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『ゲット・アウト』(2017)
  GET OUT

第90回アカデミー賞の4部門(作品・監督・主演男優・脚本)で
ノミネートされている。


バラク・オバマが去り、ドナルド・トランプが
大統領の椅子に着き、
アメリカは再びレイシズム(人種差別)の国に戻るのか?
そんな問題を逆手に取り、コメディアン出身の
ジョーダン・ピールが脚本と監督を手掛けた
ホラーが予想以上に面白い。
設定とアイデアを盛り込んだシナリオが実に出来が良い。
閑静な田舎に行ったらひどい目に遭う
ホラーの定石は今でも健在だった。

主演のダニエル・カルーヤは『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』
ではブラック・バスを演じ、『ボーダー・ライン』ではヒロインの同僚のFBI
捜査官を演じ、今回が初主演となる。
ローズ役のアリソン・ウィリアムズはTVドラマで活躍中の女優。
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ある夜、ひとりの黒人がスマホを手にして知り合った女の家に行く途中、
車が一台尾行して来て彼が隙を見せた途端、
男に襲われて何処かへ連れ去られてしまう。
NY在住の黒人のクリス・ワシントンは写真家で、
この週末に彼女のローズに実家に行く予定だが、
ローズは白人でクリスは黒人の自分が彼女の家族に
受け入れてもらえるのか心配だった。
彼女からは黒人のボーイフレンドは初めてだと聞いていたからだ。
君のご両親に銃で追いかけられたくない
父は時代遅れだけど人種差別主義者じゃないわ
ローズの運転する車で彼女の家に向かう途中でクリスは親友でTRA(運輸保安庁)
所属の空港警察官ロッドに携帯で電話をする。
自分の愛犬をロッドに託して来たのだが、ロッドは内心、ローズの実家へ
彼が行くのを良く思ってないらしい。
通話を終えた途端、一匹の鹿が車と衝突、車から降りたクリスは森の中で
瀕死になった鹿を見つけてショックを受ける。
通報で現場に到着した警察官はクリスにも身分証明証の提示を求めるが、
ローズが「意味もないのに見せなくていいのよ」と恐ろしく悪態をついて
警察官が根負けしてその場を去っていく。
ローズの実家は閑静で広大な高級住宅地にあり、隣家ともかなり離れており
外科医の父ディーン・アーミテージと精神科医の母ミシーが住んでいた。
彼女の両親ともにクリスを快く迎えてくれ、クリスは教養ある彼女の父の
話を熱心に聞いていた。ディーンは妻の催眠療法で禁煙出来た事を非常に
自慢して、愛煙家であるクリスにそれを勧めてきた。
そこへローズの弟で薬学を勉強しているジェレミーも加わる。
だが使用人は二人いてどちらも黒人だった。
庭師の無口なウォルターといつもニコニコ笑っている家政婦のジョージーナだ。
クリスは同じ黒人同志と思って気軽に声を掛けるが、
なぜか二人とも妙によそよそしい。
ディナーの席でディーンから「明日はパーティがあるからぜひ参加してほしい」と
言われて同席していたローズは嫌な顔になる。
クリスとふたりきりになった時も
ひどいパーティよ、全て真っ白、白人ばかりなのよ
そして夜中にふと目が覚めたクリス。
無性にタバコが吸いたくて家の庭に出ていたところ、
自分に向かって全力疾走でウォルターが向かって来た。ぶつかる直前に方向を変え
闇に消える。そして家の方に目をやるとあのジョージーナが
窓に映った自分の姿を見て何やらうっとりしている。
それを見たクリスは恐ろしくなって部屋に戻ろうとした時、
暗闇の中から声がした。「喫煙がどれほど危険か分かってる?」
そう、その声はローズの母ミシーだ。クリスは彼女に呼ばれて話を始める。
クリスの子供の頃の話で、クリスの母親が亡くなった時の事を訊かれる。
ミシーは紅茶の入ったティーカップの銀のスプーンを執拗に回す・・・
チリン、チリンとクリスが自分の話をしている時に聞こえるティースプーンの音。
座っていたソファーの上で自分の身体が動かなくなった。
そうよ もうあなたは麻痺した。さあ床下に沈むのよ
いきなり自分の身体が床下に沈んで暗闇の中に落ちて行った・・・
完全に催眠術にかかった。
気が付くとクリスはベッドの中だった。早朝にクリスはカメラを持って屋敷の付近を
散歩に出かける。そして邸宅の前に来た時に二階の窓にジョージーナが鏡を前にして
前髪をかき上げている。撮影しようとしたその一瞬、彼女がこちらを向いた・・・
クリスはカメラのレンズを違う方向に逸らせて、誤魔化した。
今度はウォルターが薪を割っていた。初めて彼と会話を交わすが、
ローズは美人中の美人です どんな困難があっても彼女を守り切ってくださいよ
と不気味な笑いを添えてクリスに言った。
パーティの時間が近づき、たくさんの車がアーミテージ家の敷地に入って来た。
やはりローズの言うとおり来賓客は白人ばかりで、グリーンと呼ばれる老人は
元プロゴルファーでクリスを見てタイガー・ウッズの話題を持ち出した。
なぜか客たちはクリスに注目して特に彼の身体についてあれこれ訊いて来る。
以前は白人が普通だったが、最近は黒人が大人気だ
クリスのファインダーの中にあるひとりの人物が目に付いた・・・
そうここに今日来た客の中でたったひとりの黒人がいた。
彼はローガン、ローガン・キングだ。
しかも若いローガンは60歳くらいの初老の婦人と一緒だった。
もっとクリスを分からなくしたのはローガンが全く黒人の仕草をせず、
外見以外はまるで白人のようだった事が鼻についたのだ。
そして極めつけはベンチにひとりだけ座っていたジム・ハドソンという
盲目の男。実はハドソンは写真ギャラリーを経営していて
クリスの事をよく知っていた。ハドソンは全盲だが、部下がクリスの
作品を描写説明することでクリスの腕に惚れこんでいたらしい。
クリスが部屋に戻ると朝に充電コードを差したはずのスマートフォンの
ケーブルが抜かれてあった。とにかくロッドに電話をするクリス。
もう嫌になった、ここにいる人間は全て変なんだ
見世物になってるのか
昨夜、ローズの母親に催眠術にかけられたんだ
おい!今すぐにそこから出るんだ
俺の推理はそのおばさんがそこの全員に催眠術をかけてるんだ!」
電話を切ると背後に人の気配が・・・ジョージーナだった。
彼女は掃除をしていて電話のケーブルが抜けたと謝罪に現れたのだ。
クリスが「まわりが白人だらけだとお互い気を遣いますよね」と言ったら
ジョージーナが突然、笑顔ながら涙を流して
アーミテージの人達は凄く良くしてくれます、本当の家族のように
と意味深な事を口にしながら出て行った。
クリスは「こいつら本当に気が狂っていやがる
バルコニーに出るとディーンが居て大勢の客の前でクリスを紹介した。
そのひとりで日本人の田中が「アフリカ系アメリカ人は今の米国では
どんな立場ですか?」と訊かれて返答に詰まっていると、
そこにあのローガンが通りかかった。クリスはローガンに助け舟を
求めると、ローガンがすらすら答え始めたのでそれを写真に撮ろうと
スマートフォンのシャッターを押したところフラッシュが光った。
その瞬間、ローガンの顔がこわばり、鼻血を出したちまち怖い形相になった。
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出て行け!(ゲット・アウト)すぐここから出て行けよ!」
とクリスに掴みかかってきたのだ。ミシーの処置でローガンは平穏に戻り
さっきの非礼をクリスに詫びて、帰って行ったのだった。
何かここに居たくないクリスはローズと共に散歩に湖に出掛けた。
そしてクリスが居なくなったアーミテージ家の庭では
ビンゴゲームと称して奇妙なオークションが行われていた。
出品されたのは何とクリスで、落札したのはあの盲目のハドソンだった。
ローズの提案で荷造りして今から帰る事にして邸宅に戻ってきたクリス。
ロッドの携帯へローガンの写真を写メで送った返事が返ってきたのだ。
クリス、それはドレだよ。アンドレだ!」
そうだ!確かに彼だ!でも俺の知っている彼とは全く違った
性奴隷にされているんだ!すぐ出ろ!お前は乱交パーティ会場にいるんだぞ!」
そこで携帯の通話が切れてしまった。そこに現れたローズ。
「さあ 車の鍵を出して待っていてくれ。すぐ荷物をまとめるから」
とローズが先に階下に降りた。ふと脇を見るとクローゼットの戸が開いている。
そこに赤い小箱があって中を見ると写真が入っていた。
何とローズと知らない黒人と一緒に撮った写真が・・・
それも一枚や二枚ではなく十枚以上も。全て恋人同士が撮るツーショット写真だ。
「ローズの言っている事は嘘だったのか」
そして玄関へ降りて行ったら既にローズの両親や弟が待ち構えていた。
「ローズ、車の鍵はどうなった」
だがローズは「鍵はここにある。でもダメよ!分かっているわね」
クリスが抵抗しようとしたところ、ミシーのティーカップとスプーンが
音を立てた。まるで魂が抜けたように床に倒れるクリス。
「さあ 地下室へ運ぶのよ! 大事に扱いなさいよ!」とミシーの一喝。
クリスが目覚めたのはある一室でソファーに拘束されていた。
壁にはここへ来る時に撥ね殺した鹿の首の剥製が飾ってある。
そして目の前の古いテレビに何やら映像が。
語っているのはどうもローズの祖父らしき人物で
若いアーミテージ夫妻と幼いローズたちも出てくる。
どうもこの家は代々、人を浚って来てその健全な肉体に
希望者の脳を移植する事を生業としているようだ。
ロッドは音信不通になったクリスを心配して警察にも捜査の依頼を
するが、刑事たちはロッドの言っている事が信じられず笑い飛ばす。
そして何日目かにやっとクリスの携帯にローズが出たのだ。
ローズはクリスが錯乱してタクシーに乗って出て行ったとうそぶく。
しかもロッドが録音して証拠に会話を残そうとしてもロッドにも
不利なように手玉に取って来たのだ。感情が切れて電話を切ってしまうロッド。
くそっ!あのアマ!バカにしやがって
監禁されているクリスの目の前にはあの落札者ハドソンの姿が。
分かっているだろうが、君の肉体はこの世に残るんだ。心配しなくてもいい
の欲しいのは君の眼なんだよ。この際は肌の色とかは気にならないね
手術室とおぼしき部屋にはハドソンが寝かされ、ジェレミーが
父親に手術道具を持って来た。大きなメスや鋸が入っている。
まずハドソンの頭蓋をこじ開けて脳を取り出すオペを開始する。
そして気を失っているであろうジェレミーがクリスを車椅子に
載せようとしたその瞬間、クリケットの固いボールで満身の力で
ジェレミーの頭をたたき割って倒すクリス。
ソファーのクッションの綿を耳栓にして暗示のテースプーンの音を
聞かなくしてあったのだ。次に鹿の剥製を手術室に持ち込んで
父親ディーンを鹿の角で突き殺して一階にあがり
携帯を捜すクリス。そこへミシーが。
あのティースプーンを鳴らされては終わりだ。
机の上にあったティーカップを割られたミシーはナイフを持って
襲って来た。ナイフはクリスの手のひらを突き抜いたが、
その刃で逆にミシーの喉笛を切り裂いて彼女は絶命する。
ここから一刻も早く出ないと焦るクリスに後ろから
ジェレミーが飛びかかってきたが、怪我を負ったジェレミーは
すぐクリスに倒され頭を何度も踏まれて今度は完全に死んでしまった。
ジェレミーの車を奪い脱出しようとした途端、車の前に
ジョージーナが。撥ねてしまったがクリスの子供の頃の母親の死の
トラウマでどうしても見殺しに出来なかった。
車の助手席にジョージーナを乗せて発進した時に
家の中からローズがライフルを構えて出てきた。
「おばあさん!」
助手席に沈んでいたジョージーナがゆっくり身体を回すと
運転しているクリスに掴みかかって来た。
お前がうちの家族を傷つけた!」
車は大木に衝突して大破して停まり、ジョージーナは死んでいた。
彼女の頭部には脳移植の傷痕が痛々しく残っていた。
意識朦朧で車外に出たクリスにローズが放った銃弾が追い打ちをかける。
そこにまたウォルターが走ってクリスを追いかけてきた!
このウォルターの額にも脳移植の手術痕が。
馬乗りにされて絶対絶命のクリスは持っていたスマートフォンの
カメラをウォルターに向けてフラッシュを焚いた。
いきなりウォルターの表情が変わって背後にやって来たローズに
「俺がやる」とライフルを渡すように手を伸ばし、彼女から
ライフルを受け取った瞬間にローズの腹部を撃ち抜いた。
フラッシュの暗示で元の肉体の意識が戻って騙したローズに
復讐の機会を与えたのだった。
ウォルターはローズの祖父の脳が移植されていたのだ。
再び意識が戻ったウォルターは孫を撃ってしまったショックで
自分の喉に銃口を向けて自殺する。
瀕死でもライフルに手を伸ばそうとするローズ。
「クリス ごめんなさい あなたを愛しているの」
可愛さ余って憎さ100倍のクリスは彼女を絞め殺そうとするが
それは出来なかった。勝ち誇ったようなローズの顔。
そこへ一台のパトカーが・・・
ローズはすかさず「助けて!助けてください」
だがパトカーは空港警察の車両だ。中から出てきたのはロッドだった。
俺がこの家に行くなと言っただろう
「どうやってここが分かった」
「俺は偉大な空港警察だぞ これで一件落着だな」
助けが来たと思ったローズは絶望して冷たい路上で息絶えるのだった。
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この作品は多くの作品からヒントを得て素晴らしい脚本を構成している。
ジョン・フランケンハイマーの『セコンド』(1966)
ロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)
ジョージ・A・ロメロ『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)
ブライアン・フォーブス『ステップフォードの妻たち』(1974)


















劇場公開されたバージョンはクリスがロッドに迎えられて
ニューヨークへ戻るバージョンだったが、
実は使われなかったもう一つの結末は
地元の警官にクリスが逮捕されて刑務所に収監されたクリス。
面会に来たロッドにあの事件の事は忘れてくれと言い
看守と一緒に囚人室へ戻って行くバージョンも製作された。

ラストにたどり着くまでの伏線が上手い。
警官に毒づくローズ(クリスの身分を警察に明かしたくない)
車に轢かれて虫の息の鹿とか
禁煙治療と称して催眠術に誘うところや
ジョージーナが飲み物を注ぐ音で意識が飛んでしまう場面
ひとつ間違えばとんでもない作品になってしまうところを
上手く抑えている。


撮影は今も人種差別が激しいと言われるアラバマ州でロケーションされ
おおよそ23日で撮影が終了した。

ユニヴァーサル・ピクチャーズ提供
ブルームハウス
QCエンターテインメント

監督: ジョーダン・ピール 
製作: ショーン・マッキトリック 
 ジェイソン・ブラム 
 エドワード・H・ハム・Jr 
 ジョーダン・ピール 
脚本: ジョーダン・ピール 
撮影: トビー・オリヴァー 
編集: グレゴリー・プロトキン 
音楽: マイケル・エイブルズ

 ダニエル・カルーヤ・・・クリス・ワシントン
 アリソン・ウィリアムズ・・・ローズ・アーミテージ
 ブラッドリー・ウィットフォード・・ ディーン・アーミテージ
 ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ ジェレミー・アーミテージ
 スティーヴン・ルート・・・ ジム・ハドソン
 キャサリン・キーナー・・・ ミッシー・アーミテージ
 リルレル・ハウリー・・・ ロッド・ウィリアムズ
 ベッティ・ガブリエル・・・ ジョージーナ
 マーカス・ヘンダーソン・・・ ウォルター
 レイキース・スタンフィールド・・ ローガン・キング/アンドレ・ヘイワース

カラー
デジタル撮影
ARRIRAW (3.4K) (source format)
Digital Intermediate (2K) (master format)
シネスコサイズ(2.35:1)
ドルビー・デジタル5.1
104分
東宝東和配給
日本公開2017年10月27日


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