打率の向上と好不調の波の解消 ①
※インコース攻めより圧倒的にアウトロー攻め
野球のピッチングで相手バッターを打ち取るためには「内角攻め」が必要だとよくいわれる。
実際シーズン中には、セ・パの主軸の強打者たちが、相手投手からの厳しい内角攻めで苦しめられ凡打や空振りの山を築いて大きく調子を崩すという場面に何度も出くわす。
ただ・・・、実際にそれぞれのピッチャーたちが相手バッターに対して投げたコース別の投球割合を見てみると、もう圧倒的に「インコースよりもアウトロー」の割合が高いことがわかる。

<2022年度 山川 穂高【西武】コース別(ゾーン別)打率・成績 - データで楽しむプロ野球>
これは西武ライオンズ山川穂高選手のデータだが、他の選手たちも同様で、特に昨シーズン内角攻めに苦しめられたというオリックスの杉本選手の投球割合を見ても、やはり圧倒的にインコースよりアウトコースのほうが投じられた球数の割合が多かった。
だから「厳しい・執拗なインコース攻め」といっても、感覚的な印象は強くても、実際の全体的な投球割合で見た場合、もうインコースよりも、外角低め・アウトローへの配球が圧倒的に多くなっているという実態がわかる。
インコースは打者にとっては打ちにくい、難しい球だとはいっても、強く引っ張れるので、コースを少しでも間違えば途端にドカンと大きな一発を喰らう高い危険性・リスクもはらんでいる。
野村克也氏は「外角低め・アウトローへの直球」をピッチャーにとっての「原点」と名付けていたが、やはり基本は外角低めのアウトロー。
インコースへの投球は「見せ球」という要素のほうが大きいようだ。
もちろん実際に厳しいインコースはバッターにとって打ちにくく、特に内角から低めに落ちてくるシュートやシンカーといった球種はピッチャーにとって相手打者を「引っ掛けてゲッツーの内野ゴロ」に打ち取る絶好の球種となる。
山川選手もかつては非常にインコースを打つことを苦手としていた時期があった。
<新打撃フォームに取り組む西武・山川穂高 昨季苦手とした内角を克服できるか - SPAIA>

この2019年度のデータを見ると、2022年には苦手だったインコースを見事に克服していることがわかる。
おそらく山川選手はもともとバッティングフォームの構造的な問題として、インコースが苦手となるような要素を持っていたのだろう。
しかし、山川選手がインコース攻めを克服してくる前と後とで、やはりインコースとアウトコースの投球割合は変わっていない。
多いのは断然アウトロー。
また、プロの優れたバッターになれば、基本ストライクゾーンのボールなら普通に3割近い打率を残してくる選手が多い。
だから本当に打てなくなってくるのは、インコースでもアウトコースでも「ボールゾーン」にそれるボール球のボール。
でもこの見極めがすごく困難なようだ。
※ボールゾーンのボール球をどう見極めるか
打つのが難しいとされるインコースでもアウトコースでも、ストライクゾーン内の球ならそれぞれなんとか対処していくことはできる。
でもボールゾーンへとそれていった球は打てなくなってしまう。
けどその見極めが難しい。
インコースに投げられたあと、アウトコースにボールに投げられると、それだけでも同じコースのボールでもバッターからはずっと遠くに感じられてくる。
また、外角ギリギリのラインから、そこからピッチャーはさらに外へ曲げてきたり、下に落としたり、あるいはボールゾーンの外から急にストライクゾーンの中へと入れてきたり、さまざまな攻め方をしてくる。
そうなるとバッターとしてはもうそれ以上、ボール球の見極めができなくなり、バットを出して振りに行くこと自体がギャンブルになってしまう。
※可能性を絞って配球を「読む」
これも野村克也氏が語られていたことだが、タイトルを獲得するような強打者・ホームランバッターというのは、それだけで相手投手に対して有利な立ち居地にたてると。
一発があるバッターに対し、相手ピッチャーが投げてくるボールは自ずと限られてくるものだと。
だからその可能性を絞って相手の配球を読めと。
野村氏は強打の外国人選手にストライクはいらないとまで言っていた。
インコースはなおさら。まさかの一発の可能性が非常に高くなるから。
とすれば、「厳しいインコース攻め」といっても、そのインコースへと投げられる機会というのは相手ピッチャーにとっても限られたものとなってくる。
逆転が怖い、大量失点を許したくないランナーを置いた場面などでは、ピッチャーだってインコースへ投げるのは怖くなってくる。
そしてそういう場面では、同じインコースでも外へとはずれる確率が高くなってくる。
反対に、ここはバッターを歩かせたくない、ストライクゾーンギリギリに確実に入れなくてはといったシチュエーションでは、逆にそのボールが中へと入ってくる可能性が格段に上がってくるようになる。
何も考えずにただ目で見て判断するだけでは、そのボールが同じコースから外れるのか、それとも中へと入ってくるのかどうかということは、ボールをずっと追い続けていかない限り判断がつかない。
アウトコースといっても、手を伸ばせば届くので、バッターとしては打ちにいこうとするのだけど、そこから曲がったり落ちたりなので、
野村克也氏によれば、ピッチャーの攻め方の基本は、
①(カウントを)かせぐ
②(スイングを)誘う
③打ち取る
の三段階で構成されると。
例えば直球に威力がある投手なら、だいたいのコースでもファールにさせれば初球ストライクカウントを稼げる。
そして、詰まらされたバッターのほうでは、次は振り遅れまいとして、もっとスイングの始動やスイングスピードを上げようと準備してくる。
しかしそうなると、今度はストレートの軌道からボールゾーンへと外れる変化球に空振りをしやすくなる。
そしてその次の投球が「誘い球」となって相手バッターを空振りに打ち取ることができる。
また、これは元阪神の藤川球児氏が話されていたが、フォークボールを空振りしたバッターで、次はもうちょっとこんな感じにすれば拾えそうだと考えて打ちにくる相手に対し、次の投球は前の球よりさらにもう少し手前にフォークを落としてやるのだと。
そうすればまた相手バッターは打ちにこようとして空振りをすると。
ピンチの場面でのフォークの連投は実際のゲームでよく見られるケースだが、まずフォークだと思って狙い打ちしようとしてくるバッターに対し、これはピッチャーのほうが相手の行動を予想してそれを逆手にとって打ち取るという作戦。
山川選手がインコースを克服したみたいに、バッターとしては苦手なコースや打ちにくいコースでも、打ち方次第でそのポイントに絞ればまったく打てないということもないので、できればなるべく見逃しの機会を減らし積極的に安打を稼ぎにいきたい。しかしそこがまた相手ピッチャーにとっての誘いにもなる。
そして最後の打ち取る球。これはそれぞれの投手が最も得意としている球種。
その日の一番状態のいいボール。
ピッチャーがランナーを置いた場面でゲッツーを取りたいとか、それはもうほぼ低めのシュート、落ちるシンカーなので、フォークで三振にしてもワンアウトしか取れない。
そういう状況やピッチャーごとで攻め方も変わってくるが、配球も絞れてくる。
落合博満氏は、ここぞの場面で投げてくるそのピッチャーの決め球を狙って打つようにしていたという。
なぜならそのときに必ずそのボールがくることがわかっているから。
反対に元横浜の佐々木投手とか、得意球のフォークは難しいから逆にストレートのほうを狙って打つようにしていたとか、そういうケースもある。
落合氏は佐々木氏のクセを知っていたとも言われるのだが、大事なことは「確率を絞っていく」ということ。どんどんどんどんと。
フォークを投げるのがどういう場面なら、反対にストレートを投げるのならどういう場面だとか、それだけでも確率は絞れていく。
5割以下はギャンブル。だからその確率をつねに6割以上にしていくようにしなければならない。
その解析を一つ一つ積み上げていくことが重要。
確率というのは、そういう一つ一つの小さな確率上昇の積み上げと積み重ねが大事。
その地道な研究をどれだけ稼いで、積み重ね続けていくことができるか。
山川選手はインコースを克服したが、バッターがなにか一つ大きなバッティングのコツなどを掴んだとしても、それがいつまでも長続きすることはない。
なぜならそれに対してまた相手ピッチャーのほうで攻め方が変わるから。
王選手でも、大活躍をした翌年というのは成績を落としているのがわかる。
王選手が誰だったか、何かバッティングの奥義みたいなものはありますかと聞かれて、そんなものはない、掴んだと思っても、またそれが通用しなくなっていって、そしてさらにまた新しい何かを掴んでの繰り返しだったと。
野村克也氏はよく、才能だけで活躍している選手は決して長続きはしないと話されていたが、来た球を打つというだけではなく、自分を相手に、いつどのボールがどこに来るのか、そしてどのボールをどういうふうに打っていくのか、それを漠然とした予想から、確実にこれだと、そうわかるデータを探して見つけて、どんどん積み上げていくようにしなければならない。
※インコース攻めより圧倒的にアウトロー攻め
野球のピッチングで相手バッターを打ち取るためには「内角攻め」が必要だとよくいわれる。
実際シーズン中には、セ・パの主軸の強打者たちが、相手投手からの厳しい内角攻めで苦しめられ凡打や空振りの山を築いて大きく調子を崩すという場面に何度も出くわす。
ただ・・・、実際にそれぞれのピッチャーたちが相手バッターに対して投げたコース別の投球割合を見てみると、もう圧倒的に「インコースよりもアウトロー」の割合が高いことがわかる。

<2022年度 山川 穂高【西武】コース別(ゾーン別)打率・成績 - データで楽しむプロ野球>
これは西武ライオンズ山川穂高選手のデータだが、他の選手たちも同様で、特に昨シーズン内角攻めに苦しめられたというオリックスの杉本選手の投球割合を見ても、やはり圧倒的にインコースよりアウトコースのほうが投じられた球数の割合が多かった。
だから「厳しい・執拗なインコース攻め」といっても、感覚的な印象は強くても、実際の全体的な投球割合で見た場合、もうインコースよりも、外角低め・アウトローへの配球が圧倒的に多くなっているという実態がわかる。
インコースは打者にとっては打ちにくい、難しい球だとはいっても、強く引っ張れるので、コースを少しでも間違えば途端にドカンと大きな一発を喰らう高い危険性・リスクもはらんでいる。
野村克也氏は「外角低め・アウトローへの直球」をピッチャーにとっての「原点」と名付けていたが、やはり基本は外角低めのアウトロー。
インコースへの投球は「見せ球」という要素のほうが大きいようだ。
もちろん実際に厳しいインコースはバッターにとって打ちにくく、特に内角から低めに落ちてくるシュートやシンカーといった球種はピッチャーにとって相手打者を「引っ掛けてゲッツーの内野ゴロ」に打ち取る絶好の球種となる。
山川選手もかつては非常にインコースを打つことを苦手としていた時期があった。
<新打撃フォームに取り組む西武・山川穂高 昨季苦手とした内角を克服できるか - SPAIA>

この2019年度のデータを見ると、2022年には苦手だったインコースを見事に克服していることがわかる。
おそらく山川選手はもともとバッティングフォームの構造的な問題として、インコースが苦手となるような要素を持っていたのだろう。
しかし、山川選手がインコース攻めを克服してくる前と後とで、やはりインコースとアウトコースの投球割合は変わっていない。
多いのは断然アウトロー。
また、プロの優れたバッターになれば、基本ストライクゾーンのボールなら普通に3割近い打率を残してくる選手が多い。
だから本当に打てなくなってくるのは、インコースでもアウトコースでも「ボールゾーン」にそれるボール球のボール。
でもこの見極めがすごく困難なようだ。
※ボールゾーンのボール球をどう見極めるか
打つのが難しいとされるインコースでもアウトコースでも、ストライクゾーン内の球ならそれぞれなんとか対処していくことはできる。
でもボールゾーンへとそれていった球は打てなくなってしまう。
けどその見極めが難しい。
インコースに投げられたあと、アウトコースにボールに投げられると、それだけでも同じコースのボールでもバッターからはずっと遠くに感じられてくる。
また、外角ギリギリのラインから、そこからピッチャーはさらに外へ曲げてきたり、下に落としたり、あるいはボールゾーンの外から急にストライクゾーンの中へと入れてきたり、さまざまな攻め方をしてくる。
そうなるとバッターとしてはもうそれ以上、ボール球の見極めができなくなり、バットを出して振りに行くこと自体がギャンブルになってしまう。
※可能性を絞って配球を「読む」
これも野村克也氏が語られていたことだが、タイトルを獲得するような強打者・ホームランバッターというのは、それだけで相手投手に対して有利な立ち居地にたてると。
一発があるバッターに対し、相手ピッチャーが投げてくるボールは自ずと限られてくるものだと。
だからその可能性を絞って相手の配球を読めと。
野村氏は強打の外国人選手にストライクはいらないとまで言っていた。
インコースはなおさら。まさかの一発の可能性が非常に高くなるから。
とすれば、「厳しいインコース攻め」といっても、そのインコースへと投げられる機会というのは相手ピッチャーにとっても限られたものとなってくる。
逆転が怖い、大量失点を許したくないランナーを置いた場面などでは、ピッチャーだってインコースへ投げるのは怖くなってくる。
そしてそういう場面では、同じインコースでも外へとはずれる確率が高くなってくる。
反対に、ここはバッターを歩かせたくない、ストライクゾーンギリギリに確実に入れなくてはといったシチュエーションでは、逆にそのボールが中へと入ってくる可能性が格段に上がってくるようになる。
何も考えずにただ目で見て判断するだけでは、そのボールが同じコースから外れるのか、それとも中へと入ってくるのかどうかということは、ボールをずっと追い続けていかない限り判断がつかない。
アウトコースといっても、手を伸ばせば届くので、バッターとしては打ちにいこうとするのだけど、そこから曲がったり落ちたりなので、
野村克也氏によれば、ピッチャーの攻め方の基本は、
①(カウントを)かせぐ
②(スイングを)誘う
③打ち取る
の三段階で構成されると。
例えば直球に威力がある投手なら、だいたいのコースでもファールにさせれば初球ストライクカウントを稼げる。
そして、詰まらされたバッターのほうでは、次は振り遅れまいとして、もっとスイングの始動やスイングスピードを上げようと準備してくる。
しかしそうなると、今度はストレートの軌道からボールゾーンへと外れる変化球に空振りをしやすくなる。
そしてその次の投球が「誘い球」となって相手バッターを空振りに打ち取ることができる。
また、これは元阪神の藤川球児氏が話されていたが、フォークボールを空振りしたバッターで、次はもうちょっとこんな感じにすれば拾えそうだと考えて打ちにくる相手に対し、次の投球は前の球よりさらにもう少し手前にフォークを落としてやるのだと。
そうすればまた相手バッターは打ちにこようとして空振りをすると。
ピンチの場面でのフォークの連投は実際のゲームでよく見られるケースだが、まずフォークだと思って狙い打ちしようとしてくるバッターに対し、これはピッチャーのほうが相手の行動を予想してそれを逆手にとって打ち取るという作戦。
山川選手がインコースを克服したみたいに、バッターとしては苦手なコースや打ちにくいコースでも、打ち方次第でそのポイントに絞ればまったく打てないということもないので、できればなるべく見逃しの機会を減らし積極的に安打を稼ぎにいきたい。しかしそこがまた相手ピッチャーにとっての誘いにもなる。
そして最後の打ち取る球。これはそれぞれの投手が最も得意としている球種。
その日の一番状態のいいボール。
ピッチャーがランナーを置いた場面でゲッツーを取りたいとか、それはもうほぼ低めのシュート、落ちるシンカーなので、フォークで三振にしてもワンアウトしか取れない。
そういう状況やピッチャーごとで攻め方も変わってくるが、配球も絞れてくる。
落合博満氏は、ここぞの場面で投げてくるそのピッチャーの決め球を狙って打つようにしていたという。
なぜならそのときに必ずそのボールがくることがわかっているから。
反対に元横浜の佐々木投手とか、得意球のフォークは難しいから逆にストレートのほうを狙って打つようにしていたとか、そういうケースもある。
落合氏は佐々木氏のクセを知っていたとも言われるのだが、大事なことは「確率を絞っていく」ということ。どんどんどんどんと。
フォークを投げるのがどういう場面なら、反対にストレートを投げるのならどういう場面だとか、それだけでも確率は絞れていく。
5割以下はギャンブル。だからその確率をつねに6割以上にしていくようにしなければならない。
その解析を一つ一つ積み上げていくことが重要。
確率というのは、そういう一つ一つの小さな確率上昇の積み上げと積み重ねが大事。
その地道な研究をどれだけ稼いで、積み重ね続けていくことができるか。
山川選手はインコースを克服したが、バッターがなにか一つ大きなバッティングのコツなどを掴んだとしても、それがいつまでも長続きすることはない。
なぜならそれに対してまた相手ピッチャーのほうで攻め方が変わるから。
王選手でも、大活躍をした翌年というのは成績を落としているのがわかる。
王選手が誰だったか、何かバッティングの奥義みたいなものはありますかと聞かれて、そんなものはない、掴んだと思っても、またそれが通用しなくなっていって、そしてさらにまた新しい何かを掴んでの繰り返しだったと。
野村克也氏はよく、才能だけで活躍している選手は決して長続きはしないと話されていたが、来た球を打つというだけではなく、自分を相手に、いつどのボールがどこに来るのか、そしてどのボールをどういうふうに打っていくのか、それを漠然とした予想から、確実にこれだと、そうわかるデータを探して見つけて、どんどん積み上げていくようにしなければならない。