2011年12月07日

悪いニュース>九段下ビルも取り壊しへ


九段下ビル

 いやまあ、建物の状況はすでにだいぶ悪くなっていて、誰かが保存を主張したとしても「いまさら保存とか言われてもなあ」というのが率直な感想だったりするわけで、まあしょうがないんだけど。

 九段下ビルも、取り壊しが決まったようです。このニュースは、masaさんの「Kai-Wai 散策」で教えてもらいました。

 九段下ビルは、東京都千代田区神田神保町3丁目、俎橋(まないたばし)の北東側角にあるビル。旧称は今川小路共同建築。関東大震災の復興事業のひとつとして計画されたビルで、建築年は1927年、設計は南省吾。
 コンセプトは「被災した路地をそのままビルにする」というもので、一階に店舗、二階に商店主の住居、三階を賃貸としていました。古くからのコミュニティをそのままビルに格納することで、その当時の生活を生かしつつ都市の災害対応性能をあげよう、という考え方だったようです。調べてないけど、たぶん九段下ビルがあったあたりに「今川小路」という路地があったんでしょう。
 ただ、このコンセプトはいまひとつ受けが良くなくて、結局実現したのは九段下ビルだけに終わりました。「コミュニティを残しつつ」というのは着目点としては大事だとおれは思うんだけど、関東大震災クラスの災害だとコミュニティの破壊だってしゃれにならない規模になってしまうわけで、ビルひとつふたつでその流れに抗するのは無理だった、ということなんでしょうね。
 なんかこのあたり、その後もいっこうに解法は見つかっておらず、東日本大震災からの復興をどうするかというあたりにも引き継がれるであろう古くて新しい問題であるような気がしますが。

 で、九段下ビル。当然のように、写真撮ってきてます(=^_^;=)。2005年の撮影で、この頃はまだそれなりに入居者がいたので、立ち入って写真を撮ってくるというのはけっこう躊躇するものがありましたが、まあそこは野良猫が迷い込んだってことで。
 九段下ビル単独での紹介は書いていませんでした。手抜きっぽいですが、このエントリをもって単独の紹介ってことに。

 すでにテナント・居住者の大半は退去しており、2011年12月現在、最後のおひとりが残っているだけとなっているらしい。そのおひとりも年内には退去する予定だそうで、無住の建物となります。すでに2011年9月から三分の一の部分の取り壊しがはじまっているとのことで、来年はじめには姿を消してしまうことになるのでしょう。
 結局、一階にあったレトロな喫茶店には行きそびれてしまったなぁ。

   *

 いやあええとなんだね。同じことは、先行して取り壊された同潤会三ノ輪アパートの取り壊しのときにも書いたような気がしますが、まあ繰り返しになってもいいやってことで。

 関東大震災からの復興の時期、まだ「共有の建築物をどう管理するか」については、ぜんぜんセオリーというものがなかったわけです。同潤会三ノ輪アパートの場合、もろもろあって最終的には区分所有になったんですが、ビルが単一の持ち主のものではなく多数の持ち主がいて、しかしどう管理するかについてセオリーがない。結果としてメンテナンスがうまくいかないとか、一斉リフォームによる住環境のアップデートができないとか、そういう問題が顕在化してしまった。
 三ノ輪なんか、鉄筋コンクリートの重厚なビル建築だったわけですが、コンクリートが剥落して鉄筋が外から見えるくらいまで、建物が傷んでしまっていましたからねえ。
 九段下ビルの所有形態がどうなっているのかは知らないのですが、一階の商店主兼二階の居住者の共同所有なんじゃないかなあと、おれはなんとなく思ってました。正解かどうかは保証の限りじゃありませんけど。

 九段下ビルの場合は、建物の構造体がどの程度傷んでいたのかはわかりませんが、中身はざっと見た感じで、率直なところ「廃墟」に近いものがありました。場所もいいし、あの当時の鉄筋コンクリートならメンテナンスがしっかりしてれば数百年は持ちそうではあったんだけど、もし構造体が大丈夫であったとしても性能寿命が来てしまっていた感じ。
 良い悪いは別としていまどき共同便所ではやっぱしつらいよねえって感じはあるし、そういうところはアップデートしていかないことには、建物として生き残れない。でも、管理体制がきっちりできていないと、メンテナンスやアップデートができない。メンテナンスが滞れば構造寿命が来てしまうし、アップデートが滞れば性能寿命が来てしまう。
 そして、九段下ビルの場合には確実に性能寿命はもう到来していたように思うのです。

 なんていうかなー。
 まあ、できれば何もなかったようにそこに存在し続けていてくれればうれしいのは確かなんですけど、まあそれは無理。残念とかいうよりは、九段下ビルもまた同潤会アパートなんかと同様に、「建物やコミュニティのあり方の模索として果敢に挑戦した先達の大往生による退場」と受け止めて、見送ってあげるべきなのでしょうね、と。

   *

 とりあえずまだ、全体のうち三分の二は取り壊されてはおらず存在しているようですので、ご覧になりたい方はお早めにどうぞ。

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この記事へのコメント
「レトロな喫茶店」って、喫茶カリーナのこと?
自分が最後に訪れたのはおととしですが、
あれ、閉店しちゃってたんですか。

改めて思うのは、
所有形態と管理形態が複雑なゆえに、いつまでも残る。
逆に、所有と管理がしっかりしてると早々に取り壊される。
ニューヨークでも香港でも、
所有管理意味不明なのは壊しちまえなのだけど、
東京はそういう力学が働かないわけで、
ある意味ユニークな都市ですよね。
Posted by tko_bbq at 2011年12月08日 15:02
 tko_bbq さんどうも。

 いやあ、見かけた記憶はあっても行ってないので店名はわからないのです。すみません(=^_^;=)。で、新聞記事によると「すでにおひとかたを残して退去済み」とのことなので、閉店しちゃってるということなんだろうなあと理解したのですが、閉店を確認したわけではないので、あいまいですみません(=^_^;=)。どなたかご存知の方おいでになりましたらぜひフォローないしツッコミをお願いします。

 いやあその管理形態に関してはおれも面白いと思うんですよね。
 代々木にある代々木会館ですけど、あそこもだいぶ前から再開発の話があってテナントの退去は進められているのですが、しかし所有権が入り乱れていて再開発に同意しない所有者もいるものだから、放置プレイが続いています。一坪地主運動みたいに、簡単に開発/再開発をさせないためには所有権をとにかく複雑怪奇にしてしまえ、というのまであったりしますし。ま、私権の尊重を原則にするならそのように私権が機能することだって想定の範囲内だとは思うんですが。
 ただ、「所有権が入り乱れていて手がつけにくい」という状態は、先送りのためには使えるんだけど、大切に長く使うとか保存するとかいう方向には機能しにくいわけで、古建築ファンとしては必ずしも歓迎できる状態ではない、ということも確かです。じゃあそのあたりがしっかりきっちりしていれば大切に長く使って保存にもつながるのかっつーと、そんなことはなくて、おっしゃるとおり「早々に取り壊される」につながったりするわけで、頭が痛いんですけど。

 なんかここんところ、有名な古建築が取り壊されるという出来事が続いているような気がします。なんだかんだ言いつつ経済がまたうねりはじめているってことなんでしょうかねえ。
Posted by 猫が好き♪ at 2011年12月08日 15:25
 tko_bbq さんどうも。
 よそでもらった情報ですが、九段下ビルのレトロな喫茶店、やっぱ閉店してしまっているようです。あーあ・・・です。
Posted by 猫が好き♪ at 2011年12月09日 19:58
http://kudanatelier.blog.fc2.com/
おそらく九段下ビルに入る最後のチャンス。
Posted by kanesyoh at 2011年12月16日 02:25
 kanesyoh さんいらっしゃいませ。ご案内どうもありがとうございます。
 おれはあいかわらず体調不良が続いていてちょっと行くのは無理そうなんです。ごめんなさい。九段下ビルに興味のある方は、せっかくのチャンスです、ぜひ行って目に焼き付けてきてください。見ておくだけの価値のある建築物だと、おれは思います。
Posted by 猫が好き♪ at 2011年12月16日 23:27
 
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