上関原発 情報ストック

山口県熊毛郡上関町(かみのせきちょう)に中国電力が計画中の上関原子力発電所に関する情報を紹介。現地の状況、関連ニュース、イベント、裁判情報など、マスメディアでは広く報道されない情報を記録し、ストックしています。
※当ブログ記事は上関町周辺に住む複数の有志記者によって作成しています。※リンクや記事引用はフリー。写真は無償提供も可能ですのでご相談下さい。※掲載内容に不都合や間違いがあればご指摘下さい。※お問い合わせはnew.kaminosekiアットマークgmail.comまで。

調査

中電の環境監視委 工事着手後の環境は「問題ない」

0130森林伐採
山林開拓と海面埋め立てに向け森林伐採などが進む上関原発予定地(10.01.30)

 1月29日、中国電力は、上関原発建設に伴う環境への影響について有識者から指導を得る「環境監視委員会」の第3回会合を、広島市内のホテルで開いたようです。同委員会は、中国電力が08年9月11日に設置した自主委員会で、座長の塚原博・九州大学名誉教授をはじめ、海生動植物や陸生動植物、大気環境、水環境の専門家7人で構成されています。
 今回の会合には6人が出席し、中電側は、敷地造成工事に着手した09年4月から12月末の間に実施した、環境影響評価法などで義務づけられた環境調査(大気質、騒音、振動、水質、陸生生物、海生生物、希少貝類等)を報告、すべての項目が適正水準で、動植物への影響も観察されなかったとし、委員会側はこれを了承したようです。
 終了後の会見で、環境監視委員会の塚原座長は、第三者の専門家や学会から環境影響調査をやり直すべきだと批判(1月10日のシンポジウム等)が出ている点について、「このように適切に対応しており、やり直すつもりはない」「学者によって理念や思想の違いはある」などと述べたようです。また、塚原座長は高齢を理由に退任を申し出て了承され、次回までは副座長の平野禮次郎・東京大学名誉教授が代行し、新たに委員1人を選任するようです。
 中国電力は今回の会合を受け、「工事工程や計画変更を踏まえても、既に実施した環境評価結果が変わらないことを確認できた」などとしているようです。次回は10年6〜7月に開催予定で、中電側は09年度の調査結果をまとめて報告し、同委員会の了承を得て山口県に提出するようです。

●毎日新聞(10.01.30)上関原発建設計画:造成工事、環境に問題ない−−中電の監視委
●朝日新聞(10.01.30)中電調査結果 監視委、了承 着手後の環境「問題ない」
●山口新聞(08.09.12)上関原発 環境計画策定へ委員会
●中国電力/環境監視計画

原発予定地内で縄文遺構見つかるも、県は保存しない方針

0130遺跡
原発予定地内にある田ノ浦遺跡の発掘調査現場(10年1月)

 上関原発予定地内にある西日本最大級の縄文遺跡とされる田ノ浦遺跡で、昨年12月にドングリを貯蔵するための穴が5つ発見されたことを、発掘調査を請け負っている山口県埋蔵文化財センターが明らかにしたようです。穴は直径50〜60cm、深さ20〜30cmで、中には数十個のドングリが埋まっていたようです。

 田ノ浦遺跡は、2005〜2006年に同センターが約2,000平方mを調査し、縄文土器など遺物約20万点が発見されましたが、遺構は発見されなかったようです。中国電力の敷地造成工事が始まる前の、2009年1月から始まった今回の追加調査では、遺跡が予想以上に深い部分に達していたため、調査期間が約半年延長(2010年2月終了予定)されており、縄文時代〜平安時代の土器や石器などが多数見つかっているようです。最も多いのは、約4,000年前の縄文後期の遺物で、大分県姫島産や佐賀県腰岳産の黒曜石や、香川県金山産の安山岩を加工した矢尻300点以上も発掘されているようです。

 今回確認されたドングリ穴は、田ノ浦遺跡で見つかった初めての遺構で、同センターの乗安和二三所長は「しっかり定住していた」証拠とし、「物々交換で得た石を加工し、他の遺跡にも物資を運んだとみられ、瀬戸内海の物流ネットワークの拠点の一つ」として田ノ浦を見ているようです。しかし、山口県教育委員会(社会教育・文化財課)によると、こうした穴は西日本各地で見つかっており遺構としてはそれほど珍しくないとみているらしく、住居跡などの遺構が見つからないなら遺跡の重要性は低いとして、田ノ浦遺跡を現状保存しない方針を示しているようです。

●中国新聞(10.01.24)縄文の遺物出土 原発予定地
●朝日新聞(10.01.27)田ノ浦遺跡に複数の遺構 県、保存せぬ方針

長島の希少生物を紹介したガイドブック発行

長島の自然小
 上関町長島の環境保全に取り組む市民団体「長島の自然を守る会」は、上関原発予定地の長島の田ノ浦湾周辺に生息する希少生物を紹介したガイドブック『危機に瀕する長島の自然 〜上関原発予定地および周辺の生きものたち〜』(B5判カラー・15ページ・頒価500円)を発行し、1月に各新聞の地方面で紹介されました。購入申し込みは同会の事務局がメールや電話で受け付けているほか、県内の書店などにも置いてもらう予定のようです。
 ガイドブックでは、中国電力による埋め立てが予定されている田ノ浦湾の重要性を解説した上で、瀬戸内海で30年ぶりに発見された海藻のスギモクや、世界的にも希少なカクメイ科ヤシマイシンなどの貝類、開発による減少が危惧される原始的な脊椎動物のナメクジウオ、世界最小のクジラといわれるスナメリ、国際自然保護連合(IUCN)の危惧種にしてされているカンムリウミスズメ、幻の生物といわれる腕足動物のカサシャミセンなど、田ノ浦周辺に生息する動植物がカラー写真入りで解説されています。

長島の自然見開き小

 1999年に設立された長島の自然を守る会は、高木仁三郎市民科学基金からの助成金などを得て、各分野の専門家を招いて150回以上の現地調査を実施、上関原発計画の環境アセスメントの問題点を指摘し続けており、今回のガイドブックは(財)日本自然保護協会の助成「PRO NATURA FUND」を受けて制作したようです。同会は、「上関自然の権利訴訟」の原告団の中心団体として、山口県の公有水面埋立免許取り消しを求める裁判も係争中です。

 埋立予定地周辺での生息が発見された国天然記念物のカンムリウミスズメをめぐっては、中国電力は調査報告書などで、「計画地での営巣はなく、原発建設が生息に著しい影響を与えることはない」「温排水の生態系への影響も少ないだろう」などと結論づけているのに対し、鳥類の専門家でつくる日本鳥学会は、中国電力の調査報告書に対する評価(09年12月28日付)を発表し、「報告書は不適切かな箇所が多く客観性が疑われるものであり、また調査自体も全く不十分である」との結論を示しています。同学会は、1月10日の広島市内で開かれた3学会合同シンポジウムで今回の評価を発表したほか、中電や環境省、経産省などに評価文書を発送しているらしく、“開発ありき”と批判が多い事業者による環境アセスメントの客観性が問われています。

●長島の自然を守る会 スナメリ通信(10.01.07)ガイドブック「危機に瀕する長島の自然〜上関原発予定地および周辺の生きものたち〜」を発行しました
●原子力資料情報室(10.01.15)ガイドブック「危機に瀕する長島の自然〜上関原発予定地および周辺の生きものたち〜」
●読売新聞(10.01.07)上関原発予定地 生息希少生物のガイド本
●山口新聞(10.01.08)上関原発予定地周辺の希少生物 反対派がガイドブック
●日本鳥学会(10.01.08)中国電力株式会社「上関地点カンムリウミスズメ継続調査報告書(平成21年9月)」に対する日本鳥学会鳥類保護委員会の評価
●朝日新聞(10.01.08)日本鳥学会 「客観性疑う」と結論/上関
●毎日新聞(10.01.19)ガイド本:田ノ浦の希少生物紹介 上関原発建設反対の市民団体が発行

上関の自然守れ 学会シンポに500人 中電社長は批判

0110広島シンポ

 1月10日、日本生態学会、日本鳥学会、日本ベントス学会は、広島市の広島国際会議場で3学会合同のシンポジウム「上関 瀬戸内海の豊かさが残る最後の場所」(→関連記事)を開催し、上関原発予定地周辺に残る生態系の豊かさについて8人の専門家らが講演し、参加した約500人が聞き入りました。(会場で配布された資料はこちら

 冒頭では、前日1月9日に上関原発予定地を視察(下動画)した国会議員の川田龍平参院議員(みんなの党)と平山誠参院議員(新党日本)が挨拶をし、川田氏は生態系保全に対する中国電力の対策が不十分として、一度工事を止めて調査をやり直すべきなどと述べ、命を次世代につなぐ社会の実現のためにも、国の環境政策を見直す時期だと主張しました。平山氏は、子孫に負担を強要する核廃棄物処分の問題なども紹介しました。



 シンポジウムでは、まず鹿児島大学の佐藤正典准教授が、これまで10回に渡って各学会が中国電力などに対して調査やり直しや埋立中止の要望を行ってきたにも拘わらず、ほとんどが無視されてきた経緯を紹介しました。
 生態学が専門の京都大学院・加藤真教授は、上関の生物多様性は世界的にも貴重とし、原子力発電所の冷却水に殺生物剤(プランクトンなどの生物が施設内に付着するのを防ぐ)として投入される次亜鉛酸ソーダの影響が、大きな影響を与えると主張。砂が堆積した砂堆(さたい)に生息し冷水域を好む小型魚イカナゴなどが豊富なことで、それを餌とする大型生物も生息できるが、温排水や埋め立ての影響で環境が破されると、食物連鎖の中心であるイカナゴが減って、スナメリなどにも影響が及ぶと説明しました。また、冷却水の取水口側に比べ、排水口側ではプランクトンの数が激減する事例を紹介し、広島湾のカキ養殖にも影響を与える可能性が大きいと述べるなど、上関原発計画の見直しを求めました。
 鳥類生態学が専門の九州大学院・飯田知彦研究員は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに指定されているカンムリウミスズメ(→09年2月13日5月18日6月12日)が、周年生息確認できるのは上関周辺が世界唯一と述べ、宮崎県の繁殖地の様子や、予定地そばの天田島で発見した内海初のオオミズナギドリ繁殖地(→09年9月3日)なども紹介しました。その上で、海の環境が破壊されると、上関周辺の冷水塊に依存して生息すると考えられるカンムリウミスズが、絶滅に近づくのは避けられないと懸念を述べました。
 3学会からは、日本生態学会の安渓遊地氏が、大規模開発の環境影響評価として中国電力の調査は不十分などと主張、日本鳥学会の佐藤重穂氏はカンムリウミスズメの生態を1年の調査で把握するのは困難などと主張、日本ベントス学会の向井宏氏はヤシマイシン近似種など貴重種への温排水の影響が吟味されていないなどと主張し、上関原発工事の一時中止や第三者による詳しい調査などを改めて求めました。
 このほか、植物生態学の専門家である滋賀県立大の野間講師は、海岸原生林の樹木ビャクシンの調査が不十分であったことや、一転二転する中国電力側の主張の矛盾点などを指摘し、天然記念物のカラスバトが生息するタブノキ林の価値も紹介しました。世界自然保護基金(WWF)ジャパンの花輪氏は、生物豊かな海が豊かな漁場になっているように、多様な生物がいることで人間も恩恵を受けると説明、名古屋で開催される生物多様性条約の締約国会議(COP10)の議長国として、原発推進で自然を破壊をしていいのか強く訴えていくべきと述べました。

 一方、1月14日に年頭会見を行った中国電力の山下隆社長は、上関の生物多様性を高く評価した今回のシンポジウムに対して、「そこ(上関原発予定地周辺)だけがホットスポット(生物多様性が豊かな一方で破壊の危機にある地域)とは思っていない」「それこそ客観性に欠けた評価、議論ではないか」「(カンムリウミスズメなどがここにしかいないと表現されているが、ほかの場所でも見つかる可能性は十分にある」などと批判し、環境影響評価のやり直しについては「我々も常に環境の専門家に意見を聞いて調査もしてきた。あの地域の環境は10年単位で変わっていない」として、反論を述べたそうです。

 「専門家が調査した」「専門家の意見を聞いた」として、原発建設は自然環境に大きな影響を与えないと結論づけてきた中国電力(→09年9月3日)に対し、その専門家集団である学会から、まったく逆の要望が出されている矛盾した構図が、改めて浮き彫りになりました。「カンムリウミスズメの巣も卵も見たことない人が、カンムリウミスズメの調査をやっている」ともいわれる事業者・中国電力側の調査に、どこまで客観性や信頼性が得られるのか、環境アセスメントのあり方が問われています。

●中国新聞(10.01.11)原発建設の生物への影響懸念
●毎日新聞(10.01.13)シンポジウム:上関原発予定地、「影響調査を」強調−−3学会、中区で
●毎日新聞(10.01.15)山口・上関原発建設計画:予定地生態学会シンポ、中電社長が批判
●Ankei's Active Home(10.01.15)上関)広島三学会シンポをめぐる中国電力社長の発言
●朝日新聞(10.01.09)日本鳥学会 「客観性疑う」と結論/上関
●読売新聞(10.01.07)上関原発予定地 生息希少生物のガイド本
●山口新聞(10.01.08)上関原発予定地周辺の希少生物 反対派がガイドブック
●毎日新聞(10.01.19)ガイド本:田ノ浦の希少生物紹介 上関原発建設反対の市民団体が発行

原発予定地2km沖に活断層 M6.8地震も

活断層マップ
中国電力「上関原子力発電所1号機の原子炉設置許可申請について(概要)」より作成

 中国電力は、09年12月18日に提出した原子炉設置許可申請の中で、耐震設計上考慮する活断層を公表し、上関原発予定地の西約2km沖、祝島とのほぼ中間地点に、マグニチュード6.8の地震を起こす可能性がある活断層(F-1断層群)が南北6.8kmに渡って走っていることを明らかにしたようです。また、半径30km圏内には、マグニチュード6.3〜7.1の地震を起こす可能性のある活断層が5つあるとされているようです。

 中電は原発の耐震性に問題はないとしているようですが、これに伴い上関原発の耐震設計の基準となる揺れは800ガル(ガル:galは地震動の加速度で一秒間にどれだけ速度が変化したか表す単位)が想定され、東海地震の被害が懸念されている静岡県の浜岡原発と同レベルの高い耐震性が求められることになったようです。
 このほか、原発予定地の南東約5kmの位置にある活断層(F-3断層群)や、祝島の南方を走る活断層(F-4断層群、F-5断層群)、岩国市や下松市の内陸部を走る活断層(岩国断層帯〜五日市断層)などを「主な活断層」として、評価に盛り込んでいるようです。

 中電は09年7月から2ヶ月間ほど活断層の追加調査を行い、解析を進めていましたが、結果は原子炉設置許可申請後に公表するとしていたため、今回の申請で初めて活断層の存在が発表されたことになりました。原発立地周辺の活断層調査をめぐっては、2007年に中越沖地震(M6.8)で火災を起こし放射能が漏れた柏崎刈羽原発で、国や東京電力が活断層の存在を公表しなかったり過小評価していたことが明るみに出ており、国の審査や電力会社による調査の信頼性が問われています。

●朝日新聞(09.12.19)上関原発に許可申請 計画27年、「活断層問題ない」
●JANJAN(07.12.9)柏崎刈羽原発「震災」の影響(3)隠していた活断層:東電・保安院による過去の隠蔽(活断層調査)をあぶり出し

「田ノ浦と祝島の間に断層」 祝島の山戸孝さんのトーク

上関原発問題について


 上関原発は、山口県上関町長島の田ノ浦(上写真)を埋め立てて建設予定の原発計画です。1982年に計画浮上して以来、賛成・反対で地元は分裂し、対岸の祝島(写真右)住民を中心に反対運動が続けられ、着工はこれまで8度延期されています。
 周辺にはスナメリやカンムリウミスズメなど数々の絶滅危惧種が生息する瀬戸内海随一の自然が残り、埋立中止を求める裁判が係争中です。県外ではほとんど報道されないこの問題を、電力を使う全ての人に知ってほしいと思います。

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