小さいころ武蔵野線に乗るときにこの電車が来ると、
古いオレンジ一色の電車とは明らかに異質で真新しい姿に
目をキラキラさせていた。

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 乗ってみても子供ながらに若干新しく見える内装と、
すれ違う時に大きな音がしない安心感が好きだった。

そして成長し、学校や職場で凹んだり、嬉しかったり
したことがあると、まるで気遣うようにスッと迎えに
来てくれる電車だった。

若い鉄道ファンのいうところの「愛車」となるのだろうか。
ほぼ無心でホームに立っている時でも、この電車が来ると
少しホッとした。

そんな列車も、気が付けば新しい住処を見出して
旅立っていく仲間を追うように、旅立つときが来た。

時刻表にない列車の情報に疎い私だが、今回の情報は
偶然にもつかむことができた。あたかも「見に来てくれ」
と言わんばかりに。

そして令和元年8月23日。

仕事を半休にして、私は武蔵浦和駅に向かった。

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しとしとと、夏らしくない涙雨の中をあの列車はやってきた。

JR205系 M63編成

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本線から離れ、一路新潟へ向かうその後ろ姿は夏らしく
とても陽気で、最後までホッとさせられる列車であった。

この列車の前途が、穏やかならんことを。