Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2009年05月

ANUBIS GATE 「The Detached」 レビュー

PROGPOWER SCANDINAVIAに出演が決まっている、北欧デンマーク産のプログレッシヴ・パワー・メタルバンドの5人組、ANUBIS GATE の約2年振りの4作目「The Detached」を紹介。



01. On The Detached         ★★
02. Find A Way (Or Make One)   ★★★★★
03. Yiri                  ★★★★
04. Lost In Myself           ★★★★★
05. Dodecahedron           ★★★★
06. Pyramids              ★★★★★
07. Out Of Time            ★★★★
08. Bloodoath              ★★★★
09. Ammonia Snow          ★★★☆
10. Options - Going Nowhere    ★★★
11. A Lifetime To Share       ★★★★★
12. The End               ★★



プロデューサーで知られるヤコブ・ハンセンをヴォーカルに迎え製作された前作の3rd「Andromeda Uchained」は、メロパワ的な疾走感を適度に効かせたメロディックかつキャッチーなモダン・プログ・パワーの上質なアルバムだったが(ブログ記事 )、引き続きヤコブがヴォーカルを取っている通産4作目となった本作の「The Detached」では、トータルタイムは約65分と前作と大体同じ長さで、問題の内容は前作の流れを更に突き詰め、SEを使い表現力とドラマ性を更に高めた作風で、もはやこの手のプログレ・メタルバンドのランクの上位に名を出したくなるほどのベテランレベルの風格を見せ付けた、モダンでありながらヘヴィでダイナミックな重厚感の効いた、メロディックでキャッチーな正統派プログレッシヴ・パワー・メタルを相も変わらず安定して聴かせてくれる、非常に完成度の高い内容。前作と比べると、本作の方がメタルメタルしてるような気がするし、中東的な雰囲気や冷たいシンフォニックなアレンジが一際目立っている。第一印象では「断然前作の方がいいかな」って思うんだけど、数回聴き込んでいくうちに「あれ?今作もすげー良くね?てか、最高傑作じゃね?」と、後からジワジワ来るタイプのアルバムなんじゃないかなー、ボクがそうだったように。聴いていく内に徐々に嵌っていく感じ。


イントロナンバーの1、前作の流れを感じさせる疾走感を持ったキャッチーなプログ・パワー・ナンバーの2、荘厳なクワイアやコーラスなどのシンフォニックなアレンジが効いたドラマティックな小大作の3、叙情ギターが泣きまくりなメロディック・メタルタイプのシンプルな4、始まりの「アッー!!」という叫び声が耳から離れないシンフォニックな5、Anubis Gateらしく中東っぽいというかアラビアンっぽい独特な雰囲気を持った曲で、中盤過ぎのプログレッシヴかつスリリングなインストパートがやけにカッコイイ大作指向の6、ヤコブのメロウな哀愁ヴォーカルから始まる曲で、アルペジオギターをメインに聴かせる泣きの7、程よい疾走感とザクザクと刻むGリフが印象的なプログ・パワーナンバーの8、4曲目の歌メロをメランコリックに歌う、アコースティックに聴かせるコンパクトな9。これがまたドラマチカルに演出しとるんだよなー。スペーシーなメロディのアレンジを加えた、今作の中で1番尺長い約9分半ある大作プログレ・メタルナンバーの10、個人的に今作の中で1番好きな曲で、彼らの持ったセンスがマジマジと感じられるコーラス/サビがキャッチーな11。イントロの1とアウトロの12を省いて、2の「Find A Way (Or Make One)」と11の「A Lifetime To Share」、この幕開けの曲と締めを飾る曲が凄く良いんで、決してダレる事のない引き締まった楽曲構成も、よりドラマティックに演出してる。11とかマジでカッコイイ。けど、聴く人によっては中盤でダレる印象を持つかもしれないけど。。。たしかに、前作で頻繁に聴けたメロパワ的な疾走感は少なくなってるし、一曲一曲のキャッチーさや歌メロの分かりやすさでは前作の楽曲に劣るかもしれないけど、ヤコブが加入しての2作目の落ち着きかどうかは不明だけど、アルバムの総合的な完成度の高さではこちらの方が上手な気がする。キーボードを「カタカタ」と叩くSE等の演出を多用するコンセプティヴな流れとドラマティックな完成度の高い楽曲内容に、とにかくアッパレな「好盤」です。欲を言うなら、本作のインスト・パートは凄い充実してて素晴らしいんだけど、個人的には歌メロをもっと練ってくれれば尚良かったかも。


ジェイムス・ラブリエマイケル・キスク越えが狙える、ちょっとキンキンと耳に刺さる感じの超ハイトーンを使いこなすヤコブが歌い上げる「泣き」の混じった旋律は今作でも健在で、ちょっとスペーシーで幻想的な世界を生み出す冷たくヘヴィなプログレ・メタル・サウンドと自在に絡み合っている。この超ハイトーンはライブで聴いてみたいかも(^O^)このバンドの隠れた?聴き所の1つとなっている臨場感溢れるモダンな音質も、相変わらず極上。


ボク的には、デンマークのヘヴィなバンドと言えばVolbeat 一択なんだけど、次点ではMercenary か、このAnubis Gateの名前が出るね。ホント、こういうバンドこそ、もっと評価されるべきバンドだと、ボクは思うんだ。ボクは好きだなー、このバンド。今年のプログ・パワー・フェスに出演が決定している今、バンドの飛躍がますます期待されます。

前作のジャケも良かったけど、本作のジャケも個性的で凄く良いね~。本作で変わったバンドロゴも垢抜けたようになっててイイ感じ♪VolbeatやMercenaryといい・・・モダン大好きデンマーク♪モダン大好きデンマーク♪モダン大好きデンマーク♪という事で、プログレ・メタルが好きな人はマストと言える作品だし、本作で確実に成長したAnubis Gateが感じられる内容なんで、前作が好きな人も聴いて損はないはずです。オススメ。



7.5(-) / 10


The Detached
The Detached
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LACUNA COIL 「Shallow Life」 レビュー

イタリアン・ゴシックの頂点、モデル兼ヴォーカリストのクリスティーナ・スカビア嬢を擁する6人組、LACUNA COIL の約3年振りの5作目「Shallow Life」を紹介。



1. Survive          ★★★★☆
2. I Won't Tell You      ★★★★
3. Not Enough        ★★★★★
4. I'm Not Afraid      ★★★☆
5. I Like It          ★★★★
6. Underdog          ★★★
7. The Pain          ★★★
8. Spellbound        ★★★★★
9. Wide Awake       ★★★★★
10. The Maze        ★★★★
11. Unchained       ★★★
12. Shallow Life      ★★★★



僕の頭の中の「LACUNA COIL像」と言えば、「モロにParadise Lost みたいなゴシック・メタルを男女ツイン・ヴォーカルが歌ってるだけで、アルバムも似たような曲が多くて途中でダレまくる(勿論良い曲もあるけど)」という超ネガティヴな印象で、なんでこんなに世界的に人気なんだ?ちょっと過大評価されすぎじゃね?と(この辺はやっぱり感性の違いなんだろうなぁ、とは思う)、こんな風に常日頃から思ってたバンドなんだけど、そんな彼女らの前作から約3年振りの5作目「Shallow Life」なんだ。


ビルボード・チャートで28位を記録した前作の4th「Karmacode」から約3年振りの新作で、今作のプロデューサーには、「Linkin Park」「Avril Lavigne」「Good Charlotte」等のビッグネームを手掛けたドン・ギルモアを迎えて製作されたアルバムで、とりあえず今作についてまず一言感想を述べるならば、前から噂されていたとおり「至極キャッチー」、になってる。本作は、楽曲やサウンドにおいて、いわゆる「アメリカンナイズ」されたアルバムで、US産のEVANESCENCEUNSUN レベルのキャッチーさとモダンさを兼ね備えた方向性にスタイル・チェンジしており、US産のバンドを多数手掛けたプロデューサーならではの影響が多大に出ている作品と言えそう。最近のでは、In This Moment の1st~2ndのようなサウンドの変化、スタイル・チェンジで、要はメインストリーム、つまりは「大衆」を意識した作風、所謂「メインストリーム・メタル」←(今ボクが作った新語(笑))になってるんだ。


ヴォーカルについても変化が現れており、紅一点の無印商品的美人ヴォーカリストのクリスティーナ・スカビア嬢が、過去作とは比べ物にならないほど「感情」を込めてメロディアスかつキャッチーに抑揚を付けて歌いまくってるし、相棒のダンディ・ヴォーカルのアンドレアも、クリスティーナと同じくアメリカンを意識したスタイルでキャッチーに歌ってる。聴けば分かるけど、すげーLinkin Parkっぽい。そのツイン・ヴォーカルの比率は最早5分5分で、両耳から入ってくる歌声の聴こえ方も、今までとは何処となしかチョット違うんだ。アメリカン・モダン・ヘヴィネスを意識したかのような「ヘヴィなんだけど、どこか軽い」サウンドも、最早「メタル」と言うよりは「ロック」なノリで聴ける取っ付きやすいサウンドになってる。正直言って、もうこれだけ世界中で爆発的な人気を誇ってるバンドなのに、「私達はもっともっと人気になりたいのよ!!」と言わんばかりのキャッチーさが露骨にまで嫌らしく伝わってくるアルバムを今更作る必要性があったのか?とも思うわけで、アメリカンナイズされた事により、彼らの持ち味である「宗教的な雰囲気」やら「イタリアンバンドらしさ」やら「LACUNA COILらしさ」等のオリジナリティやアイデンティティが1番薄いアルバムになっちゃってるネガティヴな印象も勿論ながらある。最早「ゴシック」とも呼べないような感じだけど、「メタル至上主義」以外の普通のロックリスナーや、一般的な音楽リスナーにはウケが良い作品だろうね。一般的サイコー!!一般的サイコー!!初期からの熱心なコアファンからはボコボコに叩かれそう、又は拒絶反応や心臓麻痺を起こしそうなレベルの微劇的な「変化」を遂げているけど、僕みたいにLACUNA COILに対してあまり良い印象を持ってない野郎が本作「Shallow Life」を聴くと、「このくらい分かりやすくキャッチーになって、やっとLACUNA COILが好きになれるなー」と思う人も居るかもね。ファン層もまたガラリと変わってきそうな予感がするし、本作くらいの取っ付きやすさくらいで、やっと日本のメタル/ロックリスナーから本格的に興味を持たれるというか、大々的に注目され始めるんじゃないかなーって。まー結局は「人それぞれの好み」の問題ではあるんだけど、僕はそんな風に思ったりするんだ。一般的サイコー!!一般的サイコー!!けど、このサウンドの変化は「進化」なのか、それとも「退化」なのかは、これはホントに聴き手の様々な「状況」によって感想が変わってくるだろうね。僕はどちらでもないけど。


変化を遂げたサウンドと同様に楽曲も「キャッチー」になってるんだけど、全部が全部そうではなくて、1.2.3.5.8.9.10以外の曲はこれまで通りのキャッチーさの薄いLACUNA COILナンバーが聴けます。オルゴールの音色から始まる1の「I Survive」と、2の「I Won't Tell You」はアンドレア君が主役的な曲で、3の「Not Enough」と9の「Wide Awake」は、クリスティーナがメインに歌う曲で、「これがアメリカンナイズか~フムフム(*^o^*)」と納得できる、むっちゃキャッチーかつメランコリックで超ベタな王道バラードを披露している。このバラードは凄い良い曲なんだけど、やっぱなんかクリスティーナの歌に妙な違和感アリ。思うんだけど、クリスティーナって、感情を込めて歌うより、抑揚や感情を込めないで歌ったほうが魅力的に聴こえるタイプのヴォーカリストだよなーって。4は確かにLinkin Parkっぽい感じで、5もアメリカンな香りがプンプンしてくる曲。安上がりPVになってる8の「Spellbound」も、ドライブ感溢れるメランコリックなゴス&ロールな曲でこれまたむっちゃキャッチーですわ。4の「I Like It」と10の「The Maze」は個人的に結構好きな名ナンバー。8~9のギャップのある流れが本作のハイライトとなってるし、大きな変化を遂げたLACUNA COILが体現できる部分でもある。

このアルバム、僕は普通に好きだし、少なくとも前作よりは好きと言えるかなー。けど・・・すげー中途半端な音質だけは頂けないかな。他にもクリスティーナの声にエコーというか、無駄にアレンジがかかり過ぎてるように聴こえるんだよなー・・・凄い不自然なんだよね。ドラムの音もなんか違和感ありまくりだし、なんか浮いちゃってるんだよなー。とにかく音が悪い。なにこの音?ヴォーカルとドラムの音がもっと良ければもう1点か0.5点くらいプラスなんだけどなー。その辺のポイントを考慮して、+-ゼロの「良盤」って所ですかね。ジャケもロックな感じでカッコイイし。


物凄く聴きやすいアルバムなんで、LACUNA COILを初めて聴く人には打って付けのアルバムです(本来のLACUNA COILらしさは薄いけど・・・)。ゴシックorメタル・ファン向けというよりは、EVANESCENCELinkin Park等のヘヴィなオルタナティヴ・ロックバンドが好きなラウド・ロック寄りのファンの方が、真ん中寄りのストライクゾーンに入ってるんじゃないかな。EVANESCENCE が活動不明状態になってる今、その状況に上手い事突け込む事に成功したのがWithin Temptation と、このLACUNA COILだったとさ・・・おしまい。こんなキャッチーなアルバムが日本で売れないわけないだろうし、来日フラグビンビンに立ってますね、コレは。ちゅーか、母国イタリア(25位)より、アメリカでのチャート(16位)の方が高いってどういう事なの?(苦笑)まー本作で完全にアメリカ寄りの音になったし、別段驚くようなことでもないかな。


完全にメインストリーム/オルタナティヴ・メタル/ロックに変身したLACUNA COIL頑張れ!!「メタル至上主義」に負けるな!!・・・という感じに擁護役をちょっとだけ演じてみました。



7.5(-) / 10

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THE GATHERING 「The West Pole」 レビュー

ノルウェー人シンガーのSilje Wergeland姐さんを新ヴォーカルに迎えた、オランダ産のオルタナティヴ/プログレッシヴ・ロックバンド、The Gathering の約3年ぶりの通算10作目「The West Pole」を紹介。



01. When Trust Becomes Sound   ★★★
02. Treasure                ★★★★★
03. All You Are              ★★★★★
04. The West Pole            ★★★★★
05. No Bird Call             ★★★★☆
06. Capital Of Nowhere        ★★★★
07. You Promised Me A Symphony ★★★★
08. Pale Traces              ★★★★
09. No One Spoke            ★★★★★
10. Constant Run            ★★★★☆



このTHE GATHERINGというバンド、初期の頃は「ゴシック・メタル」をやってたらしいバンドで、近年では独自のエクスペリメンタルなロック・サウンドを開拓し探求しており、前作の9th「HOME」までヴォーカルだったアネク嬢が脱退して、新ヴォーカルにノルウェー人の女性シンガーのSilje Wergelandを迎えて製作された約3年振りの通産10作目となる本作の「The West Pole」。


まず、新加入したノルウェー人シンガー、セリア・ウェルゲラン姐さんの印象についてなんだけど、大きな視点で見れば前任者のアネクとさほど変わりない声質&歌い方なんだけど、アネクのような輪郭がクッキリしたダークアンビエント向きな歌声ではなく、セリアの歌声の方が何処となしか明るさと透明感を全体的に帯びていて、アネクよりセリア嬢の歌声の方がスッと聴き手の耳に自然と馴染んでくる、優しく爽やかで、いわゆる「癒し系」な声をしてるように感じた。言うまでもないけど、文句なしに上手いし、難なく過去の楽曲を歌い上げられるレベルにあると思う。まぁ、すげー微妙な違いでしかないんだけど、本作をトータルな目線で見ると、その微妙な違いが今作の内容に大きく関っているような気がしないでもないんだ。


という事で、本作の内容について書くと、個人的には正直「微妙」な印象だった前作「HOME」のトリップ/ダークアンビエント路線を極めた暗~い作品からさほど遠からずな作風ではあるんだけど、簡単に言っちゃえば基本的には適度な薄暗さを帯びているんだけど、程よく爽やかで明る~く、程よく薄暗~い、ちょっとだけ分かりやすくなったプログレッシブ・ロック、又はちょっとゴシックがかった「普通のロック」に変化しているんだ。前作のダーク・アンビエントな流れをしっかりと感じさせながら、微妙に光というか明るくアップテンポで軽快なリズムというか、適度にロックなビートを感じさせる作風、ってな感じ。荘厳に訴えかけるヴァイオリン音色、適度にロックしてるギター、心地良い空気感を示すkeyのメロディが、とてもナチュラルで自然体な形で、色々な面で新しくなったTHE GATHERINGのサウンドに取り込まれ、そしてエクスペリメンタルに混ざり合う新鮮味溢れるロック・サウンドは、意外にも力強いパワーとダイナミズムに満ち溢れ、初期から近年まで右往左往と色んな音を経験してきたベテランの風格を持った、今現在の彼らにしか作れないオシャレでいてとても美しい音楽をやってるんだ。これは前から言われてる事だけど、ヘヴィでメタルな音も皆無だし、最早「メタル」ではなく「ロック」に完全なる変身を遂げたアルバムと言える。本作を聴いて、まさかこのバンドが過去にゴシック・メタルをやっていたとは誰も想像できないほどの、初期から現在までの変化が楽しめるバンドでもあるんだ。今現在の彼らの音楽性をジャンル付けするとすれば、「オルタナティヴ・ロック」か「インディ・ロック」になるのかな?ボク個人として想起させたのは、イタリア産のKlimt 1918とか(あんま似てないかも^^;)、Porcupine Treeの「Lightbulb Sun」の頃に近い雰囲気というか、そんな空気感を持ったちょっとメランコリックな「薄暗プログ・ロック」という音の繋がりが頭を過ぎった。だから気に入ったのかも。ちゅー事で、ボクはこの「新生THE GATHERING」、そして本作の「癒し系フィメールヴォーカル・ロック」、普通に大好きですねー(・∀・)少なくとも前作よりは好きです、コレ。「癒し系ロック」万歳!!まぁ、大雑把に見れば前作との違いはあまり感じないかもだけど、やっぱり新ヴォーカルのセリア姐さんの影響が大きく出ているアルバムなんじゃないかなーって、結果的にそう思わざるを得ないわけで。何故かと言うと、アネクよりセリア嬢の方がポップでキャッチーな感性を持ってるし、歌メロに関しても分かりやすい抑揚を付けて歌ってるし、表現力豊かに操れる美しくもあり哀しくもある美声を、バックの心安らぐアンビエント/ポスト・シューゲイザー・サウンドと優しく同調しあいながら、しかしあくまで適度に哀愁を含んだメロウなヴォーカル/歌声をメインに聴かせ、サビでの盛り上げ所ではしっかりと盛り上げるロックな作風だからこそ、そう思ったわけです。そらアネクも物凄いシンガーなんだけど、ボクの好みで言えばセリア姐さんの方に軍配が上がっちゃうかも、本作を聴いちゃうと。あと、同郷で新作のリリースが予定されてるSTREAM OF PASSIONMarcela Bovio嬢がゲストで参加してるってものグッド!!Marcela嬢も歌が上手くて聴き応えありまくりんぐ。こりゃー、SoPの新作が俄然楽しみになってくる。


ちょっと爽快なシューゲイザー・タイプのインストの1で始まり、その1の雰囲気を継ぎ、新星The Gatheringを表すのに相応しい曲で、セリア嬢が歌い上げる美しすぎるヴォーカル・ラインが爽やかでがっさ気持ち良い2の「Treasure」、耳を引く小刻みなGリフで大人しく進み、爽快なダイナミズムが溢れ出すにサビが気持ち良いメリハリの効いた爽やかロックな3の「All You Are」、浮遊感のあるアンビエントなサウンドとセリア嬢の美声が究極の癒しと美的な哀愁を生み出す4の「The West Pole」はガチ名曲。アンビエントな空間と荘厳なるオーケストレーションが心地良くクセになる5曲目、始めの歌声がPure Reason Revolution っぽい感じの、子守唄みたく夢心地な6曲目、物哀しいピアノの音色と、そのピアノの音色に同調して歌うセリアの哀しい美声だけでしっかりと聴かせるシンプルな悲哀ナンバーの7曲目、ゲストで参加しているSoPマルセラ嬢が全編歌いきる、広大に癒される8曲目、掻き鳴らしギターの明るく爽やかなメロディでアップテンポに展開する新鮮味溢れるビートを刻むロック・チューンの9曲目、9の流れを組んだ明るく爽快なロックチューンのラストの10。

結構感情の抑揚とメリハリがちゃんとした流れで、全体的にもしっかりとした聴き易さを持ってるアルバムだね。尚且つバランスも良いし、バラエティも豊か。万人が認めるようなズバ抜けた楽曲というのは無いかも知れないけど、1曲1曲のクオリティー/質はハンパなく高いです。捨て曲もないってのが素晴らしい。特に、2から5までの流れが激ヤバイ。極上な曲の連続だし、聴いててがっさ気持ちが良いし、マジでがっさ癒されるわ~:*:・( ̄∀ ̄)・:*:。中盤は前作と前々作からのアンビエントな雰囲気を匂わし、9の「No One Spoke」、10の「Constant Run」と爽快なロック・チューンでアルバムを締めてくれるのも好印象ですわ。7は隠れた名曲かも。

アネクが脱退した事により、バンド全体の肩の荷が下りて、また一から始まりのスタートラインに立ち、とても活き活きした新鮮な気分でいたからこそ、こんな素晴らしいアルバムが出来上がったんじゃないかなーって。余裕を持ってオープンな気持ちでいたからこそ、1のインストナンバーや8でのゲストVoの起用などの思い切った事ができたんじゃないかな。その新しい試みも、実に効果的に作品自身を盛り上げ魅力的にさせるんだ。


これまで主要人物だったアネクが脱退してるんで、今このバンドをThe Gatheringとして聴いて良いのか疑問に思う人も居るかも知れないけど、アネクの存在を忘れさせるぐらい本作の内容はがっさ充実してるんで、初期や中期からのファンやアネクのソロファンも聴いて損はない傑作だと思うよ。せや!!アネクなんか最初っからイランかったんや!!(冗談)・・・とにかく、女性ヴォーカル物の、「癒し系ロック」が聴きたいって人に大オススメのアルバムです。今の季節に絶妙にマッチした音を出してるから、この時期だからこそ聴いてほしいアルバムだなー。ちゅーか、このアルバム・・・何気にというか・・・ボクが想像してる以上にすげー作品かも・・・!!!!(90点でも低いぐらい)現時点で、THE AGONIST の新作に次いで、女性Vo系では1番のヒットやね。言わずもがだけど、デス/スクリーム無しのバンドの中では1番です。まさか、DELAINSIRENIA の新作を上回る作品を作ってくるとは、正直ビックリやわ。これも意外な名作の出現というか、予想外の出来事で嬉しいねー。5月は名作続き、マスト作続きで、がっさサイコーやね!!ついでに、アルバムの内容を的確に表している涼しげな逆立ちジャケットも極上。。。ジャケ買いしても損はナシ。ベルギーで開催されるメタル・フェスのGraspopにも出演が決まってるらしい。マジで見てーーーー(*^o^*)



8.0(-) / 10


West Pole
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KYLESA 「Static Tensions」 レビュー

紅一点のLaura Pleasants 姐さん率いる、USA産ジョージア州出身のスラッジ・メタルバンドの5人組、KYLESA (読み方=キュレアー)の約3年振りの4作目「Static Tensions」を紹介。



1. Scapegoat          ★★★★★
2. Insomnia for Months    ★★★★
3. Said and Done       ★★★★☆
4. Unknown Awareness   ★★★★★
5. Running Red        ★★★★☆
6. Nature's Predators    ★★★★☆
7. Almost Lost        ★★★★
8. Only One          ★★★★★
9. Perception         ★★★★☆
10. To Walk Alone      ★★★☆



現在、MASTODONINTRONAUT とツアーを行っているUS産ジョージア州出身の5人組、Kylesaの音楽性は、ツイン・ドラム編成という物珍しいスタイルで、サイケデリックで混沌とした世界とドロ~ンとしたヘヴィネスの効いたGリフとツインドラムのリズミカルなグルーヴを中心に楽曲展開していく、まさに「スラッジ」然とした暗黒的サイケ・グルーヴ・メタルをやっちゃってるバンドなんだ。
ツイン・ヴォーカル編成で、一人は女の子で名前はLaura Pleasants姐さん、一人は男性で名前はPhillip Cope、さらにツイン・ギター編成というカッコ良さ。2人のヴォーカル・パートの比率は5:5と大体同じくらいだね。このヴォーカルの絡みも、実にサイケで病んでる雰囲気出しまくりでクセになるんだよね。


まず、「どんな曲してるんやろなー」と、ついついジャケ買いしたくなるレベルのインパクトありまくりなサイケで病的なジャケからして特徴的な個性を放ちまくってるんだけど、彼らのやってるサウンドはそんなジャケ以上の個性を感じさせるサウンドをしてるんだ。とりあえず本作の中身を一聴した限りでは、MASTODONの新作と同様に中毒性がめっさ高そうな第一印象で、ブリブリズンズンっとデロンデロンカルデロンっとグルーヴィにウネリまくる重々しいヘヴィネスの効いたGリフと、PhillipLauraのハードコア然とした精神的に訴える魅力的でいて陰鬱な歌声(Laura姐さんは病んでるクリーン少々とアグレッシヴなヴォーカルを使い分けてる、これがまた「ヘイッ!姐さん!!」と慕いたくなるレベルでマジカッコエエんだ)と、ツインドラムの独特なリズム&グルーヴが絡み合い、その個性的なパーツと要素が全て集まってKylesa独特のスラッジーな「サイケ・グルーヴ」を生み出し、同時にカオティック・コアにも通づるエクスペリメンタル性を持った、超個性的なエクストリーム・ヘヴィネス・サウンドをコンパクトな尺の中で展開している。その世界に嵌ってしまったら最後、クセになること間違いなしな、精神的に抉ってくる陰鬱な音世界を繰り広げているんだ。個人的に、予想以上に結構「メタル」なリフを多用してるのが意外だった部分だし、好感触を得た部分の一つで、決して派手さはないんだけど、地味にリフが良いんだよね~、このバンド。特徴的であるツイン・ドラム編成だけあってか、プロダクションについても気が配られている模様。つか、このツインドラムもマジカッコ良すぎ。グルーヴ出しまくりでヤバイ。3曲目のドラムの主張とか最高。


本作は、1曲単体で聴いても十分魅力が伝わってくるんだけど、1から10まで一気に聴いた方が更に中毒性が増すアルバムだと思う。まるで、「サイケ・プール」の中を永遠と泳ぎ続けているかのよう。。。MASTODONの新作ほどのキャッチーさは無いけど、程よくキャッチーなポイントはしっかりとあるし、常に混沌としたサイケな世界はMASTODONと張り合えるレベルをしていると思う。いや、もしかするとKylesaの方が上手かも。勿論、MASTODONっぽいプログレスな感性も微量にだが持ち合わせている。簡潔に彼らを例えるならば、「ヘヴィネス&ハードコア&スラッジーな空気に重点を置いたMASTODON」ってな感じかな。MASTODONが優等生な表向きサイケ音楽ならば、このKylesaはその裏道を行く、マジで気合入りまくりのドロドロ・デロデロ・サイケ不良クラスト音楽やね。自分でも意味分からんけど(笑)全体的に色々な意味で重々しいサウンドなんだけど、意外にもアグレッシヴに聴かせるし、ビックリするほどノリのノレる。結局何が言いたいかというと、楽曲から伝わるグルーヴが気持ちイイ。ある意味「癒し系」なレベル。聴けば聴くほど味が出るし、聴けば聴くほど「このアルバムすげーーーーーー」ってなる。マジで嵌ってまうわ、コレ。トータル40分があっという間。アカン、このバンド、マジでカッコぇエエエエぇえええええええええええええええええ!!ライブ見てエエエエエエエエエエエエエエエエええ!!MASTODONがサマソニなら、ラウパはこのKylesaでイイジャン!!イイジャン!!お願いッッ!!


正直言って、全曲名曲と言えるレベルなんだけど、アグレッシヴなヘヴィネスで爆走するハードコアキラーチューンの1、病んでる陰鬱なヴォーカルラインと、開放感と爽快感溢れるドラミングがたまらない3、極限までサイケデリックに毒々しく酔いしれる名曲中の名曲の4、荘厳的なピアノの音色で始まり、宗教的なGリフと雰囲気が病みつきになる5、雷雨のSEから始まり、デロデロとヘヴィネスの効いたプログレスでグルーヴィなGリフがクセになる6、MASTODONっぽいヘヴィネスがゴリゴリブリブリと気持ちがイイ8、Laura姐さんのクラシック・スタイルのGソロがめっちゃカッコイイ9、が特に大好きかな。更に述べるなら、1と4は今後Kylesaの代表的な曲となりうるキラーチューンと呼べる名曲。


MASTODNに次いで、今度はこのKylesaの人気が出てくるとイイな~(^O^)このKylesaこそ「ポスト・MASTODON」と呼べる正統派なバンドやね。本作も傑作、名盤レベルのすげー極上なアルバムなんだけど、次のアルバムで更に化けてくるような予感がしないでもない。というか希望。次作では1曲1曲の個性を更に際立たせてもらって、ちょっとした大作や小大作とか聴いてみたいなーって。とりあえず、MASTODONの新作が気に入った方には「是非コレを」と迷わずオススメしたくなる、実に充実した圧倒的な1枚。MASTODONよりはメタル度は薄いけど、その手のリスナーにアピールする部分というのは少なからずあると思う。ボクは暫らくこのアルバムがスルメです。最近コレしか聴いてない状態。まさに中毒。MASTODONの新作と本作の2枚を聴いて5月病を乗り切ろう!!・・・って逆に鬱になっちゃうか(笑)ついでだから、憂鬱な5月に聴くべきアルバムをリスナーのみんなにちょっとばかし教えとくよ。まず、Alcest の「Souvenirs D'un Autre Monde」、Antimatter の「Planetary Confinement」がボク的オススメだよ!!それにしても、最近は名作/名盤続きで嬉しいねー。このままのイイ流れで進めば、名作の多さでは昨年を越えそうな予感!! どうでもいいけど、これ国内盤が出ないって・・・冗談キッツイな~。。。

9.0(+) / 10


Static Tensions
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Kylesa
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ELUVEITIE 「Evocation I - The Arcane Dominion」

HR/HMのCDをてけとーにレビューするブログ

スイス産のケルティック・フォーク・メタルバンドの8人組、ELUVEITIE の3作目「Evocation I - The Arcane Dominion」を紹介。



1. Sacrapos - At First Glance           ★★
2. Brictom                        ★★★★★
3. A Girl’s Oath                    ★★
4. The Arcane Dominion               ★★★★☆
5. Within the Grove                   ★★★
6. The Cauldron of Renascence          ★★★★
7. Nata                          ★★★
8. Omnos                        ★★★★★
9. Carnutian Forest                  ★★★
10. Dessumiis Luge                  ★★★
11. Gobanno                       ★★★

12. Voveso in Mori                   ★★★
13. Memento                       ★★★★
14. Ne Regv Na                    ★★★★★
15. Sacrapos - The Disparaging Last Gaze   ★★★



昨年リリースされた傑作アルバムの2nd「Slania」が記憶に新しいスイス出身のフォーク・メタラーのEluveitie なんだけど、その前作から1年振りの早くも3枚目となった今作の「Evocation I - The Arcane Dominion」は、前々から噂されていたとおりの「アコースティック・フォークアルバム」で、1stと2ndで聴かせていたイエテボリスタイルのゴリゴリでアグレッシヴなフォーク・メタル色は皆無な作風で、完璧なるまでに「ケルティック・フォーク・ロック」を追求し探求してきた内容になっている。ハッキリ言っちゃえば本作はメタルアルバムではないです。ゲストが多数参加してるし、噂ではEluveitie名義で出す予定はなかったらしいアルバムなんで、本作をEluveitieのアルバムとして、つまり3作目としてカウントして良いのか悪いのかは分かんないけど、とりあえずEluveitie名義での3枚目のアルバムです。


事前公開されてた魅せるPVの「Omnos」を聴けばなんとなく想像が付いたとおり、正直言ってあんま特徴のない素人っぽい歌声をしている女性ヴォーカルのアンナ・マーフィーメリ・タディッチがメイン・ヴォーカルを取っている曲と、「ピーヒャラ♪ピーヒャラ♪」と民族楽器を最大限に活かしたケルティックでフォーキーな尺の短いインストナンバーを中心に構成されているアルバムなんで、メタルバンドとしてのEluveitieを期待していたリスナーはちょっとビックリするかもしれないね。まー、前々から「アコースティックアルバム」と噂されてたわけだし、別に驚く人なんて居ないと思うけどねー。リリース日は不明だが、この次のアルバムで「Evocation II - Visions」が予定されてるらしく、恐らくそのパート2に当たるアルバムでは、1stや2ndのようなアグレッシヴなフォーク・メタルを聴かせてくれると思うんで、クビを長くして期待してましょ。つまりはちょっと例えのテイストが違うかもだけど、OPETH の「Deliverance」と「Damnation」的なアルバムの立ち位置って事なのかね?本作は。まー大体そんな感じで理解しましょ。


という事で今作の中身についてなんだけど、とにかく「フォーク・ロック」然とした楽曲ばかり並んでおり、「フォーク」のジャンルの知識が全くと言っていいほどないボクは、正直どう聴いて良いのか分からない始末で、1から最後まで「ふ~ん」「へ~」ちゅー感じの感想というか・・・イマイチ「パッ」っとしない印象しか、聴き始めの頃は持つ事ができなかったわけです。ちゅーか、アンナメリがまともにヴォーカルを取っている曲は2.8.10.12.14.くらいで、他の曲は基本的にフォーキーなインストがベースな曲ばっかなんだ。けど、さっき書いたヴォーカル入りの曲は、「フィーメールヴォーカル系のフォーク・ロック」として普通に楽しめるんで、別にそんなに悲観する事ではないかな、普通に気に入っちゃったし、何回も聴いていく内に本作から溢れ出る癒されフォーキーなメロディに自然と心酔いしれちゃってるしね(・∀・)個人的には、もっとヴォーカル入りの曲を多く聴きたかったかなーって思ったけど、これはこれで悪くはないね。けどやっぱりボク的に好きな2.8.14等のヴォーカル入りのフェイバリットナンバーを聴くと、ヴォーカル入りの曲を中心に聴きたくなっちゃうのよ。アンナの歌声は何気に萌えポイント高いしね^^ルックスについてもね^^インストがメインな曲で言えば、民族楽器が全開に使われた、中華っぽさもある癒されフォーキーな4、吹奏メロディがスピーディでノリノリな6、フォーキーな音色に癒される13、が好きな曲かな。本作のアコギアルバムの登場により、ライブでの魅せる幅がまた広がったような気がするね。ライブ見たいな~。


ちょっと気になったんだけど、「フォーク」のジャンルが大好きな人が今作を聴くと、どのような感想を持つのだろう?凄い気になるなーって。ちょっと余談だけど、このバンドってメンバーの入れ替わりが激しいバンドなんだなーって、彼らのWIKI見て知ってビビッタ。まぁ、そーゆーのは8人も居る大所帯バンドならではの付き物と言いますか。。。メンバーのイザコザでEluveitie解散ってオチはマージで勘弁だね。これからもっともっとノリに乗れる期待のバンドなんで、早々と消滅してほしくないんだよねー、ファン心理としては。

ちゅー感じで、本作は「Eluveitieマニア向けの作品」という印象が強いので、他方へのオススメはあまりできないけど、良くも悪くも「アコースティックアルバム」の佳作って所なんで、その辺は自己責任チェックしてみてくだしー。とにかく次作では「俺達のEluveitieが帰ってキターーーーーーーーーーーー!!」と言わせてほしいねー。


7.0 / 10



Evocation I: The Arcade Dominion
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