2012年01月28日

斎藤美奈子
朝日新聞 『文芸時評』
2012年1月25日掲載
*今月のお題*
『K』
三木卓 著
今回のお題は、出会いから47年の結婚生活、そして妻が病に倒れて看取
るまでを語った、作者の自伝的小説『K』。
毎回この仕事で行われている勉強会の席で聞いた皆さんの感想から、き
っとササッと読めるだろうと予測していたのが甘かった。
読み進む途中で不覚にも涙が溢れ、さらに嗚咽から号泣へ、いとも簡単
に崩れ落ち、読後は絵を描ける状態じゃなくて…結局、締切当日の朝か
ら描き始めるという逼迫仕事となってしまいました。
単に読者である私の、相棒を看取ることで受けた傷がまだ生っぽいから
という理由だけではなさそうで、もちろんそれが大きいんだけれど、同
業だから理解ができて配慮し合い、「つまるところ、ぼくにはこの人が
よくわからなかった」と言える距離を保ちつつ各自が各自の城を守る、
性別を超えた「同志」や「家族」といったような、一見淡々と見えて実
は深い、互いの努力なしでは得られない人と人との奇妙で微妙な深い愛
情を感じてしまい、現実社会との関わりで起こっていた事象はすったも
んだで結構大変だったのでしょうが、それはもうあっちに置いといて、
「出逢う」という奇跡と軌跡をじっくり考え、しみじみ感じ入って泣け
てきてしまったのでした。
単行本になったら本棚の恋愛小説枠に並べたいと思いますぅ。
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*11.12/21掲載分
(02:17)















