ニコラテスラって素晴らしい

エジソンを超える発明王ニコラ・テスラのことをもっと良く知ってみませんか

Speaking of wireless power transfer, MIT (WiTricity) is a very famous in this field. They are said the origin of electromagnetic field resonance or resonant inductive coupling. But were the theories they presented correct?
This principle is often compared to example of the resonance of dual tuning forks, but this was really incorrect. (An example of putting a glass of wine in front of an opera singer and breaking it is correct. The latest WiTricity WEB site describes only the example of a wine glass.)
I am still investigating whether MIT (WiTricity) himself was mistrailing mistake or reporters reporting the topic of wireless power transfer arbitrarily made a mistake.
But in explanations of the magnetic resonance or the resonant inductive coupling WEB article, it is first compared to example of the resonance of tuning fork anywhere. This is a big mistake and it is believed that the wrong recognition for wireless power transfer has expanded considerably due to the misunderstanding by this example.
This time, Green Electronics (19) is reconsidering these misunderstandings. (Link to Green Electronics No.19)
グリーン・エレクトロニクス(19)
Although it is a very gentle journal, used words in the article are discreet.
Then, what is wrong with many Web articles related to the theory of MIT (Witricity) so far,

1.  To compare to example of the resonance of dual tuning fork.
2. Seems to be convinced that two resonators are essential for both the primary side and the secondary side.
3.   Making an image that something special phenomenon is occurring between the two resonators.
4.  Although the formula of the primary side resonance can be expressed by the equation of physics learned in high school, write the same formula on the secondary side without thinking deeply about it.
Etc.
The correct formula of the secondary side resonant frequency is as follows,

form100

Because the secondary side resonant frequency is a function of the coupling coefficient, the resonant frequency changes as the distance between the coils changes. There were almost no articles of journal which explained in detail why about this reason. Various problems will arise if the resonance frequency changes. Any solution to that problem is also necessary. Although it is said that wireless power transmission will be put into practical use immediately, the schedule has been changed many times and is delayed, but it seems that there is this resonance frequency problem as its real reason. But, there was no WEB article focusing on this resonance frequency problem. Will there continue to be no such articles in the future?
Then, are major companies aware of? It is easy to understand by analyzing the patent that was filed by them. Patent applications about wireless power transfer have increased sharply from 2009 to 2012, and the patent office is summarizing the trend of application. (Heisei 20th Patent Application Technology Trend Survey Report (Overview) Contactless Power Supply Related Technology - Japan Patent Office)

Although we focus on the claims in terms of the resonant structure of the primary side and the secondary side, but the explanted formula of the resonance of the secondary side described in the filed patent specifications are mistaken on most of patent specifications. (That means that those patent applications of during that period have almost no real meaning!)
However, looking at recent times, several descriptions of the patent specification have gradually changed, especially in the latter half of 2016 to 2017. In the explanation of the secondary side resonance, what has been described 1-k2 has come to be considerably more. Among these several patent applications, companies that acquired licenses from MIT (WiTricity) are also included. That means ...

This ultimately means the beginning of wireless power transfer world.
In any case, if 1-k2 is understood extensively, it will lead to reliable realization of wireless power transfer. I am thinking that my load will become off by this understanding.

 ワイヤレス給電といえばMIT(WiTricity)が大御所ですが、電磁界共鳴とか磁界共振とか呼ばれる方式の出どころです。この原理はよく音叉の共鳴に例えられますが、これがとんでもなく間違っていました。(オペラ歌手の目の前にワイングラスを置いてそれが壊れる例えは正しいです。最近のWiTricityのホームページにはワイングラスの例えしか記載されていません。)
 果たして大元のMIT(WiTricity)自ら間違いを撒いていたのか、それともワイヤレス給電の話題を報道する記者が勝手に言い出して間違えているのかはまだ調べている最中ですが、電磁界共鳴とか磁界共振を解説するWEB記事がどこを見てもまず音叉の共鳴に例えています。これが大きな間違いで、この例えによる誤解からワイヤレス給電に対する間違った認識がかなり広がってしまったと考えられます。それを今回はグリーン・エレクトロニクス(19)で総括することになったわけです。(Amazonへのリンク
グリーン・エレクトロニクス(19)
 とは言ってもとても品の良い雑誌ですから記事中の言葉は控えめにしています。
 では今までのMITに関する多くのWEB記事のどこが間違っていたのかというと、
  1. 音叉の共鳴に例えること。
  2. 一次側と二次側の双方に二つの共振器が必須だと思い込んでいること。
  3. 二つの共振器同士の間に何か特別な現象(エバネセント結合だとか非放射の電磁的共鳴エネルギートンネル)が生じているというイメージを作り上げていること。
  4. 一次側の共振の式は高校で習う物理の式でいいが、二次側の共振の式までそのまま単純に書いてしまうこと。
 などです。
 二次側の共振の式は正しくは、
form100

 で、これは結合係数の関数ですから、コイル間の距離が変化すると共振周波数が変化してしまうのです。これについてなぜなのか詳しく解説している雑誌記事はほとんど皆無でした。共振周波数が変化してしまうといろいろな問題が起きます。その課題の解決法も必要です。ワイヤレス給電が実用化間近と言われながらなぜかズルズルと実用化が遅れていた原因がほとんどここにあったと思われるのですが、この共振周波数問題に着目したWEB記事は皆無でしたね。今後も皆無が続くのでしょうか?
 では、大手は気づいているのでしょうか?それは出願された特許を分析してみるとよくわかります。ワイヤレス給電に関する特許出願は2009年から2012年にかけて急増しましたが、それは特許庁が出願傾向をまとめています。(平成26年度特許出願技術動向調査報告書(概要)非接触給電関連技術-特許庁
 請求項の着眼点で一次側と二次側の双方に共振回路を持つもののところですが、個々に調べてみるとやはりほとんど皆、二次側の共振の式が間違っています。(ということは、この頃の出願特許は実質意味をなさない?!)
 ところがここ最近を見てみると、特に2016年後半から2017年にかけて公開公報に載ったものの中にいろいろと表現は工夫されているものの、二次側の共振の式に1-k2 を取り入れたものが相当に見受けられるようになりました。なんと、それらの特許が以前にMIT(WiTricity)とライセンス提携した企業からも出願されていたのです。ということは・・・

ということは、やっとワイヤレス給電の幕開けなのかなということになります。
 ワイヤレス給電がいつになったら実用化するのか?と疑問に思っていた人も多いと思いますが、1-k2 さえ分かれば実用化は確実だと思います。ヤレヤレというところです。

ワイヤレス電力伝送(WPT)が注目されてから時間が経つにつれて、多くの方式が提案されて発表されてきたようである。そこで2016年最新版をまとめてみた。
ワイヤレス電力伝送は大きな分類として放射型と非放射型に分けられる。長距離を伝送させるのであれば放射型が圧倒的に有利であろう。一方、効率を追求するのであれば非放射型がよい。しかし、両者を並べたり比較したりして語ってはいけない。特に「放射型と非放射型の特徴を併せ持つ」なんてものを世間に期待させるのは厳禁だ。例えば放射型のように長距離を伝送でき、かつ非放射型のように効率が良いなんてものを期待しがちであるが、そういう都合の良いものはとりあえず存在しない。しかし報道によっては世間に過大な期待を持たせるような報道をしてしまっているような気がするのだがいかがだろうか。実際には両者はまるで別の技術なのであるから報道するときは最初に放射型・非放射型のタイプを明確に分けてから説明に入ってほしい。
放射型の一つの方法として面白いものは超音波を使ったU-Beamというものである。
そしてマイクロ波ビーム型として米Energous社のWattUpも加わった。
今後も新しい提案が生まれるかもしれないが、そのときは順次更新する予定である。
kindWPT


磁界共振は決して音叉の共鳴の原理ではない。巷に溢れる報道や解説に翻弄されないよう注意すべきである。

アップルが新しい無線給電を開発中というニュースが入ってきた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160130-00010004-newswitch-prod
https://newswitch.jp/p/3447
近接磁気共鳴(NFMR)という新しい技術が採用されるという報道が気になったので調べてみたが、慎重に調べてみると翻訳が原因で新技術と誤解されることになったものだと思う。
もとの英文は、Near-Field Magnetic Resonanceであって、近接場(近傍界)の磁界共振という意味になる。ちなみに磁場というものはもとより近接場(近傍界)であるから、磁界共振は全て近接磁気共鳴(NFMR)である。近接場(近傍界)でない磁界共振というものは存在しない。
結局、従来の磁界共振も調相結合もQi V1.2(制御されていない調相結合)も全部近接場(近傍界)の磁界共振(Near-FieldのMagnetic Resonance)であり、従来から言われている分類表に新しいカテゴリーを追加する必要はなさそうである。
新技術とうたったのは、おそらくはいつものAPPLEのマーケティング戦略の一環であり、独自規格によって顧客を囲い込むという目的があるのであろう。それを新規格と言わずに新技術と言い換えただけであると思う。お騒がせなAPPLEだ。

●特許技術はWiTricityの延長か
早速気になったので特許を調べてみた。
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2014522630
で特許の一つが引っかかったので、それを特許庁の特許・実用新案番号照会でさらに検索して、特表2014-522630の公開公報(正しくは再公表)を読んでみた。
まずは請求項の第一項を引用すると、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  共振周波数ωTを有する近接場磁気共鳴(NFMR)トランスミッタユニットにより提供される磁界から無線受電される最小の電力を少なくともデバイスに提供するように構成された無線電力ユニットであり、前記デバイスに出力される前記最小の電力が前記磁界に対する前記ポータブル電力ユニットの空間方位に依存しない無線電力ユニットであって、
  共振周波数ω1及び特徴サイズL1を有する第1の共振器構造と、
  共振周波数ω2及び特徴サイズL2を有する第2の共振器構造であって、前記第1の共振器構造と前記第2の共振器構造との間の有効磁気結合係数κeffが約ゼロであるように前記第1の共振器構造及び前記第2の共振器構造が磁気的に分離される前記第2の共振器構造と、
  前記磁気的に分離された第1の共振器構造及び第2の共振器構造に結合された電力合成回路と、
を備え、
  前記電力合成回路は、
  前記第1の共振器構造及び前記第2の共振器構造と前記デバイスとを負荷整合し、
  前記第1の共振器構造及び前記第2の共振器構造からの電力を負荷平衡し、
  前記NFMR磁界に対する少なくとも2つのNFMRレシーバの方位に関係なく前記デバイスが前記無線電力ユニットから前記少なくとも最小の電力を無線受電するように、前記NFMR磁界に対する前記無線電力ユニットの空間方位に関係なく前記第1の共振器構造と前記第2の共振器構造との間の有効磁気結合係数を約ゼロに維持するように構成されることを特徴とする無線電力ユニット。
------------------------ ココマデ -----------------------

請求項には「近接場磁気共鳴(NFMR)トランスミッタユニット」「特徴サイズL1」「特徴サイズL2」「有効磁気結合係数κeff」という新造語(被定義語)が並ぶ。新造語のオンパレードである。
この新造語というのがいくつかあれば特許査定率は上がる。つまり、特許が取りやすくなる。
しかしその反面、特許の有効性が低いということにもなる。

●有効磁気結合係数を約ゼロにする?!
請求項の最後の行は、「第1の共振器構造と前記第2の共振器構造との間の有効磁気結合係数を約ゼロに維持するように構成されることを特徴とする無線電力ユニット。」とあるが、「有効磁気結合係数を約ゼロ」にするというのはどういう意味だろうか。
明細書の中を読み進むと、コイル同士の結合状態を結合係数がほぼゼロになるように配置するのだから、有効磁気結合係数とは従来の結合係数そのものである。ならば結合係数でいいじゃないか。

さらに明細書を読むと「共振エバネッセント結合」や「固有の損失速度Γ」「「強結合」動作レジームκ/Γ>>1」とか、磁界共振の原理の説明にはおおよそ意味のない用語が使われている。
技術的に分析すると、原理はほとんどWiTricityの磁界共振の説明と一緒だし、間違いの部分もそのまま踏襲しているように読める。
並列共振直列共振
どう読んでも使うべき共振周波数(右側)を使っているようには読めない。

●知らずに直列共振周波数に嵌っているかも
特許は別として、製品としては2017年中の実用化を目指しているのだろう。ということは、既にある程度の基本回路の試作は行っていることになる。
ちなみにAPPLEが出願した特許技術はこのWattUpのDemoとは無関係なので注意していただきたい。(動画は2014/08/12 公開のWattUp Demo)
WattUpはエネルギー放射型である。(後述)


話はAPPLEの特許に戻るが、種を明かせば送電コイルと受電コイルとの距離が離れたりすれば結合係数は小さくなるし、コイル間の位置の配置によっても結合係数を小さくできる。
そうすると並列共振点と直列共振点の周波数とが近づいてくる。その場合、設定をちょっと間違えただけで(二次側のLかCがちょっと大きいだけで)、直列共振点の設定になっていて「あーうまくいったー」と喜んでいることが多いが、今回もそのパターンなのだろうと推測される。(※1に後述)
とくに結合係数がごく小さい領域では並列共振周波数と共振周波数との区別がつきにくくなる。このことをもって、APPLEが「第1の共振器構造と前記第2の共振器構造との間の有効磁気結合係数を約ゼロに維持するように構成される」と言っている可能性が非常に高いといえる。つまり、実験でたまたまうまくいったから特許にしてみたというところだろう。なぜそれがいいかの原因(原理)がわかっていない。
では、視点を変えて、最初から正しい原理に基づいて直列共振点の設定(Advanced MR-AMRという)を行ったらどうなるのだろうか。その場合は「有効磁気結合係数」(結合係数)が0.5とか0.7でも調子よく結合できることなる。そうすると、APPLEの特許請求項に基づく特許範囲の近接磁気共鳴(NFMR)にならない(構成要件=エレメントが異なる)ってことで間違いないだろう。AMRの設定ならばAPPLEの特許請求項の範囲外になるということである。逆にAPPLEこそ知らずに間違って(勝手に)AMRの設定を使っていないか?という疑問が沸く。
さらに、第1の共振器構造に頼らない近接磁気共鳴(NFMR)が出来たならば完全にAPPLE特許範囲外(エレメントの欠如)ということになる。そういうのはAMRの設定次第でできる。

一部の報道によると、APPLEの特許はこれではなく、US9,086,864だとも書かれているようであるが、読んでみたところ、技術的にはa first electromagnetic field of the wireless power supply and a first deviceとa second electromagnetic field to a second deviceとを結合(coupling)するとだけ書かれており、あとは通信してどうこうして複数のデバイスに可変コンデンサを制御して電力を供給するという概念だけで特許を取得している。ワイヤレス給電の基幹技術に関しては具体的な実施例はなく、どうやって可変コンデンサを制御するのかも書かれていない。どちらかというと複数給電の通信プロトコルが主体の特許といえるものである。いくら通信プロトコルを強化したところで、肝心の共振制御技術が二の次ではあまり意味がない。ワイヤレス給電/ワイヤレス電力伝送の不幸は通信屋ばかりが集まってAlianceを組んでいるところにありそうだ。電源屋の意見を聞かずに良いPower Systemが組めるわけがないと思うのだが。

いずれにしても実用化されることは嬉しいことであるので大きな期待を持っている。たとえ特許の有効性が危うくてもである。

※1 この場合心配されるのが世界的な大企業の場合、実験室的にうまくいっていても、量産の際に裏づけのない部品設定を行うとISO9000のTQC(Total Quality Contro)の段階で量産が認められなくなる可能性があることだ。量産を可能とするためには裏づけとなっている理論がWiTricityの理論に基づいているのだったら、一箇所だけ式を間違えているのでこれを修正しなければならない。この場合、WiTricityを×するか、WiTricity自身に共振の式は結合係数kの関数であることを認めさせてアナウンスさせるかどちらかの行動が必要である。いずれにしても、特許明細書を分析してみるとNFMRの理論からしてAPPLEが独自に掌握しているとはとても思えない内容である。たまたまうまくいっているということで量産に踏み切ったとしたら、もし、たまたまうまくいかなくなったときにどうするのだろうか?ワイヤレス給電(ワイヤレス充電)の根本的な原理や仕組みがわかっていない。本当にこのままの理解度であったらとても量産に踏み切れるものではない。

●WattUpのワイヤレス給電/ワイヤレス電力伝送について
この技術は既に2014年の8月に公開されていて、明らかに放射型である。
したがって利点も欠点も放射型の特徴そのままである。
Energous社動画へのリンク

I-Phone7にどのような技術が搭載されるのか、報道が迷走しているようであるが、非放射型のAPPLE特許と放射型のWattUpとは全く異なる技術である。
両者を混同してはならないので慎重に分析すべきである。
しかし、APPLE社は自社で非放射(即ち近接場)の磁界共振型(NFMR)の特許を出願しておきながら、放射型のWattUpと独占契約を結ぶという点がどうも解せないのは私だけであろうか。



追伸2017
結局APPLEはiPhone 8でQiを採用することになった。したがって数多く研究されてきた「その他の方式」は継続研究または不採用になったということである。今回採用されたQiはV1.2である。QiはV1.1以降は一部磁界共振(二次側のみを共振させる)を採用している。つまりこれは調相結合または磁界調相結合を採用したということである。ワイヤレス給電(ワイヤレス充電)業界はまさにCCFLインバータ回路の技術開発史をトレースしているといえる。そしてまだゴールに至っていない。

●磁界共振(磁界共鳴)の構成には何種類あるのか?
磁界共振の構成には簡単に分類しただけもP-P、P-S、S-P、S-Sの4種類があるとされているが本当に正しいのだろうか。
PPSSPSSP

実はP-PとP-Sには意味がない。ネット上には磁界共振(電磁界共鳴)の原理と称してP-P接続の磁界共振の図が溢れ、その横に音叉の共鳴と書かれ、さらにコイルとコイルとの間が共鳴フィールドになっているという図解があるのが一般的である。こういう解説は読む人を大きくミスリードするのでそろそろ間違いだということに気付いてもらいたいところである。
●ラジオの増幅回路と混同?
それではなぜ、ネット上に磁界共振、或いは電磁界共鳴の原理と称してこのような図解が出回るのだろうか。
P-P方式、或いはP-S方式をFETでスイッチングすると、一次側の共振コンデンサと称するCp1にはスイッチングの大電流が流れてしまう。Cp1は共振コンデンサとしては全く働いていないのだ。これはDC-DCコンバータ回路やインバータ回路を設計したことのある人であればすぐに気付く間違いである。
PPSW

しかしながら、ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の解説になるとこの奇妙な駆動回路がいたるところに登場している。そういうところをみると、ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の解説をしている人たちが、実はコンバータ/インバータなどのスイッチング回路を全くやったことのない人だったりするからではないだろうかと考えてしまう。
つまり、ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電に携わる人の中にパワー回路経験者が全くいない、またはごく少数だということであろう。だから私などがこの回路を見るたびに発狂してしまうわけである。

それではこういう間違いがどこから来ているのか、冷静になって考えてみた。
ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の磁界共振をFM受信機の中間周波トランスに例えて疎結合、臨界結合、密結合を解説しようとしている人が多いことに気付く。
そのことから推測すると、多くの人がFMラジオの中間周波段の複同調回路を見て磁界共振の原理と勘違いしているのだろうと思う。
増幅回路としてならばCp1とL1とで並列共振回路を構成し、共振周波数で高インピーダンスになると高ゲインになるからCp1は共振コンデンサとして働いている。
PPtransistor

たしかにFM受信機の中間周波トランスの性質には疎結合、臨界結合、密結合、双峰特性などがあり、一方でWiTricityに端を発する間違った磁界共振の原理も流布されており、その方式を解析したり実測したりするとFM受信機の複同調回路と良く似た現象が観察される。
●FM受信機の双峰特性とは原理が異なる
しかし、密結合の際に双峰特性が現れる原理は、FM受信機の複同調回路の場合、一次側の共振回路が並列共振回路として働き、二次側の共振回路が等価回路的には直列共振回路として働いて、一次側の共振回路の共振電流を奪うところから双峰特性が現れるのに対して、(WiTricity提唱の)ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の場合はこれとは原理が異なる。
(WiTricity提唱の)ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の双峰特性は、二次側の共振回路が等価的に並列共振回路として働いている周波数を使う。この二次側共振中心点では二次側コイルに一次側から送られてくる磁束とは位相が90度ずれた磁束が発生して結合を阻害するために双峰特性が現れる。共振が強ければ強いほど(Q値が高ければ高いほど)位相ずれが正確に90度に近づき、電力が全く伝わらなくなる。これが密結合によって双峰特性の中心部の凹みが生じる原理である。
二次側の共振回路が等価的に並列共振回路として働いている周波数のことは反共振周波数とも言われている。
以上はWiTricityによって提唱されている結合モード理論に基づく磁界共振の設定をした場合であって、上記のことが全て理解できたとしてもワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の開発には役に立たない。どうすれば失敗回路になるかという意味でなら役に立つであろう。
WiTricityによって提唱されている磁界共振では、密結合の際に生じる双峰特性の伝達関数だけに目が行き、その双峰特性をいかにして消すかに腐心するからそこが大きな間違いになる。
着眼点は二つある伝達関数のピークを消すのではなく、共振中心点の部分を反共振による凹みと解釈するべきである。そういう解釈をした論文は今のところ全く見かけないのでいたしかたなくグリーンエレクトロニクスNo.19で発表させていただいた。
※ワイヤレス電力電送/ワイヤレス給電の開発で失敗しないためには、WiTricityが提唱する周波数である、反共振周波数(二次側の共振回路が等価的に並列共振回路として働いている周波数)を使うのではなく、二次側の共振回路が等価的に直列共振回路として働いている周波数(調相結合が起きる方の共振周波数)を使うようにするのが正しい。

●そもそも共振周波数には二種類あることを知っているのか?

共振周波数の式は高校の物理の教科書にも載っているが、反共振周波数のことは大学で習う教科書にもポツポツとしか載っていない。そのせいで、反共振周波数という言葉を知らない人は多いと思う。
例えばこんな簡単な共振回路でも、二つの性質の異なる共振周波数が観測される。
impanalyzer回路
二次コイルに並列または直列ににコンデンサを接続し、一次側からインピーダンスアナライザを使って観測してみると共振点が二つ存在することが確認できる。
周波数の低い方の共振が高校で習ったはずの共振なのだが、二次側を共振させた場合はω2=1/√(LC)が反共振周波数になる。周波数の高い方の共振がω2=1/√((1-k^2)LC)で共振周波数または直列共振周波数と呼ばれる。
並列共振点と直列共振点
横軸は周波数、縦軸はインピーダンス
WiTricityは二次側の共振をω2=1/√(LC)としているのであるから明らかに左側の反共振周波数を使おうとしている。しかし実際には、二次側の共振回路の設定を少し変えて直列共振周波数のほうに合わせると、突然に出力電圧が高くなってさらに効率よく伝送できるようになる。

※これはWiTricityが本当に反共振周波数を使おうとしているのか、結合係数が小さな領域で直札共振周波数と反共振周波数とが近づいているために区別がつかずに間違ってしまっているのかは不明であるが、天下のMIT(WiTricity)様が式を間違えるか?一応論文等にはω2=1/√(LC)と書いてあるので、WiTricityは二次側の共振のうちの反共振周波数を使おうとしていると仮定して話を進める。

ketsugoujisoku
直列共振周波数に合わせると効率がよいことは発熱が少ないことでもわかる。この設定であると双峰特性にもならない。これこそが本命の磁界共振であると思われる。しかし、天下のWiTricity様にはあなたの式が間違えているなんて怖くて言えない。(←言っちゃってる^^;)

FMラジオの中間周波トランスとWiTricityの磁界共振の双峰特性、一見して両者は良く似ているようであるが全く異なる原理なのである。
この両者の双峰特性は、伝達特性を詳しく見ると全然曲線の形が違っているのである。

●紛らわしいけれど正しい回路
P-P方式は意味がないと述べたが、世の中には紛らわしいものが存在する。
次の回路はP-P方式ではない。スイッチング素子に過大電流が流れることもない。
preup
プレ昇圧という回路であり、まずはLsとCsだけで昇圧する。二次側との結合は調相結合になっている。二つの昇圧回路の組み合わせである。この方式は直列共振と直列共振とのコラボなのでお互いに協調して良い結果が得られるのである。
この方式を使っているメーカーのホームページを見ると60cmの電力電送に成功したと書いてある。そして、P-P方式だと解説しているのである。(オイオイ)
違うんだよなー。



追伸、
 最近WiTricityの結合モード理論(Coupled Mode Theory)に大きな変化が生じたようである。実はWiTricityも反共振周波数を使うことが間違いだと気付いたと思われ、2016年12月に突如としてTunable matching network (TMN)の発表から今までの反共振周波数を使うことはやめた。そしてTMNを調整して直列共振周波数を追いかけ始めたようである。
その結果として2007年以来10年間も迷走していた研究が、最近になって一気に実用に向かって進み始めたのである。
今までWiTricityのライセンシーなど、WiTricityから技術供与を受けた人たちはその旧理論に基づいて二次側共振周波数(反共振周波数のこと)は変わらないと主張し続けていた。これに対して我々は少数派ながら二次側共振周波数(直列共振周波数のこと)はコイル間距離によって変わると言って意見が食い違っていた。(つまりお互いに使おうとしていた周波数が異なっていた。)
グリーン・エレクトロニクス(19)
ある教授から、「なにしろほとんどの人は二次側の共振に反共振周波数と直列共振周波数とがあるなんて知りませんからそこから説明しないといけませんよ」とご指摘を受けたことで、グリーンエレクトロニクスNo.19の原稿に丁寧な説明を追記した次第である。
業界は早く反共振周波数と直列共振周波数との存在に気づけばよかったのに、いったいこの十年間何をしていたのだろうか。
この十年間は共振回路を一次側と二次側とに置くことによって今までの電磁気的法則とは違う何か特別な現象が起きるというような妄想に憑りつかれた十年であったと言える。
基本的な磁界共振は共振が二次側にあれば成立する。それを調相結合と言う。一次側の共振は単なる補助とか脇役の存在だったこと、なくてもいいしあっても良い。一次側の共振をやめて、一次コイルを高電圧で駆動すれば一次コイルを共振させた場合と同じ効果が得られる。共振が一次側と二次側とに両方あると特別なことが起きるなんてことはなかったのである。
少なくともこれで送電側と受電側との両方に共振器を置くことを必須とする解説や音叉の共鳴に例える解説はできなくなった。
困ったのはWiTricityの旧結合モード理論を支持してきた人たちである。今まで旧結合モード理論をもとに磁界共振を説明してきたのに突如としてWiTricityに梯子を外されたのだ。WiTricityに梯子を外されたことに明確に気づくのは2017年の年末か2018年の初頭と予想されるので、世間をミスリードするWEBページの図はワイヤレス給電の説明からそっとフェードアウトして行った方が良いかもしれない。
実はワイヤレス給電の本当のパイオニアはMIT(WiTricity)ではなかった。1993年から日本で実用化が始まっていたのである。いつまでもMIT(WiTricity)をパイオニアとして崇めていると大恥をかくことになると思う。

ロイヤー回路は電圧共振なのか電流共振なのかと聞かれることが多いので整理する。
ロイヤー回路は鉄芯の飽和を利用した弛張発振回路なので電圧共振回路でも電流共振回路でもない自励発振回路である。

●電圧共振回路の定義
フィードバックループ内に並列共振回路またはその等価回路を含む自励発振回路を電圧共振回路という。
その発信周波数近傍において上記並列共振回路の電圧が最大電圧となるという特徴を有する。
コレクタ共振回路(コレクタ同調形発振回路)は典型的な電圧共振回路である。

●電流共振回路の定義
フィードバックループ内に直列共振回路またはその等価回路を含む自励発振回路を電流共振回路という。
その発信周波数近傍において上記直列共振回路の電流が最大電流となるという特徴を有する。
蛍光灯用インバータ回路のほとんどは典型的な電流共振回路である。

●他励型回路
電圧共振回路でも電流共振回路でもなくそもそも自励発振回路ではない。
一部の蛍光灯用インバータ回路は他励型回路である。中国製コンパクト蛍光灯によく使われており、寿命に関係なく故障し、不良の山を作っている。Hard Switching Protection機能を電流共振の機能と勘違いして採用した設計者が悪い。或いは、Hard Switching Protection機能を自慢し過ぎて設計者を惑わすICメーカーのほうが悪いかも。

ワイヤレス電力伝送(WPT)が注目されてから時間が経つにつれて、多くの方式が提案されて発表されてきたようである。そこで最新版をまとめてみた。
ワイヤレス電力伝送は大きな分類として放射型と非放射型に分けられる。長距離を伝送させるのであれば放射型が圧倒的に有利であろう。一方、効率を追求するのであれば非放射型がよい。しかし、両者を並べたり比較したりして語ってはいけない。特に「放射型と非放射型の特徴を併せ持つ」なんてものを世間に期待させるのは厳禁だ。例えば放射型のように長距離を伝送でき、かつ非放射型のように効率が良いなんてものを期待しがちであるが、そういう都合の良いものはとりあえず存在しない。しかし報道によっては世間に過大な期待を持たせるような報道をしてしまっているような気がするのだがいかがだろうか。実際には両者はまるで別の技術なのであるから報道するときは最初に放射型・非放射型のタイプを明確に分けてから説明に入ってほしい。
最近では放射型の一つの方法として超音波を使ったU-Beamというものまで登場している。
今後も新しい提案が生まれるかもしれないが、そのときは順次更新する予定である。
kindWPT

余談だが電磁誘導と調相結合と磁界共振との違いを簡単に述べよと言われた場合、特定のマニアだけにはすぐに理解できる言葉で言うと次のようになる。
電磁誘導はトランスの原理、調相結合は共振変圧器の原理、磁界共振はDRSSTCの原理である。
磁界共振は決して共鳴の原理ではない。巷に溢れる報道や解説に翻弄されないよう注意すべきである。

参考資料
トランスの電力変換について

トランスの電力変換に対する主な誤解は、励磁電流と負荷で消費される電流をごっちゃに考えるところから始まるものと思われます。まずは、主磁束の働きに着目して考えて行きましょう。
トランスの電力変換を考える場合、コアの励磁に必要な電流と電力変換される電流は分けて考えなければなりません。
基本は、

1.励磁電流は電力変換に寄与しない
2.トランスが電力変換している最中に、励磁電流は変化しない


であり、これは誤りのない事実なのでこれを前提としておさえます。

次に、トランスが電力変換する原理を考えます。
まず、仮に、トランスの二次巻線に負荷がつなげられていない状態を考えます。
負荷がなく、二次巻線に全く電流が流れない状態では、トランスの一次巻線はただのチョークコイルと同じです。

したがって、

数式1

となり、一次巻線には励磁電流だけしか流れません。励磁電流は主磁束を発生させます。主磁束とは一次巻線と二次巻線との双方と鎖交する(貫く)磁束のことを言います。トランスの電力変換の主役のことです。
二次側が無負荷の場合、一次巻線はチョークコイル状態ですから励磁電流しか流れません。
それはインダクタンスがあるので、電流が流れるのをじゃましているからです。
二次巻線には主磁束の働きで電圧だけが発生していて電流が流れませんから、主磁束への影響は全くありません。

では、トランスの二次巻線に負荷がつながれ、電力が消費されるとなぜ一次電流が増えるのでしょうか。 これが重要です。
すなわち、じゃまが減ったらどうなるのか?

         答え:電流が増えますね。

どうしてじゃまが減るのか理由を見てみると、

数式 2

つまり、二次側で電力が消費され、二次巻線に電流が流れると、一次巻線のインダクタンスを減らすように(主磁束を減らすように)逆向きの磁束Φ2が発生しようとします。(負荷が抵抗性の場合は主磁束と位相が90°ずれていますが)
その分一次側の電流が増えて主磁束を増やし、もとの励磁電流で作られていた主磁束Φ1に近づけようとするので、一次電流が増え、結果として電力変換になっているのです。
# 教科書によっては主磁束がΦ12、Φ21と書かれているものもある。漏れ磁束まで考慮した記述だとΦ12、Φ21の表現が多い。(漏れ磁束がΦ1、Φ2)
# 外国の教科書だと主磁束はΦ1、Φ2で漏れ磁束はΦσ1、Φσ2と書くものが多い。
# すぐに式をたくさん並べてくるものが多く、平易に書かれているものがない。

ここで、副産物として、
1.二次側で電力が消費されるとわずかに励磁−主磁束Φ1が減る。
理想的には減らないことになるのですが、実際には主磁束はわずかに減る傾向になります。

つまり、大きな電力を変換すればするほど、コアの磁束密度は減って(ほとんど減らないけど)コアの負担が減るのです。

ここのところが、全く知られていなくて、小さなコアで大きな電力変換をしようとすると、コアが飽和するのでは? と考える人がいますが、これは全くの誤解です。
# ただし、非漏れ磁束トランスの場合に限る。
# 誤解なきように、一次巻線の電圧を上げて電力供給を大きくしようとすると励磁は増える。
# 二次側に低インピーダンスの負荷をつなげて電力供給を大きくしようとした場合に励磁が減るということ。

また、上記のような原理でトランスが電力変換するので、「磁束が漏れたら漏れた分効率が低下する」も全くの誤解です。漏れた磁束=漏れ磁束はチョークコイルと等価の働きをしますから電力損失にはなりません。
それとやめてほしいのですが、「漏れた磁束が電波になって放射される・・・」。それは完全に間違っています。それが本当だったらアンテナ設計がものすごく楽になるはずですが実際にはそうじゃありません。

例えば、
「磁束が漏れたら漏れた分効率が低下する」と考える人は、変換する電力が増えれば増えるほど、主磁束Φ1は増えるという誤解を伴っているでしょうし、変換する電力が増えていくといつかはコアが飽和する、という誤解もまた伴っているはずです。

結局、考え方の重要ポイントは、

トランスの電力変換は、主磁束を増やそうとして電力変換するのではなく、主磁束を減らそうとして電力変換するのです。

つまり、次のように一次巻線側から考えようとすると間違った考え方に至りやすいということです。
例えば、

・一次巻線に電流が流れ、それが主磁束を作り出し、その主磁束が二次巻線に影響を与えて二次巻線に電圧が発生し、二次側に電流が流れる…
(この考え方だとどうしても、「漏れた磁束は?…」という疑問に陥りやすい)

ところが、これを、二次巻線側から先に考え、

・二次巻線で電力が消費されると、一次巻線の主磁束が減って磁束のバランスが崩れようとするので、あわてて一次巻線から電力が供給される。
・二次巻線から電力を引き抜くと、主磁束が足りなくなり、足りない分だけ一次巻線に電流が流れて主磁束をもとどおりにしようとするので電力が供給される。
(この考え方だと、二次巻線に影響を与えている磁束だけを考えればいいので、漏れ磁束は電力変換に関係なくなる)
という具合に、考えの順番を入れ替えていただければわかりやすいのではないでしょうか。

# ただし、これは漏れ磁束をほとんど考慮しない理想変圧器に近いトランスの場合。
# 漏れ磁束の働きは別の項で説明する。

WiTricityの磁界共振(電磁界共鳴)方式では共振器を一次側と二次側とに配置していましたが、詳しく解析していくと共振器は二次側のみでよいことがわかってきます。
そうなると、はたしてWiTricityの磁界共振方式が最適な方式だったのかどうかということが疑問になってくるでしょう。
WiTricityの磁界共振方式の一次側共振器は実はなくてもいいわけで、これがあるために一次側の駆動周波数の自由度を減らす邪魔者だったわけです。では一次側共振器は一体なんなのかというと、一次側の磁界を共振によって増強するためのブースターの働きをしています。
それってどこかのカード会社の技術だったなと思って探したら古い特許明細書(特開平3-98432号)が出てきました。
H03-98432

3のコイルと4のコイルとは疎結合で、4のコイルと5のコンデンサの部分が一次側共振器に相当します。4のコイルと5のコンデンサとで共振して、4のコイルには高い電圧が発生し、その共振電流の働きで一次側の磁界が強くなります。等価回路的には共振昇圧という回路になります。
明細書を読むと、この共振昇圧がある場合とない場合とでは、送信電力が50倍ほど変わると書かれていますので、このことはつまり1991年頃にはWiTricityの磁界共振と良く似たものがICカードで既に使われていたことになるわけです。
結局現在、その方式がスイカなどのICカードで主流でないのは、磁界のブーストなら一次コイルの駆動電圧を上げれば済むという結論になったからです。駆動電圧を上げるだけで済むならば、周波数依存性のある一次側共振器は不要で、むしろ使いにくいという結論になるわけです。(まだその先の話もあるのですが、別の機会に述べます。)
●新しい方式の主役は二次側共振
新しい方式はWiTricityのMagnetic Resonanceよりもいくつかの点で優れるため、これを改良磁界共振(Advanced Magnetic Resonance-AMR)と名付けることにしました。この方式は二次側の共振が主役ですが、結合のさせ方に調相結合を使うというのが特徴です。
二次側共振といっても二次側の共振周波数は二つあり、それぞれを並列共振周波数と直列共振と言います。それぞれの共振の性質は大きく異なり、ほとんど真逆です。
式で表すと、
並列共振周波数=1/(2π√L2・C2)  ・・・・・・・・・・ 調相結合が起きない方の共振
直列共振周波数=1/(2π√(1-k^2)L2・C2) ・・・・  調相結合が起きる方の共振
となります。
AMRに使われる共振は調相結合の起きる方の共振で、直列共振周波数が使われます。一方、MIT(WiTricity)の提唱する磁界共振(MR)、そしてAPPLEなどが提唱するAPPLEのNFMRなどで使われる共振は各論文、技術資料、特許出願などを見る限り調相結合が起きないほうの共振で、並列共振周波数が使われています。というか、今までの発表資料がただ単純に二次側の共振の式を間違えているのではないかと思われるのですが、間違えているかどうかは当の大御所MIT(WiTricity)が間違っていましたと認めない限り、こちらからはどうすることもできません。したがって、MIT(WiTricity)の磁界共振は二次側の反共振を使うということにしておくしかないのです。ではMIT(WiTricity)の設定のままなぜかワイヤレス給電は実現できているよ、と思う人も多いでしょうが、実は上の式、並列共振周波数と直列共振周波数は結合係数kが小さい時は(1-k^2)がほとんど1なので、注意深く観測しないと区別がつかないという問題があるわけです。「数値が近いなら一緒でいいじゃない」とそういう雑なことを言ってはいけません。そんなことを言うと、ワイヤレス給電の実験を試しにやってみたところわりとすんなり成功したのだが、その後部品の精度を高めて再実験したがどうもうまくいかないという珍現象に見舞われることになります。
そんなところから一応MIT(WiTricity)のMRは反共振周波数、AMRは直列共振周波数を使うとしておきます。
この点が従来MRとAMRとの大きな違いですが、もっとも大きな違いは、二次側の共振が主役なので一次側の共振はなくてもいいのです。
オプションとして一次側の共振を使うこともありますが、一次側の共振は使うこともあるし使わなくてもいいし、いずれにしても主役ではないので必須ではありません。
MITやWiTricityのMR、APPLEの提唱するNFMRでは、一次側の共振と二次側の共振が必須ですので、この点がAMRと大きく異なるわけです。
現在High-QのAMRを研究しているのは現時点で日本では4社だけです。(Low-Qの調相結合をAMRと見なせば1990年代初頭のノートPCやAGVの黎明期からありますが。)
WiTricityの磁界共振は一次側の共振器の共振周波数も二次側の共振周波数も変化しないという式が立てられていますので、二次側の共振は並列共振の方を使おうとしていることが明らかです。(いや、本当は「間違っていることが明らかです」と言いたいのですが。)
ところが実際には直列共振周波数の方が利用価値が高く、高効率です。しかし、二次側共振器の直列共振周波数はコイル間距離によって変化するという厄介な現象があることがわかっています。(後述)
たとえば、TDKの特許5471283号より抜粋すれば、二次側共振器130の共振周波数が調整できるように可変のインダクタL5を設けてこれを調整します。

TDK5471283
この方式はこの方式で一つの解決法なのですが、変化する二次側共振器の共振周波数に追随して一次側の駆動周波数を変化させることでも解決が可能です。
この場合は一次側の共振器は邪魔なので取り去ってしまいます。(例えば特開2014-045552特開2014-140290US20120248882 TDKを参照)
すると、WiTricityの「共鳴場エバネセントテール」ってどうなっちゃうんでしょうか?
実は共鳴場エバネセントテールとの結合(俗に共鳴箱の原理と言われる)は不要なのです。
TECMO

そして、共鳴場の結合という二つの共振器同士だけに起きる特殊な現象というものは最初からなかったのです。
あったのは駆動側コイルの磁束位相と共振しているコイルの磁束位相とが同期して磁束がお互いに引き込まれて主磁束(Mutual Flux)を形成する調相結合(Magnetic-flux phase synchronous coupling)の現象だったわけです。そして、この主磁束が介在して電力伝送が行われます。ここで、「共鳴場エバネセントテール」の結合とは主磁束のことなんだよ、という説明のし方もありますが、それならば最初から主磁束と呼べばよかったでしょう。それと、主磁束の形成は共振器同士の結合に限らず、位相が同期したコイル同士であればどこでも起きます。ワイヤレス電力伝送の解説をいろいろと参照しますが、主磁束という言葉がほとんど見受けられないのはどういうことでしょうか。とても大切な磁束であり、電力伝送を媒介する主役の磁束なのにです。
調相結合は世界最小CCFLインバータ回路の発明の基本となる動作原理の一つなのですが、これが改良磁界共振(Advanced Magnetic Resonance)でもそのまま応用できます。
テスラ・コイルの一次コイルと二次コイルとの結合にも調相結合が働いています。つまり、調相結合は結合の弱い(結合係数の低い)コイル同士の間で電力伝送を行う場合の最も基本的な原理であるといえるでしょう。
実際に共振器は二次側共振器のみとし、一次側回路はハーフブリッジで駆動し、二次側共振周波数の追従はCCFL蛍光灯の電流共振技術をそのまま利用してワイヤレス電力伝送をやってみました。
意外にあっさりと素直に動作することを確認しました。
専用ICなどは一切使わずに簡単なロジックゲートで回路が組んであります。
動画をご覧ください。これは、アマチュア工作でワイヤレス電力伝送を試してみるには最適な回路かもしれません。これによって、ワイヤレス電力伝送は高度な技術ではなくなり、あたりまえのように身近にある存在になるでしょう。
この回路はハーフブリッジながら、自動ZVSでソフトスイッチング動作が行われています。
ハーフブリッジでZVS(ゼロボルトスイッチング)のソフトスイッチング動作を行うというのは、本来ならばかなり難しい技術なのですが、電流共振技術を使うと簡単に自動ZVSが実現されます。
ZVSはソフトスイッチングですからEMIノイズもたいへんに小さくなります。
コイル間の距離変化にも強く、コイル間距離が変化しても一次コイルを駆動する際の力率は常に1近くを維持します。
ワイヤレス電力伝送で最も重大な課題となっているロバスト性についてもほぼ完全な解決ができています。
電流共振技術は二次側回路の共振周波数変化を自動追尾するので、コイル間距離が変化して共振周波数が変化しても、その周波数変化を自動的に追いかけ、常に共振中心周波数の最も伝達効率の良い周波数で一次コイルを駆動します。



次は平行二線路を用いたワイヤレス電力伝送を試してみる予定です。
何度も述べてきたことですが、CCFLインバータ技術とワイヤレス電力伝送の技術は非常に良く似た技術であるといえます。ワイヤレス電力伝送を開発される際にはCCFLインバータ技術のアーカイブを参照されると、多くのヒントが述べられていることに気付かれるものと思います。

おまけです。
ソリッドステートテスラコイル(SSTC)を電流共振回路で動かしています。
動作原理は一緒です。
テスラコイルの共振周波数は人が近づくだけで分布容量(寄生容量)が変化し、共振周波数が変わります。電流共振回路を使えば共振周波数が変化しても自動的に追尾します。

さらにおまけです。
上記のSSTCの電流共振回路はこのタイプの位相検出方法を使っています。
CCFLインバータ回路と原理は同じですね。
共振電流検出手段3

●二次側共振器の共振周波数について
二次側共振器の共振は二次側共振器のコイルのインダクタンスと共振するのではなく、漏れインダクタンスと共振します。ここのところが一般のワイヤレス電力伝送の解説の中でほとんど明記されていません。
関係式は、送電側コイルと受電側コイルとの結合係数をkとして、二次側のコイルのインダクタンスをL2とし、共振コンデンサをCsとした場合に以下のようになります。
form100
この式でわかるとおり、コイル間の距離が遠くなって結合係数が小さくなるとk自乗が小さくなりますから、二次側の漏れインダクタンスがほとんどL2と近くなるので、見落としやすいといえば見落としやすいところでしょう。
しかし、わずかな共振周波数の変化であっても、二次側の共振器のQ値は高い値に設定されているので、この少しの共振周波数変化が伝達関数に大きく影響します。ですからこの式を把握しておくことはたいへんに重要です。
この式は、CCFLインバータ回路では一般的な知識として扱われてきました。ワイヤレス電力伝送をやっていると、「それってCCFLインバータ回路ではこうやっていたんだよ」、みたいな話がまだまだ出てきそうです。

MITの電磁界共鳴または磁界共鳴(MR)方式と言われる発明の特許番号がわかったので発明家の立場から特許請求項を分析してみた。
いくつか気になる部分があったので検討してみることにした。
WiTricityの特許はマサチューセッツインスティテュートオブテクノロジーの権利者で検索することにより出てくる。

特許番号と請求項
発明の名称は、
特許4921466 無線非放射型エネルギー転送
特許5190108 無線エネルギー伝達装置
である。日本のほとんどの特許がワイヤレス給電(充電、電力伝送)、非接触給電(充電、電力伝送)で出願されているので、検索語によっては見つけにくいかもしれない。
特許明細書の中で重要なのは請求項であり、請求項は26項ある。その中で一番重要なのは独立項と呼ばれるもので請求項1と請求項16である。その他の項は従属項という。
特許5190108 の請求項1と請求項16が独立項なので見てみよう。

【請求項1】
第1の高Q値共振構造と;第2の高Q値共振構造とを具えた無線エネルギー伝達用の装置において、前記第1の高Q値共振構造は、共振周波数ω1及び固有損失速度Γ1を有する第1モードを有し、前記第2の高Q値共振構造との間で電磁共鳴を利用して、エネルギーを無放射で距離D越しに伝達するように構成され、前記距離Dは、前記第1の高Q値共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2の高Q値共振構造の特徴的サイズL2より大きく、前記第2の高Q値共振構造は、共振周波数ω2及び固有損失速度Γ2を有する第2モードを有し、前記無放射のエネルギー伝達に、前記第1の高Q値共振構造の共鳴場エバネセント・テールと前記第2の高Q値共振構造の共鳴場エバネセント・テールとの結合が介在し、前記第1の高Q値共振構造が、Q1=ω1/(2Γ1)なるQ値を有し、前記第2の高Q値共振構造が、Q2=ω2/(2Γ2)なるQ値を有し、前記無放射の伝達が速度κを有し、前記第1の高Q値共振構造及び前記第2の高Q値共振構造が、
【数1】
 getimg02
であるように設計され、前記特徴的サイズL1は、前記第1の高Q値共振構造全体を包囲することのできる最小の球の半径に等しく、前記特徴的サイズL2は、前記第2の高Q値共振構造全体を包囲することのできる最小の球の半径に等しく、前記距離Dは、前記共振周波数ω1に相当する波長λ1=2πc/ω1より小さく、かつ前記共振周波数ω2に相当する波長λ2=2πc/ω2より小さく、ここにcは光速であり、前記第2の高Q値共振構造が、負荷に誘導結合されていることを特徴とする無線エネルギー伝達装置。

【請求項16】
無線エネルギー伝達の方法において、
第1の高Q値共振構造と第2の高Q値共振構造との間で電磁共鳴を利用して、エネルギーを無放射で距離D越しに伝達するステップを具え、前記第1の高Q値共振構造は、共振周波数ω1及び固有損失速度Γ1を有する第1モードを有し、前記第2の高Q値共振構造は、共振周波数ω2及び固有損失速度Γ2を有する第2モードを有し、前記距離Dは、前記第1の高Q値共振構造の特徴的サイズL1より大きく、かつ前記第2の高Q値共振構造の特徴的サイズL2より大きく、
前記無放射のエネルギー伝達に、前記第1の高Q値共振構造の共鳴場エバネセント・テールと前記第2の高Q値共振構造の共鳴場エバネセント・テールとの結合が介在し、前記第1の高Q値共振構造が、Q1=ω1/(2Γ1)なるQ値を有し、前記第2の高Q値共振構造が、Q2=ω2/(2Γ2)なるQ値を有し、前記無放射の伝達が速度κを有し、前記第1の高Q値共振構造及び前記第2の高Q値共振構造が、
【数4】
getimg02
 であるように設計され、前記特徴的サイズL1は、前記第1の高Q値共振構造全体を包囲することのできる最小の球の半径に等しく、前記特徴的サイズL2は、前記第2の高Q値共振構造全体を包囲することのできる最小の球の半径に等しく、前記距離Dは、前記共振周波数ω1に相当する波長λ1=2πc/ω1より小さく、かつ前記共振周波数ω2に相当する波長λ2=2πc/ω2より小さく、ここにcは光速であり、前記第2の高Q値共振構造が、負荷に誘導結合されていることを特徴とする無線エネルギー伝達方法。

ここで、下線部は出願した後に審査があり、その際に補正されたことを表すものである。
特許の権利はこの請求項に書かれた範囲になる。
そうすると、請求項の中の単語や節(エレメントという)が全て揃って特許の技術範囲となる。エレメントの一つまたは複数が欠落しているものは特許の技術範囲外となる。
赤字で示した部分は私が色づけしたもので、被定義語と呼ばれ、明細書内で発明者が自分で定義することができるとされている。その他の語は常識で判断できる場合は意味も常識どおりである。
また、既に常識どおりの意味が決まっている言葉であっても発明者が被定義語として明細書内で定義してしまうこともできる。百科事典や常識と食い違う意味に定義することも可能だ。このときは常識的な(辞書的な)意味が優先するか明細書内で定義した意味が優先するかは各国の特許制度によって違う。米国では明細書内定義が優先すると決まっている。日本では解釈ルールが決まっていないので、たまに明細書内定義がはっきりしているのに、辞書や文献などの外部証拠の定義が持ち込まれたりして、特許侵害訴訟などでは特許解釈の混乱のもとになっている。(というか、裁判官の腹づもりで決めていいことになっている。中世だな<Shut up!)
●電磁共鳴について
ここで気になるのがその被定義語が明細書内でどう定義されているかである。まず、「電磁共鳴」という言葉であるが、これが明細書内で定義されていない。
明細書内には「共振モードがいわゆる磁界共鳴であり」とあるが、電磁共鳴と磁界共鳴という言葉が同じ意味であるかどうかがはっきりしない。「いわゆる磁界共鳴」という以上、世間で使われている言葉に従えという意味になるが、ワイヤレス電力伝送ではWiTricity自身でプレスリリースした言葉がマスコミ報道の中でエコーのように飛び回っているだけで、信頼性のある第三者的な定義のようなものはまだない。学会論文にしてもMITがScienceの中で使った言葉が伝言ゲームになっているだけである。結局、明確な定義はどこにもない。
次に「共鳴場エバネセント・テール」とは何なのか、エバネセント・テールとは、一般に光の進路の波長に近いところに現れる電場、磁場の近接場のことで、光が放射エネルギーなのに対してエバネセント場は非放射であるからそのことを言っているのかなと思う。それが「無放射のエネルギー伝達」という意味だとすればここまでは矛盾がないが、エバネセント・テールと言った以上電磁場であり、電界、磁界の双方が介するエネルギー伝達である。それが共鳴場であれば何か特別なことが起きるというわけである。その結果、このエレメントは「無放射のエネルギー伝達の共鳴場エバネセント・テール」という新語を作り出したかまたは新たなる物理現象を利用した発明ということになって、この明細書内における「共鳴場エバネセント・テール」は明らかな被定義語ということになる。
エバネセント・テールという言葉は聞き慣れないが、放射エネルギーである光にも電界の影響場と磁界の影響場があり、電界および磁界、それぞれが単独で影響する場合には放射エネルギーにならない「近接場」というものが存在することは存在する。それをエバネセント場というのであるが、WiTricityの特許請求項ではこれを「電磁場」と言っているようなものなので、電場、または磁場のいずれか一方だけの現象であればその請求項からは外れることになる。
さらに追求してみよう。共鳴場エバネセント・テールが被定義語だとするならばその言葉の定義が明細書内に書かれていなければならない。そこで、それを明細書内で探してみると、【0045】に、
【0045】
他の態様では、無線エネルギー伝達の方法を開示し、(略)この無放射のエネルギー伝達には、第1共振構造の共鳴場エバネセント・テールと第2共振構造の共鳴場エバネセント・テールとの結合が介在する。
と、ここにしか書かれてないので、これによって、エバネセント・テールという言葉が定義されたと言うしかない。
最近の(日本流の)明細書の書き方では被定義語ははっきりと被定義語とわかるように書いている。(そうじゃないと裁判官が勝手に外部証拠を採用しようとするので、)

ここでいう共鳴場エバネセント・テールとは第1共振構造と第2共振構造のそれぞれに共鳴場を生じるものであり、そのそれぞれの共鳴場が共鳴場エバネセント・テールによって結合されるものをいう

ぐらいの強い言い方をして定義だ!と主張しておかないと日本では危ない。それにしても共鳴場エバネセント・テールとは意味不明な言葉である。電磁波には必ずエバネセント場があるし、それが共鳴しているからといって特別に何か新しい物理現象を生み出すものではないはず。もとの電磁波が強ければそれに比例してエバネセント場が強くなるだけであって、共鳴があるかないかは物理現象に関係ないはず。
でも、この明細書で言いたいことは、共鳴場エバネセント・テールが存在するということであるから第一に「共鳴」が必須エレメントであり、そして第二にエバネセント・テールつまり、「電場と磁場との双方が作用する近接場」がもう一つの必須エレメントだということになる。
ところが実はこの現象を私なりに実験/分析した結果から解釈すると、WiTricityが発表した資料の中で電磁界共鳴と言われているものは、電界と磁界の双方が作用する現象:電磁界ではなくて、どうやら磁界のみが作用していて電界が作用していないもののようである。そうするとこの場合、正しい物理現象としては古典的な言葉である主磁束(Main flux)の作用だというのが正しい。主磁束とは、一次巻線と二次巻線との双方を貫くように巻線と鎖交する磁束をいう。巻線間の相互作用を生じる磁束のことだ。
syncrophase

仮に明細書の書き直しができるなら、「共振させると磁束の時間的変化の位相が同期して(位相が同じになって)、コイルそれぞれで発生した磁束の引き込み現象が起きる。その結果多くの磁束が第1共振構造と第2共振構造との間の相互作用に介在する主磁束となって作用する。」と書くべきだった。
この説明のほうが古典的な電磁気学、電気工学でもすっきりと解釈できて良いと思う。その分、報道受けするような不思議な魅力が消え失せてしまうがしかたがない。さらに困るのは、存在しない物理現象をエレメントに含んでいるので特許は成立していても、その特許自体が意味のない特許(侵害立証不能な特許)になってしまうことである。
古典的解釈だとさらに言外に推測できることがある。コイル間の距離が決まると結合係数が決まるが、ワイヤレス電力伝送では結合係数が0.01ぐらいになることもある。そして、コイル間の結合係数は共振が起きても変わらない。ということは、多くの主磁束が生じているのなら、結合係数の逆数倍の漏れ磁束(トランスの主磁束-漏れ磁束の場合とは磁束の方向、位相が異なるので注意)も生じているはずである。いわゆる(said〜)共鳴場エバネセント・テールの周辺は膨大な量の漏れ磁束で溢れている。どれくらいの磁束密度なのか知っておかないと何か気になる。あまり遠くまで伝送させたくないというのが正直な感想である。
下記の動画みたいに夢を広げるのもいいが、非放射の近接場を使って家の中の一箇所のTxから家中にワイヤレス給電するのは妄想だと思う。せめて、EVとか机の下からとか、数十センチ以内にしてもらいたいものだ。


この磁力線の向きはおかしいんだよな
磁力線を人間の気分に合わせて書くのはどうかと・・

ところでさらに被定義語のはずなのに未定義な言葉がある。
「速度k」って何なのかな?結合係数kの誤訳ではないよね?
「固有損失速度Γ」もはっきりしない。
いずれにしても、誤訳でなければこれらのエレメントの全部が揃わないとWiTricity(MIT)の特許には引っかからないということになってしまうおそれがある。
それと「前記共振周波数ω1に相当する波長λ1=2πc/ω1より小さく、かつ前記共振周波数ω2に相当する波長λ2=2πc/ω2より小さく、ここにcは光速であり、」は常識の話なので無駄なエレメントである。
細かく言うと空気中の磁界の伝達速度は真空中よりも少し遅い。これは枝葉末節なこと。
特許解釈的には不要な限定に思え、いずれにしても問題の多い請求項である。もしかしたら、調相結合トランスの二次巻線に発生する分布定数性の遅延(1/4λで共振する)現象のことを言いたいのかなー、と思うが、それだとこのWiTricityの特許は分布定数性の遅延が現れる自己共振型共振器、つまり、分布容量で共振するタイプの共振器のみに限定されて、ループコイルと共振コンデンサによる一般的なLC共振器のほうは特許の技術範囲に入らないということになるのかもしれない。さらに1/4λの共振器に現れる進行波/定在波の速度は光速cよりも遥かに遅いのがあたりまえなのでやはり無駄な限定である。
さらに、Resonatorに関しては以下のことがわかっているので補足までに解説する。

Resonatorの等価回路
Resonatorは1/4λで共振する。これを自己共振と呼ぶのであるが、ちなみに自己共振型の共振器(resonatorと呼ぶ)がなぜ1/4λで共振するのかを図示してみた。
Resonator
正しい等価回路はどちら?
resonatorはコイルのインダクタンスと分布容量が分布定数状になっているところから磁束位相の時間遅延が生じて、これがちょうど1/4λの遅れになった周波数で共振する。(あまり利用価値がないが3/4λや5/4λとかの高次の共振もある)その等価回路を書くと、まず一般的にはつい,里茲Δ暴颪い討靴泙いちであるが間違っている。私も人のことは言えない。私も昔は,里茲Δ暴颪い討い燭海箸發△襦しかし、,療価回路では磁束位相の時間遅延が生じないのだ。そして実測とは異なる結果になる。正しい等価回路は△任△襦これはシミュレーションしてみれば磁束位相の時間遅延が見られるのでより正確な等価回路だと思う。
Phase05
Pとaとの間が調相結合
a、b、cと位相が遅れていくのが分布定数性遅延

ちなみに、コイル上に1/4λの位相遅延が発生することを利用して、初めて量産化・工業化したのは調相結合トランスを用いた世界最小インバータ回路が先であるので、こちら方面から見てもこのエレメント単独では新規性がない。

本当にWiTricityの特許は有効なのか?!
WiTricityの特許では「共鳴場エバネセント・テール」とか「電磁共鳴」というのがこの特許の中で重要な要素(エレメント=構成要件)になっているが、もしこのどちらかの現象が存在しないことになったらどうするのだろうか。
そこでわかったことが一つある。
ワイヤレス電力伝送では、いちいち電磁共鳴などというわけのわからない言葉を使わないで「共振」で」いいじゃないかと多くの人が言い出しているのだが、報道ではしつこいほど「電磁共鳴」「電磁共鳴」と洗脳するようにこの言葉を繰り返す。これはWiTricityから報道リリースで意図的にこの曖昧な言葉を流して既成事実化しようとして工作しているのだなという推測が成り立つわけである。
WiTricityには悪いけど、やはり電磁共鳴なんてものはない。古典的電気工学のLC共振ならある。

もっと決定的なことがある。
第1の高Q値共振構造と;第2の高Q値共振構造によって共鳴場エバネセント・テール介在しているということであるが、第2の高Q共振構造だけあれば効率のよい電力伝送ができてしまう。
電磁誘導と磁界共振の中間的な構成による電力伝送のシミュレーションと実験
そうなると、介在する共鳴場エバネセント・テールは存在していないことになってしまう。
高Q値共振構造が二次側だけでよいのであれば請求項上からも重要エレメントが二つ欠落してしまう。
現にそういう技術がTDKから特許出願されている。
特開2014-110733
特開2014-079107
特開2014-045552
(給電部の回路構成は給電コイルのみ、受信部の回路構成は受電コイルと受電コンデンサからなる直列共振回路とするワイヤレス電力伝送システム)
これはたいへんな事件になりそうである。

WiTricityの特許は複数に分割出願がされていて、これだけが全てではないという話もあるが、分割出願は特許の技術範囲を大幅に変えられないので、これだけの弱点を補うように分割によってシフト補正をすることはできない。
なお、WiTricityの特許は今後も順次特許査定されていくと思うので、重要なものが特許査定された場合はまた分析する予定であるが、精密な分析が必要であれば私よりもプロの分析である特許分析レポートなどを参照してほしい。

ところで、この話題を書くきっかけになったblogがこれである。
このblogでは「このWiTricityのポイントは "Resonant Magnetic Coupling" にあるようですが、IFT等の電磁結合の複同調回路(下記サイト参照)と原理的にどのように違うのかよく理解できません。」、と述べているが、実はそのとおりで、IFT(中間周波トランス)の結合と同じことが起きているだけである。
ただ、Q値を上げて大きくしてやってみた、そしたら電力伝送できちゃったという MIT Experiment の意義は大きい。極端なHigh-Qにするとギャップが数メートルあっても電力伝送できちゃうという事実は誰も知らなかったのだから、それを発見したという学術的功績は認めるべきものである。しかし学術論文としてではなく特許という視点で見た場合、惜しむらくは共振器が一次側と二次側と二つ必要だと言ってしまったことだ。結合の本質を分析すれば共振器は二次側だけでよい。一次側の共振器は共振昇圧という別の働きをしているだけなのである。二つの共振器が必須で共鳴結合するのではなく、それぞれが独立して別の働きをしているだけなのである。
WiTricityの特許は二つの共振器が共鳴し、第一共鳴場のエバネセントテールと第二共鳴場のエバネセントテールとの結合という新たな物理現象の存在を立証できない限り、実質的な効力のない特許だということになる。

ワイヤレス電力伝送/ワイヤレス給電の用語は、ネットで検索するといろいろな言葉が使われていることがかる。
皆、魅惑的な表現に魅了されて夢のある言葉を使いたがる気持ちはわかるのだが、科学的に裏づけのある現実的な用語を使ったほうがあとあとのためにいいと思うのでまとめてみた。
あんまり現実的な用語にされると夢がなくなっちゃうとか、活字数が増えて困るという報道の方々の都合も非常によくわかるのだが、総務省が統一的な言葉を選択して使っているので、一応右倣えしておいたほうがいいのではないだろうか。
報道の身になってみると無線給電は4文字、ワイヤレス電力伝送は9文字なのでワイヤレス電力伝送を使えと言われると都合が悪いのは理解できる。

 ●ワイヤレス電力伝送に関する用語
・総務省 ワイヤレス電力伝送 (Wireless Power Transfer)
・MR方式に関する言葉
磁界共振 、磁界共鳴、電磁界共振、電磁界共鳴
どれも英語に翻訳すればMagnetic Resonanceだ。 ただし、電磁界共振/電磁界共鳴に関しては電磁誘導の「電磁」ではなくて、電界と磁界という意味に解釈して、電界結合と磁界結合とを両方とも同時に使うと何か特別なことが起きると思って真剣に取り組んでいる方面の人もいる。その人にとってはいわゆる電界磁界ハイブリッド共鳴という意味になるようである。

・マスコミ/報道
ワイヤレス給電、ワイヤレス充電、ワイヤレス電力伝送、非接触給電、非接触充電、非接触電力伝送、無線給電、無線充電、無線送電、無線電力伝送・・・きりがない。
整理すると、用語を前半と後半とに分けた場合、前半が、
 ワイヤレス、非接触、無線
後半が、
 給電、充電、電力電送、送電
で、それぞれが組み合わさって12とおりの用語があるわけである。

*MR方式に関する言葉
電磁界共鳴、磁界共鳴、磁界共振

・個人BlogやTwitter
ワイヤレス給電、非接触給電、ワイヤレス充電、非接触充電
*MR方式に関する言葉
電磁界共鳴、電界共鳴

・その他
電界結合、電磁界結合

WiTricityとRezence (AirFuel Alliance)などが提唱するMR方式は英語では単純にMagnetic Resonanceだ。日本語では共鳴と共振とは意味が多少違うが英語ではどちらもResonanceとなる。
最近ではMagnetic Resonanceの結合をさらにMagnetic Resonance couplingまたは、Resonant inductive couplingと呼んでいるようであるが、この用語は特許庁の発明分類では一次コイルが一次側共振器を構成し、二次コイルが二次側共振器を構成し、その一次側共振器と二次側共振器とが同じ周波数で共鳴して特殊な共鳴フィールド(従来なかった新規の構成要件)というものを構成することによって電力伝送するものとなっているらしい。これは特許庁で発明の分類の際にそのように分類しているそうである。ここで、「特殊な共鳴フィールド」という言葉は特許的には新しい構成要件になる。実は物理的にそんなものは存在しないということがわかってきているので、特許が取れた後にその存在を立証できるのかが落とし穴となり、特許が本当に有効なのかどうかが怪しくなるのである。

一方、磁界共振のMagnetic Resonance couplingまたは、Resonant inductive couplingといえば、二次側のLC共振器に発生する磁束の位相と一次側駆動コイルに発生する磁束の位相とが同じになることによって、二次コイルに磁束の引き込み現象が起きて、一次コイルと二次コイルとの間に主磁束が形成され、その原理で電力伝送が行われるものを我々は以前から調相結合と呼んでいる。
実は磁界共振の主役は二次側共振器だけである。調相結合は英語に訳せばSynchronized Magnetic-flux Phase Couplingであるが、これこそがMagnetic Resonance couplingまたは、Resonant inductive couplingの本質である。
こちらはWiTricityなどが言う共鳴場というものは存在しない。一次側の共振器が存在しなくても二次側の共振器だけで成立する。
磁界共振は主磁束が主役なのか共鳴場が主役なのかはまだ議論にも上ってないし決着も付いていないが、オカルト性を排除して科学的に考えればそのうちに決着がつくであろう。
実際、MR方式では果たして一次側共振器、二次側共振器の両方が本当に必須なのかどうかいろいろと調べてみたが、一見して同じように見えるMR方式の回路図でも、二次側の共振として反共振を組み合わせるかそれとも直列共振を組み合わせるかで回路のパラメータが異なる。
二次側の直列共振の周波数と組み合わせたとにだけ調相結合の現象が起きていることが確認されたので、磁界共振(MR)の本質とは実は共鳴場ではないのではいか?実は、Magnetic Resonance couplingもResonant inductive couplingも、調相結合(Synchronized Magnetic-flux Phase Coupling)なのことではないか?ということになってきた。
そして、いわゆる共鳴場は存在しないとなると、Magnetic Resonance couplingもResonant inductive couplingも二次側共振器が主役であって、一次側共振器の構成は単なるオマケの存在に過ぎないと考えられる。
この考えで行くと、一次側共振器と二次側共振器が必ずしも必要だということではなくてMagnetic Resonance couplingもResonant inductive couplingも調相結合(Synchronized Magnetic-flux Phase Coupling)のオプションの一つということになるので調相結合と全部一緒にしてしまうべきである。一次側の共振の存在を含めて定義するのかそうでないのか、こちらの用語もなんとか整理してほしいものである。
●実は全て調相結合だったのではないか?
ところで調相結合は二次側の共振が主役である。調相結合という用語は昔、通産省(今の経済産業省)の技官から付けてもらったものなのだから歴史は長い。WiTricityのMRは、私見であるが、間違いなく磁界共振結合=調相結合(磁気位相同期結合と呼んでもいい)が主体である。
詳しくいうと、WiTricityのMRの解析を見ると調相結合ではない。
WiTricityのMRは二次側の共振のうち、反共振を使うことになっている。全ての解析結果が反共振との組み合わせであることを立証している。しかし、実験を行っているうちにコンデンサの値かコイルのインダクタンスをちょっと間違って調相結合の起きる方の共振である、直列共振に嵌って良い実験成果が出たと勘違いしているのであろう。
●電磁界共鳴ってちょっと魅惑的?
ところで報道に関して、用語は、報道の都合としてはなるべく魅惑的な用語で呼んだほうが多くの人が記事に惹きつけられる。そういう都合からつい「電磁界」「共鳴」を使ってしまうのだろうが、それぞれの方式ごとに正確に分類し、「電界」か「磁界」かを使い分けてほしい。そして「共鳴」よりも「共振」を使ってほしい。
そうでないと、個人Blogなどでは必ず魅惑的な「電磁界共鳴」が選ばれてしまってその言葉が検索に溢れてしまうことになる。みんな、現象の解明がされちゃったと思うよりも、未知な現象に接していると思ったほうが夢が膨らんで楽しいからそうなる。今のところ電界磁界両方を使ったワイヤレス電力伝送はマイクロ波送電だけである。放射型とも呼ばれる。
放射型の放射エネルギーは距離の自乗に反比例して減少する。電磁波のようなものはけっこう遠くに届くということである。
今話題になっているQiやWiTricityのRezenceなどは非放射型に分類される。電界結合方式も非放射型である。これは距離の三乗に反比例して減少する。電界結合や磁界結合のようなものは、電力源の近くにしか届かないとういうことである。

WiTricity(MIT)のMagnetic Resonanceはけっこう遠くに届くじゃないかと言われるかもしれない。でもせいぜい2mである。また、一次側Resonatorの近辺は強い磁界が発生している。共鳴場とかいう未解明の不思議な理由によって遠くに届くのではなく、単純に送る磁界を強くして遠くに届けているわけである。
それならば送る磁界を強くするのだったら高電圧で一次側のコイルを駆動しても同じことだよね。そう思う人が現在数人ほど現れている。正解である。一次側Resonatorって実は無駄な存在である。

さらに、二次側Resonatorの共振周波数はコイル間の結合係数によって変化する。
このことは別の機会に書くが、ネット上で探すことの出来る有名どころの論文にはたびたび書かれている。一方、間違っている論文も多数ある。いや、数だけでいえば間違っている論文の方が多いようだ。
ここは二次側の共振周波数は二次側のコイルをL2として、L2のインダクタンスと容量成分Csが共振するのではなくて、(1-k^2)・L2とCsとが共振すると書かれているものが正しい。
form100
二次側の正しい共振周波数の式
この式を見れば二次側Resonatorの共振周波数が結合係数kの関数であるのだから、結合係数が変化すれば共振周波数も変化することが理解できるはずだ。一方で、一次側Resonatorの共振周波数は結合係数によって変化しない。すると、コイル間の距離が変わり、結合係数が変化すると一次側Resonatorと二次側Resonatorとの間で共振周波数の不一致が起きる。

●Rezence が絶体絶命の危機に?!
おいちょっとまてよ、それだとRezence (AirFuel Alliance)の規格ではたいへんに厄介なことが起きる。
Rezenceの規格ではResonatorの共振周波数を厳格に規定している。しかし、受電側(二次側)Resonatorが共振周波数をいくら正確に規定したり調整したりしても、コイル間距離がちょっと変化したら共振周波数も変化してしまうのである。そうだとすれば共振周波数の精密な調整からして無駄だということになる。
共振周波数を電子的に制御する技術はあるがISMバンドの6.78MHzの周波数で使える半導体素子に適当なものがない。あってもたいへんに高価である。
さらにRezenceは固定周波数なのだから、コイル間距離が遠くなれば駆動側の力率が悪化するし、コイル間距離が近づき過ぎれば今度はスイッチング素子のハードスイッチングが起きる。ハードスイッチングが起きるとEMIの妨害雑音が出てしまう。
これをどうやって防ぐのかというと、一次側コイルの駆動力率を充分な遅れ位相に設定して、効率を犠牲にしながらハードスイッチングを防ぐしかない。
この辺は、パワーエレクトロニクス分野に詳しい人ならすぐに気付くのだが、他業界でワイヤレス電力伝送をやている人たちにはピンと来ていないようである。ともかく、どういう条件になるとハードスイッチングが起きるのか、パワエレやインバータ/コンバータ開発の人以外の人たちには基礎知識が浸透していないのである。
●まして、報道する人は認識すらしていない
この事実を、ワイヤレス電力伝送にかかわる業界の人、報道の人、知っているのかな?
TやV、QやIのような名門企業ならば技術情報は網羅しているはず・・・、報道の方々はそう思っているかと思うが本当にそうなか〜?
rezence
例えばRezence (AirFuel Alliance)のコンソーシアムの人たちが、ハードスイッチングが起きる条件を知っていたらRezence用の割り当ての周波数帯域幅が30kHzしかないISMバンドを選ぶわけがなかったはず。
何しろWiTricityの磁界共振の解析を読むと、明らかに二次側の反共振周波数を使おうとしていたわけであるから、共振周波数が変化するなんて認識は全く持っていなかったはずである。
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これは二次側の反共振周波数の式

このことをAirFuel Allianceが理解していたら今頃は絶望しているはずだが、そういう絶望の声が聞こえてこないということは、やっぱり理解していないのだと思う。WiTricityがAirFuel Allianceに反共振周波数を使うように技術指導しているのがそもそもの悲劇の始まりである。もしWiTricityが直列共振周波数を使うように技術指導なり論文発表していたのなら、多くの研究者から二次側の共振周波数の変化を技術的課題として、その課題の解決のためにどうするべきかという論文や議論が多数出てきてもいいはずである。しかしそんな論文は全く見かけない。というと、やはりこの技術的課題がそもそも理解されてなかったということになる。
Rezenceってまさか通信専門家/関係者だけで考えたもので、パワーエレクトロニクス関係者が一切かかわっていないところで勝手に決めちゃったとか、背景にはそういう問題があるんじゃないだろうか。それじゃあ片手落ちである。

パワーエレクトロニクスの立場の人間からこの図を見ると、割り当てられている周波数帯が狭過ぎることにすぐに気付く。
さらに、コイル間距離(結合係数)の変化によって二次側共振器の共振周波数が変わるということが全く認識されていないまま決めてしまったようである。これは、ISMバンドを使うと決めてしまった時点でどうにも解決ができる問題ではなくなっている。
Rezence(AirFuel Alliance)が本当に磁界共鳴を理解しているならば、二次側共振周波数をこの範囲に収めるために、どれくらいの距離の誤差が許容されるか試算してみるはずだ。計算結果は送電コイルから30cmの距離でほんの数センチしか許されない。
あれ?Rezenceって距離の自由度が高いのがセールスポイントだし、実際に自由度が高いみたいだし、それに一対多数の充電が可能だし、何か矛盾していないか?
いやいやそれは、Impedance Matching Network (IMN)で調整しているから大丈夫なんだ、という人がいたら大きく間違っている。それは無理だ。
Impedance Matching Network (IMN)を受信側に入れるとはどういうことになるのか?
ポリバリコンにモータを付けて共振周波数を調整するということになる。つまり、可変コンデンサを挿入すれば解決である。しかし、そんなものは見たことがない。(と思っていたら、2016年年末になってTunable Matching NetworkなるものをWiTricityが出してきた。中身は可変コンデンサのようである。今頃遅過ぎると思う。:2017年加筆)

現時点では効率を犠牲にすれば・・・、それしか方法がない。
Power AMPの後に直列の損失抵抗を入れて、二次側共振周波数は思いっきり低めに設定して、一次側のコイルの力率を悪くしてやれば、発熱は大きいが結合係数によって変化する共振周波数の問題も解決する。Matching circuitという摩訶不思議なものは要らない。
しかし、そもそもロバスト性改善のために効率を犠牲にするのは邪道だと思うのだが。
rezence-basic-block-diagram
Rezenceは磁界共鳴(MR)ではないのか?!
ところで実際にDEMOで使われているRezenceは一見距離や位置の自由度が高いかのようなデモンストレーションが行われている。
しかし、理論的に考えて効率の良い伝送ができているとは考えられない。実際には給電側の回路はかなりひどい発熱をしているのではないだろうか。
それと、Resenceの関係者がコイルメーカーに「コイルの改良によって位置関係の自由度を改善してほしい」と依頼している事実が耳に入った。
噛み砕いて説明すればコイルメーカーが何を依頼されたのかというと、コイル間距離や位置関係が変わっても結合係数が変化しない魔法のコイルを作ってほしいと依頼されたわけである。しかしコイルメーカーの方も自然の摂理と矛盾することを押し付けられても無理である。依頼する側は事の深刻さを理解しないで依頼したようだ。

Resenceが本当に図のとおりの構成だったら効率とロバスト性との両立ができるわけがない。仮に、効率とロバスト性との両立がローコストに出来ているというアナウンスがあったら神か詐欺かのどちらかであると思う。

で、そこまでわかっているのであれば解決手段が全く思いつかないわけではないのであるが・・・、今のところGaNスイッチング素子が高過ぎるので実用化への提案は気が引ける。

最近ワイヤレス電力伝送(ワイヤレス給電)の開発の依頼が多くなったので手がけてみることにした。
ワイヤレス電力伝送は2000年頃に遡るが、大手の家電メーカーからCCFLインバータができるのならワイヤレス電力伝送にも応用できないか相談を受けたことに始まる。この頃の用語は非接触給電である。
この頃にはまだ、トランスの二次側を共振させると効率が良くなるから、非接触給電でも同じことができるということを軽く情報交換しただけだった。
ワイヤレス電力伝送というのは簡単に言えば出来の悪いトランスのことである。
いいトランスは一次巻線と二次巻線とがしっかりと結合していて、その割合を結合係数というのであるが、これをkで表す。いいトランスは理想的にはk=1である。実際にkを測定しても0.999とか、ほとんど1に近い値になっている。
しかし出来の悪いトランスはこのkの値が低い。
CCFL照明用のトランスはkが0.6とか0.7だから、相当に出来の悪いトランスである。
ワイヤレス電力伝送の場合はさらに結合が悪く、k=0.5から0.01あたりまでを使う。さらに、ワイヤレス電力伝送ではこのkがふらふらと変わるというほとんどもう壊れたトランスだといっても良い。いや実際、コアが割れたリーケージトランスの挙動そのものなのだ。
それでも電力伝送に使おうというのであるから、ワイヤレス電力伝送をやろうとしている人はほとんどマッド・サイエンティストだと思ってかまわない。
マッド・サイエンティストと言われて怒るかといえば、そうでもない。ニコラ・テスラ(文字化けするときはエンコードをShift JISにしてください)に近づけたと思って嬉しく思うという、ニコラ・テスラの狂信者も多いだろう。私もその一人である。

余談:グローバリゼーションというのが'始まって久しいが、なぜだか日本は中国のみをグローバリゼーションと勘違いしてそっちに向かってしまった。その結果が中国製の部品の品質がひどいこと。コアが割れていること日常チャメシ事。そのようなコアが割れているトランスだとインバータの性能に影響してCCFLがちらついたりする。それを防ぐためにコアが割れていても正常に働く回路方式を考えた。
ん?コアが割れてないように品質管理をするのが常識だろうに、と皆が思う。たしかにそのとおりだが、そういう常識的な管理をさておいて壊れていても正しく動くという方向性に走ってしまうところが実にクレイジーだと自分でも思う。そうして出来上がったものが(次世代)電流共振回路だ。その結果CCFLインバータ回路は入力電圧変動に強く、外気温度変化に強く、そしてコアが割れていても正常に動作するものが出来上がってしまった。その技術がワイヤレス電力伝送にも生かされることになる。

●調相結合原理の磁界共振結合
そして、新方式を新規事業研究会で発表することになった。Advanced MR (改良MR)、略してAMRという。(資料請求は新規事業研究会事務局へ)
説明資料はここからもダウンロードできます。
ワイヤレス電力伝送概説(新規事業研究会Ref.No.140614-1)
改良磁界共振AMR-の説明digest

WPT01
このAMR、本当にCCFLインバータの二次側共振方式(調相結合トランス)とほとんどセンスは一緒で、調相結合トランスのモデルでほぼ完全に説明できてしまう。

一般報道に基づく原理説明
●MIT版、磁界共振方式(MR)の原理
MITが2006年に磁気共鳴または電磁界共鳴方式(Magnetic Resonance)なる名前で突如登場し、華麗なるデモンストレーションを行って世間をあっと言わせた有名な実験がMIT Experimentsである。
mgrezonance

MITの実験で太い銅線をぐるぐる巻いたものが二つあるが、これが共振器(Resonator)というものである。MITの磁界共振の特徴はこのResonatorが二つあることである。
そこで、磁界共振方式はなんでこんなに遠くまで電力伝送ができるのか、その原理を一般報道に基づいて解説してみる。あくまでも一般報道に基づくもので、正しいかどうかは保証しない。
まず、磁界共振の原理回路図は次のようになる。(電磁界共鳴の名称は現在磁界共振に統一されている)
TDK

一次側には駆動コイルL1と一次側共振器(Primary Rezonator)L2があり、二次側には二次側共振器(Secondary Rezonator)L3と受電コイルL4がある。これが基本回路である。一次側共振器L2の共振周波数と二次側の共振器L2の共振周波数とはピッタリと合っていなければならない。二つの共振器(Rezonator)の共振周波数が合えば共振器同士が共鳴して結合する、と言われている。これをResonant CouplingとかResonant Inductive Couplingと呼ぶ。(ここで、「言われている」と書いているのは、この「共鳴する」という理論が非常に怪しいと思われるからである。)
磁界共振の原理ではコイルとコイルとの距離が遠くなればなるほど結合係数が小さくなるので、その分共振コイルのQ値を高くしなければならない。
遠く離れたコイルに電力を送るためには極端に高いQ値が必要であるが、そうなると二つのコイルの共振周波数をピタリと合わせることは非常に難しくなる。
でも、ここで二つのコイルの共振周波数を合わせるというのが磁界共振方式成功の要である。

●不正確な原理説明
ではなぜ共振させると遠くに電力が送れるのか、そこのところを正確に述べているものはない。音叉の共鳴箱の原理だとか電磁界共鳴フィールドがどうのとか、曖昧なことしか書いてない。共鳴の原理だと書いている方も実は何もわかっていない様子。果たして本当に音叉の共鳴と同じなのだろうか。

それとこの業界では、例えば30cmの送電に成功した、1mの送電に成功した、だの成功したという話ばかり報道していて、じゃあ何が失敗したのかについては一言も書かないという悪癖がある。
WPT03t
だから長いこと私も知らなかったわけだが、WiTricity(MIT)の方式では例えば50cmの距離を90%の効率で送電することに成功したとうことはわかったとして、一方で同じ設定のまま30cmでの送電はうまくできなかったとは一言も書いてない。実際には伝送距離を50cmと設定した場合、50cmではバッチリと高効率の送電ができるが、それより遠くても近くてもうまく送電できないのである。これをロバスト性が悪いという。
WiTricity(MIT)の磁界共振がどんな問題を抱えているのか、そういうことは正直に教えてもらえなければ困る。何が問題となっているのかが誰にもわからないのであるし、そういうことが最大の問題であるならばちゃんと取材・報道して課題として取り上げ、多くの人に解決方法を考えてもらわなければならない。
WPT02t
このスライドは、WiTricity(MIT)の磁界共振方式の解析の説明をしているところ。

●音叉の共鳴ならシンメトリー、シンメトリーでなければ音叉の共鳴ではない
ネット上に溢れる磁界共振の説明を読んでいると、ほとんど全ての説明が一次側と二次側とがシンメトリー(対称)だと説明している。磁界共振を音叉の共鳴箱に例えて説明しようとしているものが多いのだがその場合、一次側と二次側とがシンメトリーでなければ都合が悪いのである。
ところが、ここではMITの方式は一次側と二次側とが実はシンメトリーではないという重大なことを解説している。等価回路をシミュレーション解析すれば明らかになるのだが、図だけ見ているとシンメトリーだという誤解から抜け出せない。でも実際には一次側共振器と二次側共振器との間で共振周波数の食い違いが生じる。しかしそれを認識している人もまた少ない。IMN(Impedance Matching Network)でなんとかなると思っているのだろうけれども目的が違う。そもそもIMN(Impedance Matching Network)自体の効果からして怪しい。(磁界共鳴方式ワイヤレス給電の真実<そのとおり)

●MITの磁界共振方式の変遷
なんでこんなことになったのかといえば、2006年のMIT Experiments と呼ばれる最初の実験の解析を行ったときにシンメトリーであるという仮説から始まった。二つの共振器の間を同軸ケーブルのような伝送路と仮定したからである。
そのような仮定をした場合、送り出しインピーダンスが何十オームと決まっていて、間にインピーダンス変換があって、送信側で半分の電力損失がある。そして受信側でもインピーダンス変換があって、受けられる最大効率は理論上50%であるということになる。これはアンテナ技術で確立された伝送理論に従うものであった。これを第一世代MRと呼ぶことにしよう。
それが、MITから(WiTricity(MIT)から?)はっきりとしたアナウンスもなく、いつの間にかコソっとシンメトリーでないものに変わってしまっていた。これを第二世代MRと呼ぶことにする。なぜだかあり得ないはずの効率50%を超えてしまったわけである。この時点で伝送理論では説明できなくなった。
その後だが、その事実を知っているごく一部の専門家を除いて報道には一切の事実が知らされずに、第一世代MRと第二世代MRとがごちゃまぜになって報道されてきてしまった。その結果、まるで違うシステムを同じMRという呼び名で呼ぶことになってしまったわけである。
その経緯については技術解説:ワイヤレス電力伝送を見ればわかる。
この中で2.3 共鳴方式として解説されている図4が2006年MIT Experimentsのもので、理論的最大効率50%のものである。これは第一世代で完全シンメトリーに構成されている。
次に 3.磁場共鳴方式の定式化と課題の解説では第二世代の非シンメトリーのシステムの説明になっていて、最大理論効率の式が書かれている。この最大理論効率は結合係数kとLC回路のQ値の積であるkQ積にしたがうという有名な理論式として知られる。
ここで、「インピーダンスは送受とも最適に整合されているとする。」という条件が述べられており、このフレーズはワイヤレス電力伝送を少しでも深くかじると必ずどこかで目にするはずである。
Magnetic-Resonance01

この場合の「送受とも最適に整合され」の意味であるが、常に臨界結合で使うということである。
臨界結合というのはネット上で探すとたくさん見つかるのでぜひ検索してみてほしい。
ワイヤレス電力伝送では、臨界結合の状態で使うと効率が最も良いので、その状態に合わせるものがIMN(Impedance Matching Network)であると、WiTricity(MIT)から情報がリリースされている。しかし、IMNとはいったいどのような回路なのだろうか。πマッチ以外に具体的な回路を見たことがない。まさかπマッチのバリコンをモーターでギコギコ調整するのであろうか。
結論から言えば、全くの大間違いの代物なのであるが、ここでは否定せずにIMNは存在するものと仮定して話を進める。
まとめると、
  1. 第一世代MRは一次側、二次側共振構成が双方ともシンメトリーである。そして理論的最大効率は50%である。
  2. 第二世代MRは一次側、二次側共振構成がシンメトリーではない。そして実験的な効率は約90%以上、理論的には最大効率理論式に従う。理想的に調整しても効率100%にはならない。IMN(Impedance Matching Network)によって、常に臨界結合に調整するという概念が登場する。
  3. 第二世代MRでは一次側から見た二次側の二つある共振のうち、並列共振を使うことになっている。式を見る限りそうである。ここに大間違いがある。
  4. (二次側の)並列共振を使う場合、電力伝送の主役は一次側の共振だけとなり、二次側の並列共振は電力伝送を邪魔するだけの存在になるために、それを防ぐIMN(Impedance Matching Network)が必須となる。

つまり、IMN(Impedance Matching Network)が必須であるという電力伝送理論はどこかがおかしい。そもそも使おうとしている共振点がおかしい。WiTricity(MIT)が提唱する理論に従ったLCパラメータにすると電力伝送にならないのである。
でも、実際のワイヤレス電力伝送はロバスト性が悪いながらまあまあの伝送効率をたたき出しているじゃないかと言われるかもしれないが、以下その秘密を解明していく。

●コイル間結合の原理は調相結合(Synchronized Magnetic-flux Phase Coupling)のほうがよい
実は知らないうちにこちらの共振のほうに偶然に嵌って「あーうまくいった」と思っているケースがほとんどであろう。
その結果、WiTricity(MIT)の理論式を忠実に再現している人ほどうまくいかず、WiTricity(MIT)の理論から一歩離れて(露骨に言うと無視して)、実験をしている人の方が実用的な共振状態を発見しやすい。既にそういう人がたくさんいるようである。ではその共振状態とは何なのか見てみよう。
mimramr
誘導を使ったワイヤレス電力伝送の方式には電磁誘導(MI)と磁界共振(MR)とがあると言われることが多かったがこの分け方は既に古い。これらの方式はMIとMRと並列して並べるのではなく、MIの中にMRが含まれると考えるほうが自然である。それと、MI方式の中にMRとの中間的方法が存在する。それは電磁誘導の中の調相結合というカテゴリーをもう一つ作らないと非常に説明しにくい。そしてこの図の中にはWiTricity(MIT)の磁界共振は含まれていないのである。WiTricity(MIT)は二次側の共振に並列共振を使おうとしたが、本当の磁界共振は直列共振を使う。
ここで二次側の並列共振とか直列共振とか言っているのは、二次コイルに対するコンデンサの接続方法のことではない。
impanalyzer回路

例えば、二次コイルに並列にコンデンサを接続した場合でも、一次側からインピーダンスアナライザを使って観測してみると共振点が二つ存在することが確認できる。
並列共振点と直列共振点
横軸は周波数、縦軸はインピーダンス

・左の共振点はその周波数において、インピーダンスがピークになるのであるから並列共振点、並列共振周波数、または反共振周波数と呼ばれる。
・右の共振点はその周波数において、インピーダンスが最小になるのであるから直列共振点、直列共振周波数、または共振周波数と呼ばれる。
ワイヤレス電力伝送ではこのどちらの共振周波数を使ったらよいのかであるが、直列共振周波数を使うというのが正しい。

●今まで間違った設定で磁界共振を論じてた?!
それでは、今まで磁界共振方式のワイヤレス給電/ワイヤレス電力伝送をどのように調整したり解析したりしていたのかというと、二次側の共振を並列共振(反共振)に調整しようとしたものである。
このように調整しようとすると特徴として、コイル間の距離を近づけた場合に反共振の影響で双峰特性が現れる。ネット上で磁界共振の解析を検索するとほとんどがこのパターンであることに気付く。
例えば、
磁界共振 双峰特性
疎結合、臨界結合、密結合
臨界結合のシミュレーション
などである。
そして伝達関数に二つの峰が現れると、次の瞬間にはどちらの峰を追いかけるのかという議論になるのだが、正しくは右のピークである。しかし、どちらかのピークを追いかけ始めたらそれはもうWiTricityの磁界共振とは言えない。
つまり、双峰特性を説明しているものがあったら間違った設定の方の磁界共振だということである。ということは、大半の磁界共振が間違った調整方法で研究がされていたことになる。
まさか、最初のMIT Experiment(2006年)から十年以上が過ぎるが、ほとんど誰も指摘しなかったとは信じられない!

●正しい設定の磁界共振とは
以下は正しい設定の方の磁界共振を前提に説明していく。
正しい設定の磁界共振では、一次側の共振の設定はそのままであるが、二次側の共振は直列共振周波数に設定する。
こちらには双峰特性という概念がない。コイル間はいくら近づけても大丈夫である。(その代わり、二次側の共振周波数調整機構が必要になるが。)
Magnetic-Resonance02

簡単に言って、
★間違った磁界共振は一次側のLC定数の積と二次側のLC定数の積は同じである。
そうすると二次側LCは反共振として働き、双峰特性が現れる。
★正しい磁界共振では、一次側のLC定数の積と二次側のLC定数の積は同じではない。
二次側のLC定数の積を結合係数kに応じて少しだけ大きく設定する。そうするとコイル間距離がどう変わってもスムースに電力伝送ができるようになる。

たったこれだけである。たったこれだけのことが過去十年間以上指摘されずに放置されてきたというのは、本当に驚きを通り越して呆れるほどである。
以上のことに気付いた人ももちろん何人かはいるし、一部の論文には式も載っている。だがそういうことをまるで無視してきたというのがこの業界に携わる人たちの最大の問題点であると思う。

業界の事情をいろいろと聞くと、ワイヤレス電力伝送を規格化するためにコイルの形状やサイズをいろいろと細かく規定しようなどと無駄なことにずいぶんとエネルギーを費やしているようだ。だが違う。着眼すべきは結合係数kだけである。形状など四角でも丸でも良い。四角と丸との組み合わせでもよい。そのような組み合わせでも結合係数kが同じならば同じ結果が得られる。ワイヤレス電力伝送を試すには、なにはなくとも真っ先に結合係数kの測定が必須ということである。

●正しい磁界共振の原理説明の方法
正しい磁界共振の説明の仕方には少なくとも2つの方法がある。それぞれの方法は実は同じ現象を別の角度から説明しているに過ぎないのだが、見かけはまるで違う説明に見える。

1.(電磁気学的に)磁束の位相から説明してみる
1)一次側の位相
まずは一次コイル(給電コイル)の磁束位相を見てみる。
  1. E1は給電コイルの電圧波形だとする。実際には矩形波だが、説明のために正弦波にする。
  2. 給電コイルに流れる電流の位相i1は電圧に対して90度遅れる。
  3. この電流に比例して一次コイルに磁束φ1が発生する。i1とφ1の位相は同じことに注意。
  4. 次に一次側の共振器(共振コイル)の磁束φ1-2を見てみる。その磁束によって一次側共振コイルに誘起される電圧E2の位相は磁束位相φ1-2よりも90度進む。
  5. そしてこの電圧E2が一次側共振コンデンサの電圧になる。ここで、コンデンサに流れる電流位相i2は電圧位相よりも90度進む。(ただし、コイル側から見た電流はコンデンサに流れる電流とは逆方向なので注意)
  • この電流はそのまま共振コイルに流れるので共振コイルに発生する磁束の位相φ2はφ1磁束の位相と同じになる。

  • synchrophase

    そうするとどういうことが起きるのかというと、給電コイルから発生した磁束の相当量が共振器のコイルに引き込まれる。これが調相結合による磁束の引き込み効果である。
    磁界共振では単に引き込まれるだけじゃなくて、共振器のQ値が高いので、共振のエネルギーがどんどん共振器にたまって、共振器から非常に強い共振磁界(磁束)が発生する。このときの共振器のQ値が高ければ高いほど強い共振磁界になって二次側共振器に強い磁束引き込み効果が起きて一次側で発生した磁束を引き込む。そして一次側の磁束と二次側の磁束がつながる。そして主磁束が形成される。これが調相結合である。
    2)二次側の位相
    次に二次コイル(受電コイル)の磁束位相を見てみる。
    一次側の位相では、給電コイルの磁気位相と一次側共振器の磁気位相とが等しくなることを説明したが、二次側の共振器でも同じことが起きる。
    つまり、
    1. 給電コイルから離れていても、二次側の共振器にはφ2の位相と同じ位相の磁束が発生している。
    2. ここで二次側の共振器のQ値が高く、その共振周波数が一次側とピッタリ合っていれば二次側の共振器のコイルにも強い磁束引き込み効果が起こり、一次側の共振器と二次側の共振器とが結合する。
    というわけである。
    syncrophase
    MITの仮説とは異なる古典的な
    説明による磁界共鳴フィールド

    そして受電コイルはその磁束を取り込んで電力を得る。ざっと概念で説明すればそういうことである。

    ●並列共振点では調相結合が起きない
    このような調相結合が起きるのは二つある共振−並列共振点と直列共振点のうちの直列共振点だけである。
    並列共振点では調相結合が起きない。
    調相結合が起きる方の共振

    調相結合が起きた場合、一次コイルと二次コイルとの間を貫く磁束が形成される。ここでトランスの原理の説明に戻って考えると、
    1. 一次巻線と二次巻線との双方と鎖交する磁束を主磁束(Mutual flux)という。
    2. 一次巻線のみと鎖交し、二次巻線とは鎖交しない磁束を一次側漏れ磁束(Primary leakage flux)という。
    3. 二次巻線とのみ鎖交し、一次巻線と鎖交しない磁束を二次側漏れ磁束(Secondary leakage flux)という。(ただし、トランスの場合と磁束の向きが逆)
    4. トランスの昇圧作用・降圧作用(巻線間の相互作用)は主磁束を介して行われる。
    この定義に従うのであれば、一次側共振器と二次側共振器のQ値が高くて共振磁界が強ければ強いほど主磁束の成分も増え、まるでトランスのように電力伝送ができるということになる。
    ここで誤解がないように述べるが、調相結合によって一次コイルと二次コイルとの間の結合は強くなるが、それは結合係数が高くなるということではない。結合係数は変わらないまま、主磁束が増えるから結合が強くなるわけである。結合係数には明確な定義があるので、結合が強くなったからといって結合係数が変わったとは言えない。ここには新語が必要かもしれない。
    ●主磁束の形成 - トランスの原理
    ここでトランスの原理、または基礎を知らないと、いきなり主磁束がどうのこうの言われても意味がわからないであろうが、主磁束とはトランスの一次側と二次側との相互作用を媒介する磁束のことである。そして、トランスはこの主磁束を介して一次側と二次側との電力のやりとりを行う。
    ワイヤレス電力伝送においてもこの原理は全く一緒であると思われるので、まずは主磁束の形成が不可欠である。主磁束の形成なくしてワイヤレス電力伝送は不可能であると言ってもよい。
    さらに付け加えると、電力伝送の電力が変化してもその大小によって主磁束の量はあまり変わらないという、トランスの基本原理も働いているはずである。このトランスの主磁束の話はトランスを10年以上経験していないと説明してもピンと来ないだろうとと思う。結論だけ言うと、トランスの一次巻線でなぜ電力消費が行われるのかというと、(巻線の抵抗ロスは除いて)二次巻線側の負荷で電力消費が行われて主磁束を減らそうとすると、一次側が主磁束を元通りに維持しようとして一次側の電力消費が起きるのである。(この話を始めるとA4数ページになってしまうので割愛)ともかく主磁束が出来ればそれを介して電力伝送ができるとだけ覚えておいてほしい。なぜなのかはトランスの教科書を参照、とは言っても主磁束のことを初心者にわかりやすく書いてある適切な教科書はほとんどないか説明が不親切なので、いろいろな教科書から抜粋してまとめみた。(トランスの電力変換の基礎−主磁束の働き→
    ●一次コイルと二次側共振器だけで主磁束の形成が可能?!
    でも、ここであれれと思う人は思うと思う。
    一次側共振器で磁束引き込みが起きていて、二次側共振器でも起きているのならばもしかしたら共振器は二次側だけでもいいんじゃないの?
    TECMO

    実はそのとおりで、調相結合という視点で解析していくと、共振回路は二次側だけで良いことになる。それがAMR(Advanced MR)である。そのようなことに早くから気づいた人がいる。日本テクモもその一人だ。共振は二次側だけでよい。動画を見てみよう。
    ●一次側の共振器は本当に必要だったのか?
    よく、ワイヤレス電力伝送のことを話していると次のような問答がある。
    質問者:「もし、ワイヤレス電力伝送に超電導を用いたら、伝送効率は100%になるか?」
    ここで、「100%になるはず」と答えると質問者から「おまえは何も知らないんだなー、理論最大効率の式があって・・・」と講釈を賜ることになる。それはMITの磁界共振の理論では、ワイヤレス電力伝送の最大効率はkQ積に依存するとされているからである。
    maxef
    磁界共振の最大効率理論公式は正しいのか?!

    しかし、一次側の共振器を不要にしたAdvanced MRにおいては本当に共振器は二次側だけでよい。この方式を解析すると理論的最大効率は100%である。
    そうすると、ワイヤレス電力伝送の最大効率はkQ積に依存するというMITの理論とは異なってくる。
    調相結合においては二次側共振器だけが主役。一次側共振器はオマケである。
    一次側共振器があると送り出し側の磁束が強くなるという効果があるが、同時に一次側共振器は発熱をして効率を低下させる原因にもなり得る。もっといけないのは一次側共振器の存在が二次側共振器との共鳴(電磁界共鳴)などというオカルト的な魅力を醸し出し、多くの人々をミスリードさせていることだ。これはいけない。

    一次側共振器が要らないとなれば、これは明らかにWiTricity(MIT)の方式よりも良い結果が得られる。だから本来ならばAdvanced MRはWiTricity(MIT)よりも話題になっていなければいけないはずである。なぜそうなるのか答えは明らかである。報道がプレスリリースに頼るお手軽報道に頼りすぎ、足を使って確かめようとする努力が足りないからである。

    2.パワエレ的にまたは電気回路的に等価回路から説明してみる
    磁界共振の等価回路を見ると、どの等価回路にも一次側に共振コンデンサを置き、二次側の共振回路と共鳴して結合するというのが基本的な構成となっている。これは、磁界共振結合と呼ばれる一つのカテゴリーを形成しているとみてよい。
    mimramr
    磁界共振とは"一次側二次側双方に共振構造を持つもの"と定義されると言い換えてもいいだろう。実際にどの磁界共振(電磁界共鳴)の説明を見ても、一次側共振構造と二次側共振構造とが共鳴すると解説されている。そして共鳴することによって電磁界共鳴フィールドを形成するという。そしてさらに、その現象を新たな物理現象だとまで言っている。新たな物理現象だという説明はさすがに眉唾だとしても、明らかに一次側と二次側との共振(共鳴)が必須であると言っていることは間違いない。これらの説明に従えば、二次側だけに共振構造を持つものはいわゆる電磁界共鳴(磁界共振)とは別物であるということになる。ではこれ何と呼べばよいのかというと、CCFL用インバータ回路の分野では二次側だけに共振構造を持つものを以前から調相結合と呼んでいるので、この言葉をそのまま使わせてもらうことにする。つまり、電磁誘導(MI)、磁界共振(MR)との間にはもう一つの調相結合という方法があるのである。そして、調相結合を使って電力伝送するものをAdvanced MR (AMR)と呼ぶことにする。
    mgrezonance

    ここで、低いQの調相結合は世界最小インバータ回路の発明以来この20年間ずっと使ってきたわけであるが、High-Qの調相結合はMITに触発されるまでやってなかった。そこでこれをHigh-Qという条件でシミュレーションしなおしてみた結果次のようになった。調相結合はワイヤレス電力伝送の分野への応用としては新しい方式ということになりそうである。
    まず、シミュレーションには長年使って来たCCFLインバータ回路の等価回路を使うことにした。CCFLインバータ回路のときは結合係数kは概ね0.55ないし0.86で、k×Qの積が1前後になるように設計していたが、ワイヤレス電力伝送ではk×Qの積が200になるようにして、kが0.01から0.15までをシミュレーションしてみることにした。k×Q=200ということは伝達関数のピークが200ということだ。伝達関数とは、一次コイルと二次コイルとの巻数が同じ場合、一次コイルをAC1Vで駆動すると二次側にAC200Vが生じるという意味だ。結合係数が小さくなっていくとこの数値達成はかなり困難になっていくが、結合係数が0.05以上ならば比較的容易である。
    001-015cir

    この等価回路で周波数解析のシミュレーションを行うと、一次側に共振コンデンサがないにもかかわらず、一次コイルの力率が1になる(電流位相の遅延がゼロの)周波数が現れる。電流位相の遅延がゼロということは、一次コイルを抵抗性で駆動しているということになる。
    え?空芯コイルを駆動しているのに誘導性じゃなくて抵抗性?!
    そう、ここが軽く読み飛ばさないでほしいところであり、ワイヤレス電力伝送の要なのだ。
    じゃあ巻線の誘導成分はどこへ行ってしまったんだ?という疑問を持つのが普通であるが、二次側をHigh-Qで共振させると一次側の誘導性が相殺されるのだ。
    赤丸のところが電流位相の遅延がゼロの周波数である。この周波数で調相結合が起きる。調相結合が起きる周波数では伝達関数が高くなるのである。
    それと、この力率が良く伝達関数が高い周波数はコイル間距離が変わり、結合係数が変わると周波数も変わる。これも大事なことである。
    赤丸の左側にも電流位相の遅延がゼロの周波数があるが、これは今までMIT(WiTricity)が使おうとしていた並列共振周波数(または反共振周波数)である。こちらの周波数では調相結合が起きない。伝達関数が非常に低いかほとんどゼロなのである。この時点でMIT(WiTricity)が提供する磁界共振の式には間違いがあるのでは?と疑わなければならないと思う。
    Phase06

    一次側に共振コンデンサがないのに一次コイルの力率が1になるというのが信じられない人が多いらしい。でも、シミュレーションで現れた力率1の周波数(赤丸のところ)で駆動すると、実際に一次コイルの力率が1になるのである。嘘だと思ったら実験してみていただきたい。結合係数が高い(コイル間同士が近接している)場合には力率が1になる周波数が簡単に確認できる。
    これはインピーダンスアナライザを使っても確認できるし、SGと高周波アンプ、プローブとオシロなどがあれば実験で確認できる。
    実際のコイルで、コイル間同士が離れている場合、巻線に抵抗があるし、共振コンデンサにもESRがあるので結合係数が0.1を下回ると一次コイルの力率が1になる周波数が得にくくなってくるが、シミュレーション上では理想的に巻線抵抗やESRが低いと仮定すれば、結合係数がどんなに低くても力率が1になる周波数が存在することがわかる。
    ここであくまでも理想論ではあるが、Q値を上げさえすれば力率が1になるというならば、巻線が超電導材料、共振コンデンサのESRがゼロ、FETのオン抵抗がゼロという条件ならば効率100%の電力伝送が可能になることが理解できると思う。つまりこれはWiTricity(MIT)の最大効率理論が破綻したという意味である。
    ここで一次側の共振って一体なんだったのかということで、一次側の共振を加えてWiTricity(MIT)風にして磁界共振をシミュレーションしてみると、WiTricity(MIT)の磁界共振が二つの共振器の共鳴によって共鳴フィールドを作るのだという解説は誤りで、磁界共振の主役は二次側の調相結合による磁界の引き込みによる調相結合であり、こちらがワイヤレス電力伝送の本質部分である。そして一次側はSPLR(Serial Parallel-Loaded Resonance)という変形直列共振回路による共振昇圧の働きで磁界を強めているだけである。一次側と二次側とはそれぞれの別個の現象((古典的なor従来の)等価回路)に分けられる。そして磁界共振と言われているものはそれら二つの現象が線形的に合成されている(組み合わさっている)に過ぎないということがわかってくるのである。(ワイヤレス電力伝送概説P13
    つまり、磁界共振の現象を二つの音叉の共鳴で説明するのは間違いだし、WiTricity(MIT)が説明するような新しい物理現象としての一次側と二次側の共鳴場エバネセント・テール同士の結合なんて存在しない。存在するのは古典的な主磁束であって、電力の伝送はこの主磁束を介して行われる。
    結局古典的な回路シミュレーションによって一次側の現象と二次側の現象とは分離して説明することができ、その組み合わせとして磁界共振が説明できてしまう。その結果一次側の共振は必須ではないということになる。一次側の共振は使うも使わないも任意なのである。一次側の共振の働きは磁界のブースト効果即ち共振昇圧である。一次側の共振昇圧と二次側の調相結合の両方の共振があった方が有利だという意見はあってもよいが、まだこの方面からの意見は聞いたことがない。
    なお、WiTricity(MIT)の最大効率理論の式により、たとえ超電導材料を使っても効率が100%になり得ないのは一次側共振器のエネルギー損失によるものである。

    ●MIT Experimentの真相
    ではなんで2006年のMIT Experimentが成功したんだ?と疑問に思う人もいると思うので推測する。
    コイルとコイルとの距離が離れて結合係数が小さくなると並列共振点の周波数と直列共振点の周波数とが近づく。これは式で見れば明らかである。
    ということは、2006年のMIT Experimentは実はコイルの巻き方がちょっとだけ狂って並列共振点ではなく調相結合に嵌っていたんだろうということである。
    これが真相かどうかはそのうちにわかるであろう。

    本HPの内容は、電子情報通信学会 無線電力伝送研究会 (WPT)(2015年2月13日) 電磁誘導と磁界共振の中間的な構成による電力伝送のシミュレーションと実験 〜 二次側のみに共振構成を有する電力伝送モデルを理論的に検証する 〜(MIT Experimentを1996年と記載していますが2006年の誤記です。)で発表されました。

    補助説明資料のダウンロードはこちらからできます。
    ●伝達関数極大周波数を自動的に追跡する回路
    誰でも簡単に実験のできるワイヤレス電力伝送/ワイヤレス給電の回路図です。
    この回路では、コイル間の距離が変化した場合でも常に伝達関数の最大周波数に合わせるように駆動周波数が変化します。これは共振周波数の自動追尾機能です。それを実に簡単な回路で実現しています。
    この実験回路によって何を伝えたいかというと、正しい磁界共振の場合、コイル間の距離が変化して結合係数が変化すると二次コイル側の共振周波数も変化するということであり、それをを身をもって実感していただくためです。
    コイル間の距離の変化によって伝達関数が最大になる周波数も変化します。そして、これは物理量の変化なので宿命であり、LCパラメータが固定されている場合、共振周波数の変化からは逃げられないということを特に認識してほしいわけです。ワイヤレス電力伝送/ワイヤレス給電はこの宿命を否定したって始まらないし、宿命を否定することは物理法則と喧嘩することですから勝ち目はありません。
    次にすべきは、この宿命を課題として何を解決していくべきかを考えていくことだと思います。

    と、遠まわしに言ってもピンと来ない人のために言いましょう。
    ワイヤレス電力伝送/ワイヤレス給電にISMバンド(固定周波数)を使おうとしている方式がありますが、どうするんですか?
    某コンソーシアムの方から解決手段の提示がありましたか?

    ※製作に関する注意点
    コイルには必ずリッツ線を自作して実験してください。
    赤外線LEDとフォトトランジスタのピーク波長が同じものを用いてください。
    Simplest Wireless Power System

    最簡単! ワイヤレス電力伝送回路図
    調相結合と電流共振回路を組み合わせました

    ※インピーダンス整合回路はないのがおわかりでしょうか。いままでさんざんWiTricity(MIT)に惑わされましたが、真相を解明すると、反共振周波数を使おうという試みに誤りがあり、そのつじつまを合わせるためにインピーダンス整合回路を導入したと推測されるわけです。IMN(Impedance Matching Network)は不要です。
    文献(WPT2014-89)の方は電子情報通信学会またはCiNiiから入手してください。
    (動画を観たい方はこちらです。ロバスト性抜群のワイヤレス電力伝送です)
    英文要約
    Simulation of, and experiment regarding, wireless power transfer using a method combining elements of magnetic induction and magnetic resonance -- Theory and verification of a model of wireless power transfer having a resonant structure in only the secondary side --
    In magnetic resonance, methods having resonant structures in both the primary and secondary sides and thereby producing a resonant field, have been widely validated. However, it is possible to achieve highly efficient wireless power transfer with a resonant structure in only the secondary side, which fact has already been demonstrated to some extent in practical use. However, till now there has been no theoretical validation of such method in a high Q value state. Using frequency analysis and experiments, we have been able to validate a model having both a high Q value state and a resonant structure in only the secondary side. (WPT2014-89)
    Masakazu Ushijima, Hajime Yuasa, Go Ogino





    調相結合に関して言及している論文/技報/公開公報
    1.スープ皿形状フェライトコアを用いた一次・二次コア分離型変圧器の最適設計に関する研究 2.5 二次共振型変圧器 図19
    2.非接触給電技術に関する基礎的研究
    3.群ロボットレスキューシステムの非接触型給電ネットワーク
    4.調相結合トランスを応用した熱陰極蛍光灯用インバータに関する研究, 平成8年度通産省関東通産局技術改善費補助金交付補助事業研究結果発表 (1997)

    その他、コイル間距離の変化で二次側の共振周波数が変化することに言及している論文/技報
    (二次側の共振周波数は結合係数の関数である)
    1.蓄電池充電を最適化する磁界共振型WPTシステムの効率制御技術 信学技報, vol. 116, no. 238, WPT2016-20, pp. 1-6, 2016年10月.

    上記と対立する論文/技報/公開公報で、二次側の共振周波数を単純にf2=1/2π√L2/C2としているものは圧倒的多数。(ヤレヤレ・・これじゃあワイヤレス給電の実用化が進むわけがない!)

    Technical Information - High Side Driver for the CCFL lighting NTS3733 Data Sheet
    ACラインから直接CCFLを制御する電流共振型CCFLコントローラーです。自動周波数制御機能を内蔵しておりますので、配線の浮遊容量や外気温変化によるCCFLのインピーダンス変動に対して格段に安定性が高くなっております。
    NTS3733の自動周波数制御機能は従来のHard Switching Protection とは異なり、ハードスイッチングの発生を未然に予測して周波数制御を行います。
    NTS3733 is a current resonance circuit type CCFL controller which drive the CCFL directly from the AC line, and which is included a high side driver.
    Because it has a built-in automatic frequency control function, so inverter stability is much higher against the impedance variation of the CCFL by the ambient temperature changes and unplanned stray capacitance variation of the wiring.
    Automatic frequency control function of the NTS3733 unlike conventional Hard Switching Protection functions, perform the frequency control by predicting in advance the occurrence of the hard switching.


    High Side Driver for the CCFL lighting NTS3733 Data Sheet



    従来のCCFLインバータ回路はノートパソコンや液晶テレビに使われていたので、ネットで公開されている既存のインバータ回路は電池駆動かDC12VまたはDC24Vのものばかりでした。
    最近のCCFLは照明用で使われますので、AC電源から直接駆動されるものになります。このタイプのインバータ回路は公開情報が少ないので少しまとめてみました。
    AC電源直接駆動のインバータ回路は液晶バックライト用のインバータ回路と比べた場合、いろいろと違うところがあります。
    以下に、CCFLのインバータ回路に関する基本動作の説明をしましたので参考にしてください。
    まずは、液晶バックライト用のインバータ回路です。
    特徴を述べると、
    1.DC駆動である。電源電圧は安定している。
    2.他励型という方式である。
    3.CCFL駆動用のICが多数発売されている。
    4.昇圧トランス二次側で共振させている。
    5.タイプに、高効率設定と高漏れインダクタンス設定の二つがある。
    6.バックライト点灯起動の際に、駆動周波数を高くする機能がある。
    7.CCFL破損の場合に備えてOVP(過電圧保護)回路がある。
    8.ACからDCへの変換は外部のスイッチングレギュレータに任せている。
    というものです。

    一方、一般照明用のインバータ回路はAC電源から駆動するので整流回路を含んだ回路になります。
    そうすると、今までのDC駆動では配慮しなくても良かったことがたくさん出てくるようになります。
    1.AC駆動である。整流回路が必要である。電源電圧変動がある。
    2.外気温変動がある。CCFLのインピーダンス変動が大きい。
    3.液晶バックライトみたいにガッチリした筐体ではない。ゆがんで寄生容量変動がある。
    4.EMIフィルタが必要である。
    5.ハイサイドドライバーICが必要である。
    6.他励共振型または電流共振型という方式である。
    7.電源用の一般的なICが流用されている。(専用のICもある)
    8.昇圧トランス二次側で共振させている。
    9.タイプに、高効率設定と高漏れインダクタンス設定とHigh-Q設定の三つがある。
    10.バックライト点灯起動の際に、駆動周波数を高くする機能がない。
    11.CCFL破損の場合に備えてOVP(過電圧保護)回路がある。
    などです。

    ●別目的のICを流用したインバータ回路
    電源用の一般的なICを流用し、OVP(過電圧保護)回路も、EMIフィルタもない回路は以前にも紹介しましたが、以下のような回路です。

    これはIR2153という汎用のハイサイド・ドライバICまたはそのセカンドソースのICです。もともとCCFL駆動専用のICではありませんから、点灯起動の際に駆動周波数を少し高くしてその後低くするという、スタートアップ機能も過電圧保護回路もありません。
    CCFLインバータの場合、他励共振型の回路を採用するのであれば、点灯起動の際に駆動周波数を高くする機能が必要なのですがそれがないわけです。また、この回路は電源電圧変動や外気温変化に弱いという致命的な欠陥を持っています。この回路では少しでも設定を誤ると、容量性駆動(ハードスイッチング)が起きてスイッチングトランジスタ(FET)が発熱したりICが破壊されたりします。IR2153系はただの発振回路であって、それを使ってCCFLを駆動するのは他励共振型と言いますが、この方式を使う以上、器具および回路の設計には液晶メーカー並みの管理能力と専用インバータ回路メーカー並みの職人芸的設計能力、共振回路に関する豊富な知識などが必要になります。
    回路が簡単だからといって、素人が簡単に設計できるというものではありません。

    ●CCFL駆動に適したICを使った場合のインバータ回路
    ここで新たに出来上がったCCFL駆動専用のハイサイド・ドライバICの、NTS3733を使ったインバータ回路を見てみましょう。
    回路はかなりシンプルですが必要な機能は全て備わっています。このICが入手できない場合はIR2104またはそのセカンドソースと若干の外付け回路で代替できます。
    このインバータ回路の各部の働きを見てみましょう。

    AC100V入力ですので、最初の回路にはEMIフィルタが入っています。フィルタの前にあるヒューズとPTCサーミスタは回路が故障したときのための保護回路です。
    EMIフィルタはコモンモードチョークL1とデファレンシャルモードチョークL2、それと、アクロス・ザ・ライン・コンデンサCX1とで構成します。
    ここで、アクロス・ザ・ライン・コンデンサというのは特別なコンデンサで、自己共振周波数も高く、ノイズ除去の目的のほかに耐サージ特性などの認証を受けたコンデンサです。ここに一般的なフィルムコンデンサを使うのは邪道です。
    コモンモードチョークコイルというのはごく普通に出回っているのでつい軽視しがちですが、これも安いものを用いるとフェライトコアの特性が規定以下だったり、コア接合面が研磨されていなかったりなど、フィルタ効果が怪しいものを使ってしまうことがあります。理想はそれぞれのコイルが2-3セクションに分割されているものであり、必ず自己共振周波数とフェライトコアの材質を仕様書でチェックできなければなりません。(コモンモードチョークコイルの仕様書の例
    仕様書のないコモンモードチョークコイルには注意しましょう。極端な場合、コイルがあってもなくても同じだったりします。
    次に、ハイサイド・ドライバICの動作について説明します。
    AC100VはブリッジダイオードBD1で整流されてC1にチャージされますが、このときの電圧は141Vと言われます。しかし、実際にはかなりの脈流を含んだ電圧になります。
    電源ON直後の状態では、起動前のハイサイド・ドライバICはUVLO(Under Voltage Lock Out)という回路の働きにより消費電流がほとんどゼロの状態で眠っています。UVLO機能はこの手の電源駆動用ICのほとんどに内蔵されています。
    この状態でICが起動していない場合、起動用電源抵抗R1を通じて電流がC2に流れるとC2の電圧が上がり始めます。
    C2の電圧がある程度以上に上がるとUVLOが解除されてICが起動します。この起動電圧はICによって異なり、仕様書に記載されていますが、NTS3733の場合は約11V前後です。C2の電圧が起動電圧を超えるとICが起動してQ1,Q2を駆動し始めます。
    このとき、ICの消費電流は急に増えますので起動用電源抵抗R1だけでは供給電流が足りず、C2の電圧は低下し始めます。そのままではC2の電荷を全部使ってしまうので、それを補うためにC3,R3,D1,D2による補助電源回路で電流を供給します。インバータ回路が発振を始めればC3,R3,D1,D2を通じてC2に電流が供給されるようになります。
    ツェナーダイオードD3はIC電源の電圧が15V以上にならないようにクリップします。ハイサイド・ドライバICの中にもツェナーダイオードが内蔵されており、インバータを安くしたい場合にはD3を省略してIC内部のツェナーダイオードを利用する回路も多く見られますが、IC内部のツェナーダイオードは許容損失が小さいので、ICを大事に設計するならば外付けのツェナーダイオードは必要です。
    C3,R3はハーフブリッジの中点電圧が振動しないように抑えるスナバ回路の役目も兼ねています。
    ハイサイド・ドライバICは二つのFETを駆動します。この回路はハーフブリッジと呼ばれます。4つのFETを駆動する回路はフルブリッジと呼ばれますが、液晶バックライトでは一般にフルブリッジ回路が用いられていました。AC100Vで駆動する場合にはハーフブリッジ回路が用いられますが、高圧側のFETの駆動には特別な工夫が要ります。このために専用に開発された回路がハイサイド・ドライバです。
    そしてこの回路の最大の特徴が共振コンデンサC8に流れる共振電流位相をICのPhin端子に帰還していることです。これによってこの自励発信回路は共振周波数の中心ほ自動的に捕捉して発振周波数が決まります。今までのインバータ回路のように設計職人が職人芸で駆動周波数を決めるのではなく、共振周波数で自動的に発振周波数が決まります。このため、共振周波数が設計値から変動したような場合にも自動的に最適周波数を追いかけて発振します。これを自動ZVS機能と言います。

    ●どこか間違っているハイサイドドライバ
    ハイサイド・ドライバはInternational Rectifierが最初に開発し、その後多くのセカンドソースが出るようになりましたが、CCFLや蛍光灯ドライバに関してはInternational Rectifierはいくつかの間違えたインフォメーションを出しており、なにしろ信用のあるメーカーですから多くの後続メーカーがそのインフォメーションに続いてセカンドソースを出してしまい、手がつけられなくなってしまいました。例えばIRS2552D CCFL Ballast Controller ICのような例です。その後もIRS2530DのようにVFOを使った例など、少なくともCCFLや蛍光灯の駆動に関してはいくつか迷走したあげくに誤ったインフォメーションを出し、これに中国ICメーカーなどが追随しておかしなICを出すに至っています。例えばこれ。とてもよい機能であると10ページで自慢していますが、あいにくこの機能が働くときはCCFLや蛍光灯がちらつき状態になりますので実際には使えない機能です。2ページのIC内部のブロック図にFault logic というブロックがありますが、これはハードスイッチングを検出する機能のことです。
    一見良い機能のように思えますが、ハードスイッチングを検出してから調整しはじめるので、それでは手遅れなのです。IRやPhilips(NXP)のような大きなメーカーから示されている技術インフォメーションだからといっても、必ずしも正しいとは限らないことがありますので注意が必要です。正しくはハードスイッチングが起きる前に予測してハードスイッチングが起きないように調整しなければいけません。
    これらのICは全てそこのところを間違えています。
    どこか間違っているハイサイドドライバ一覧
    メーカーICの型番
    IRIRS2530
    IMPIMP3519,IMP3520,IMP3522,IMP3526,IMP3528
    NXPUBA2016A,UBA2071A

    ●NTS3733の自動ZVS動作
    この点、NTS3733においては共振電流位相帰還を行うことにより諸問題が解決されます。この方式はハードスイッチング動作を予測して自動的に直前の状態にセットする機能を有しています。共振コンデンサC8に流れる電流がNTS3733のPhinに接続され、共振電流位相がICに帰還されます。この方法によれば起動時に周波数を高くする必要もありませんし、低温起動性も良好です。これはたいへんにシンプルな方法ですが効果は絶大です。CCFLの管電流と管電圧ともきれいな正弦波ですし、共振周波数の変動に対しても完全に追従します。

    waveform01
    CCFL管電流と管電圧波形


    従来の他励共振型のCCFLインバータ回路ではCCFLやCCFL周辺の反射板状態を変えるとCCFLの特性や寄生容量が変わってしまうので、これらは変えてはいけないというのが常識でしたが、共振電流位相帰還を行った場合、
    1.CCFLの太さや長さや直径を変えてもよい
    2.CCFLと反射板との距離の状態を変えてもよい
    3.インバータとCCFL間の配線を長くしてもよい
    4.配線を束ねてもよい(束ねたときと束ねてないときで管電流変化がない)
    5.室温が大きく上がったり下がったりして、CCFLのインピーダンスが大きく変化してもよい
    などのように、高圧側構造や配線をどんなに荒っぽく扱っても問題は起きなくなります。これはCCFL初心者ユーザーproof (Safety for CCFL Beginners)仕様と言っても過言ではありません。

    "CCFL 注意"の検索語で探してみてください。従来のCCFLというのは気難しいものだったのです。
    また、ハーフブリッジ駆動回路は電源電圧の変動に弱いという欠点も克服しましたので、電源電圧を安定させるためのActive PFC回路も必要なくなります。これにより、CCFLとCCFLインバータは大変に使いやすいものになりました。今までのCCFLインバータ回路における常識を全て覆したことになります。

    次に昇圧トランス一次巻線の電流波形と電圧波形を見てみましょう。一次巻線の電流波形はかなり正弦波に近いことがわかります。また、位相関係もほぼ同位相で、かつ、一次巻線電圧の位相に比べて一次巻線電流の位相がわずかに遅れているという絶妙な遅れ具合であることが確認できます。これはZVS動作であるということを意味し、ハーフブリッジ回路における昇圧トランスの理想的な駆動条件です。これよりもちょっとでも電流位相が進んでしまうとハードスイッチングが起きますが、その直前の状態に自動的にセットされています。
    他励共振型ではこういう絶妙の動作条件というのは難しいので、一次巻線電圧の位相に比べて一次巻線電流の位相が大きく遅れる状態に設定しています。他励共振型では実験的に一品だけなら同じような絶妙の動作条件に設定することもできるのですが、気温の変化があるとCCFLのインピーダンスが変化するので、一次巻線電流の位相と電圧の位相との関係が変わってしまいますから量産は無理です。とくに、気温の低い状態などではCCFLのインピーダンスが高くなり、一次巻線電流の位相が電圧の位相よりも早くなって容量性駆動(ハードスイッチング)となってしまい、ZVS動作ではなくなります。これはハーフブリッジ駆動では最悪の状態と言われます。また、インバータとCCFLとを接続する配線を長くしたり、CCFLと金属板との距離がわずかに狂ったりした場合にもZVS動作でなくなることがあります。ZVS動作でないとどういう現象が起きるかはまた別の機会に説明しますが、一言で言えば壊れます。共振電流位相帰還をしている場合にはそのような現象は起きません。

    waveform02
    昇圧トランスT1の一次巻線電圧と電流の位相関係


    CCFL用インバータ回路でもっとも重要な管理ポイントはこの一次巻線電圧と電流の位相関係です。今までインバータメーカーやCCFL蛍光灯メーカーはこれを管理してましたか?液晶メーカーはこの最重要ポイントを常に管理していましたが、CCFL蛍光灯メーカーは管理してなかったでしょう。電圧を測ることは簡単なのでよく管理しますが、電流を測るというのは半田付けを一箇所外さなければなりませんので、ついつい手を抜いて測定すらしないことのほうが多かったとは思います。でも、もし管理してなかったとしたらこれは重大な見落としになります。他励共振型では人為的管理なので大変だと思いますが、「液晶バックライトで実績がある」とうたうのであれば、液晶メーカーにおける管理と同様の管理はするべきでしょう。
    いずれにしても、自動ZVSでは非常に簡単な回路で自動的に一次巻線電圧と電流の位相関係が調整され、効率も改善してCCFL駆動の際の安定度も増し、CCFLの温度変化によるインピーダンスの変化にも強くなり、またIRS2530Dで解決しようとして失敗していた容量性駆動の防止に関しても完全に解決できるようになりました。

    ●CCFLインバータ回路の基本はZVS
    CCFL照明技術は液晶バックライトで確立されたと言われることが多いですが、実際にはCCFL照明に使われているインバータをチェックしてみると、
    1.管電流が正弦波でない
    2.ZVS動作を守っていない
    3.トランスの自己共振周波数が低過ぎる
    などと、液晶バックライトで培われた技術を継承していないものが数多く見受けられます。CCFLインバータ回路は基本に忠実にならなければいずれ故障したり、ちらついたりして品質イメージを落としてしまいます。
    基本に忠実なCCFLインバータ回路はZVS動作が必須です。また、トランスも重要です。二次側回路の共振条件も大切です。
    基本に忠実なCCFLインバータ回路はZVS動作が基本ですので、30MHzから300MHz帯域における不要輻射の雑音電力がたいへんに小さくなっています。
    余談になりますが、LEDのコンバータにおいては一般的にフライバック回路というものが使われており、このフライバック回路は基本的にZVS動作ではありませんので、30MHzから300MHz帯域における不要輻射雑音電力が大きく、規制値ぎりぎりのものが多く見受けられます。しかしながら、LED用の駆動ICはほとんど全てといってもよいぐらいフライバック回路しか存在しませんので不要輻射雑音電力の解決は難しい問題になっています。
    (続く)

    ●調光回路への対応
    CCFLの最大の特徴といえば調光ですが、いままでCCFL照明では調光できるものがありませんでした。
    トライアックで調光可能な回路は比較的シンプルに実現できますが、そのためにはCCFLがいかなる状態に変化してもハーフブリッジの駆動回路で容量性駆動(ハードスイッチング)にならないことが必要です。
    従来の他励共振型のCCFLインバータ回路では、電源電圧が低くなってCCFLの管電流が少なくなり、CCFLが高インピーダンスの状態になると、必ず容量性駆動(ハードスイッチング)状態になります。他励共振型では原理的にこの容量性駆動(ハードスイッチング)を防ぐことはできません。
    ここで共振電流位相帰還を行うと、CCFL管電流が少なくなった場合でも理論的に容量性駆動(ハードスイッチング)が起きません。このことがNTS3733を用いた試験でも確認できましたので早速調光回路にも応用してみることにしました。
    たいへんにスムースな調光が実現できました。大手LED駆動ICメーカーの提案する回路ではここまでスムースな調光はできないでしょう。
    このスムース調光はLEDにも応用可能ですか?、答えはYESです。
    では、LEDでスムース調光するにはどうしたら良いのでしょうか?最近は調光専用ICも出ているのですが、調光器を絞った状態でONすると点灯しないものも多いようです。電流共振ならばその心配も要らないということは知っておいてください。

    3733dimmer

    NTS3733を応用したCCFL調光インバータ回路



    トライアックで調光できるダウンライト


    ●最近のCCFL事情
    最近は大手のCCFLインバータメーカーが次々とDC12V系インバータの製造を中止しています。そのようなところから、CCFLインバータを自分で設計できないかと思う方から問い合わせが増えています。
    今から始めるのであればAC100V点灯のほうがいいでしょう。それと、コレクタ共振型で作ろうとする人が多いですが、やめておいたほうがいいと忠告します。トランスの入手は難しいし、よくレイヤショートを起こすしで、ロクなことがありません。それと、一見回路が簡単ですが12V系はとてもノウハウが要ります。CCFLに直列で接続される高圧コンデンサがトランスの巻線に問題を起こします。もうこれからはAC100V系しかないと考えて設計変更を前提に考えたほうが良いと思います。



    トライアック(サイリスタ)でスムース調光できる蛍光灯ができました。
    スマートハウスのテストケースとして試験設置されたところを撮ってきました。


    実はこのスムース調光というのは少し難しい技術らしく、ほとんどのLED照明などではスムース調光が無理で調光範囲が狭いか、または、専用の調光器と制御線を各照明器具との間に張り直す工事が必要になるかどちらかだとのことです。
    我々の場合はローコストな市販のトライアックを使って多数の器具を同時に調光しています。(製品情報→

    トライアックで調光できることをうたい文句にするLEDまたはLED駆動回路というのはたくさん公開されていますが、LED制御用ICのメーカーが提示している回路はほとんど全てが不完全です。トライアックで調光する場合、ICメーカーの言うままの回路で下手に製品を組むと、調光器のつまみに比例せずに途中で突然に明るくなったり暗くなったりちらついたりします。
    一方、CCFL調光のためのICも数多く出ていますが、いずれも液晶バックライト用であり、AC100Vで使用できるものはありません。仮に、液晶バックライト用の回路を使って制御線方式で調光できるようにすると、技術的には簡単ですが回路はとても大掛かりなものになってしまいます。
    そこで、今までとは全く異なる方式で調光可能な回路を、いかにシンプルに信頼性高く仕上げるかが最も難しいところでした。CCFLでちらつきを抑えてスムース調光に至るまでには大きく3つのハードルを越える必要がありました。いちばん大切なポイントはいかなる調光状態においてもハードスイッチングを起こさないということです。そして調光できるCCFL照明が出来上がりました。

    特徴を述べると、
    1.低温起動性が良く、CCFl蛍光灯低温時における不安定現象がない。
    2.多少長さが異なるCCFL、またはガス圧や太さが異なるCCFLでも自動的に最適点で動作。
    3.金属板との干渉に影響されない安定性。
    4.高圧配線を多少長くしても全然問題ない。
    5.トライアック(サイリスタ)によるスムースな調光も可能。
    6.電圧を下げて調光することも可能。
    7.電圧変動の激しい発展途上国のインフラにおいても安定動作を保証。
    というものです。



    これらの技術については順次公開していきます。
    完成したCCFL蛍光灯は力率良好、回路もシンプルで安定性が高いものになりました。

    トライアック調光CCFLインバータの仕様→


    CCFL照明普及推進協議会が発足しました。
    とりあえず協賛17社ということで始まりましたが、今後CCFL照明の認知度は高まっていくことでしょう。
    CCFL照明も認知度が高まるにつれ、新規に事業に参加する企業が増えていることはいいことです。
    ただ、品質の評価ということに関しては評価の方法や基準というものがなく、ときには保護回路やノイズフィルタなどの基本的な機能を有さない粗悪品が出回ることが懸念されるために、評価の基準というものを考えてみました。
    一般的に出回っているCCFL蛍光灯用インバータについての機能をまとめると以下のようになります。
    おそらく、これ以上の機能のものもこれ以下の機能のものもなく、これらの機能の組み合わせのいずれかになるでしょう。
    もちろん、機能を削除すればするほどローコストになりますが、削除してしまうとPSEが通らなくなったり、或いはノイズなどをばら撒いて周辺機器に障害を生じさせたり、或いはCCFLの破損時や寿命末期に発煙事故などを起こしたりしてCCFL照明製品全体のイメージダウンにつながったりするおそれがあるので注意が必要だと思います。
    下の表にフリー電圧(85Vから240Vまでのユニバーサル電圧対応型)を100%とした場合の機能と比較コストとの関係をまとめましたので評価の参考としてください。

    COST最安型簡易型調光型フリー電圧
    基本回路41%
    Filter1段5%
    Filter2段5%
    DR-Choke2%
    IC副電源4%
    PFC42%
    Valley-Fill6% 
    Dither2%
    OVP保護5% 
    Total112%41%47%65%100%

    (表1 この表は適宜更新されることがあります)

    機能を削除すればするほど安くはなりますが、削除してはいけない機能まで削除するべきではないと思います。

    次に、問題のあるCCFLインバータ回路の例を見ていきましょう。
    まず、基本回路のみというのはこのような例です。
    tenuki

    つまり、CCFL電球に使われていた回路をそのままCCFL蛍光灯用に並べなおしたものです。これを基本回路と呼びます。
    基本回路はCCFLを点灯させるための最低限の構成となります。
    実例の写真を見ながら各部の構成を見てみましょう。

    ●最安型
    文字通りもっとも安い構成で、ブリッジ整流の後にいきなり他励型二次側共振のインバータ回路が接続されています。
    tenuki01


    基本回路以外の部品が載っていません。確かに安い回路ですが、まずいちばんまずいのが保護回路がないことです。CCFL破損時や不良時にはインバータ回路が焦げるでしょう。難燃材を使っているので発火はしないでしょうが回路が焦げると騒ぎのもとになります。
    次に力率(パワーファクタ)も0.6しかなく、電源電流にもパルス状の高調波電流が流れており、高調波電流規制はNGです。
    EMIに関してもノイズフィルタは入っていないので高周波雑音を撒き散らし、近くにAMラジオがあればおそらく全滅だと思われます。雑音端子電圧の規制は確認するまでもなくNGです。
    それにこの回路はハーフブリッジの他励型ですから、入力電圧の変化に弱く、わずかな電源電圧の低下で不点灯やちらつきにつながるので品質の面でも問題を抱えているでしょう。評価は以下のとおりです。

    対策の有無
    電源電圧変動NG
    高調波電流NG
    雑音端子電圧NG・NG
    輻射雑音電力不明
    低温対策NG
    安全対策NG


    ●簡易型
    最安型にフィルタを付けただけ少しはマシといったものでしょうか。やはり一番肝心な保護回路が省略されていることが気になります。
    tenuki02


    PSEを取得するためにはこのレベルのフィルタでは無理であり、最低2段のフィルタが必要になります。また、力率(パワーファクタ)も0.6であり、高調波電流規制もNGです。
    ハーフブリッジの他励型であるので、入力電圧の変化に弱く、わずかな電源電圧の低下で不点灯やちらつきにつながる点では最安型と変わりませんのでこれも粗悪品に分類されるといえるでしょう。
    実際に日本に入ってきているそうですから、これには注意が必要です。評価は以下のとおりです。

    対策の有無
    電源電圧変動NG
    高調波電流NG
    雑音端子電圧NG
    輻射雑音電力不明
    低温対策NG
    安全対策NG

    あまりCCFL蛍光灯の中まで分解して見ることはないでしょうが、買う方は気をつけてください。あえて外観は公表しないことにします。

    最後に、PSE認証を受けることができるCCFL蛍光灯のインバータを見てみましょう。

    ●フルスペックのフリー電圧
    今CCFL蛍光灯用として出回っている標準の構成が以下のものです。
    PFC回路を有しており、ユニーバーサル電源(85V−240V)に対応しています。もちろん、基本的にPSEを取得できるものです。この構成は入力側フィルタが2段から3段であり、雑音端子電圧規制に通るよう対処されています。力率も0.95以上であり、高調波電流規制のClass-Cもクリヤできます。(いささかオーバースペックですが)
    また、PFC回路によって入力電圧の変化にも強くなっており、ハーフブリッジ回路の弱点の一方がカバーされています。(もう一方の弱点は他励型では克服が無理)
    もちろん保護回路もあるので、CCFL破損やCCFL寿命末期にはインバータ回路が安全に停止するようになっています。
    fullspec

    評価は以下のとおりです。

    対策の有無
    電源電圧変動OK
    高調波電流OK
    雑音端子電圧OK
    輻射雑音電力OK
    低温対策OK
    安全対策OK


    もし、インバータ回路の評価が自分でできない場合は、表1をチェックシートとして各機能の有無をCCFL蛍光灯のメーカーや販社に問い合わせてみればよいと思います。答えられないメーカー・販社は製品の中身を知らずに売っているということになるので避けたほうがいいでしょう。


    CCFL照明のインバータとテスラコイルとの間には深いつながりがある。CCFL照明のインバータに使われているトランスもテスラコイルも共振変圧器である。共振変圧器というのは二次巻線側のコイルの短絡インダクタンスと二次側の浮遊容量との間で共振を起こし、昇圧比が変化するトランスのことである。昇圧比が変化するという性質は、放電を制御するには都合が良い。
    多くの場合、高圧トランスを構成しようとすると高圧巻線側に分布定数状の性質が表れる。
    CCFLインバータ用トランスでは知る人ぞ知る性質であるが、テスラコイルにも同様の性質があるかどうかを、インピーダンスアナライザを使って検証してみた。
    まず最初にCCFLバックライトに使われているトランスの一次側からf−|Z|特性を分析してみた。

    notetransform

    そうすると、この手のトランスに特有のインピーダンス特性が現れる。上に尖ったピークが並列共振点で下に尖ったピークが直列共振点である。並列共振点と直列共振点は対で現れる。高周波用の共振変圧器においてはこの共振点が一つだけではなく、複数表れることが普通である。写真のトランスでは共振点が6対現れている。もっと詳しく見てみよう。第一共振を見ると、並列共振点の周波数と直列共振点の周波数との間に開きがある。この開きはどんな意味なのだろうか。

    couplingcoef

    実は、この開きは一次巻線と二次巻線との結合係数に関係している。この周波数の比からトランスの結合係数が計算できるのである。この開きが広いほど結合係数が高く、開きが狭いほど結合係数が低い。

    試しにIOコアの外側のコアだけ取り去って中心コアだけにすると結合係数が低くなるが、その状態で特性を取っってみた。

    centercore

    第一共振を見ると、並列共振点の周波数と直列共振点の周波数との間の開きが狭くなっているのがわかる。
    つまり結合係数が低いわけだが、実は、このインピーダンス特性がテスラコイルの特性にそっくりなのである。
    今度はテスラコイルの一次コイル側からインピーダンス特性を取ってみた。

    teslasmall

    直並列共振対が5つ見える。この共振点を全て記録しておく。
    もう少し大きなコイルの特性を取ると、

    teslabigger

    共振対が10も見えるのである。これは明らかにテスラコイルの二次コイルに分布定数性の遅延回路が形成されていて、特定の周波数で定在波が発生している証拠である。

    次に、インピーダンスアナライザでコイルのインダクタンスも測定した。

    scoilsmall

    小さいほうが20.6mHであった。

    scoilbigger

    大きいほうが41mHであった。
    インピーダンスアナライザは便利な測定器である。

    測定した共振周波数をグラフにプロットしてみた。共振の次数が横軸で、共振周波数が縦軸である。共振の次数と共振周波数とは直線状にはならなかったが、きれいなデータが得られた。


    resonance01

    低い次数では容量球や周辺の寄生容量によって共振周波数が下がるが、高次の次数になるほど影響が少なくなるという結果が得られた。高次の次数のデータだけ取ればほぼ直線状である。

    resonance02

    テスラコイルをドライブするのであれば、第一共振の直列共振周波数だけがわかればよい。この直列共振周波数で自動的に発振するようにするのが電流共振型のSSTCである。電流共振型回路とテスラコイルとの相性は抜群である。電流共振型の基本ブロックはCCFLインバータ用の電流共振型の回路が応用できる。共振電流位相の検出は二次コイルのGND側で検出するこの方法が最も簡単である。

    teslacurrent

    また、並列共振周波数と直列共振周波数の開きから結合係数が計算できる。
    結合係数kの計算のしかたは、並列共振点の周波数をfpとして、直列共振点の周波数をfsとすれば、

    fpfs

    である。
    計算してみると、小さいほうのテスラコイルがk=0.14、大きいほうのテスラコイルがk=0.19であった。小さいほうは一次コイルと二次コイルとの距離が離れているせいで結合係数が小さくなったのだと思える。
    テスラコイルの二次コイルに上記の多数の高次数共振が観測されるという実測結果から、二次コイルは分布定数状の遅延回路になっていることはほぼ明らかであると言えるであろう。


    テスラコイルの最高電圧が出る原理は、テスラコイルの二次コイルが1/4λ(ラムダ)の共振器になっていて、二次コイル上を進む進行波が末端で反射されて往復するうちに、定在波が生じ、その定在波の振幅が限界に達して最後に絶縁が破壊されて放電が起きるのだと考えて間違いない。

    ●テスラコイルとワイヤレス電力伝送(非接触給電/ワイヤレス給電)
    ニコラテスラはテスラコイルを使って今でいうワイヤレス電力伝送(非接触給電/ワイヤレス給電)を行おうと試みたことで有名であるが、果たして実現性はあったのであろうか。
    実はテスラコイルを解析していると、磁界共振方式のワイヤレス電力伝送の知見も静電結合方式のワイヤレス電力伝送の知見も得られてしまうのである。
    例えば、二つの共振周波数の近いテスラコイルを、放電させない状態で隣接させて片方のテスラコイルだけを共振周波数で駆動するともう一方のテスラコイルの一次コイルにしっかりと電圧が出てくる。実用になるほどの結合は得られないが、静電結合方式のワイヤレス電力伝送の実験としては面白い。
    ところで本命は磁界共振方式のワイヤレス電力伝送であるが、これはテスラコイルの一次コイルと二次コイルとの共振結合を分析してみれば答えが得られる。
    この場合にテスラコイルの二次コイルに生じる分布定数状の遅延回路の遅延に基づく高次の共振は無視し、第一次の並列共振と第一次の直列共振だけに着目して簡単なモデルを使って解析すれば、どのくらいの周波数で駆動すればよいかがわかる。
    詳しくは別の機会に解説するが、モデルと計算式は以下のとおりである。

    磁界共振方式のワイヤレス電力伝送とは即ち結合係数の低いトランスである。結合係数が低ければ低いほど、給電できる周波数の幅は狭くなっていくので、遠く離れたコイル間で給電するのはたいへんに難しくなることがわかる。
    また、並列共振周波数は変動しないが、厄介なことに直列共振周波数は変動するのだ。例えば、二つのコイル間が近くなって結合係数が高くなると直列共振周波数は高くなる。
    この性質を理解していないと磁界共振方式のワイヤレス電力伝送を使いこなすことは難しい。WiTricityやRezenceなどはこの問題を解決しているのだろうか。

    ●テスラコイルと世界システム
    さて、果たしてテスラコイルで送電線なしに電力伝送などできるのだろうか。これはニコラテスラの逸話などで彼は地球の共振を使うと言っていたそうであるが、地球の共振といえばシューマン共鳴である。シューマン共鳴の周波数は基本波が7.83 Hz、二次共鳴が 14.1 Hz、三次共鳴が 20.3 Hzとそれ以上の共鳴周波数もたくさんあるが極めて低い周波数である。
    今回計測したテスラコイルの第一次直列共振周波数は、大きなコイルのほうで容量球が有の状態で286kHzとたいへんに高い周波数であることがわかった。
    地球のシューマン共鳴を利用してテスラコイルで無線送電を行うというのは周波数の桁が合わないので無理かな、と思う。
    しかし、超巨大なテスラコイルで共振周波数が数十Hzとかいうものを作ったら、もしかしたら無線送電が可能なのかもしれない。それがどのくらい巨大なテスラコイルになるのか想像もつかないが。
    wardencliffe
    ワーデンクリフタワーの共振周波数はいったい?!


    看板やCCFL電球などのCCFL照明の市場は台湾が一歩先んじていたが、蛍光灯型のCCFL、いわゆるCCFL蛍光灯の市場は日本が先行しているようだ。台湾におけるCCFL照明はT-Barという600mm×600mmの規格天井向けが主流であり、CCFL蛍光灯の市場は少ない。
    CCFLのT-Bar照明器具の場合は技術が簡単なうえにインバータの収容スペースが大きいので、従来技術のインバータ回路でもそれほど問題にならないところから多くのメーカーがCCFLのT-Bar照明器具の製造・販売をしている。


    やはり、インバータが大きい!

    一方、CCFL蛍光灯のほうはT-Bar照明器具と比べると相当開発が遅れていた。それは蛍光灯の直径の中に入れることができるインバータがなかなかできないということと、液晶TV用のインバータ技術をそのままCCFL蛍光灯に持ち込もうとしたために発熱が大きく、故障が多いという問題を抱えていたからだ。CCFL照明にデメリットがあるとすれば、最適な技術が確立されていないことであると言える。
    一口にインバータ回路と言っても、ノートパソコン用と液晶バックライト用、モニタ用とでは同じ他励共振回路でも共振のQ値や動作ポイントがそれぞれ異なる。ノートパソコン用では小さなインバータ回路を最高効率点で駆動するために電流共振型を採用していた。
    液晶テレビにおいてはスペースが十分なので、大き目のトランスで発熱を許容することにより楽に設計できる、高漏れインダクタンス型のLow-Q他励共振型が主流だったのである。
    CCFL蛍光灯の製品開発初期はその技術をそのままCCFL蛍光灯に持ち込んだので、昇圧トランスの発熱が大きくて、その発熱でインバータ回路が故障するということが続出した。
    そこで、他励共振型のモードを高効率(高力率)他励共振型に変更して昇圧トランスとFETの温度を下げようとしたのだが、この他励共振のモードは電源電圧の変動と外気温の変化によるCCFLインピーダンスの変化に弱く、設置場所の条件を慎重に選ばなければならないものとなってしまった。そのような事情から、台湾や中国でオリジナルに開発されたCCFL蛍光灯で、日本に安心して輸入できるものは皆無だったのである。

    そこで、少しでも条件を安定化させるために、各社とも日本向けのCCFL蛍光灯ではインバータ回路の前段にPFC回路(力率改善回路- Power Factor Control)を設けているようである。下記がそのブロック図である。
    pfcinv

    ここで、インバータ回路の昇圧トランスとFETの発熱が大きいのは、昇圧トランス一次巻線に流れる無効電流が多いからである。
    昇圧トランス一次巻線に与えられる電圧位相と、昇圧トランス一次巻線に流れる電流位相との位相差が大きいとインバータ回路の発熱は飛躍的に大きくなる。
    この位相差と無効電流との関係については一般にインバータ回路の設計者の認識が甘いことが多い。
    例えば、昇圧トランス一次巻線に流れる電流位相と差が-60度だったとすると、一次巻線とFETに流れる電流は、
    1/COS(-60*π/180)=2.0

    つまり、2倍の電流が流れるわけであり、発熱量はFETのRds-ONと巻線の直流抵抗Rwに対してI^2*Rで効いてくるので、電流が2倍だと発熱量は4倍、電流が3倍だと発熱量は9倍になることになるが、これを認識していないかまたはそれほど深刻に思っていないケースが多い。
    ここで、前段にPFC回路を設けるとすれば、インバータ回路のDC電圧は360Vないし400Vとなり、AC100を整流したDC140Vの電圧でインバータを駆動した場合に比べて、FETや昇圧トランス一次巻線に流れる電流を1/3近くに減らすことができる。同じ抵抗値だとすると発熱量で計算した場合1/6から1/9になる。実際には高耐圧のFETはRds-ONが高く、トランスの巻線の抵抗値も高くなるので総発熱量はもっと大きくなるが、ざっと1/3と見なしてもかなりの発熱量の軽減である。
    その結果、日本で発売されるCCFL蛍光灯の回路はほとんどがPFC回路を設けたものになった。
    インバータ回路の前段にPFC回路を設けると、効率の改善だけでなく、AC電源の電圧が85Vから240Vまでのユニバーサル電源対応になることや、AC電源側の力率が良くなり製品としての付加価値が上がるというメリットもある。
    そこで、日本市場向けCCFL蛍光灯はほとんどがPFC回路搭載を前提としたものになったようである。

    これでCCFL蛍光灯は電源電圧の変動による不安定対策と発熱軽減ができたが、CCFLの温度環境が変化することによる不安定さに対してはまだ解決したわけではない。
    CCFLの管電流を安定化させるためには昇圧トランスを大きくして、漏れインダクタンスももっと大きくしなければならない。それでは昇圧トランスが蛍光灯の管の中に入らないし、漏れインダクタンスを増やしたらふたたび発熱で悩まされるわけである。
    結局、他励共振型では根本的な解決手段が得られないことになってしまったのである。
    このようなことから、初期のCCFL蛍光灯は必ず背面に角型のスペースを必要としていた。その写真は以下のとおりである。
    IMG_3955t
    丸くない!

    もちろんこのようなことは、電流共振型インバータ回路にすれば発熱も解決できるし昇圧トランスも小型にできて、また、電流共振型インバータ回路は定電流性も高いのでCCFL環境が変化しても管電流が変化しにくいということで全面解決できることは言うまでもない。
    これは、2005年頃からシミュレーション解析を開始して、どのようなパラメータが最適かなどの準備していたものであるが、そんな完璧なインバータ回路なんてまさかあるわけないというものが出来てしまった。

    40dimm
    丸いし、無理してないし、発熱も少ないし、調光もできる

    それではなんでCCFL照明では皆が最初から電流共振型を採用しなかったのだろうかという疑問が沸くと思う。CCFLではなくHCFL、つまり一般の蛍光灯のことだが、HCFLでは電流共振型のインバータ回路はごく普通に使われていて歴史も長い。要するに液晶バックライト用技術という華やかな世界で使われていたCCFL他励共振型インバータ技術というイメージが強過ぎたせいで、液晶の世界の一見ハイテク?メジャー技術である他励共振型を皆が信じてしまったせいもあると思う。
    液晶の世界のメジャー技術を信じるべきか、照明の世界の古参メジャー技術を信じるべきか、CCFL照明はスタートのところで選択を誤ったとしか考えられない。やはり技術は基本に戻って基本は忠実に守るべきということに尽きるのではないだろうか。

    ●三光堂・地球電球本舗でも小売販売中→
    CCFL電球やCCFL蛍光灯は同じ外形でインバータ回路が異なる製品がある。「電流共振型採用」と書かれているか否かをよくご確認のこと。
    CCFL電球、CCFL蛍光灯(LED電球、LED蛍光灯も事情は同じ)は一般に外形プラスチックとCCFLとインバータ部とが別々に販売されており、零細な組み立て工場がそれらを集めて組み立てて販売していることが多い。したがって、外観が同じというだけでは同じ発売元かどうかは確認できないのでその点にご注意。
    とくに11W電球あたりは外観が全く同じなのに、内部のインバータ回路が各社各様で、同じ外形のものを分解しても中身が異なる。信頼性の要は内部のインバータ回路である。A社の不良品をB社に持ち込んでクレームを言うと自社のではないとい話がしょっちゅうある。

    →超小型のCCFL蛍光灯用インバータ(小弾型)
    →CCFL照明とは? CCFL蛍光灯やCCFL電球用のインバータ回路

    数年前のことだが、台湾で初めてCCFL電球というものを見せられた。CCFL(冷陰極管)といえば、日本が開発の主導権を持っていたものであったが、照明用にCCFLを使うという発想はなかったようで、試験的なものはいくつか作られていたが、本格的な商品開発は台湾に一歩先を越されたようである。
    現在、台湾の学生の理科の学力は世界一となったと言われているが、開発分野では部分的に日本を追い越し始めているのかもしれない。
    初めて見たCCFL電球は8.3Wで、明るさは410ルーメンというもので、LED電球と比較しても圧倒的に明るく、コストも安いというものだった。
    早速日本での発売も期待して簡単な契約を結んだのだが、肝心の日本仕様のものが待てど暮らせど出てこない。どうしたのだろうかと尋ねてみると、まだ技術的に安定していないということであった。
    試しに試作品を持ち帰って点灯試験をしてみると、電源電圧が台湾の110Vであれば安定して点灯しているのであるが、日本の100Vに接続するとかなり暗くなってしまうのであった。電圧変動に弱い。
    理由はだいたい察しがついたが待つことにした。
    しかし、また数ヶ月待たされても出てこないのでどうなっているのかとさらに問うと、今度は台湾で売り出したはいいが、熱くて壊れやすいので調整が難しい。日本仕様はこの問題が解決してから再調整するとか言っているらしい。いいかげん待てないので台湾仕様のCCFL電球を分解して回路を調べてみることにした。

    excitedtype

    やはりハーフブリッジの他励型である。発振回路にIR2153を使っているのはいいが、昇圧トランスT1の二次側の共振回路を見ると微妙に変である。
    二次側に共振コンデンサがないのでCCFL寄生容量Csと漏れインダクタンスLscとで共振させる、高漏れインダクタンスのLow-Q共振設定で動作させていることがすぐにわかった。
    S2,D4,R6,C2で構成されるIC補助電源回路もおかしい。これはPFC回路やLEDコンバータで使われるフライバックコンバータの場合に有効な回路であって、ハーフブリッジ回路で使用するとIC電圧が不安定になる。
    いろいろと改良しなければならない点が多いな、と思わされた。

    この回路から推測されることはまず、高漏れインダクタンスのLow-Q共振設定であるから発熱が多いだろうということである。これは液晶テレビのバックライト用インバータの技術であり、液晶メーカーが管理する液晶バックライトの精度、即ち、CCFLと反射板金属間の寸法精度や高圧配線処理などの精度が良いことに頼り切った技術である。つまり、液晶メーカーが管理するような精密なバックライト設計の下でのみ許される回路であって、CCFL照明のように中小の企業が企画設計する精度の悪い照明器具では危なくて使えない。照明器具においても液晶用バックライトと同様の精度管理ができるならば良いが、現状を見るととてもそこまでの精度管理ができているとは思えない。また構造的にも精度の維持は難しい。
    また、この回路は電源電圧変動に対して管電流の変化が大きい。おそらく低温起動性も悪いので、台湾の気候ならばよいが日本の冬では不点灯になるとか、人間の手が近づいただけで管電流が変化するとかいう様々な問題も抱えていることになる。
    他励共振型回路は液晶テレビ用インバータのように、前段にしっかりしたスイッチング電源があって、安定したDC24Vが供給されることを前提にした回路である。さらに、ハーフブリッジ回路はフルブリッジ回路に比べて電源電圧変動に対してかなり弱い。商用のAC100V電源に直結させて使うには不安が残る。
    また、発熱を減らそうとして、CCFLと並列に共振コンデンサを取り付ければ高効率他励共振になって昇圧トランスT1の温度は下がるが、外気温変化や電源電圧変動に対しては高漏れインダクタンスLow-Q他励共振よりももっと弱くなる。開発サイドでは共振Qを上げたり下げたり、ドタバタやっていたんだろうと思われる。
    つまり、
    高漏れインダクタンスLow-Q他励共振:インバータの温度が高過ぎる→Middle-Q他励共振:温度が低いが電源電圧や外気温変化に弱い→もっと安定度を上げろ→高漏れインダクタンスLow-Q他励共振:インバータの温度が高過ぎる→・・・・・

    の永遠ループでああでもないこうでもないと試行錯誤していたんだろうな、と推測された。結論から言うと、他励共振型ではどうあがいても無理だと思う。

    excitedbd

    そこで、台湾で売っているCCFL電球を片っ端から買ってきて分解して回路を調べてみた。
    tenuki
    ※よく技術評価もせずにこういうものを買ってしまわないように!

    結局、
    1.インバータの温度が低いものは電源電圧の変化や外気温の変化に弱い。
    2.電源電圧の変化や外気温の変化に強いものはインバータの発熱が大きい。
    (原理上、他励共振型回路でこの条件が両立できるものはない。)
    3.なかには、CCFLが破損すると放電が飛びっぱなしというものまである。保護回路がない?!
    (保護回路がないというのはひど過ぎる。いったい何を考えているのか。)
    結果はどれも同じような回路であり、結論としては全部ダメということになった。

    reverceeng

    そのまま安心して輸入できるものは皆無だ。しかたがないので早速改良に取り組むことにした。
    まず、二次側回路の共振のQ値を大きくする。他励共振型ではタブーとされている禁断の領域High-Qに突入する。
    このためにはCCFLと並列に大きな値の共振コンデンサを取り付ける。だいたい数十pFから100pF程度だ。
    台湾の設計者にこの値のコンデンサを取り付けてくれと伝えたら神經病(センジンピン)と言われた。そうか、俺はmadなのか。褒め言葉として受け止めておく。ニコラテスラに一歩近づけたような気がしてうれしい。
    そして、昇圧トランスT1を巻き直して漏れインダクタンスの値を1/4まで下げてみた。そうすると、トランスの温度が低くなって効率は最高になる。しかしこのままでは寄生容量Csの変化に敏感で、量産時には部品のバラツキで不良が出ることも明らかである。
    そこで、共振電流位相帰還の回路を追加して発信回路に強制的に同期をかけて電流共振型にしたのである。赤い部分が他励共振型を電流共振型にするための付加回路である。回路としては大変に簡単な回路である。

    current resonance CCFL inverter

    早速点灯してみたところ、CCFLの点灯具合の安定度が良い。、インバータの温度も低いようである。手を近づけても金属を近づけても明るさに変化がなく、信頼性が高いという感触を得た。

    100_3359


    電源ON直後の電流波形も確認した。点灯後、わずかなラッシュ電流が流れるがその後、数波を経て電流波形が正弦波に変化していく様子が見られる。ということは結果的にトランスの発熱が少ないということを意味する。

    DSC04186t

    また、CCFLの管電圧と管電流も確認したが、きれいな正弦波である。CCFLの管電流は正弦波に近いほどCCFLが長持ちする。

    100_3301

    比較のために他励共振型の管電流と管電圧も載せる。

    currentvol

    ここでまとめると、一口に言って発熱などで壊れやすい怪しいインバータを見分けるにはどうしたら良いのかを述べるとそのポイントは、
    1.ICの型番にIR2153、または8853と書いてあったら要警戒。余程の玄人でなければ避けるべき。IR2104とかiT2104だったら一応OK。ただし、後述の「簡単な見分け方」の検証もする。
    2.管電流を計測する。本当にきれいな正弦波であったらばよいが、少しでも歪んだ波形であれば避ける。
    3.インバータ回路の内部温度を測る。とくにトランスの温度が高ければ要警戒。
    4.インバータ回路のトランスの一次巻線に流れる電流と電圧を測り、掛け算する。そうすると皮相電力(VAで表わす)が計算できる。次にACラインからの入力電力(W)を測り、インバータ回路のトランスの一次巻線皮相電力と比較して大きく違うものは避ける。(ここで比較するのはACラインからの入力電力Wであって、ACラインからの皮相電力VAではない点に注意)
    とまあ、これだけ裏づけを取るためには数種類の測定器が必要になるが、ちゃんと裏づけを取れば危ないインバータはある程度避けることができる。
    ここで、危ないインバータはある程度避けることができると言ったのは、さらに温度条件を変えた場合に危なくなるインバータがあるからである。
    簡単な見分け方は以下のとおり、
    1.前述の1から4項目をクリヤしたインバータの低温試験をする。点灯させながらCCFLごと低温槽に入れてトランス一次巻線電流に異常波形が現れないかどうか観察する。低温試験が難しい場合は冷温起動時の数秒間の電流波形と電圧波形を見る。異常波形が現れたらNG。トランス一次巻線電圧位相よりもトランス一次巻線電流の位相が進んでいたらNG。これを容量性駆動という。いずれスイッチング回路のFETが壊れるであろう。
    2.点灯後の電力変化を見る。点灯後電力が減っていく傾向にあるならばOK。増えていく傾向にあるならばNG。
    などのチェックをして全項目クリヤならばインバータ回路としては合格である。
    実のところ当時のCCFL電球やCCFL蛍光灯でこの項目をクリヤできたものは一つもなかった。
    その点、適切な定数にセットされた電流共振型ならば当然に全項目クリヤできる。
    次に、電流共振型の最大の特徴であるお手軽さ、つまり、長さの異なるどんなCCFLでも対応できるかという点を確かめてみた。
    CCFLの加工メーカーから何種類ものスパイラル管CCFLを入手して点灯してみたところ、全てOKであった。このインバータは外部条件変動に対してたいへんに強くて安定である。
    それどころか、11W用として設計されたインバータを改良すると、そのまま22Wまで点灯できた。
    同じサイズのトランスのまま2倍以上のパワーが出せることが確認できたわけである。余裕度は抜群だ。

    100_3037

    印象として、電流共振型インバータはきわめて優秀なインバータであると感じられた。優秀だからといっても高価なわけではない。付加回路部分のコストは10NT$にも満たない。
    せっかくここまでできたのであるから、外付けのケースの部分までも納得のいくまで再設計することにした。

    構造

    その後何度も改良を経てようやく納得できる製品に仕上がった。

    IMG_3958s


    ランプ効率は62ないし65ルーメン/Wであり、同仕様の他社製品が50ないし55ルーメン/Wであることから考えると、インバータ回路の効率が15%以上良いことになる。従来の他励共振型インバータ回路では15%ないし18%が熱になっていたわけである。

    0201

    電源電圧に対する余裕度も測定してみた。従来の他励共振型は電源電圧の変化に対して安定度が低い。
    電流共振型は電源電圧の変化と消費電力とが比例する関係にあるので電源電圧の変化に対して明るさの変化がなだらかである。即ち電流共振型の安定度は高いという結果が得られた。

    vpgrph

    逆にCCFLの側からみると、他励共振型は低温時に高い放電電圧が必要なときに高い電源電圧が必要になるということを意味している。つまり、他励共振型は低温時に不点灯になる可能性があることがこのグラフから読み取れるわけである。対して電流共振型は低温時の起動性も電流安定性も良いことが推測される。

    ●Amazonで小売販売中→
    今回販売している製品はLEDでは実現できない電球色1100ルーメンという製品で、100W電球と差し替えてもなんら遜色のない明るさである。
    同じ明るさをLEDで実現しようとしてもLEDの窒化ガリウムが焼けてしまうので、LED電球は20W電球相当から60W電球相当までが限界となっている。LEDだと擬似白色で1000ルーメンがやっとである。LED電球で明るさに不満を感じた場合はCCFL電球を試してみてほしい。
    CCFL電球は同じ外形でインバータ回路が異なる製品がある。「電流共振型採用」と書かれているか否かをよくご確認のこと。
    CCFL電球(LED電球も事情は同じ)は一般に外形プラスチックとCCFLとインバータ部とが別々に販売されており、零細な組み立て工場がそれらを集めて組み立てて販売していることが多いので、外形が同じというだけでは同じ発売元かどうかは確認できない。その点にご注意。例えば、芝電住環境システムの製品は外観の部品が同じだがインバータが異なり、組み立てメーカーも異なるので一切関係がなかったりする。こういうことがしょっちゅうあるのがCCFL電球である。もちろんインバータ回路が要であることはいうまでもない。
    とくに11W電球あたりは各社各様で、同じ外形のものを分解しても中身が異なる。A社の不良品をB社に持ち込んでクレームを言うと自社のではないとい話が多い。

    18W1100ルーメンのCCFL電球→
    CCFL照明とは? CCFL蛍光灯やCCFL電球用のインバータ回路→
    看板用CCFL-台湾のCCFL照明事情について→


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