満足を得たと思った。
自分の力を誇示せず相手も立てる事や、阿吽の呼吸は政治の世界でも必須だと思う。
一方的に力に任せて相手をねじ伏せる政治も控えるべきで、
それはいずれ自らの不徳、綻びを突かれ跳ね返ってくる事となる。

その後、この私設秘書は比例区選出で衆議院議員を一期務めたが、
二期目を狙った選挙では小選挙区も比例区でも落選した。
地方自治体の議員選挙に立候補してたようだが詳細は判らない。
若い頃から政治に全く興味の無かった自分が、不思議と政治家と接する機会が
多かったのも、世間知らずだった自分の糧になったのだと思う。