トヨタグループ創業会社は、主力商品である自動織機の筐体や、
構成部品の多くを、自社で鋳造し生産していた。
高速で精密な動きを求められる自動織機の性能、品質を高める為、
強度と耐久性を得る為の卓越した鋳造技術が必要だった。
その鋳造技術を自動車に必要なエンジン、駆動部品製造に生かし、
自動車製造に参入し発足したのがトヨタ自動車だ。
その後に電装部品開発部門を、日本電装(現デンソー)として発足させた。

鋳造技術研究部門の下っ端の使い走りだった経験から、
大した知識は無いが自分なりに原因を考えてみた。

今回の新幹線台車亀裂事故の問題だが、事前点検の目視検査では判別できなかっただろう。
点検ハンマーによる打音検査で判る筈だが、その部分を叩いてなかったとしか思えない。
走行中に突如亀裂が現われ(発生したのではない)、名古屋駅で目視確認できたのだろう。
亀裂内部は金属の粒子が確認できるほどキレイであり、
それまで外気に晒されて無かった事が伺える。
台車表面には堅牢で厚みのある数層の塗装が施され、
その塗装が初期の僅かな亀裂を覆い隠してしまう。
点検ハンマーで広範囲に叩く事無く、目視に頼る手抜き点検が横行していれば
見逃しはあり得る。
表面塗装を割らない程度の細い亀裂はある程度進行していたが、
ある程度亀裂が上部に達して強度的な限界を超え、一気に開いたのだろう。
異臭は亀裂の口開きにより、軸受けベアリングに偏荷重が掛かり発熱した事により
生じた。
その異臭を察知し迅速な報告をした乗務員は優秀で、運行続行を指示した
指令所が愚かだと言うことに尽きる。

この手の突然進行する亀裂の原因に、鋳造時の不純物の混入とガス残留、
設定された素材溶解温度に達していなかった等がある。
不純物により金属分子同士の結合が妨げられ、内部亀裂の原因となり、
ガス残留による僅かな空間もその原因となり得る。
それらが存在する事により、設計上の強度、耐久性が得られないだろう。
特に応力や、周波数の高い振動が集中する部分にあってはこれらはネックとなる。
映像を見ると、強力なコイルスプリングの隣に位置する場所なので、
コイルの圧縮、反発の繰り返しが、相当な応力変形を生じていたと思えた。

実は、鋳造技術の差は金属組成にあり、
外観の綺麗さ、緻密な造形だけで計る事は出来ない。
美術品では無く、重要機能部品には必須要素だ。
一時期、日産が実用化したエクストロイドCVTも、
当初から、クラック発生による構成部品破断がネックだった。
金属内部の不純物、ガスを極限にまで除去し、
理想的な金属組成を形成する技術を確立できた事により実用化された。


鉄道の台車は大きくて肉厚な構造設計をされている。
素材、厚さ、応力分散構造で充分な強度と耐久性は得られる筈だが、
在来線車両の数倍にも及ぶ負荷が掛かる新幹線車両。
今回、内部に亀裂の元となる巣が潜んでいたのが原因であれば、
その部分から再度見直す必要があるだろう。
これだけ堅牢で、必要強度の数倍の余裕があるのだから、
大丈夫だろうとの思い込みがあっただろう。
性能偽装が報じられた金属メーカーにも、このような問題が潜んでいる。