2010年10月24日

「タンバリン社会」第3話 ただけん

早樹は、愛用のタンバリンX68000を取りだした。
学生時代にこの愛機とともに数多くの聴衆を虜にしてきたことを思い出しながら、 早樹は一人ほくそ笑んだ。

「この国全体をペテンにかけて、俺が操ってやる」
そう意気込むと、早樹は国会議事堂へと向かうべく、駅へと歩いた。
いつもは嫌気のさす立体看板も、アンドロイド型ティッシュ配り(たとえ機械になっても一番やりたくない仕事だ)も、何だか今日は早樹を応援しているように感じる。

「これは上手くいきそうな予感がするぞ」
早樹は、駅のコンコースでX68000を取り出し、あるリズムを叩いた。
♪タタタンタターン タタタンタン チャチャ

その瞬間、人々の表情が変わった。そして、周りのものを叩いて同じリズムを刻み始めた。
♪タタタンタターン タタタンタン チャチャ

指紋認証型自動改札機の周りでは、人々が人差指でスキャナー部分を叩いている。
遠足に出掛けると思しき子供たちは、こぞって壁を叩いている。
改札口に陣取る第3世代のASIMO駅員も、カウンターを叩いて参加している。
今まで新聞を読んでいたサラリーマンらも、日経ホログラムのページをめくる音で加わり始めた(新聞が紙だった時代の名残りがこんなことで役立つとは)。
♪タタタンタターン タタタンタン チャチャ

あまりに簡単で嬉しくなった早樹は、タンバリンを叩く手を休めることなく、改札を通り抜け、ホームへと向かった。
音色に魅了された人々は、なおもどこかを叩き続けながら、早樹の後をぞろぞろとついていった。
「ハメルーンの笛吹きならぬ、ネオトーキョーのタンバリン叩きだな…」

音もなく滑りこんできた電車には、早樹と音に釣られて付いてきた民衆が乗り込んで膨れ上がった。
電子的な発車ブザーとともに、電車は国会議事堂に向けて走り始めた。

※この続きはぼーぼが、ポエム調でお届けします。乞うご期待。

nextimpro at 14:56│Comments(0)TrackBack(0)

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