Artist Alcest
Alcest

Album 『Shelter』
Shelter

Tracklist
01. Wings
02. Opale
03. La Nuit Marche Avec Moi
04. Voix Sereines
05. L'Eveil Des Muses
06. Shelter
07. Away [feat. Neil Halstead]
08. Délivrance
09. Into The Waves

【元々ブラックメタルなんか興味なかったのさ、あの頃の僕はどうかしてたんだ】・・・そんなネージュのホンネが込められているような、先行シングルとなる”Opale”をこの世に解き放ち、自身が生み出したポストブラックなる一つのジャンルに終止符を打った、ポストブラ界のアイドルことネージュ率いるAlcestの約二年ぶり通算四作目となる『Shelter』がリリースされた。まず、この実にShoegazer然としたラブいジャケが暗示するとおり、あのANATHEMAとのツアーを経験し、あの名盤Weather Systemsが発する黄金色に光り輝く生命エネルギーをズキュゥゥゥン!!と浴びてしまったLove & Peaceなアートワークから全てを察する事ができるんだが、結論から言ってしまうと→ネージュ「俺はポストブラックをやめるぞジョジョー!」と高らかに宣言するような、いわゆるポストブラックと称されるジャンルの一時代を築き上げてきた自身の過去との決別を宣言するかのような、北国からの風をうけて新たに生まれ変わったアルセストが奏でる極上のサウンドスケープが、そよ風にのって優しく心の中に吹き込んでくるかのような一枚となっている。



【Post-Black is DEAD】
・・・まず、翼の生えた天使が舞い降りてくるかのような、まるで気分は「パトラッシュ、僕はもう疲れたよ...」な神々しいイントロの#1で幕を開け、その流れで始まる#2”Opale”が今作の『シェルター』を象徴していると言っても過言じゃあない。”オパール”という名の【幸運の石】が意味する→【人生の暗闇に希望をもたらすような明るさに満ちた石であり、憂鬱を払い、何事にも囚われない柔軟さや人に左右されない自分自身の核を作る】・・・そんなオパールに秘められたヒーリング効果をフルに発揮するかのような、これまでの少し内向的だったAlcestとは一線を画した、まるでSigur Rós直系の優雅なグロッケンシュピール(鉄琴)を用いたポストロッキンな音使いと、まるでANATHEMAヴィンセント&リー・ダグラス黄金コンビを想起させる、貴公子Neige【幸福】を呼び寄せる清らかな歌声とBillie Lindahlの天使のようなコーラスが織りなす黄金のハーモニーと共に、まるで生まれたての赤子のように純粋無垢なメロディとLove & Peaceな多幸感に満ち溢れた、眩いくらいの音の洪水にMy Heart is Happy!! しかし、なぜこの『シェルター』がここまでシガロリスペクトなのか?その答えは至って簡単だ→なんと今作のミキシング&プロデューサーには、数多くのシガロ作品を手がけてきた重鎮Birgir Jón Birgissonを迎え、そのシガロをはじめSólstafirKontinuumらのアイスランド勢の作品を世に送り出してきた、アイスランドが誇るSundlaugin Studioでレコーディングされた作品だからだ。更に、チェロやヴァイオリンなどのストリングス勢もヨンシーの親衛隊として知られるAmiinaの4人組を起用しており、様々な面においてシガロ界隈でお馴染みの人材で揃えてきている所に、もうワンランク上のおっさんを目指したいという、アルセすなわちネージュのクリエイティヴ!!な音楽に対する貪欲な姿勢と揺るぎない強い意志、そして今作に対する本気度を伺わせる。ちなみに、今作のマスタリングにはDIR EN GREYやくしまるえつこの新曲でも知られる、世界一の売れっ子エンジニアことテッド・ジェンセン擁する世界最高峰のマスタリングスタジオ、STERLING SOUNDJoe LaPortaが担当している。まさしく最強の布陣だ。

 地球のみんな!オラに力を分けてくれ!

【最後のノイズ・・・そんな、今作を象徴する”オパール”が解き放つ、まるで水晶球のように一点の曇りのない光がこの世界を明るく照らし出しながら、次の”La Nuit Marche Avec Moi”へと物語は続いていく。この曲では、ほのかに前作の匂いを感じさせるアンニュイでありながら優しく繊細なメロディをもって、極上のリヴァーヴを効かせた美しきドリーム・スケープを展開していく。そして、今作のハイライトであり、アルセストの過去と今を象徴かつ証明するかのような#4の”Voix sereine”は、まるで朝日が登り始める合図(イントロ)から、情緒感に溢れたネージュの歌声とヨンシー親衛隊による優美なストリングスや鉄琴、それらの繊細なタッチで丁寧に紡がれていくリリカルなメロディをもって、まるで「地球のみんな!オラに力を分けてくれ!」と言わんばかりの『愛』『勇気』『希望』が込められた活力みなぎる力強い音の生命エネルギーを蓄積させながら、まるで過去との別れを惜しむかのような、まるで『ジョジョ』のツェペリ一族が最期に「JOJOーーーおれの最後の波紋(ノイズ)だぜーーーうけとってくれーーッ」という魂の叫びが込められた『人間の魂』と、まるでX次元へようこそでネコ化したやくしまるえつこと同調するかのようなネージュの「ニャ~ニャ~ニャ~♪」というコーラスを交えながら、押し寄せる恍惚感とepicッ!!な胸の高鳴りと共に、中盤からクライマックスにかけてエモーショナルな感情を爆発させていく圧倒的なダイナミズムは、まさしくANATHEMAの名曲”Untouchable, Part 1”に直結するドラマティックでシネマティックなソウル・ソサエティを形成し、この世の【不幸】を洗い流し、そして全てを浄化していく...。この世界中から呼び込んだ生命エネルギーを一つにした元気玉こそ、ネージュが歩んできた音楽人生すなわち物語の一つの終着点であり、この北風と太陽のような『光』の塊こそネージュの黄金の精神』なんだと僕は悟った。

メディアブック

黄金期のジャンプ】・・・あらためて、この#4”Voix sereine”で披露している、初期のポストメタルミュージックへの回帰が込められた、これまで内側に溜め込んでいたヒキコモリエネルギーを、これみよがしに一気に外側に解放するかの如しノイジーなギターは、過去の自分を捨てて、『希望』に向かって未来へと一歩前へ踏み出すような、今にも溢れ出しそうなネージュの内向きではなく前向きな願いと想いが込められている。僕はこのノイズという名の幸福の渦に身を任せ、そのノイズの渦に贅沢に溺れる中で、Alcestとの出会いから今までの思い出が走馬灯のように頭を駆け巡り、そして気づくと僕は→「ありがとう」...それしか言う言葉が見つからない...と呟きながら、ただただ流れる涙を抑えることができなかった。それほどまでに、今までネージュが心の奥底に密かに封印しておいた『シェルター』という名の『ココロのトビラ』を開き、ネージュが求めていた輝かしき栄光の光を掴み取る瞬間・・・すなわちナポレオンの復活!を目の当たりにしているような感動すら憶えた。そして僕は、この”Voix sereine”が解き放つ恍惚感あふれるエモーションと「左手はそえるだけ...」みたいな桜木花道的なアートワークに、ジョジョ8部『ジョジョリオン』の最終話もしくはラストシーンを垣間見たような気がした。要するに、今作のテーマは→さしずめ黄金期のジャンプ』ミュージックといった所か。

【Shoegazerへの憧憬】・・・過去のAlcestに別れを告げ、リバーブの効いた冷たい北風が地肌を儚く刺激するドリーム・ハウスの中で、再びネージュとBillie Lindahlによる黄金のハーモニーを披露する#5”L'Eveil Des Muses”、まるで太陽のような輝きを放つイントロからアコースティックな音色を使ってハートフルなエネルギーを放出する表題曲の#6”Shelter”、そしてネージュのShoegazerに対する意識の高さ、すなわち『LOVE』を#7の”Away”で再確認する事となる。デフヘヴンの2nd『サンベイザー』にネージュを迎え入れたように、それこそネージュの『シェルター』を開く鍵すなわち黄金の回転エネルギーとして、マイブラと並んでShoegazerというジャンルの絶対的アイコンである伝説のシューゲイザー・バンド、Slowdiveニール・ハルステッドをリードボーカルとして迎え、ヨンシーの追っかけことAmiinaの優美なストリングスとアコースティックなフォーキーな音色を引き連れて、アイスランドの雄大な大地と情緒に溢れた自然豊かな『メランコリア』を描き出している。その、まるでネージュが「貴方が僕の『シェルター』の鍵です。私の心の扉を開くのはあな~た~♪」と言わんばかりのエモい流れから、本編ラストの約10分ある大作の”Délivrance”へと物語は進んでいく。終盤のハイライトを飾るこの曲は、まるで映画『メランコリア』の壮大かつ壮絶なラストシーンをリアルに体感しているかのような、それこそネージュという一人の人間の『真実の物語』を深裂に描き出すかのような名曲で、ネージュによる民謡風のコーラスや真綿のように繊細緻密なメロディをもってリリカルに展開しながら、特にクライマックスを飾る終盤での壮観なスケールを目の前にした僕は為す術がなく、燃えさかる灼熱の太陽に手をかざしながら、一刻一刻と迫りくる感動の渦にただただ身を委ねるしかなかった。まるで、この世に蠢く全てのカタストロフィを『無』にするかのような、それこそ『清らか』な遺体で構築された賛美歌を最期に、これにてネージュという名の聖人が後世に残した『人間賛歌』は堂々の完結を迎える。

【キーワードはJulianna Barwick】・・・主に#1,#2,#5,#8でコーラスを担当している、スウェーデン出身のインディ・フォーク系SSWPromise and the MonsterBillie Lindahlをリードボーカルとして迎えた、世界で3000枚限定のハードカバーブック盤に収録されているボートラの#9”Into The Waves”の破壊力ったらない。本編ではネージュと共に崇高なコーラス/ハーモニーを披露することで、今作をより映画のサントラ的なスケールを与え、その聖歌隊の如し神聖なるコーラスが一つのキモとなっている所からも、USのJulianna Barwickを想起させるヒーリング・ミュージック的な意識が強い作品と言える。なんつーか、インディ寄りとでも言うのかな。そんな彼女の歌声だが、このボートラではチャーチズローレンたそを少しウィスパーにした天使のような萌声を全面にフューチャーしており、それこそCD一枚に一曲という贅沢させちゃうのにも十分納得してしまうほどの良曲となっている。正直、このボートラを聴くか聴かないかによって、今作に対する評価が180度変わってしまうんじゃあないか?ってレベル。なんにしても、アルセストの新譜といいウォーペイントの新譜といい、それらを紐解く鍵となるのが、この『シェルター』と同じBirgir Jón Birgissonがエンジニアとして携わった、新作(2nd)を昨年リリースしたジュリアナ・バーウィックってのが俄然面白いね。いつぞやに彼女のデビュー作をレビューした記憶があるが、まさかそれがこの伏線()だったなんて・・・。

  シェルター
 
【ネージュの『ユメ』『夢』】・・・あらためて、今作の『シェルター』ではBlackgaze特有の無骨なブラストやノイジーなギター、そしてネージュの怒りが込められたスクリームやプログレスな展開力も影を潜め、ありのまま素直にShoegazerやってる。まるで一種の桃源郷、いや黄金にでも迷い込んだかのような幻夢的(二次元的)な世界観は皆無に近く、その薄霧がかった幻想的な森を抜けると『シェルター』という名の現実空間(三次元)への入り口が目の前に現れ、その扉を黄金の回転を使ってこじ開けると、そこには『ユメ』ではなく『夢』の世界が広がっていたんだ。それこそ、初期作品で空想という名の『ユメ』の中で『夢』を一貫して描き続け、子供の頃から憧れ続けていたネージュの『夢』が真の意味で現実となった瞬間なんだと。正直、この『シェルター』を解き放つことを使命に、ネージュはこの世に生を受けたんだと思う。しかも、かつて”オパール”【不幸の石】と呼ばれた時代もあったってんだから尚さら面白い。この言葉の意味が、ネージュの音楽人生の全てを象徴していると言っても過言じゃあない。これぞ『人間賛歌』だと。

【Pitch-Blackへの憧憬】・・・そんなネージュのアツい想いが込められた『シェルター』だが、彼らの最も身近なピッチミュージックといえば...そう、今やiPhoneの広告塔にまで成り上がった、いわゆるファッション・サブカル系男子のアイドルことDEAFHEAVENが存在する。昨年、そのD F H V Nサンベイザーが大手音楽メディアPitchforkに高く評価された結果→言わば後輩であるハズのデフヘヴン人気が、先輩のアルセスト人気を大きく上回るという逆転現象が起こった。少なくとも前作までは、根暗のニワカブラックメタラーを相手に阿漕な商売をしながら自身の立ち位置を確立してきたアルセストだが、このまさかの逆転現象に流石のネージュも「アカン」と感づいたらしく、今作ではD F H V Nに負けじと音響ライクな音作りやメロディの質、プロデューサーやゲスト陣から録音面まで全てがリア充仕様もといメジャー仕様に合わせてきてる。この変化をナニかに例えるなら→あの頃のヒキコモリ系男子がシュガーロス・ダイエットによって生まれ変わり、まるでアニヲタが脱ヲタに成功したような、まるで田舎から上京したての大学生のような、まるでキョロ充のような雰囲気すら漂っている。要するに→いくら来日公演ができるほどの人気があると言ったって、所詮はニッチな界隈でしか評価されない...そんなインディ界隈すなわちピッチメディアに対してサイレント・ジェラシーを感じていたネージュの”メタラーとしてのコンプレックス”が炸裂してしまった作品、そんな皮肉めいた受け取り方もできなくないわけだ。あらためて、”コンプレックス”というモノは人をクリエイティヴッ!!にする大きな源だと再認識した次第で。なお、ピッチのレビューではボロクソの模様。

【Post-Black is Not DEAD】・・・自分の中で、ずっとアルセストとデフヘヴンって”全くベクトルの違うポストブラック”という認識があったから、この両者の関係を考察しようなんて気持ちは微塵も湧かなかったけれど、昨年の『サンベイザー』と今作の『シェルター』を聴き比べてみたら、その愚かな考えを改めざるを得なくなった。デフへが二作目で、アルセストがその倍の四作目にしてようやくポストブラックというジャンルにおける最終目的地『メイド・イン・デフヘヴン』に到達し、お互いに引かれ合い、影響を受け与えながらも最後は互いに笑顔で歩み寄った、その良きライバルであると同時に良き理解者、もはや師弟や兄弟というような概念を超越した関係性こそ、まるでディオとジョジョのような黄金の関係性』と言えるのかもしれない。そうなんだ、『シェルター』の中で『サンベイザー』というサウンドスケープに包まれている瞬間だけが、ぼっちの僕がリア充気分になれる唯一の瞬間なんだ。僕は今、浜辺でいちゃつくリア充カップルのようにウキウキでラブラブなんだ...。というわけで、一時はポストブラックは終焉を迎えたように見えた・・・が、どうやら間違いだったようだ→俺たちポストブラックの戦いはこれからだッ!

遠回りこそ一番の近道

【遠回りこそ一番の近道】・・・正直、前作を聴いて”終わりの始まり”を感じたというか(だから年間BESTにも入れてない)、曲展開やメロディそのものが少しあざとく聴こえてしまい、その漠然としたポストブラックやめたい感・・・そんなネージュの心の揺らぎが顕著に表れてしまった前作は、初期の名作と比べるとどうしてもネタ切れ感が拭いきれなかった。しかし、そのメロディに込められた黄金の音エネルギーは着実に今作の楽曲に活かされていて、例えばOpethで言うところのWatershedを深く突き詰めた結果がHeritageである事と全く同じように、前作のLes voyages de l'âmeがあってこその『シェルター』だと僕は思う。だから、今作を聴いて「初めからShoegazerやっとけばよかったのに」というクソみたいなニワカ発言には一切興味なくて、それこそジョジョ7部のジャイロが放った名言のように、ネージュにとっても【遠回りこそ一番の近道】だったんだ。事実、前作と同じ意識のままだったら駄作しか生まれなかった、つまりオワコン化不可避だっただけに、そんな中で吹っ切れた、潔い行動を取ったアルセストを僕は素直に正しく評価したい。そして何よりもネージュの覚悟に敬意を表したい。

【引かれ合い】・・・このように、全ては”俺の界隈”の頂点に君臨するANATHEMA黄金の精神、すなわち俺の界隈の中心へと”引かれ合う”ように集まってくる。昨年のKATATONIAも、今年のAlcestも必然的に...いや、運命的にね。なんにせよ、後輩のD F H V Nの奇跡の再来日(伝説の名古屋公演)が再び決まったからには、このアルセストにも来日して頂かないとナニも始まらないしナニも面白くならない・・・と思った矢先に来日キター!
 
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