Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

2015年11月

【11/26】 Acid Black Cherry 『2015 arena tour L—エルー』@日本ガイシホール

ガール「アタシABC聴くよ。ライブは行ったことないけど」

ぼく「マジで!?ライブといえば2012年のクリスマスライブの時に初っ端のMCでヤス何て言ったと思う?」

ガール「え~、わかんない」

ぼく「ヒントはクリスマスにちなんだネタ」

ガール「え~???」

ぼく「メリー?」

ガール「クリ◯リス!」

ぼく「正解!」

ぼく&ガール「ギャハハハハハ!!」

我に返ったぼく「(俺は一体何をやってるんだ・・・)」

最近はAcid Black Cherryを知っている(聴いている)ガールに半ば強引に、半ば合法的に、しかしあくまでも自然に下ネタを言わせた会話の後、猛烈な自己嫌悪に陥っている今日このごろ、皆さん如何お過ごしですか? そんな僕はといえば、約二年ぶりとなるAcid Black Cherryのライブへ、その名もアリーナツアー『2015 arena tour L—エルー』、11月26日に名古屋の日本ガイシホールで行われた二日目の公演を観に行ってきた。本来ならば、夏に企画されたフリーライブで久々に林の姿が観れるはずだったんだが、しかし結果はまさかの落選で、「えっ、これって落選すんの?林フザケンナ」って、そんな苦い思い出を経て、今回遂に満を持してというわけ。

515280f7・・・「こちらスネーク、日本ガイシホールに潜入した」 

aa230d8a・・・「よくやったスネーク。今回の任務はコードネーム『L』の正体を暴き出すことだ」

515280f7・・・「コードネーム『L』・・・?一体誰なんだそれは」

aa230d8a・・・「FOXの諜報班によれば、どうやら『L』はイギリス人のローレン・メイベリーである可能性が高いとのこと」

515280f7・・・「『L』はLauren Mayberryの頭文字というわけか」

aa230d8a・・・「そうだスネーク。至急、現地に向かってくれ。それと『L』とされる人物の肖像画も添付しておく。確認してくれ」

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515280f7・・・「性欲を持て余す」

Setlist
01. versus G
02. liar or LIAR ?
03. Greed Greed Greed
04. 黒猫 ~Adult Black Cat~
05. scar
06. INCUBUS
07. Round & Round
08. 君がいない、あの日から...
09. 眠れぬ夜
10. 7 colors
11. DRAGON CARNIVAL
12. cord name【JUSTICE】
13. Black Cherry
14. エストエム

EN1
01. L-エル-
02. & you

EN2
01. 少女の祈りⅢ
02. 20+∞Century Boys

林もMCのネタにするくらい有名な、いわゆる「日本三大ブス」の産地の一角を担う名古屋が、"ある時"だけ「日本三大ブス」から解き放たれる瞬間がある。その"ある時"とは、他でもないAcid Black Cherryのライブが名古屋で行われる時だ。それこそ『L』すなわちメンヘラクソビッチと呼ぶに相応しいガールが沢山いて、「あの子はピンクのセーラー服を着たレイヤー!あの子はJK!JK!JK!あの子はガールズバー勤務っぽいし、あの子はエスエム嬢っぽいな。あの子はピンサロ嬢っぽいし・・・う~ん、あの子はデリヘル嬢かな?あの子は・・・マイナンバー制度に怯えるソープ嬢だ!」という風に、まるで有吉弘行あるいは伊集院光ばりにゲスい目線でTEAM-ABCのガールをチラ見ウォッチするのが、俺たちTEAM-ABC男子部としてのABCのライブにおける役割で、僕は今回もその責務を全うしていた。

まぁ、そんな冗談はさて置き→今回のツアーは、言わずもがな2月にリリースされた新作L -エル-に伴うツアーで、新作のアルバム曲は勿論のこと、ABC史上最もコンセプト/ストーリーに力を入れた作品だけあって、ライブの演出面にも大きな期待がかかる。とりま僕は一般先行のチケットで、振り返れば立ち見がいる...つまりスタンド席の最上階という見事なクソ席からの鑑賞となった。今回の舞台構成は、ステージの真ん中と左右にスクリーンが設置してあって、そこにメンバーの姿や映像などを織り交ぜながらライブをドラマティックに演出していく。

このライブの真の目的は、謎に包まれた『L』の正体を掴むことで、となると一曲目の存在が非常に重要になってくるのだが、しかし僕スネークは開演と同時に『L』の正体を目の当たりにし、そしてド肝を抜かれた。まずは6時半、開演すると同時にスクリーンに『L』のアートワークが映し出され、それが鏡のようにヒビ割れる演出から、『L』の正体とされるローレン・メイベリー率いるChvrches”Science/Visions”が始まったかと思えば、いやそうではない、猛烈なエレクトロ感溢れるライブ・アレンジを加えたイントロで始まったのは、他でもないAcid Black Cherry”versus G”だ。「やはり『L』の正体はLauren Mayberryだったか...」と、早々にコードネーム『L』の正体を暴くことに成功し、無事任務を遂行した僕スネークは、満足気にABCのライブに浸り始めるのであった。

林のヘロヘロラップがキモである一曲目の”versus G”を聴いてまず気づいたのは、ここ最近の急激な寒波に見舞われたことや二日目の影響なのか知る由もないが、林の声が明らかに不調であることと、恐らくクソ席であるせいでバンドの音もペラペラで、この曲が持ち味とするゴリゴリのヘヴィネスまで全てが迫力不足で、今になって二年前のライブは良席に恵まれていたのだと理解した。その流れでアルバム『L』のリードトラックである”liar or LIAR ?”からの”Greed Greed Greed”まで、序盤はラウドな曲で一気に畳みかける。次の”黒猫”では林主宰のキャバレーとばかりLED照明によるド派手な演出で観客を賑わせる。次はバラードの”scar”で一息入れつつ、そしてこのツアーの見せ場となる中盤の流れに突入する。左右中央に用意されたスクリーンにMVの演出が織り込まれた”INCUBUS”、続いてアルバム『L』の「もう一人の主人公」であるオヴェス君とエルが絵となってスクリーンに映し出され、未来のエルに襲いかかる壮絶な人生を暗示した”Round & Round”、オヴェスのエルに対する想いが込められたバラード”君がいない、あの日から...”、からの”眠れぬ夜”ときてABCらしいシャッフル曲の”7 colors”まで、アルバム『L』の重厚なコンセプトを一箇所に凝縮したような中盤の流れは、このツアーの大きな見所でありハイライトだった。終盤は過去作から定番曲が並び、本編ラストに”ピストル”の代役を担うには十分な”エストエム”を持ってくる名采配。しかし、まだまだ『L推し』は終わらない。アンコールには表題曲と”& you”を立て続けに、畳みかけるようにしてアルバム『L』の楽曲をこれでもかとゴリ押してくる。ダブルアンコールには、ヘドバン曲の”少女の祈りⅢ”とお馴染みの”20+∞Century Boys”で幕を閉じる。

当然、アルバム『L』に伴うツアーであるからして必然的に新作中心のセトリだし、必然的に『L』のコンセプト/ストーリーをライブの演出面にゴリ押しとばかり組み込んできている。音響の良し悪しは別にして、新作の曲がほぼ全て聴けたのは素直に良かった。当然、『L』は過去作と比べて大人しめの楽曲が多く、いわゆる”暴れ曲”が少ないため、そういった点ではイマイチ盛り上がり”に欠けた気がするのも正直な感想。とは言え、『L』のコンセプトを演出の基にしながらも、ABCのライブとして楽しませる最低限の器量はあったライブだと思うし、このツアーでしか味わえない演出や見所も十二分にあったと思う。”liar or LIAR ?”の入りの格好良さは勿論のこと、個人的にアルバム曲で生で聴いてみて存外良かったのは”7 colors”で、曲調やカラフルな演出面も踏まえてABCらしさに溢れていた。

前回から変わらず、ツイッターで募集した質問にメンバーが答えるコーナーが定番のMCとなっている。序盤のMCでは、「昔の曲を自分で聴いたりするか」とか「ライブでミスったらどうやって誤魔化すか」とかの質問の他に、「ギターのピックやドラムのスティックも0.2ミリ単位で音が違ってくる世界らしい」とか「林のマイクスタンドにも”こだわり”がある」みたいな、ABCにしてはエラくマジメな質問ばっかで、はじめて「ABCってプロのバンドだったんだ!すごい!」って感心した。HIROさんはライブでミスったらローディのせいにするABC一番のぐう畜。しかし二回目のMCコーナーでは、「新婚で月一しかしないセックスレス夫婦」とか「逆に彼氏が寝る暇もないくらいセックスモンスター」とか、それらの質問から「性欲を持て余す」話に変わって林が「一人運動会して寝たのに夢の妖精にあった」とか言い出して「夢の妖精」ってなんだ?って一瞬考えたけど普通に夢精の話だった。自分はこの日のために10日くらいオナ禁してたんだけど、一向に夢の妖精を見る気配がないからやっぱり個人差があるのかも。その代わりに朝立ちがハンパなくなる。お陰で最近は朝起きるとパンツを素早く降ろしてビターン!!ビターン!!するのがマイブーム(何の話だ)。でも”Black Cherry”の「顔にかけて」のタイミングでスクリーンに林の顔がアップで映し出された瞬間、「林、イクぞ!」みたいなノリでほぼイキかけたけどギリ我慢した。他には、早口言葉ネタはボツって「バンドマンの彼氏が客相手に浮気してるからチンコ切り落としたい」とか、まぁ、いつもの下ネタ成分多めなMCだった。今回は自分が過去に観たライブMCほどの名言はなかった気がする。つい「おいおいマジメか!」ってツッコみたくなるくらいに。MCもちょっと長く感じた。

約二年前、名古屋の2公演を観に行って以来久々にABCのライブを観て、林は喉の調子は不安を残すものの、しかしステージング/パフォーマンスは相変わらずの格好良さで安心した。ライブ自体9月のANATHEMA以来三ヶ月ぶりで、やっぱりナマはイイもんだなと再確認できた。この勢いで来月のX JAPANのライブに行って人生のピークを迎えるぜ!と意気込んでみたものの、当然チケットは取れるはずもなく・・・二度目の「林フザケンナ」。色々な意味で、この不完全燃焼みたいなモヤモヤを晴らすために、とりまABCのライブハウスツアー『S』に行きて~。

そういえば、終演後の帰り際に外国人の美女を見かけたのだけど、まるでエルが成長して大人になって"リアルエル"となってABCのライブを観に来たようでもあって、今日のライブで最も粋で妙にロマンチックな演出だなーと自分の中で独りでに思いながら、僕は会場を後にした。でも、もし彼女がフランス人だったとしたら?例のMCを聞いて彼女は一体何を思ったのだろう?林は本当にスタンドが見えていたのか?本当にアリーナが見えていたのか?林よ、今はコンプライアンスの時代やぞ。

Draconian 『Sovran』

Artist Draconian
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Producer David Castillo
David Castillo
Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『Sovran』
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Tracklist

01. Heavy Lies The Crown
02. The Wretched Tide
03. Pale Tortured Blue
04. Stellar Tombs
05. No Lonelier Star
06. Dusk Mariner
07. Dishearten
08. Rivers Between Us
09. The Marriage Of Attaris
10. With Love And Defiance

実質プロデューサー ・・・ゴシック・ドゥーム界を代表するスウェーデンのDraconianも、他に漏れず「イェンスと組んだ一作目は名作になる」という"メタル界の迷信"を、いわゆる"実質プロデューサー"現象を4thアルバムTurning Season Withinという傑作の中で既に証明していて、続く2011年作の5thアルバムA Rose for the Apocalypseでは、念願叶ってイェンス・ボグレンを本当の"プロデューサー"として迎え入れる事に成功していた。しかし、まさかそれが紅一点ボーカルLisa Johanssonの遺作になるなんて想像もしてなかった。正直、このドラコニアンのセールス・ポイントと言ったら、男Voのアンダース・ヤコブソンのデス声とリサ・ヨハンソンの美しすぎる歌声が織りなす、この世の儚くも美しい部分と破滅的な醜い部分の絶妙なコントラスト/コンビネーションで、そのバンドのキモであるリサが脱退したというニュースを聞いた時は、それはもうガチで終わったというか、それこそドラコニアン解散すんじゃねーかくらいの衝撃だった。しかし、新しくドラコニアンの記事を書いているということは、つまりはそういうことで、バンドの希望であったリサを失った彼らは、直ぐさま新しい嬢として南アフリカ出身のSSWで知られるHeike Langhansを迎え入れ、目出度く約4年ぶりとなる6thアルバム『Sovran』をリリースした。

【勝ち確】 ・・・今のメタル界隈には、イェンス・ボグレンという優勝間違いなしの名将だけじゃあ飽きたらず、その相棒であるデイビッド・カスティロも同時に指名して、いわゆる【勝利の方程式】を解き明かそうと必死で、このドラコニアンもこのビッグウェーブを追従するようにプロデューサーとしてデイビッド・カスティロ、録音エンジニアとしてイェンス・ボグレンを起用するという、まさしく【勝ち確】なメンツで制作されている。だけあって、今作は【勝ち確】と評する以外ナニモノでもない模様。それはイントロからEarthらUSドローン/ドゥーム界隈を彷彿とさせる#1”Heavy Lies The Crown”のメロドゥーム然とした慟哭不可避のメロディから、その#1とシームレスで繋がる#2”The Wretched Tide”のストリングスによる耽美的なメロディと紅一点ヘイケによるWithin Temptationのシャロン顔負けの慈悲なる歌声を聴けば分かるように、ウリである泣きのメロディ・センス、バンドの中心人物であるヨハン・エリクソンのライティング能力は4年経っても不変で、もはやリサ脱退の影響を微塵も感じさせない、むしろ冒頭の三曲でリサの存在を忘れさせるくらいの凄みがある。

【KATATONIA feat.】 ・・・そして今作のハイライトを飾る#7”Dishearten”は、リズムやアレンジ、リフから曲調まで、いわゆる【勝利の方程式】の基礎である『The Great Cold Distance』以降のKATATONIA、中でも『死の王』”Hypnone”リスペクトな一曲で、あの頃のKATATONIAを知り尽くしているデイビッドだからこそ『説得力』が生まれる曲でもあるし、もうなんか【KATATONIA feat. シャロン】みたいになっててウケる。ともあれ、一度は誰もが妄想したであろうこのコラボを擬似的ながらもやってのけた彼らの度胸に僕は敬意を表したい。その流れで本当にUKバンドCrippled Black Phoenixのスウェーデン人シンガーDaniel Änghedeとフィーチャリングしてしまう#9”Rivers Between Us”では、ダニエルの色気ムンムンな男性ボーカルとヘイケの美声がアンニュイなハーモニーを聴かせる。新ボーカルのヘイケは、前任者リサのようなオペラティックなソプラノ歌唱ではなくて、その声質やメロディの作り方からも往年のシャロン・デン・アデルを意識したようにクリソツで、それにより俄然ゴシック℃マシマシな印象を受けるし、より大衆的というか、往年のWTに通じる今のWTが失ったいわゆる"female fronted"なメインストリーム系のメタルへとバンドを昇華させている。少なくとも、いわゆるドゥーム・メタルやゴシック・メタルとかいうサブジャンル以前に、バンドのメタルとしての能力を限界まで引き出すイェンス・プロデュースによる特性が(良くも悪くも)顕著に出ていた前作よりは、まるで教科書通りと言わんばかり、これまでの"ゴシック/ドゥーム・メタル"として本来のドラコニアンらしさへ回帰した佳作だと。
 
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Amorphis 『Under the Red Cloud』

Artist Amorphis
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Producer/Engineer/Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren
Engineer(#5) David Castillo
David Castillo

Album 『Under the Red Cloud』
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Tracklist
01. Under The Red Cloud
02. The Four Wise Ones
03. Bad Blood
04. The Skull
07. Dark Path
08. Enemy At The Gates
09. Tree Of Ages
10. White Night
11. Come The Spring
12. The Wind

「No Jens No Life」 ・・・今やあのBABYMETAL凛として時雨すらライブ作品などでイェンス・ボグレンと絡んでるくらい、今のメタル界隈には「No Jens No Life」みたいな風潮あって、これは別に自慢じゃあなんだが、おいら、初めてベビメタの記事を書いた時、偶然にも「イェンス・ボグレン」の名前を一緒に出していて、恐らくあの時点でベビメタとイェンスの邂逅を予知していたのは世界でも自分だけだと思う。しかし、ベビメタを【アイドル界のDIR EN GREY】と解釈している者ならば、あの程度の予測は容易に可能で、勿論プロデューサーのコバメタルが当ブログを読んでいるなんて自意識過剰なことを言うわけじゃあないが、兎も角それぐらいイェンス・ボグレンは今のメタル界にとって欠かすことのできない最重要人物なんだ。

実質プロデューサー ・・・北欧フィンランドの重鎮で知られるAmorphisの近況といえば、00年代を締めくくる傑作となった9thアルバムSkyforger以降イマイチパッとしない作品が続き、前作のCircleに至ってはどんな作風どんな内容だったかすらも記憶になくて、辛うじて「デスメタル回帰」したんじゃね~?的なイメージが残ってるくらい。で、近年のアモルフィスは中期の作品と比べると深刻なライティング不足、つまりベテランメタルバンドにありがちなスランプに陥っていた。そんなアモルフィスが約二年ぶりとなる12thアルバム『Under the Red Cloud』を制作するにあたって、プロデューサーすなわち【復活請負人】として任命したのが、他でもないイェンス・ボグレンだ。ここ最近はイェンス関連の記事ばかりで、まるであたかも「全ての作品をイェンス・ボグレンがプロデュースしている」みたいな勢いで書いてしまっているのも事実で、読者に誤解を与えかねないので一応訂正したいんだが、イェンスが"プロデューサー"として関わっている作品はほんの一部で、彼がメインとする仕事は主にミキシングをはじめとしたエンジニアワークである。しかし、例えばDark TranquillityConstructBTBAMComa Eclipticのように、"プロデューサー"ではなくあくまでもミキシング/マスタリング・エンジニアとしてクレジットされているのにも関わらず、確信的にバンド側がイェンスの嗜好に合わせて曲を書き上げてくるパターン、このような現象を僕は"実質プロデューサー"と表現している。
 

『怒りのデスロード』 ・・・しかし、この『Under the Red Cloud』では"実質プロデューサー"ではなく、MoonspellExtinctと同様に"プロデューサー"名義でイェンス・ボグレンが深く作品に関わっている、という事を念頭に置いて話を進めたい。先行シングルの”Death of a King”は、まるでアフガンのように情熱的に燃えたぎる赤鯉魂が描かれた、Orphaned Landの作品でもお馴染みのMetastazisValnoirによるオリエンタルラグ(アラビア絨毯)をモチーフにした今作のアートワークを象徴するかのような一曲だ。そのアラビックな中東的メロディをフューチャーしたイントロのリフから、EluveitieChrigel Glanzmannによるフィンランドの民族叙情詩カレワラを司るようなフルート&ティン・ホイッスルとex-Opethマーティン・ロペスによるドーフ・ウォリアー顔負けのリズミカルなパーカッションが、ギタリストホロパイネンによるグルーヴを乗せたモダンなヘヴィネスとともに"音"で士気高揚させる姿は、まるで魔改造されたドーフ・ワゴンさながら、そしてチャームポイントのドレッドヘアを捨てたフロントマントミ「Death of a King!! Death of a King!!」と野太く咆哮する姿は、まさしく『マッドマックス 怒りのデスロード』イモータン・ジョーそのもの、すなわち本作の『王=キング』だ。要するに→日本のゲーム界屈指のクリエイター小島秀夫監督が『MGSV』の中で表現したように、この曲...いや今作は映画『マッドマックス 怒りのデスロード』の世界観を音楽で表現したかのような、まるで五人のワイブスを奪われ、その中でも"オキニ"のスプレンディドとお腹の中の子供(息子)を亡くしたイモータン・ジョー『復讐心』『報復心』という名の『怒り』をアフガニスタンの広大な大地に轟かせるような名曲なのだ。
 
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【勝利の方程式】 ・・・この『Death of a King』すなわち『死の王』がいかに凄い曲なのか?それについて、まずは本作が「打倒Opeth」を謳った作品である事を理解しなければならない。今作は、いわゆる「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信を裏付けるような、Opethの8thアルバム『Ghost Reveries』からの影響が強く垣間見れる一枚でもあって、中でもそれを顕著に象徴するのが#4”The Skull”と#8”Enemy at the Gates”、そしてボートラの#12”The Wind”だ。#4はメロトロンをフューチャーした叙情性からリフ回し、そしてプログレ然とした転調から何から何まで『Ghost Reveries』リスペクトで、#8はホモバンド化した後期Opethの"Prog-Rock"な俄然エスニックな芳ばしい香りを漂わせる。まるで「打倒Opeth」を実現させるには、あの名盤『Ghost Reveries』を超えるには、対抗して「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信に賭けるしかない・・・そのアモルフィスの「勝ちたいんや!」精神、その答えこそ『Death of a King』の中に凝縮されていて、それこそex-Opethマーティン・ロペスを、全盛期のOpethを支えた裏の立役者であるマーティン・ロペスという「打倒Opeth」の最終メンヘラ兵器を援軍に迎え、そしてマーティンのパーカッションを手がけた張本人こそ、他でもないイェンスの相棒であり【勝利の方程式】を紐解く鍵となるデイビッド・カスティロなのだ。

マッドマックス 怒りのデス・ロード

「外に開かれている」 ・・・話は変わるが→おいら、数年前に「DIR EN GREYデイビッド・カスティロと一緒に仕事するべきだ」と書いたんだが、まるでそれを合図にしたように、ここ最近ではSoilworkMoonspellをはじめ、今やエクストリーム・メタル界の帝王に成り上がったLeprousまでも、立て続けにデイビッドと組むメタル界の重鎮が増えてきている。しかし、肝心のDIR EN GREYと言えば、KATATONIA『死の王』からの影響も垣間見れた最新作の『ARCHE』以降何も音沙汰なしで、今やEarthsideとかいう無名バンドですら【勝利の方程式】を解き明かしているというのに、流石の薫も審美眼に衰えが生じ始めているんじゃあないかと少し心配になった。確かに、僕は『ARCHE』二万文字レビューの時に→「今のDIR EN GREYは外に開かれている」と某赤いバンドのギタリスト津野米咲の言葉を一部引用したんだが、その予想どおりシンヤの有吉反省会出演やパーソナリティ薫のラジオ番組が始まったりして、メロディア露出という意味では確かに今のDIR EN GREYは「外に開かれている」。その流れで今度は音楽面にも開かれた『説得力』が欲しいところだ。少なくとも、このアモルフィスは前作で長年連れ添ったフィンランドの大物エンジニアミッコ・カルミラとの決別を宣言している。そう、比較的地元愛の強い保守的な国のバンドですら音楽的に開国されつつあるのだ。つまり前作でワンクッションを置いてから、今作で満を持してメタル界の最大勢力であるイェンス組に入門してきた、というわけ。

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黄金のヘヴィネス ・・・まぁ、それはともかくとして→今作を象徴する『Death of a King』はアモルフィスのポテンシャルの全てが引き出された、それと同時に、欧州最後の砦だったMoonspellが名曲”Medusalem”の中で80年代のUKミュージックと中東音楽の邂逅を実現させたように、この曲は民族叙情詩カワレラと中東音楽を邂逅させた歴史的瞬間でもあるのだ。それこそ欧州は元より北欧全土に蔓延る中東問題を痛烈に皮肉るかのような、まるで今の時代、この先のメタル界で生き残っていくには中東要素との共存が不可欠であること物語るようだ。それと並んで本作を象徴する一曲で、幕開けを飾る表題曲の”Under The Red Cloud”では、名盤『Skyforger』の再来を予感させるイントロのピアノや同作のシングル”Silver Bride”の傑作リフから更に低音を盛って洗練を施したようなモダンなヘヴィネスを聴かせる。他にも『Eclipse』『Silent Waters』、そして『Skyforger』という中期アモルフィスの黄金を連想させる、まるでワイブスを奪われたイモータン・ジョーの如く、自慢のドレッドヘアを奪われたVoトミのボーカリストとしてのポテンシャルを極限まで引き出されたボーカル・パフォーマンスを筆頭に、同郷のSwallow The Sun界隈でもお馴染みのAleah Stanbridge【王=キング】の妾、すなわちワイブスとして迎え入れた所も俄然『マッドマックス 怒りのデスロード』の裏コンセプトであるフェミニズムの世界観とリンクさせられるし、特に今作の基礎的な部分を担うアモルフィス屈指の名リフである”Silver Bride”黄金比』で形成されたキザミリフを再解釈したような黄金のヘヴィネスには、並々ならぬセンスの塊を感じる。

【真・勝利の方程式】 ・・・またしてもイェンス・ボグレンという男は、界隈のベテランをNEXT-ステージへとブチ上げる事に成功し、ここ最近の二作で感じた「ライティング不足」が嘘のように、ソングライティングの幅が広がったのは言わずもがな、とにかく全てにおいて著しく音の洗練化が進んでいる。メロデスやらサブジャンルとして以前に、そのバンドの根幹にある「メタル」としてのポテンシャルを限界まで引き出し、それと同時にバンドが持つ"Progressive"な側面を具現化するイェンスのプロデュース能力が顕著に表れた、そしてポッと出の新人バンドに対してベテランならではの凄みを見せつけるような、まさしく【真・勝利の方程式】を解き明かすような大傑作だ。
 
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