上関原発 情報ストック

山口県熊毛郡上関町(かみのせきちょう)に中国電力が計画中の上関原子力発電所に関する情報を紹介。現地の状況、関連ニュース、イベント、裁判情報など、マスメディアでは広く報道されない情報を記録し、ストックしています。
※当ブログ記事は上関町周辺に住む複数の有志記者によって作成しています。※リンクや記事引用はフリー。写真は無償提供も可能ですのでご相談下さい。※掲載内容に不都合や間違いがあればご指摘下さい。※お問い合わせはnew.kaminosekiアットマークgmail.comまで。

長島の自然を守る会

長島の希少生物を紹介したガイドブック発行

長島の自然小
 上関町長島の環境保全に取り組む市民団体「長島の自然を守る会」は、上関原発予定地の長島の田ノ浦湾周辺に生息する希少生物を紹介したガイドブック『危機に瀕する長島の自然 〜上関原発予定地および周辺の生きものたち〜』(B5判カラー・15ページ・頒価500円)を発行し、1月に各新聞の地方面で紹介されました。購入申し込みは同会の事務局がメールや電話で受け付けているほか、県内の書店などにも置いてもらう予定のようです。
 ガイドブックでは、中国電力による埋め立てが予定されている田ノ浦湾の重要性を解説した上で、瀬戸内海で30年ぶりに発見された海藻のスギモクや、世界的にも希少なカクメイ科ヤシマイシンなどの貝類、開発による減少が危惧される原始的な脊椎動物のナメクジウオ、世界最小のクジラといわれるスナメリ、国際自然保護連合(IUCN)の危惧種にしてされているカンムリウミスズメ、幻の生物といわれる腕足動物のカサシャミセンなど、田ノ浦周辺に生息する動植物がカラー写真入りで解説されています。

長島の自然見開き小

 1999年に設立された長島の自然を守る会は、高木仁三郎市民科学基金からの助成金などを得て、各分野の専門家を招いて150回以上の現地調査を実施、上関原発計画の環境アセスメントの問題点を指摘し続けており、今回のガイドブックは(財)日本自然保護協会の助成「PRO NATURA FUND」を受けて制作したようです。同会は、「上関自然の権利訴訟」の原告団の中心団体として、山口県の公有水面埋立免許取り消しを求める裁判も係争中です。

 埋立予定地周辺での生息が発見された国天然記念物のカンムリウミスズメをめぐっては、中国電力は調査報告書などで、「計画地での営巣はなく、原発建設が生息に著しい影響を与えることはない」「温排水の生態系への影響も少ないだろう」などと結論づけているのに対し、鳥類の専門家でつくる日本鳥学会は、中国電力の調査報告書に対する評価(09年12月28日付)を発表し、「報告書は不適切かな箇所が多く客観性が疑われるものであり、また調査自体も全く不十分である」との結論を示しています。同学会は、1月10日の広島市内で開かれた3学会合同シンポジウムで今回の評価を発表したほか、中電や環境省、経産省などに評価文書を発送しているらしく、“開発ありき”と批判が多い事業者による環境アセスメントの客観性が問われています。

●長島の自然を守る会 スナメリ通信(10.01.07)ガイドブック「危機に瀕する長島の自然〜上関原発予定地および周辺の生きものたち〜」を発行しました
●原子力資料情報室(10.01.15)ガイドブック「危機に瀕する長島の自然〜上関原発予定地および周辺の生きものたち〜」
●読売新聞(10.01.07)上関原発予定地 生息希少生物のガイド本
●山口新聞(10.01.08)上関原発予定地周辺の希少生物 反対派がガイドブック
●日本鳥学会(10.01.08)中国電力株式会社「上関地点カンムリウミスズメ継続調査報告書(平成21年9月)」に対する日本鳥学会鳥類保護委員会の評価
●朝日新聞(10.01.08)日本鳥学会 「客観性疑う」と結論/上関
●毎日新聞(10.01.19)ガイド本:田ノ浦の希少生物紹介 上関原発建設反対の市民団体が発行

自然の権利訴訟 第2回口頭弁論で住民側が陳述

 12月2日、市民団体「長島の自然を守る会」「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の会員や周辺住民など数百人が山口県に対して上関原発予定地の埋立取消を求めた、いわゆる「自然の権利訴訟」(訴状はこちら)で、第2回口頭弁論が山口地裁で開かれたようです。
 法廷では下関市の住民が陳述書を読み上げ、閉鎖海域の瀬戸内海のまわりで生活する住民の立場から、海を埋め立て原発が建設されると化学薬品や放射能を含んだ温水(蒸気を冷ますのに用いる冷却水)が大量に排出され、瀬戸内海の環境や漁業が破壊されてしまうことが容易に想像できることなどと述べたようです。
 本訴訟をめぐっては、11月24日に原告側が準備書面を提出しており、環境影響評価手続きの不備や、瀬戸内海を「わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地」と定めた瀬戸内海環境保全特別措置法の山口県計画に反していること、被告が提出した答弁書求釈明に対する釈明として原告適格の正当性などを主張したようです。
 これに対して被告の山口県は、2010年1月19日までに反論を行い、次回口頭弁論は2010年3月2日に開かれることになったようです。

上関自然の権利訴訟 野生生物は原告と認められず

 10月20日、山口県に対し上関原発予定地の埋め立て免許の取り消しを求め、周辺住民ら数百人とスナメリなど野生生物6種を原告に訴えたいわゆる「自然の権利訴訟」で、山口地裁の飯田恭示裁判長は、野生生物6種については原告と認めず、これらの訴えを却下する判決を言い渡したようです。住民らを原告とする審理は分離されて継続し、12月に口頭弁論が行われる予定のようです。

 原告から外された野生生物は、小型クジラのスナメリ、国の天然記念物の海鳥カンムリウミスズメ、 脊椎動物の祖先といわれるナメクジウオ、希少貝類のヤシマイシン近似種、長島で発見された新種の貝類ナガシマツボ、瀬戸内海で希少な海藻スギモクの6種。いずれも上関原発予定地およびその周辺に生息・生育する貴重な生物で、「自然生態系に固有の価値を認め、その価値を守るために人々が自然生態系を代弁する訴訟」として、「自然及び自然と共に生きていきたいと思う人々」が原告となって訴えていたものです。
 判決理由について飯田裁判長は、「日本の法令上、権利義務の主体となる根拠は見出せず、当事者能力を欠く者を当事者として提起された不適法な訴え」などと指摘し、原告適格を認めなかったようです。

 原告団の窓口となっている市民団体「長島の自然を守る会」代表の高島氏は、「大変残念。継続中の人側の裁判で野生生物の声を伝えていきたい」などとコメントし、被告の山口県土木建築部の担当者は「妥当な判決」などとコメントしたそうです。野生生物を原告にした裁判は、長崎県の諫早湾干拓事業をめぐる「ムツゴロウ訴訟」などがありますが、これまで日本では野生生物が原告として認められた例はないようです。一方、アメリカでは鳥のパリーラを原告に勝訴した判例が知られています。

 なお、当訴訟の原告「上関自然の権利訴訟原告団」は、今年11月末まで原告の第3次募集を行っているようです。申し込み方法や訴訟資金カンパの受付はこちらに掲載されています。

●読売新聞(09.10.21)上関原発訴訟、希少生物原告「当事者能力を欠く」
●共同通信47NEWS(09.10.21)ウミスズメなどが原告の訴え却下 上関原発計画で山口地裁

上関原発予定地沖で準絶滅危惧種オオミズナギドリ営巣

天田島と予定地
祝島(手前)から見た上関原発予定地(左)と天田島(右)

 上関原発予定地沖約6kmの宇和島で、山口県のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されているオオミズナギドリの集団営巣地(コロニー)が発見されていたことが、9月3日付の朝日新聞で報道されたようです。オオミズナギドリは体長約50cmの外洋性の海鳥で、日本各地の島嶼部に生息していますが、「瀬戸内海での営巣の確認は初めて」のようです。

 調査を行ったのは、北九州市立自然史・歴史博物館の鳥類研究者、武石全慈学芸員で、8月30・31日に宇和島に上陸して巣穴などを発見したようです。9月7日には、自然保護団体「長島の自然を守る会」のメンバーらと飯田氏が宇和島に同行し、巣穴10カ所のうち1カ所でひな1羽を確認し、写真が中国新聞に掲載されたようです。長島の自然を守る会などは、今年7月にも原発予定地から約3kmの天田島でオオミズナギドリの巣穴を発見しており、飯田氏は「周辺の島々を含めて集団営巣地の可能性がある」「万羽の単位ではないが、かなりの数がいる」とみているようです。

 9月8日、長島の自然を守る会の高島美登里代表らは、広島市の中国電力本社を訪れ、繁殖の有無が議論を呼んでいるカンムリウミスズメとあわせ、「生態系に影響するのは明らか」として予定地の埋め立て中止を求め、詳しい調査を行うよう改めて申し入れたようです。
 これに対し中国電力側は、「飛翔して移動できる鳥。工事が生育に影響するとは思えない」「予定地から遠く、原発建設の影響は少ない」などと述べており、現時点では調査は行わず、造成工事を進める考えを示しているようです。一方で、学会等の要望や新たな知見によっては「対策を変えることもある」とも述べているようです。

●中国新聞(09.09.09)上関原発予定地沖でひな確認
●毎日新聞(09.09.09)山口・上関原発建設計画:反対団体、工事中止を申し入れ「埋め立て、生態系に影響」

自然の権利訴訟の初公判 県側が棄却求める

山口地裁090819

 8月19日、スナメリやカンムリウミスズメなど生物6種と住民ら200人近くの原告が、上関原発予定地の埋め立て中止を求めて提訴中の裁判<平成20年(行ウ)20号 公有水面埋立免許処分差止請求事件>、いわゆる「自然の権利訴訟」の第1回口頭弁論が、山口地方裁判所で開かれたようです。

 裁判が始まる前、原告の中心である「長島の自然を守る会」の会員や住民ら約50人は、裁判所前に集まって集会を開き、なぜ原子炉の設置許可が出る前に埋め立て許可が出されるのか、瀬戸内海の自然を埋め立てて原発をつくる必要があるのか、人間は自然の一部であり、生き物の声に傾けて代弁すべき、などと裁判の趣旨を確認したようです(写真)。

 口頭弁論では、長島の自然を守る会の代表・高島美登里さんと、祝島に住む中村隆子さんが意見陳述を行い、埋め立てが行われると貴重な生物や生態系が大きなダメージを受けることや、原発ができると生活ができなくなることを熱く訴えたようです。これに対し被告の山口県側は、「原告には公有水面埋立法などで守られるべき権利がなく、原告適格がない」などとして、請求の棄却を求める答弁書を提出し、争う姿勢を示したようです。

 これについて飯田恭示裁判長は、原告の釈明と被告の反論を期日をそれぞれ9月15日と10月15日と決めた上で、原告の生物と住民団体・住民の審理を分離し、10月20日に判決を言い渡すことを決めたようです。

●中国新聞(09.08.20)上関原発訴訟スナメリが原告
●読売新聞(09.08.20)希少生物原告、埋め立て訴訟…県側は争う姿勢
上関原発問題について


 上関原発は、山口県上関町長島の田ノ浦(上写真)を埋め立てて建設予定の原発計画です。1982年に計画浮上して以来、賛成・反対で地元は分裂し、対岸の祝島(写真右)住民を中心に反対運動が続けられ、着工はこれまで8度延期されています。
 周辺にはスナメリやカンムリウミスズメなど数々の絶滅危惧種が生息する瀬戸内海随一の自然が残り、埋立中止を求める裁判が係争中です。県外ではほとんど報道されないこの問題を、電力を使う全ての人に知ってほしいと思います。

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