Artist OPETH
opeth2011

Album  『Heritage』
opethheritage

Track List 
1. Heritage
2. The Devil's Orchard
3. I Feel The Dark
4. Slither
5. Nepenthe
6. Hxprocess
7. Famine
8. The Lines In My Hand
9. Folklore
10. Marrow Of The Earth

北欧スウェーデンが世界に誇る暗黒帝こと、Opethの約3年ぶり節目の通算10作目を飾る『Heritage』は、脱退したペルに代わり鍵番奏者に新メンバーのヨアキム・スヴァルベリが加入、エンジニアにイェンス・ボグレン、ミックスには(もはや説明は不要でしょう)バンドと交流が深いスティーヴン・ウィルソン先生、そしてフロントマンの
ミカエル・オーカーフェルト自身がプロデュースに携わった作品。で、Acoustic/Folk/70s-Progressiveへのアプローチを俄然強め、悪く表現すれば”おっさんフォーク・メタル”だった前作のWatershedからのプログレッシヴェ・・・な香りそのままに、本作ではOpethの心臓部である”ミカエル・オーカーフェルト”の音楽人生に置けるバックグランドが色濃く楽曲に反映された結果、一足先に公開された”The Devil's Orchard”を聴けば嫌でも”理解ッ”できるように、活動25周年を迎えた今のOpethにしか成し得ない、Opethの潜在的な芸術性をこれ以上ないほど開花させたプログレッシブ・ミュージックを堂々とやってのけている。本作ではVoミカエルのグロウルが一切ないという事を聴いて、PoSの例の最新作みたく”なにもお前らがそれをやらんでもええやろ・・・”的な作風だったらどうしようかと思ったけど、実際に本作を聴いてみて理解ッした、この音楽は”オペスがやらなきゃダレがやる、オペスがやるからこそ許される”・・・作品だということを。

 酒を酌み交わしたくなるほどアダルティなムードを醸し出すピアノインストでタイトル曲の#1”Heritage”で本作=”オトコの芸術世界”の幕を開き、King Crimsonライクな本格派70sプログレをやってのける#2”The Devil's Orchard”では、レトロな音作りやオーガニックなGリフとミカエルの過去最高に近い歌いっぷり、そしてラストでの泣きまくりな超絶Gソロをトドメに叙情的かつドラマティックな演出が際立った名曲。GoW3に提供された楽曲”The Throat of Winter”を彷彿させるスパニッシュ調のアコギとメロトロンで西洋絵画の如くアンニュイな色彩でマイルドに描く#3”I Feel The Dark”は、3分から急激に場面が変わってヘヴィなギターで暗黒魔界を創造する。この”静と動”を意識した感じは”OPETHスタイル”そのものですねぇ。そして・・・
今は亡きDioに捧げられた、まさしくRainbowの名曲”Kill The King”をOpeth流の解釈でやってのける#4”Slither”、味わい深きジャシーなムードに酔いしれる#5”Nepenthe”、小児が戯れる情景を脳裏に浮かばせるSEを擁して物語をより繊細かつアートに演出してみせる#6”Hxprocess”は、”らしい”アコギの入れ方や儚すぎるソロパートに悶絶することウケアイな名曲。アマゾンの原住民が秘術を唱えるがごとく、同郷のBjörn J:son Lindh氏が奏でるフルートやマラカスやパーカッションなどのエスニックな民族楽器を大胆に取り入れた#7”Famine”は後半のサバスlikeなトラディショナル・ドゥーム/ヘヴィ・サイケまで全てが70s祭り。序盤はビンテージ感をゆったりと漂わせ、中盤のアコギから終盤にかけての展開に浪漫を感じざるを得ない#9”Folklore”は、胸が熱くなるほどの”音楽のロマン”、いや、”おっさんのロマン”が詰まっている。#9のラストで時空を超えて現代へと帰還し、郷愁に満ちた哀愁が夢か現実かを彷徨うフォークギターインストの#10”Marrow Of The Earth”で『Heritage』=”70sセカイ”の味わい深き余韻を残す・・・という感じで、メタル成分が薄いという点では『Damnation』を一番に彷彿とさせるが、しかし本作品はそれとも一線を画した無二で孤高の音世界を繰り広げている。特にスパニッシュ風味のアコギを多用してるあたり、今思うとGoW3に提供された”The Throat of Winter”が全ての伏線だったと理解ッするわけです。そしてメタル界屈指のボーカリストと称されるミカエルの歌は、自身でプロデュースしてるだけあってか、過去最高レベルのパフォーマンスを見せている。けど、過去最高に歌っているアルバムなのにも関わらず、ボーカルのミックスは楽器隊と同じ位置なのが意外というか、”らしい”なぁって。あと今回の歌メロに関して不自然さというか無理矢理に感じる部分が所々あるのはご愛嬌か。#2のGソロ前の『Oh, stigmas revealing our vices And oh, oh, stigmas revealing our vices』のとことかステキやん。それとマーティンのベースがブリブリッモリモリッに主張しまくりなのも本作の聴きどころ。
 
 ・・・つーわけでこのアルバム、まるで欧州映画を見ているかのような錯覚に陥る”自由繊細緻密”な音の積み重ねにより構築され、同時に”70s”に対しての敬意ッに満ち溢れた、もはや”オマージュアルバム”とでも呼びたいくらいで、キングクリムゾンとのパイプを持つスティーヴン先生を”70sと現代を結ぶ仲介者”として起用した”本当のワケ”というのが嫌でも分かるハズです。亡きDioに捧ぐ#4とかは特に露骨で、あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜッ!俺はオペスの新作を聴いていたと思ったら、いつの間にかRainbowを聴いていたんだ・・・って、冗談なしにこんな感じ。正直、こういう露骨なオマージュ(というか最早カバー)はボートラ扱いでよかったんじゃねーかと・・・思ったけど、まぁこれを本編に入れるからこそ”意味”があるってもんなんだろう。本作を象徴する一曲でもあるわけだし。
 今までの作品はあくまで"70s的な雰囲気"だったのが、今作は音の質感からアートワークまで完璧に”70s”のオンパレードで、つまり今までのオペスからは聴き慣れないような音に対して始めは当然戸惑うかもしれない。が、聴きこむ内に”こりゃ全てにおいてオペスそのものだわ”って納得せざるを得ない、お馴染みのトラヴィス・スミス氏が手掛けたビンテージ臭漂うジャケのような、ある種の魔術が込められたような作品です。いわゆる”プログレ”に属する音楽ではあるんだけど、そのプログレという言葉からイメージされるようなヲタっぽくて聴きづらいアルバムでは決してなくて、あくまでもオペスならではのプログレを、っつーか、”プログレ”というジャンルどうこう以前に”OPETH”という一つのジャンルを聴いてるんだと理解ッした方が早いです。細かく言えばOpethというよりはミカエルの”プログレヲタ”っぷりを一番に実感させる一枚。だって、”今のOpeth=ミカエル・オーカーフェルト”で間違いないわけだからね。プログレという音楽じゃくてオペスの音楽、オペスの音楽じゃなくてミカエルの音楽、みたいな。話はいたってシンプルなわけだ。正直ここまでくると”Opethらしさ”ってなんだろう?って気がするが、これもまた一つの”Opethらしさ”ってやつなんでしょう。
 しょせんは”似非70s”に聴こえるかもしれないが、しかし現代のバンドでそれを徹底してるのはオペスしかいないし、時代を超えてもなお目指し続けるその探究心には敬意ッを抱かざるをえない。タイトルの『遺産』が示すとおり、先人達が残した音の遺産を骨の髄までしゃぶり尽くしてますw・・・なるほど、これが今のOpethが導きだした”NEXT”への答えですか。
 当然のごとく、これまで培ってきた”メタル”を期待する人には退屈極まりないアルバムだと思うし、前作がダメだって人なら尚更に”睡眠助長アルバム”にしか使い道ねーんじゃないかと。さすがのオイラも一周目を聴き終えた後しばらく脱力した気分になった。つまり本作を聴くにあたって、如何に”受け身の対応者”になれるかがポイントかなぁと。少なくとも、どこか一曲を切り取って聴くようなアルバムじゃあないです。つか、これがダメに聴こえる人がいるってんなら、それは筋金入りのメタラーぐらいだろうw

 ・・・というわけで、本作はオペス=ミカエルが”本当にやりたい事をやっている”ような作品で、とりあえずプログレ好きは大歓喜なアルバムでしょう。正直、前作を超えてくれるならなんでもイイと思ってたから、実際に前作よりは長く聴けそうな予感がするので、今回はスルメになってくれる事に期待して暫くはヘビロテです。当然この路線は”あり”なんだが、節目となる10作目だからこそ挑めた作風であり、今後このプログレ路線一本で行くという事はなさそう。しかしこうなると次回作が一体どんな感じになるのか、全く想像できない・・・ところがまた面白い。

B
 
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