2010年02月12日

「余寒(よかん)」と「春寒(はるさむ)」

立春を迎えてからというもの、本当に寒い。

立春を過ぎてからの寒さは季語で「余寒(よかん)」「春寒(はるさむ)」などと言う。余寒は冬に重きを置き、春寒は春に重きを置いた季語。同じ時期の寒さでも、心情的に言葉を使い分けるというところが季語のおもしろさ。

これらの季語を使った句の中では

「白き手が開ける余寒の障子かな」(五所平之助)

が映像的でとても好きな句。

美しく細い指の白い手が目の前に現れたかと思うと、格子の障子にその指がかかり、すうっと開かれる。手の持ち主も、その手前にいるはずの作者も描かれないが、状況を描写して饒舌だ。

それもそのはず、五所平之助氏は映画監督なのだ。日本初のトーキー映画『マダムと女房』で有名。私の好きな俳人・久保田万太郎が主宰していた結社「春燈」の同人でもあった。

同じ俳句でも、写生句、心情に訴える句などさまざまなものがあるが、映像的に迫ってくる句の作者はと問われれば、私は五所平之助を挙げたいと思う。


newdelhi at 23:19│clip!俳句