2009年11月25日

角川春樹『笑う警官』を見てきた

 佐々木譲原作/角川春樹脚本・監督の『笑う警官』を見てきた。なんかものすげえ釈然としませんでした。ものすげえ釈然としなかったもので4日ほど考えてしまいました。
 ようやくまとまったので書く。ま、こんなところだろうと思う。

 佐々木譲のどこが凄いのか。おれの観点からは、それは「しっかりと事実関係をふまえ社会的背景をおさえた上で、きっちりエンターティンメントとして物語を成立させる」ということであるように思います。社会派作家というのは珍しくもありませんが、それらの多くは自分の問題意識を重視するあまり問題意識を共有できない読者には響かない作品にしてしまう。エンターティンメント作家というのも珍しくありませんが、こちらは物語を練ることに熱中してしまい反射効として社会性を希薄にしてしまう。
 まあ、どこにどうバランスポイントを求めるかというのは作家や読者が勝手に決めればいいことなんですが、おれは「佐々木譲はそのバランス感覚という点で特筆すべきものがある」ような気がする。映画『笑う警官』は、残念ながら佐々木譲がせっかく組み立てたその絶妙なバランスをぶっこわしてしまっていた。
 いやあ。そこを生かさないのなら佐々木譲作品を原作に選ぶ意味はないのではないか。なんか悲しいなぁ。

 実は、見始めてしばらくの間は「ずいぶん話をはしょって進めてるなあ」と思っていたんですよね。まあ小説を忠実に映画にすると何時間になるかわかんないことが多いわけで、尺を詰めるために話をはしょることは珍しくもない。そのせいだろうと思ってました。しかしそうじゃなくて、いらん要素を新たに付け加え話を無駄にややこしくした結果尺が足らずオリジナルの物語をはしょらざるを得なくなったのだ、ということだったようです。もちろん付け加えた部分があればいずれにせよオリジナルの物語とは衝突したりするのでそのまま作るわけにはいかなくなるんですが。

 原作つきの映画を10本見ると、少なく見積もってうち9本で、「なんで物語に手を入れるんだろう」と思ってしまいます。すぐれた原作にほれこんで映画化をしようと思ったのならば、その原作の世界を忠実に再現することに熱中すれば良いではないか。
 まあ原作通りに作ろうとすると金も時間もかかるから無理です、っていうケースは多々あります。そこでしょうがなしの妥協としてはしょるのは、それはそれでしょうがない、かもしれません(*1)。
 しかしね。逆のパターン、「余計なことを付け加えてぐっちゃぐちゃ」っていうのは、あまり多くは見かけないんですよね。まだ「換骨奪胎全然違う物語になっちゃいました」のが多いくらいだ。
 なんだってまた角川春樹はこんな隘路に陥ってしまったんですかねえ。結果として原作の『笑う警官』ではクライマックスとなる重要なシーンが大きくカットされてしまっていたりして、ちょっとかなわんなあって感じでございます。
 余計なことの中には佐伯宏一(大森南朋)と小島百合(松雪泰子)とのロマンスなんかも含まれます。それは、続編の『警察庁から来た男』の伏線になってる話だろーが。

 配役だの演出だのにも山ほど駄目出しをしたいところがありますが、まあそこらへんはここで長く書いても意味ないから、自粛しときます。
 ただまあなんだ。貶し一本調子ってのもなんですので。
 映画はなんだかなぁでしたけど、小説は凄いんです。あちこちのweblogの感想とか見てると「原作が悪いのか監督が悪いのか」みたいな声がちらほらあった。原作、読んでみてください。あれはもう全くの別物だから。

 ところで、最後にバーのマスターやってた大友さんが橋の上から投げ捨ててたの、誰の死体だったんでしょうか。おれ、わかんなかったんですけど。

*1
佐々木譲の『真夜中の遠い彼方』の映画化作品である若松孝二の『われに撃つ用意あり』はこっちのパターン。とはいえ、必要予算と現実的予算が「百対一」とか食い違っていて映画化しようと思うのは、それは「無謀」というものだろう。『われに撃つ』は、ちょっと評価のしようがないくらいの駄作だった。

  *

 おまけ。

 物語の舞台は札幌です。札幌市電も何カットか出てきたりします。


札幌市電> 中央図書館前駅に停車中のM100 [direct]

 で、物語の舞台は札幌。重要な場所として、すすきののバーとか、北海道警本部とか、北海道議会議事堂とかがあります。ところがですね、ほとんど札幌でロケをやっていないっぽいんですね。
 最後に目的地として登場する北海道議会議事堂なんて、コレですもん↓。おーい・・・。


茨城県庁三の丸庁舎> 正面 [direct]

 いやさあ。見た瞬間「三の丸庁舎じゃん・・・」と思うやつなんてどうせ多くはないだろうと思うんですよ(*2)。ついでに、『笑う警官』以降の佐々木譲の北海道警シリーズって北海道警のスキャンダルを重要な要素としていますから、北海道警の撮影許可を取るのはたいへんだろうとも思うわけです。いらん制約つけられたりするだろうしな。しかしね。
 今だったらCGとかいっくらでも手はあるんじゃねーの、それなりに金かけて大作映画作るんだったらさ。
 この佐々木譲の「北海道警シリーズ」てのは「北海道」というのを重要な軸としている作品群なわけでなあ。もうちょっとなんとかなんとかなんなかったんでしょうかねえ。それとも、そんなことはどうでもいいとか思っちゃったんかしら。

*2
本体のページにも書いてあるんですが、フィルムコミッションががんばりすぎてて、茨城県庁三の丸庁舎はもう露出過多になりつつあります。いい建物ではあるんだけどねーやつも忙しすぎるとか思っているのではないか。
今改めてざっと調べたところ、三の丸庁舎の主な出演実績は以下のとおり。

 ・日本テレビ「小泉純一郎5つの謎」
 ・TBSテレビ「松本清張ドラマ“波の塔”」
 ・TBS「検察審査会」
 ・フジテレビ「遥かなる約束」
 ・フジテレビ「紅の紋章」
 ・フジテレビ「潮風の診療所〜岬のドクター奮戦記」
 ・フジテレビ「医龍」
 ・フジテレビ「壁ぎわ税務官」
 ・テレビ朝日「相棒」
 ・テレビ朝日「PS 羅生門」
 ・テレビ朝日「仮面ライダーカブト」
 ・テレビ朝日「警視庁捜査一課9係」
 ・テレビ朝日「愛と死をみつめて」
 ・テレビ朝日「富豪刑事」
 ・テレビ東京「新米事件記者・三咲2」
 ・テレビ東京 「上を向いて歩こう〜坂本九物語〜」
 ・映画「日本の青空」
 ・映画「NANA2」
 ・映画「日本以外全部沈没」
 ・映画「バブルへGO!」
 ・映画「県庁の星」
 ・映画「半落ち」
   ・・・他、ものすごく多数。

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この記事へのコメント
トラックバックありがとうござます。
原作のあるものの映画化は原作を知る者・原作をこよなく愛する者にとっては
全く別物と考えないと厳しい時がありますねぇ。
Posted by タマ at 2009年11月28日 00:02
 タマさんいらしゃいませー。いやあこのエントリなんでこんなに盛り上がらないのだろうとか思ってました(=^_^;=)。

 おれはまあたまたま今回は原作作家のファンであり原作も読んでいましたので「全くのファーストエンカウンターだった場合の感想」はわからないのですが、そこらへんを度外視しても駄作だったんじゃないかなあみたいな感じがありまして、このエントリを立てることにしたんでした。

 おれ、佐々木譲作品を原作とする出来のいい映画を見たいのだよなあ。
 Mixiの某コミュで書いた佐々木譲作品のランキングは、1位『真夜中の遠い彼方』、2位『白い殺戮者』、3位『ハロウィンに消えた』、4位と5位『夜にその名を呼べば』『ネプチューンの迷宮』にしてあるんですね(ドラマ化された『警官の血』は未読。『うたう警官』『警察庁から来た男』は好きだけど上位には来ない。『ベルリン』『択捉』『ストックホルム』あたりは案外評価が低く、第二次世界大戦シリーズだったら『ワシントン封印作戦』のが上)。
 しかしこう、佐々木譲も映像化企画にはめぐまれない作家なんですよねえ。まいど「あーあ」みたいな感じで。テレビドラマの『ユニット』あたりが映像化作品の上位に来ちゃうのって悲しいことなんじゃないのかなあ(いや、『ユニット』は悪くはなかったのだが)。
Posted by 猫が好き♪ at 2009年11月28日 00:24
 
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