●この事件「入試問題ネット投稿事件」は以前3月初旬に該当者が発覚した時に取り上げました。この度この事件に対する処分がきまり、該当者とされる元予備校生が検察庁における「不起訴処分」に相当する「不処分」と山形過程裁判所で決定しました。「悪質」(結果的に被害が大きい事件)とされるような事件ではありましたが、結局のところ「御咎め無し」となっています。

 法律的に考えると、この事件(結果)としては刑法の「偽計業務妨害」(ぎけいぎょうむぼうがい)と言われる信用を損なう罪に相当します。しかし、「刑法」をはじめとする一般刑事法に関しては、原則的に(過失犯)というものを除いては、行為にその結果を生じさせる目的の意思(つまり「故意」)が伴わなければなりません。

 今までの流れを考えると、この元予備校生の目的は、自分が解いている問題がわからないので、大学入試としては不正行為ではありますが、ヤフーの質問サイトである「ヤフー知恵袋」を入試の最中に投稿して不特定多数の人に投稿を求めたという事にあります。

 そうなると、この予備校生は大学(京都大学、同志社大学、早稲田大学、立教大学)の入試行為に妨害や信用毀損をする目的があったのかというと、やはり、そういう事にこぎつけると無理があります。
 では、どのような条件があれば「偽計業務妨害」が生じるかといいますと、先ほどお伝えしたとおり、「故意」が大前提なのですが、今までの最高裁などの判例では、「未必の故意」(みひつのこい)という有名な言葉(判例)が存在します。これは、「自分のこの行為がおこなわれれば、被害(損害)が生じるという認識があり、そうなっても構わない」という認識が必要です。もしこの人が予備校生ではなく、過激派で、大学に入学する気もさらさらなく、入試を受けた手段が大学の信用を既存しようとする目的や、その元予備校生が、これをやれば大学は明らかに騒ぎになるであろうそして信用問題にでもはってんするであろうという認識があれば、当然成立する罪とも言えます。

 人間としていけない行為だと思いますが、刑法ではいけない行為とは言えなくなります。
したがって、無罪ともいえる「不処分」となるわけです。

 このような事を取り締まりたいのであれば、「入学試験に関する不正行為等に関する法律」というものを国会で制定して、刑法の特別法として実施するのが最もいいことであると思うのですが、教育の場でこうい法律を持ち込んでしまえば、小さなことでも警察が動かなければならず、しかも受験生も萎縮(いしゅく)することとなり、おそらくこういう法律はできないのかと思います。

この事件の該当者が発覚した約1週間後の3月11日に東日本大震災が発生し、この事件の謝罪会見が河合塾の理事長から東京電力の社長に替わってしまい、世間の話題や批難も薄れてきていたのではないかと思います。
「人の噂も70日」という言葉もありますが、この事件はその忘却スピードが早かったような気がします。



入試問題ネット投稿:不処分に元予備校生「迷惑、解決できていない」 /山形

 「不処分になっても、大学やいろいろな方々に迷惑をかけたことは解決できていない」。京都大など4大学の入試問題が試験時間中にインターネットに投稿された問題。偽計業務妨害の非行内容で送致された元予備校生の少年(19)の少年審判で7日、山形家裁は不処分の決定を下した。元予備校生は付添人の弁護士に反省の言葉を述べた。【安藤龍朗、浅妻博之、前田洋平】

 4大学は京都大のほか、立教、早稲田、同志社。

 家裁によると、少年審判には、元予備校生と母親、矢数昌雄裁判長ら3人の裁判官、付添人ら計10人が出席した。主任付添人の植田裕弁護士らによると、元予備校生はインターネットに入試問題を投稿したことを認めた上で、裁判官や付添人の質問に、現在の心境や反省の思いを落ち着いた様子で話したという。

 少年審判は一般に、成人事件の不起訴に当たる不処分▽保護処分▽刑事処分相当−−のいずれかを決める。

 京都地検は家裁に送致する際、「保護観察が相当」との意見を付けたが、付添人は「カンニング行為が偽計業務妨害罪に当たるかどうかは学説でも分かれている」として家裁に慎重な判断を求めていた。

 携帯電話のような最新の情報通信機器を使った不正行為が社会に広げた波紋は大きかった。カンニング行為が発覚した2月は受験シーズンの真っ最中。試験中は携帯電話を回収したり、妨害電波で携帯を一時的に使えなくする装置の導入を検討する大学も出るなど、各大学は対応を求められた。

 付添人によると、元予備校生は「携帯電話を使ったことでこれほどの大事になるとは思わなかった。社会的に大きな問題を引き起こした。すべての結果を受け入れたい」と話したという。

 元予備校生は京大など複数の大学に謝罪文を提出。今後について、「今までは大学に入ってから自分の進路を決めようと思っていたが、それでは駄目だと思った。これから目的が持てれば大学に入りたいが、今は考えていない」と話しているという。植田弁護士は、「結局、親元から離れて予備校の寮に入り、1人で悩みを抱え込んでいた。いろんな面で母親に負担をかけさせたくない思いがあったのだろう」とカンニングに至った心情を推察した。

 また、元予備校生の出身高校の教頭は「1人の若者として、これからの将来を大事にして歩んでいってほしい」と述べた。

入試ネット投稿:少年を不処分に 山形家裁
強盗致傷:19歳被告家裁への移送決定 裁判員裁判で初
入試問題ネット投稿:不処分 山形家裁「少年深く反省」

http://mainichi.jp/area/yamagata/news/20110708ddlk06100116000c.html
裁判員裁判:初の家裁移送決定 強盗致傷19歳被告に−−東京地裁
毎日新聞 2011年7月8日 地方版