「ANATHEMAの新譜に伴うツアーに抜擢されたAlcestすごい」
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「そんなAlcestと対バンするVampilliaすごい」 
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「そんなVampilliaのライブを3回観る俺すごい」

・・・僕はそんな謎理論を展開しつつ、2014年に4月に開催された前回の来日ツアーから約二年ぶり通算三度目となる、フランスの貴公子ンネージュゥ率いるAlcestのジャパンツアーに行ってきた。基本的にAlcestの来日ツアーって、初来日となる2012年のツアーから謎の音楽集団Vampillia主催の「いいにおいのする」シリーズに招待される形で来日公演を行っていて、三度目となる今回のツアーもVampilliaの招待があって実現したツアーだ。

自分の中でのVampilliaって、それこそ新生アイドル研究会BiS戸川純とコラボした『the divine move』と実質1stフルアルバムの『my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness』というダブルアルバムを聴いて以降時間が止まってて、ここで僕と同じく「最近のポンピリャ~って何してんの?」と疑問に思ってる人の気持ちを代弁すると、最近のエビフリャ~といえば、派生バンドのVMOを立ち上げたり、二年前に縁があった戸川純と再び本格的なコラボアルバムをリリースしたり、そのコラボがてら漫画『ハンターハンター』の作者で知られる冨樫先生にイラストを描いてもらったりしてて、これには「もっと仕事選べよ富樫、つうか仕事しろ富樫、あっ、仕事してんのか富樫」ってツッコんだ憶えがある。

そんなポンピリャ~の本日の予定は、本来なら意識高い系フェスでお馴染みの『After Hours'17』に誘われて出演する予定だった(きっと、きっとそうに違いない)、そう、きっと誘われている「ハズ」だったその豪華イベントを蹴ってまで、このンアルセストゥを名古屋に連れてきてくれたエビフリャ~には改めて感謝の言葉を贈りたい。

7時に開演すると、まずベースのミッチーがステージに出てきて「漫談でも始めんのか?」って思いきや、「いつもセトリが変わらないヴァンピリアだけど、今日は新しいアルバムに収録される新曲二曲を初披露するよ」とのミッチーによる前説があり、そして竜巻太郎氏と吉田達也氏のツインドラムを携えたエビフリャ~の面々が登場。一発目はお馴染みの曲で、モンゴロイドの咆哮や男の娘の喘ぎ声、ヴァイオリンのお姉さんやピアノの先生、いつものギターとベース、真部(行方不明)そしてツインドラムを駆使した、いわゆる「静と動」のコントラストと緩急を効かせた超絶怒涛のサウンドスケープを展開する。やはり、この日本でンアルセストゥ-スタイルに唯一対抗できるバンドはエビフリャ~しかいないと再確認させられた。

僕自身、ポンピリャ~のライブを観るのは前回のンアルセストゥ来日ツアーの時以来、今回で三度目となる。とは言え、今日のポンピリャ~は全部で6曲か7曲披露したセトリの中で、僕が認識できた曲は一曲目と名曲"endless summer"くらいで、だから僕にとっては知らない曲=新曲みたいなもんで、だからどれが前説でミッチーが言ってた新曲なのか分からなかった。けど、2曲目はモンゴロイドがデフヘヴンっぽくて激しかったし、3曲目はマスロックなアプローチあったりして、とにかく本日披露した全曲良かったから新譜はかなり期待できると思う(適当)。あと、ここまで近い距離でポンピリャ~のライブを観たのは初めてだったから、ヴァイオリン弾きのお姉さんの美しみに惚れたし、いつヴァイオリンの弓がモンゴの頭に突き刺さるかヒヤヒヤしたというか、よくあんな狭い空間でお互いに接触せず激しいパフォーマンスできるな、って妙に感心してしまった。正直、今日のポンピリャ~は過去に観た二度のライブを余裕で超えるくらいのベストライブだった。

「ンアルセストゥマジビッグ・イン・ジャパン」

お次はお目当てのンアルセストゥの出番だ。このンアルセストゥもヴァンピリアと同じでライブを観るのは三度目だ。この日は日曜日で、いくら名古屋と言ったってンアルセストゥの出番が始まる前にはスタッフから後ろが詰まってるから前に詰めてください的なアナウンスがあったくらい、フロアはほぼ満員御礼で、俄然「ンアルセストゥマジビッグ・イン・ジャパン」ってなった。

8時半に開演。カーテンが開くと地べたに座ってるネージュの後ろ姿が完全に女形にした見えなかったのと、立ち上がって正面を向いたネージュが手にしているのは、他ならぬ白のフェンダー・ジャズマスターのシングル・コイルだ。そして、新作『Kodama』のエンディングを飾る”Onyx”をライブのオープニングとして幕を開ける。

『会場の僕ら』
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そのオープニングに次いで始まったのが、他ならぬ『Kodama』を象徴する表題曲の”Kodama”だ。なんかもう、白いジャズマス抱えて2:54ばりのガリガリしたダーティなリフを弾き倒すネージュが完全に90年代のオルタナ系のギタリストにしか見えなかったのと、というかもう完全に「オルタナティブ・ロックバンドとしてのAlcest」のソレだった。Winterhalterによる力強いリズムを刻むドラミングをフィーチャーしながらダイナミックに展開しながら、宮﨑駿の最高傑作である『もののけ姫』ばりの崇高な世界観を描き出し、それはやがてシシ神となってステージ上に舞い降り、ほぼ満員の会場にいる僕たちは森の妖精「コダマ」となって「わーい!シシ神様だー!」と狂喜乱舞する。もう完全に俺ら『もののけ姫』に出てくるコダマだったわ。

『Kodama』は、これまでの作品とは違ったアプローチで挑まれた作品で、その中でも特にドラマーのWinterhalterはロック然としたグルーヴ感やポストパンクばりに跳躍感溢れるリズムを刻んでいて、そんな彼の活躍が顕著に現れた2曲目に披露された”Je Suis D'ailleurs”をライブで聴いたら、俄然そのドラムビートとグルーヴ感を体全体で感じることができたし、改めて『Kodama』の中に込められたAlcestの生々しいオーガニックな部分がより立体的に具現化して見えた。

その新譜からの流れで、2ndアルバムの”Écailles de lune - Part 2”へと違和感なく繋いでみせる。やはり、『Kodama』に最も近いイメージを持つ2ndアルバム『Écailles de lune』との相性はグンバツだ。次に3rdアルバムから”Autre Temps”でシンプルかつキャッチーに盛り上げる。

そして再び「オルタナティブ・ロックバンドとしてのAlcest」を垣間見せる、新譜から”Oiseaux de Proie”とライブのハイライトを飾る”Eclosion”を立て続けに披露。こう新譜からネージュのスクリーム連発されると本当にAlcestが帰ってきたんだって感慨深くなる。その後は、再び2ndアルバムから”Là où naissent les couleurs nouvelles”、そして前回のライブから恒例となった4thアルバム『シェルター』から”Délivrance”で一人ずつ退場していく謎の感動を呼ぶ演出を最後に、トータル約70分におよぶライブは幕を閉じた。で、アンコール待ちの時にようやくネージュが出てきたかと思ったら手首の空時計を指差して「ジカンマジヤバイ」みたいなアピールしだして、結局ハコの時間の都合でアンコールは演らずに皆んなで記念撮影して終わった。これは毎回思うんだけど、Alcestのアンコールやりそうやらない雰囲気ほんと苦手。

Alcestの凄いところって、新譜の『Kodama』で往年のンアルセストゥ-スタイルに回帰しているように見えて、実はこれまでにない全く新しいアプローチから曲作りしてる所で、このライブでは往年のンアルセストゥと全く新しいシン・ンアルセストゥが共存する姿を、それこそ『もののけ姫』のテーマのように、人と人が、人と動物が、そして人と自然が共存する、人類が目指すべき社会を訴えかけるようだった。そういった意味でも、過去二回のライブとは間違いなく一線をがしたライブだったと言える。

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