2017年01月27日

「急性」に対応 さい帯血移植。

--------- 読売新聞 2017/1/27(金) 掲載 -----------

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血液のがん
【「急性」に対応 さい帯血移植】

 「急性リンパ性白血病になりました。移植をしなければ余命は半年。移植後の生存率は5割です」
 東京都豊島区の松井理悦(まさよし)さん(37)は2014年12月、都内の病院で医師から告げられた。半年前に慢性骨髄性白血病と診断されたが、毎日の服薬を怠ったため、悪性度の高い種類に急性転化していた。
 白血病細胞が血液中に急速に増える急性リンパ性白血病は、松井さんのように急性転化したものは治療が難しく、2、3割しか治らないとされる。
 慢性骨髄性白血病は、薬で病状を抑え込める可能性が高く、松井さんもスプリセル(一般名・ダサチニブ)を飲んでいた。だが当時、経営する会社の業績が悪化し、多忙で服薬できないことが多かった。体はだるく、鼻血も連日のように出たが、「会社をつぶせないという思いの方が強かった」。
 治療を後回しにした代償は大きく、血液を作る造血幹細胞がなくなった。週3回の輸血で命をつないでいたが、この細胞を他人から移植する以外、治療の手段はなくなった。
 松井さんは兄弟が3人いるので、骨髄移植を検討したが、白血球の型などが合わなかった。次に骨髄バンクでドナー(提供者)を探そうとしたが、移植までに平均150日かかる。医師から「間に合わない」と言われた。
 勧められたのは、出産後のへその緒などに残る、さい帯血を使った移植だ。この血液に含まれる細胞は未熟で拒絶反応が少なく、白血球の型が完全に一致しなくても移植ができるので、ドナーが見つかりやすい。さい帯血はバンクに凍結保存されており、移植までの期間も1か月程度と短い。
 松井さんは15年2月、さい帯血移植の実績が豊富な虎の門病院(東京都港区)に移った。主治医の内田直之さんは「ドナーが見つかる確率は、血縁者(骨髄移植、末梢(まっしょう)血移植)約30%、骨髄バンク約50%に対し、さい帯血バンクは100%に近い」と説明する。
 十数年前は移植した細胞の約7割しか生着して機能せず、他の移植より劣ると言われたが、「移植後に感染症にかかりやすいなどの課題はあるが、技術的な改善で生着率は9割を超えており、ほとんど差はなくなってきた」と内田さん。
 移植を終えた松井さんは同年7月に退院。当初は肺炎などで入退院を繰り返したが、再発はなく、現在は仕事で国内外を奔走している。移植から1年目の16年4月30日、自らのブログに「生き延びた今日は俺の二つ目の誕生日」と記した。完治と呼ばれる「5歳」を迎えるのが今の目標だ。


移植中に入っていた無菌病室の前で近況を報告する松井さん(左)と、主治医の内田さん(虎の門病院で)

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--------------- 読売新聞 ---------------

newyork021 at 17:03 
松井まさよしプロフィール

松井まさよし