2007年11月24日

CMグラフィティ>JR東海/東海道新幹線−シンデレラ・エクスプレス


 

 

 


クライアント:JR東海
商品:東海道新幹線
   シンデレラ・エクスプレス
捕獲年:1987年

 その後数年にわたって展開され、日本のテレビCM史にもきっちり名前を残すに至った「新幹線グラフィティ」シリーズの、記念すべき第一作です。これが作られたとき、シリーズ化の意図があったのかどうかは、わかりません。というか、シリーズ化は考えていけどコケたら終わりになるのが運命の試行でもあった、という感じだったんじゃないでしょうか。

 ネタ元は、松任谷由実の歌「シンデレラ・エクスプレス」(アルバム『DA・DI・DA』収録)。アルバムの発表は1985年。この歌が発表された時点で、JR東海も新幹線も、関係ありませんでした。翌1986年にはTBSの単発ドラマ「週末物語〜シンデレラ・エクスプレス」の主題歌として使われたという履歴があるらしい。そしてこのCMが作られたのが1987年。CMにたどりつくまで、ずいぶんと回り道をしています。その間にいいぐあいに熟成されたのであるようにも思うわけですが。
 改めて話を確認しておくと。
 日曜夜の最終便のひかりが出発する午後9時、そのホームは、遠距離恋愛で週末だけしか会うことができない恋人たちの、また一週間の別れの舞台になる。そのエピソードをとりあげて、鉄道のドラマティックな側面を訴えたのが、このCMなのでした。ホームで見送る女は河合美佐が演じました。

 おれは新幹線で行き来するような遠距離恋愛はしたことがないので、自分の体験として語ることはできません。
 んだが、京都在住の知人とわりと頻繁に会ってた時期があって、そいつを見送りに新幹線最終便の東京駅に行ったことは何回かあって。「あ〜、これがあの『シンデレラ・エクスプレス』なのですか」という光景は、目の当たりにした記憶があります。けっこう観察しちゃいましたよねえ。はためから見てたらうちらもかわんないわけで、まあまあ被観察者に影響を与えることはなかったような。被観察者に影響を与えないってのは観察の鉄則だからね〜。

 鉄道って、けっこうドラマティックなものなんですよね。「鉄道」がっていうよりも「旅」がドラマティックなんですけれども。通勤通学の道具としての鉄道は、それはそれでものすごく重要なんですけど、長距離列車にはまた別の要素がある。それは「旅」という要素なのである、と。
 その、ドラマチックな「旅」をする道具を提供しているのが鉄道会社なんだ、というコンセプトを、JR東海とその広報チームは、このCMで掴みます。そしてそのあと、東海道新幹線のCMシリーズは、長い迷いを吹っ切って、大化けすることになります。



 もっともなんだね。この作品、もろてをあげて褒めてあげられる出来だったのかというと、決してそんなことはなかった。
 このCMが作られたとき、まだフォーカスは定まっていなかった。迷いの中から出てきた、おそるおそるの一作が、これだったわけです。なので、けっこういろいろと、今から見直すと「ちょっとこれはなあ」みたいなところがあります。腰が引けているところというか。

 3駒目を見てください。これ、東京駅で深夜に撮ってるんですけど、バックのJR東日本のホームは灯りを落としているんだよね。まあ、なんぼ仲が悪いとはいえ今だったらきっちり談判してホームの照明くらいつけさせておくのだろうに(あるいはCGで処理しちゃうかもしらんが)、このときはそこまでやらず、カット割りでなんとかごまかそうと苦慮してます。気合いのはいりぐあいという観点からは、試行であるがゆえの不徹底さがみられたりする。

 あと、コピーがなあ、「こんな素敵な話を大切にします」というものなんだよ。いやあ、本人たちにとってみたら、全然素敵な話じゃないと思うんだよね。ドラマチックだし、たとえば結婚したとかいう時点から振り返ってみればそれは素敵な話になるんだろうけど、今そうであるひとたちにとっては悲しく悔しい話でしかない。
 「鉄道のドラマティックさ」の位置づけ、鉄道の上で喜んだり悲しんだりするひとたちとの距離の取り方が、かなり不安定というか、的を外している。日曜夜の最終便で別れを告げてるやつらに「いい話ですね」とか言ったら、仮借なき乱闘になるんじゃないかと思ったりもする。
 ここらへんは、後続のシリーズと比べると、正直なところ、かなり見劣りがすると言わざるを得ないのでした。

 もちろん、そのあたりの欠点は、シリーズが進むにつれてどんどん改善され、洗練されていきます。ちょっと後には、堂々たるCM史に残る作品群にまで育ってしまうわけです。
 このあとに起きたことを知って改めて「シンデレラ・エクスプレス」を見ると、模索の中にさしこんだ一条の光のような、荒削りなのだがとても良い素質が感じられるような気がします。もろもろ不満はあれど、やはりこれは、鉄道が登場するCMの一里塚であり、金字塔であるのだろうと。

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