CCFL照明のインバータとテスラコイルとの間には深いつながりがある。CCFL照明のインバータに使われているトランスもテスラコイルも共振変圧器である。共振変圧器というのは二次巻線側のコイルの短絡インダクタンスと二次側の浮遊容量との間で共振を起こし、昇圧比が変化するトランスのことである。昇圧比が変化するという性質は、放電を制御するには都合が良い。
多くの場合、高圧トランスを構成しようとすると高圧巻線側に分布定数状の性質が表れる。
CCFLインバータ用トランスでは知る人ぞ知る性質であるが、テスラコイルにも同様の性質があるかどうかを、インピーダンスアナライザを使って検証してみた。
まず最初にCCFLバックライトに使われているトランスの一次側からf−|Z|特性を分析してみた。

notetransform

そうすると、この手のトランスに特有のインピーダンス特性が現れる。上に尖ったピークが並列共振点で下に尖ったピークが直列共振点である。並列共振点と直列共振点は対で現れる。
高周波用の共振変圧器においてはこの共振点が一つだけではなく、複数表れることが普通である。写真のトランスでは共振点が6対現れている。
実用的には第一番目の共振対(並列共振点と直列共振点)が大事であり、第二番目以降の共振対はいろいろと問題を起こす寄生振動になる。
もっと詳しく見てみよう。第一共振対を見ると、並列共振点の周波数と直列共振点の周波数との間に開きがある。この開きはどんな意味なのだろうか。

couplingcoef

実は、この開きは一次巻線と二次巻線との結合係数に関係している。この周波数の比からトランスの結合係数が計算できるのである。この開きが広いほど結合係数が高く、開きが狭いほど結合係数が低い。また、この並列共振点と直列共振点の周波数は既に式で表すことができるようにっており、これは後に詳しく述べるが直列共振点の周波数が直接、電力変換に関係している。

試しにIOコアの外側のコアだけ取り去って中心コアだけにすると結合係数が低くなるが、その状態で特性を取っってみた。

centercore

第一共振を見ると、並列共振点の周波数と直列共振点の周波数との間の開きが狭くなっているのがわかる。
つまり結合係数が低いわけだが、実は、このインピーダンス特性がテスラコイルの特性にそっくりなのである。
今度はテスラコイルの一次コイル側からインピーダンス特性を取ってみた。

teslasmall

直並列共振対が5つ見える。この共振点を全て記録しておく。
もう少し大きなコイルの特性を取ると、

teslabigger

共振対が10も見えるのである。これは明らかにテスラコイルの二次コイルに分布定数性の遅延回路が形成されていて、特定の周波数で定在波が発生している証拠である。

次に、インピーダンスアナライザでコイルのインダクタンスも測定した。

scoilsmall

小さいほうが20.6mHであった。

scoilbigger

大きいほうが41mHであった。
インピーダンスアナライザは便利な測定器である。

測定した共振周波数をグラフにプロットしてみた。共振の次数が横軸で、共振周波数が縦軸である。共振の次数と共振周波数とは直線状にはならなかったが、きれいなデータが得られた。


resonance01

低い次数では容量球や周辺の寄生容量によって共振周波数が下がるが、高次の次数になるほど影響が少なくなるという結果が得られた。高次の次数のデータだけ取ればほぼ直線状である。

resonance02

テスラコイルをドライブするのであれば、第一共振の直列共振周波数だけがわかればよい。この直列共振周波数で自動的に発振するようにするのが電流共振型のSSTCである。電流共振型回路とテスラコイルとの相性は抜群である。電流共振型の基本ブロックはCCFLインバータ用の電流共振型の回路が応用できる。共振電流位相の検出は二次コイルのGND側で検出するこの方法が最も簡単である。

teslacurrent

また、並列共振周波数と直列共振周波数の開きから結合係数が計算できる。
結合係数kの計算のしかたは、並列共振点の周波数をfpとして、直列共振点の周波数をfsとすれば、

fpfs

である。
計算してみると、小さいほうのテスラコイルがk=0.14、大きいほうのテスラコイルがk=0.19であった。小さいほうは一次コイルと二次コイルとの距離が離れているせいで結合係数が小さくなったのだと思える。
テスラコイルの二次コイルに上記の多数の高次数共振が観測されるという実測結果から、二次コイルは分布定数状の遅延回路になっていることはほぼ明らかであると言えるであろう。


テスラコイルの最高電圧が出る原理は、テスラコイルの二次コイルが1/4λ(ラムダ)の共振器になっていて、二次コイル上を進む進行波が末端で反射されて往復するうちに、定在波が生じ、その定在波の振幅が限界に達して最後に絶縁が破壊されて放電が起きるのだと考えて間違いない。

●テスラコイルとワイヤレス電力伝送(非接触給電/ワイヤレス給電)
ニコラテスラはテスラコイルを使って今でいうワイヤレス電力伝送(非接触給電/ワイヤレス給電)を行おうと試みたことで有名であるが、果たして実現性はあったのであろうか。
実はテスラコイルを解析していると、磁界共振方式のワイヤレス電力伝送の知見も静電結合方式のワイヤレス電力伝送の知見も得られてしまうのである。
例えば、二つの共振周波数の近いテスラコイルを、放電させない状態で隣接させて片方のテスラコイルだけを共振周波数で駆動するともう一方のテスラコイルの一次コイルにしっかりと電圧が出てくる。実用になるほどの結合は得られないが、静電結合方式のワイヤレス電力伝送の実験としては面白い。
ところで本命は磁界共振方式のワイヤレス電力伝送であるが、これはテスラコイルの一次コイルと二次コイルとの共振結合を分析してみれば答えが得られる。
この場合にテスラコイルの二次コイルに生じる分布定数状の遅延回路の遅延に基づく高次の共振は無視し、第一次の並列共振と第一次の直列共振だけに着目して簡単なモデルを使って解析すれば、どのくらいの周波数で駆動すればよいかがわかる。
詳しくは別の機会に解説するが、モデルと計算式は以下のとおりである。

磁界共振方式のワイヤレス電力伝送とは即ち結合係数の低いトランスである。結合係数が低ければ低いほど、給電できる周波数の幅は狭くなっていくので、遠く離れたコイル間で給電するのはたいへんに難しくなることがわかる。
また、並列共振周波数は変動しないが、厄介なことに直列共振周波数は変動するのだ。例えば、二つのコイル間が近くなって結合係数が高くなると直列共振周波数は高くなる。
この性質を理解していないと磁界共振方式のワイヤレス電力伝送を使いこなすことは難しい。WiTricityやRezenceなどはこの問題を解決しているのだろうか。

●テスラコイルと世界システム
さて、果たしてテスラコイルで送電線なしに電力伝送などできるのだろうか。これはニコラテスラの逸話などで彼は地球の共振を使うと言っていたそうであるが、地球の共振といえばシューマン共鳴である。シューマン共鳴の周波数は基本波が7.83 Hz、二次共鳴が 14.1 Hz、三次共鳴が 20.3 Hzとそれ以上の共鳴周波数もたくさんあるが極めて低い周波数である。
今回計測したテスラコイルの第一次直列共振周波数は、大きなコイルのほうで容量球が有の状態で286kHzとたいへんに高い周波数であることがわかった。
地球のシューマン共鳴を利用してテスラコイルで無線送電を行うというのは周波数の桁が合わないので無理かな、と思う。
しかし、超巨大なテスラコイルで共振周波数が数十Hzとかいうものを作ったら、もしかしたら無線送電が可能なのかもしれない。それがどのくらい巨大なテスラコイルになるのか想像もつかないが。
wardencliffe
ワーデンクリフタワーの共振周波数はいったい?!