Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

レビュー (D)

Darkest Hour 『Godless Prophets & The Migrant Flora』

Artist Darkest Hour
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Album 『Godless Prophets & The Migrant Flora』
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Tracklist

01. Knife in the Safe Room
02. This Is the Truth
03. Timeless Numbers
04. None of This Is the Truth
05. The Flesh & the Flowers of Death
06. Those Who Survived
07. Another Headless Ruler of the Used
08. Widowed
09. Enter Oblivion
10. The Last of the Monuments
11. In the Name of Us All
12. Beneath It Sleeps

hjっh

現代メタル界を代表する「秋葉系男子」と言えば、今をトキめくDEAFHEAVENのギタリストことケリー・マッコイだが、その「秋葉系男子」の先駆者的な存在である「元祖秋葉系キモロンゲメガネ」ことジョン・ヘンリー率いる、1995年に結成されたワシントンDC出身のDarkest Hourは、初期の頃こそデスラッシュ系のバンドとして活動するが、2005年作の4thアルバム『Undoing Ruin』と2007年作の5thアルバム『Deliver Us』では、「秋葉系DT男子」だけにdtことDark Tranquillityなど北欧メロデスからの影響を色濃く受けた、いわゆる「メロディック系メタルコア」の金字塔となる作品を立て続けにドロップし、As I Lay DyingKillswitch Engageと並んで00年代のメタルコア繁忙期を支えたバンドとしてその地位を確立する。しかし、2013年にアズアイのボーカリストことランベシスが元嫁に対する殺人教唆罪で逮捕されて以降、メタルコアというジャンルはメタル界の黒歴史として闇へと葬り去られ、その煽りを受けたメタルコアバンドたちは露頭に迷うこととなる。メタルコア全盛を支えたこのDHも例外ではなく、代表作となる4thと5th以降はアルバムを出す毎に、ジョンのトレードマークだったメガネやキモロンゲやオタファッションをやめて徐々に「脱オタ」していく。それに伴って、バンドの音も脱メタルコアを図るようにして徐々に垢抜けていき、そして2014年にSumerian Recordsから発表されたバンド名を冠した表題作のDarkest Hourでは、「ポスト・メタルコア」として10年代のメタルシーンにムーブメントを起こした「Djent」とかいう、それこそPeripheryを代表とするスメリアン仕様のエモくてモダンな流行りのスタイルへと様変わりしてみせ、つまり「メタルコアバンドとしてのプライド」を捨てて、逆に開き直って「流行り」に媚を売ることで、一時期の迷走期間から「脱童」することに成功する。

アルバムを出す毎に変化していく彼らの多彩な音楽性、その幅広さに習って、ここ最近は1作ごとに違うレーベルから作品を発表してきた彼らが、約三年ぶり通算9作目となるアルバムをリリースするにあたって選んだレーベルこそ、アンダーグラウンド界の名門レーベルで知られるSouthern Lordだった。そのSouthern Lordといえば、レーベル創設者であるグレッグ・アンダーソン率いるSunn O)))をはじめ、最近では新世代スラッシュのPower Tripが在籍している事でも有名だが、それというのも、実はPower TripのフロントマンRiley Galeの歌い方を初めて耳にした時に真っ先に思い出したのが、他ならぬDarkest Hourのキモロンゲで、まさかこのタイミング、こんな形で両者が繋がるなんて思いもよらなかった。

その作風も、約17年前のデビュー当時に立ち返ったようなハードコア路線へと回帰するかの如く、エモいクリーンボイス中心だった前作に対して今作は極悪なスクリーム中心、かつ北欧メロデス特有の叙情的なフレーズも皆無に近く、あくまでもオーガニックなアメリカン・ハードコアを最後まで貫き通している。それは幕開けを飾る一曲目の”Knife in the Safe Room”から顕著で、キモロンゲによるブラッケンド・ハードコア直系の極悪ボイスを筆頭に、同じくSouthern Lord所属のBlack BreathTrap Themを連想させるクラスト/ハードコア・パンク直系のカオティックなサウンドを展開し、挨拶がてら咆哮高らかにサザンロード入りを宣言する。そして、後半のハイライトを飾る9曲目の”Enter Oblivion”では、それこそサザンロードの専売特許であるドローンドゥーム然としたダーティかつヘヴィな、実にアンダーグラウンドな本格サウンドを繰り広げる。

流行りのオーバーグラウンドな作風から一転して、今作では流行りとは程遠いアンダーグラウンドな作風に様変わりする、こんな落差あり過ぎな事やっちゃう、やっても許されるのはDHの特権だし、そのあらゆる音楽ジャンルに精通し適合(適応)する柔軟性こそDHの真骨頂だし面白さでもあり、とにかく今作でも毎作違った目線(アプローチ)から曲作りする「オタク」ならではの繊細さと器用さを垣間見せている。メタルコアブームが去って、メタルコアという過去のジャンルに囚われることなく、自らの音と真意に向き合い、プライドを捨ててバンドの可能性と未来を探求し続け、数々の修羅場をくぐってきたベテランとしての貫禄を帯びた今のDHの格好良さったらない。今の彼らには、童貞だった「秋葉系男子」の面影はない。
 
GODLESS PROPHETS & THE MIGRANT FLORA (ゴッドレス・プロフェッツ & ザ・マイグラント・フローラ: +2 bonus tracks)
DARKEST HOUR (ダーケスト・アワー)
Daymare Recordings (2017-03-22)
売り上げランキング: 94,562

Dark Tranquillity 『Atoma』

Artist Dark Tranquillity
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Album 『Atoma』
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Tracklist

01. Encircled
02. Atoma
04. Neutrality
05. Force Of Hand
06. Faithless By Default
08. Our Proof Of Life
09. Clearing Skies
10. When The World Screams
11. Merciless Fate
12. Caves And Embers

かのイェンス・ボグレンを実質プロデューサーとして迎えた前作のConstructは、イェンスが得意とするタイトなヘヴィネスとエピカルでプログレスな展開力、そして鍵盤奏者のMartin BrändströmによるATMSフィールド的な空間表現が絶妙な塩梅で共鳴した、それこそイエモンの吉井和哉が北欧メロデスやってみたような傑作だった。そんな、イェンスとの邂逅を終えたDark Tranquillityが次なる邂逅として指名した人物こそ、イェンス・ボグレンの右腕として知られるデイヴィッド・カスティロで、イェンスを手玉に取ったDTは遂に【イェンス・ボグレン×デイヴィッド・カスティロ=勝利の方程式】に手をかけたのだった。

幕開けを飾る#1”Encircled”から、ブラック・メタル指数の高いトレモロ・リフを擁した北欧イエテボリ・スタイルへの回帰を宣言する。そして表題曲の”Atoma”では、イントロから今作のプロデューサーであるMartin Brändströmのパフパフふわふわしたキーボードの反復運動を全面に押し出しつつ、「北欧の吉井和哉」ことミカエル・スタンネによるダーティなクリーンボイスと「世界一美しいデスボイス」と称されるグロウルとのコントラストを効かせた、もはや「踊れるメロデス」の正統進化系で、この手のタイプに陥りがちなメタルコア化とは違って、しっかりとメロデスとして聴かせる所が彼らを信頼できる何よりの証拠だ。ミカエルが「北欧の吉井和哉」と呼ばれるキッカケとなった前作のUniformityを彷彿とさせるダンディなクリーンボイス、そして北欧からの極寒の風を運んでくるかのようなATMSフィールドと泣きのGソロが哀愁ダダ漏れ警報を発令する#3Forward Momentumでは、もうなんか「え、僕たちもうクリーンボイス歴20年ですよ?」くらいの貫禄とバンドの成熟を感じさせる。



一転してスラッシーな殺傷力の高さを垣間見せる#4”Neutrality”、盟友IN FLAMESのビョーンがゲスト参加した#5”Force Of Hand”、一転して哀愁を帯びたキーボードのメロディを主役にミドルテンポでジックリと盛り上げていく#6”Faithless By Default”、再びフロントマン吉井和哉のクリーンとグロウルのコントラストを効かせた曲で後半に一瞬カッコイイギターが入る#8”Our Proof Of Life”、超絶epicッ!!な#9”Clearing Skies”とアンジェラ時代のアチエネをフラッシュバックさせる北欧メロデス然とした#10”When The World Screams”、そしてWe Are The Voidを彷彿とさせる慟哭不可避なキーボードと終盤の吉井和哉の歌で徹底的に泣かせにくる#11”Merciless Fate”までの流れは今作のハイライトで、今作ではキーボードの哀愁を帯びたミニマルなメロディ重視のミドルテンポで聴かせる曲とメロデス然とした殺傷力の高いリフでファストに聴かせる曲、その美意識的な部分と暴虐的な部分のコントラストをより鮮明に、前作のように曲単位で「静と動」のメリハリを付けるのではなく、一枚のアルバムの中で音の強弱と緩急を織り交ぜていく作風となっていて、それにより俄然音のスケール感が増して聴こえる。

基本的なスタンスは、We Are The Void以降のモダンでタイトなエクストリーム・ミュージックに変わりないが、前作のConstructを素直に発展させ更に深化させた形で、前作からソングライティングの部分でも鍵盤奏者のマーティンがバンドの主導権を握っていたが、前作はあくまでも「実質イェンスプロデュース」みたいなノリがあったのも確かで、今作では自身でプロデューサーを兼任しているだけあって、マーティンが作曲した5曲(#1,#6,#9~#11)を筆頭に、全編に渡って魅惑のキーボードがミニマルに響き渡っている。面白いのは、彼が作曲した5曲のうち3曲がアルバム後半のハイライトを飾っている所だ。今作のキーボードの役割としては『Fiction』みたいにサビで鳴るようなメロディではなく、あくまでもミニマルな反復運動を意識したメロディで、イメージ的には中期の『Character』『Damage Done』に近く、音の質感は『We Are The Void』に近いです。

今作における、それらをひっくるめた「マーティン推し」は国内盤に収録されたボートラの曲調にも顕著に現れていて、フロントマンの吉井和哉もといミカエル・スタンネは全編クリーンボイスで展開、しかし注目すべきはバックトラックのアレンジで、例えるならNine Inch Nailsばりのインダストリアルやミニマル・アンビエントみたいなアレンジを全面に押し出した、それこそDTの裏の顔=「シン・DT」の姿をお披露目している。正直、これ本編よりボートラのが完成度高いんじゃないかってくらい、マーティンの本気と書いてマジな顔を垣間見せている。となると、次作ではこの路線の本格化を期待しちゃうのが俺たちDTの定めなのかもしれない。つうか、もうマーティンはソロ・アルバムでも作っちゃえよw

前々作の『We Are The Void』がナゼあっこまで微妙な評価がなされたのかって、それは「スウェーデン人」であるはずのDT「フィンランド人」のフリをして「当て振りメロデス」やっちゃったことで、しかしこの『Atoma』では、前作で「スウェーデン人」とは何たるかをよく知る「スウェーデン人」イェンス・ボグレンとの邂逅を経験し、再び「スウェーデン人」としての自覚と自信を取り戻したことで、「スウェーデン人」による「スウェーデン人」のための「スウェーデン人の音楽」へと回帰することに成功し、つまり『We Are The Void』とかいう『失敗』を真っ向から『肯定』した結果がこの『Atoma』なんだ。そう、これはもう一種の『君の名は。』系メロデスだなんだって。
 
アトマ
アトマ
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(株)トゥルーパー・エンタテインメント (2016-11-09)
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DECAYS 『Baby who wanders』

Artist DECAYS
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Album 『Baby who wanders』
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Tracklist

01. Aesthetics of the transgression
02. Zero Paradise
03. 愛と哀を遺さず... <Baby who wanders Ver.>
04. Drifting litter
05. Where are you going?
06. Vagabond
07. Imprisonment Leaving
08. シークレットモード
09. HELLO!NEW I
10. Eve
11. Rana
12. D/D
13. 綺麗な指

今どきロックバンドのフロントマンがソロプロジェクトを始めるなんて事は珍しくもないし、むしろソロ活動しない方がおかしいレベルで、同じようにフロントマン以外のバンドメンバーもソロプロジェクトなるものを始めるのも何も珍しいことではないし、むしろフロントマンのソロ活動以上に活き活きとしてるのが多いくらいだ。それは、僕がティーンエイジャーの頃に夢中だったJanne Da Arcも決して例外ではなかった。ジャンヌダルクは今から約10年前に活動休止状態に入ると同時に、メンバーはそれぞれソロ活動を開始し、ご存じフロントマンのyasuAcid Black Cherryとかいうソロプロジェクトを継続して早くも十周年を迎える。その後、ベーシストのka-yuDAMIJAWとかいう自身のバンドを立ち上げ、ドラムのshujiおじさんもサポメンみたいな形でバンドに参加していた。でもちょっと待ってほしい、この話のポイントはバンドのソロ活動に対する賛否の話ではなくて、例えばロックバンドのフロントマンが自身でボーカルを務めるソロバンドを組むのは誰も疑問に思わないが(例ABC)、ではフロントマン以外の、例えばベーシストやギタリストがソロプロジェクトでバンドを組んだ場合(例DAMIJAW)、肝心のボーカルは一体誰がやるんだ・・・?という単純な疑問が生まれる。僕は、そんなシンプルな疑問を抱えながら、いざダミジョウ初音源のサンプルを試聴した時→え、これ歌ってるの粥やん。いやいやいや、粥めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、なに歌ってんねん粥ってなったし、その時の驚きというか不思議な感覚は、今でも昨日のことのように思い出せる。
 
その例え話と全く同じ話がこのDECAYSだ。DIR EN GREYのフロントマンであるは、sukekiyoとかいうソロプロジェクトを始めて久しいが、このDECAYSはギタリストのDieMOON CHILD樫山氏を中心としたユニットで、現メンバーにはシンガーソングライターの中村中と「美人過ぎるバイオリニスト」のAyasaを迎えた6人編成となっている。しかし、およそ10年前に「粥のトラウマ」を経験している僕は、一抹の不安を抱えながら、2016年に発表された彼らのメジャー1stアルバム『Baby who wanders』を聴いてみた。

    Die
DIEナントカカントカトランスミッション! 

 ぼく下僕
new_136947878325513121615_jojorion20_2「ナントカカントカトランスミッション?!」 

    Die
DIEナントカカントカトランスミッション!」 

 ぼく下僕
new_18「粥ダミジョウ...寄与ツイッタ芸人...湯ギター侍...修二オッサン...うっ、頭が」 

僕は耳を疑った。「いやいやいや、ダイ君めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、ダイ君めっちゃナントカカントカトランスミッションしてるやん」と。 それこそ、「粥のトラウマ」が10年の時を経て現代にトランスミッションしたかと思った。まぁ、厳密にはAesthetics of the transgressionなんだけど、アルバムの幕開けを飾るこの曲は、近未来溢れるモダンな電子音とベースがウネウネと鳴り響く妖しげなイントロから始まり、「90年代」という今よりはまだ日本がイケイケだった頃の音楽シーンを賑わせたTKこと小室哲哉TM NETWORKリバイバルみたいなDie君によるナントカカントカトランスミッション!X JAPAN”WEEK END”を彷彿とさせるサビメロ、要所でAyasaの妖艶に演出するヴァイオリンをフューチャーしつつ、Die君のパリピボイスと中さんによるツインボーカルならではの掛け合いを披露し、つまり90年代のパリピ音楽を作り上げたTKとV系とかいうジャンルをメインストリームにブチ上げたX JAPAN(YOSHIKI)とかいう日本の音楽界にムーブメントを起こした二大アーティストが、約20年の時を経て『音楽』という名の『五次元空間(ワームホール)』の中で邂逅した・・・って、それどこのV2だよ。



その幕開けから、それこそMOON CHILDとかいう90年代を代表する”ESCAPE”だけの「一発屋」をはじめ、バブル崩壊後とは言えまだ日本がイケイケだった頃の謎のパリピ感というか無駄に自己評価の高いキモナルシスティックな社会的ムード、その良くも悪くもノスタルジックな世界観および音像をこの21世紀に蘇らせるのが、このDECAYSというバンドだ。と思えば、2曲目の”Zero Paradise”では一転してメロコア然とした疾走感溢れるサウンドに爽やかなDieのボーカル・メロディを乗せたシンプルでキャッチーなギターロックが聞こえてきて、それこそティーンエージャー向けのポップな青春エモパンクみたいな曲で、僕は「ダイ君これダミジョウよりわかんねぇな...」とか思いつつも、とにかくその感情表現豊かなクサい歌詞を筆頭に、全ての面においてDie君がDIR EN GREYでやってる事と180度違う、もはや可愛いメイドさん達が「北斗の拳イチゴ味」みたいなノリで鬼ごっついメタルやること以上の「ギャップ萌え」は面白いっちゃ面白いかもしれないが、その「面白さ」より勝るのが「戸惑い」であることは、このアルバムを再生すれば2秒で分かることだ。

Dieがメインボーカルを務めた”Zero Paradise”と対になる曲で、今度は中さんがメインボーカルとなる3曲目の”愛と哀を遺さず...”、このDie中さんがそれぞれメインを飾る、言うなればダブル・リードソングでアルバムのツカミを強烈に演出する。また一転して、まるで魔界に迷い込んだような重苦しい世界観が繰り広げられる#4”Drifting litter”は、それこそ魔界で開催される晩餐会の大トリを務める『闇の宝塚』歌劇団、その男役トップに君臨する中さんと女役トップのDie君が織りなす凄艶じみた舞踏会である。これ初め聴いた時は、男のゲストボーカルかな?と思ったら普通に中さんでビビったというか、中村中さんって時々男性ボーカルに聴こえるくらい中性的というか独特の歌声の持ち主で、だから偶に中さんの声とDieの声が男女逆転して性別不能になるというか、それこそジェンダーの壁を超えたツインボーカルは、このDECAYSを語る上で欠かせないとても大きな魅力の一つと言える。

このDECAYSの妖艶な世界観を作り上げるのに最も効果的な存在としてあるのが、他ならぬ「美人すぎるヴァイオリニスト」こと岡部磨知もといAyasaだ。つうか、「美人すぎるヴァイオリニスト」って何人おんねん!とツッコミたくなる気持ちを抑えながらも、Ayasaの他を顧みず自由気ままに弾き倒すヴァイオリンの存在は、DECAYSの耽美的かつ官能的な異世界設定の根幹を司る重要な演者であることは確かだ。そのAyasaSubRosaばりに妖しく響き渡るヴァイオリンを大々的にフューチャーした#5”Where are you going?”中さんメインの曲でちょっとだけDirっぽいネットリ感のある#6”Vagabond”、今度はジェンダーの垣根を超えた二人のツインボーカルが冴え渡る曲で、モダンなV系っぽい雰囲気を纏った#7”Imprisonment Leaving”、再び90年代風のナルシスティックさとディスコ感溢れるビートを「鼓動」のようにズンチャズンチャと刻みながら高速道路を駆け抜ける#8”シークレットモード”Boom Boom Satellitesリスペクトなデジロックの#9”HELLO!NEW I”、Dirにも通じるDie君らしい神秘的かつメロディアスなギターから壮大に展開していく#10”Eve”は今作のハイライトで、キーボードのポップなメロディを乗せたアップテンポで疾走感溢れる#11”Rana”AyasaのヴァイオリンとDie君らしいギターとエロい歌声が織りなす#13”綺麗な指”を最後に、この悪魔城の奇妙な晩餐会は盛大のうちに幕を閉じる。これはアニメ『悪魔城ドラキュラ』の主題歌あるんじゃねー的な。

正直、Die君がナントカカントカトランスミッション!とか言い始めた時点で、10年前の「粥のトラウマ」が蘇って聴くのやめようかと思ったけど、次々に曲を聴いていくうちにその「戸惑い」は晴れ、 「これ普通にダサカッコイイじゃん」ってなります。確かに、DIR EN GREYというバンドからイメージされる音楽からは程遠い、【TKパリピサウンド×90年代V系】からBIGMAMAを彷彿とさせる歌モノ系のメロコア曲まで、それこそ中心でやってるsukekiyoよりもDie君以外のメンバーの存在感が強すぎるお陰で、音楽的な方向性がどうこうよりも割りと好きなことを好き勝手にやってる印象。TK的な音楽という意味でも、このDECAYSって冷静に見ると相当エイベックスの息がかかったメンツが揃ってるんだけど、でもこれだけ濃ゆいメンツを集めて、そのそれぞれに尖った個性をよくここまで一つにまとめたな感は、このアルバムで最も感心させる所だ。

失礼ながら、自分の中で中村中のイメージって随分前にMステ出てたくらいの印象しかなくて、それこそロックを歌うイメージなんてなかった。でも今回のアルバムを聞いたら、中さんとロックって思いの外ハマってるというか、もの凄い適当なことを言うと中さんて凄い「パンクだな」と感じる所があって面白かったし、シンガーソングライターの彼女にとってもバンドのグループの一員として歌うのは全くの「新境地」だと思う。そのメンバーそれぞれの「新境地」という科学的要素の集合体が化学反応を起こし、DECAYSとして産声を上げ、そして『Baby who wanders』の中で花開いている。
 
Baby who wanders(通常盤)
Baby who wanders(通常盤)
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DECAYS
ドリーミュージック (2016-12-07)
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DIR EN GREYの新曲『詩踏み』を聴いた

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はじめに、急な思いつきによる「レビューは売れるのか?」という実験がてら、noteに書き記したアルバムそんなわけARCHEのワンコイン二万文字レビューをお買い上げ頂いた10名様に感謝の言葉を申し上げます。

そんなそんなわけ『アルケー』から約1年7ヶ月ぶりとなる新曲『詩踏み』は、DIR EN GREYの存在をと無の境地へと導いた8thアルバム『DUM SPIRO SPERO』とかいう魑魅魍魎奇々怪々な作風から一転して、いわゆる「中期Dir en greyへの回帰」を予感させるシンプルな作風となったそんなわけ『アルケー』の路線や音像を素直に踏襲した楽曲で、それは俄然中期のDir en greyを彷彿とさせるフロントマン京によるナントカボイスやナントカボイスを駆使したボイス・パフォーマンスを筆頭に、”咀嚼”系のまとわり付くようなギターのグルーヴ&ヘヴィネスを乗せて疾走する、約3分間でできるカップラーメンのようにシンプルでアグレッシヴな曲だ。

そもそも、DIR EN GREYがシン・アルバムを出した後の新曲って、例えば『UROBOROS』だと”激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇”、その”ハゲ闇”が収録された次作の『DUM SPIRO SPERO』だと”輪郭”がそれに当たる曲で、これを見ると新譜の直後の新曲って直前に出たアルバムの影響が依然色濃く出ていることに気づく。この”詩踏み”も例外はなく、直前のアルバムとなるそんなわけ『アルケー』の音像や楽曲のシンプルさを押し出した曲となっている。つまり、”ハゲ闇””輪郭”なら前者に近いイメージだ。しかし、この話が面白いのはここからで、そのいわゆる「新譜直後のシングル」「次のアルバム」を司る一つの指標とは全くならないのがDIR EN GREYとかいうバンドの面白さでもあって、なぜなら”ハゲ闇””輪郭”も実際にパッケージされた新アルバムの世界観とは真逆、とまでは言わないが、少なくとも「新譜直後のシングル」はそれ以降のシングルとでは「次のアルバム」との「距離感」がまるで違う。更に面白いのは、その距離感が一番遠いシングルが「次のアルバム」の曲として何食わぬ顔で違和感なく馴染んでいるところ。これぞDIR EN GREYマジックとでも言うのか、とにかく今この”詩踏み”でしか味わえない「新譜直後のシングル」の味を噛みしめれば噛みしめるほど、恐らくそう遠くない未来にドロップされるであろう「次のアルバム」に対して特別な想いを寄せる事ができるんじゃあないだろうか。

結論として、この”詩踏み”を聴く限りでは、DIR EN GREYの「次のアルバム」が一体どるなるかなんて想像すらつかない。一つだけ言えることは、「次のアルバム」はこの”詩踏み”からは到底イメージする事のできない、いつも通りのDIR EN GREYらしい『想定外』のアルバムとなるに違いない、ということ。

Deftones 『Gore』

Artist Deftones
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Album 『Gore』
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Tracklist
01. Prayers/Triangles
02. Acid Hologram
03. Doomed User
04. Geometric Headdress
05. Hearts and Wires
06. Pittura Infamante
07. Xenon
08. (L)MIRL
09. Gore
10. Phantom Bride
11. Rubicon

欧州最大の怪獣であり、現在エクストリーム・ミュージック界の頂点に君臨するGojira『MAGMA』は、Lamb of GodMastodonをはじめとした、いわゆる「アメリカのメタル」を喰らい尽くした末、遂に『シン・ゴジラ』へと突然変異を遂げた。そのゴジラが喰らった「アメリカのメタル」の中には、90年代から現代アメリカのモダン・ヘヴィネス界隈の繁栄に大きく貢献してきた「デブ豚」ことDeftonesの姿があった事を、あの日の僕達はまだ知らない。

デブ豚がアメリカの現代ヘヴィネスを更新し続ける一方で、遠い北欧スウェーデンの魔神Meshuggahが独自の解釈で新時代のモダン・ヘヴィネスを創り上げ、そして遂にDjentとかいうメタルの新しいサブジャンルが確立、辺境界隈の中で小規模ながらも爆発的なムーブメントを起こしていた。そのシーンの変化に危機感を覚えたデブ豚は、「アメリカのメタル」を代表してメシュガーへの回答として、ベーシストチ・チェンの悲劇を乗り越えた末に誕生した6thアルバムのDiamond Eyesをドロップした。その二年後、デブ豚は7thアルバムの『恋の予感』とかいう謎アルバムをリリースする。今作の『Gore』は、その前作から約4年ぶりとなるフルアルバムだ。



幕開けを飾る#1”Prayers / Triangles”からして、前作の恋の予感を踏襲した「男のフェミニズム」全開の色気ムンムンなシンプルなロックナンバーで、しかしかき鳴らし系のギターや全体的な音使いは、ダイヤモンドのように硬いガッチガチなヘヴィネスを鳴らした過去二作と比べると軽めだ。 一転して『Diamond Eyes』を彷彿とさせるスラッジーな轟音ヘヴィネスやGojira顔負けのクジラのように「キュルルゥゥ!!」と鳴くギターをフューチャーした#2”Acid Hologram”、今度はMastodon顔負けの動きがアクティブなリフ回しを披露したかと思えば、転調してプログレッシブなアプローチを垣間見せる#3”Doomed User”、Post-Djentなリズムで攻める#4”Geometric Headdress”、正直ここまでは現代ヘヴィネス勢の影響を感じさせる曲が続く印象で、過去二作と比べても存外アッサリした感じ。 某”U, U, D, D, L, R, L, R, A, B, Select, Start”のポストロック系譜にある、ここにきてようやくデブ豚らしいセンセーショナルなメロディセンスを発揮する#5”Hearts / Wires”だが、しかし如何せんイントロがクライマックス感は否めない。

中盤もパッとしない、そんな中で今作が如何にイマドキのモダン・ヘヴィネスから影響を受けているのかを証明するのが、他ならぬ表題曲の#9”Gore”で、この曲ではDjent然とした軽快なグルーヴを存分に取り入れている。シューゲイザーかじってた5thアルバム『Saturday Night Wrist』の頃を彷彿とさせる曲構成と、これまでセンセーショナルな感情を押し殺していたチノがここにきてようやく本気を出し始める#10”Phantom Bride”、そしてDIR EN GREYが大喜びしそうな音響アレンジが際立ったラストの#11”Rubicon”まで、中盤までの曲と違って終盤の三曲は明らかに本気度というか、気の入りようが違う。つうか、本気出すのおせぇ・・・。

基本的なバンドの音使い自体は近年のデブ豚を踏襲つつも、曲の雰囲気的には5thアルバム『Saturday Night Wrist』への回帰を予感させる、つまり脱力感のある”Alternative”なロックへの回帰を予感させるノリというか、過去二作にあった張り詰めたような独特の緊張感みたいなのは薄くなって、良くも悪くも聴きやすくはなった。これは別に過去二作と比べて地味だとか、手抜きだとか決してそういうわけじゃあないが、しかしどこか徹底したナニかに欠けて聴こえてしまうのも事実。例えば『Diamond Eyes』のように 徹底してゴリゴリのモダン・ヘヴィネス貫くわけでもなし、前作のように『恋の予感...!』不可避なエッチなフェロモンを色気ムンムンに醸し出すわけでもなく、となると今作の『Gore』にはどこか一貫した”コア”の部分がゴッソリと抜け落ちている気がしてならない。それはフロントマンチノ・モレノの歌メロを筆頭に、アレンジ含むメロディや肝心のリフに関しても、極端に突出しないどっちつかずな、悪く言えば中途半端な、良く言えば変に取り繕ってない自然体で素直な”Alternative”やってた本来のデブ豚への回帰、いわゆるシューゲイザーかじった掻き鳴らし系ロックバンドへの回帰と捉えることも出来なくもない。一貫した”ナニか”がない分、逆に アレンジやリフの種類が豊富に楽しめる利点もあるし、完成度という点ではそこまで過去作に引けを取っているわけではない。例えるなら、『Diamond Eyes』が脂ギットギトの豚骨ラーメンだとすると、今作は脂控えめなアッサリ系の豚骨ラーメンみたいな。

ゴジラの『MAGMA』もそうだったけど、今作はそのゴジラや「アメリカのメタル」の象徴であるマストドンをはじめ、現代モダン・ヘヴィネスの最先端であるDjentからの影響が著しい作品でもあって、そういった側面から分析すると、この『Gore』はかなりパンピーやキッズ向けのアルバムと言えるのかもしれない。当然、それはイマドキのモダン・ヘヴィネスをベテランなりに解釈した結果でもあるし、常に「最先端の音楽」を臆せず自分たちの音楽に取り入れてきた、実にデブ豚らしい好奇心旺盛な作品でもある。しかしそれ故に、精神面での弱さが目立つというか、これまでのメンタルエグってくるような音のギミックは稀少。ウリである「存在の耐えられないエモさ」ではなく「存在の耐えられない(音の)軽さ」、むしろデブ豚がカモメのように空を飛べるくらいの「軽さ」がキモになっている。フアンの中には、四年かけてこの内容は正直キツいと難色を示す人も少なからず居るはず。しかしこれだけは言えるのは、過去二作の中ではDIR EN GREYが一番のオキニにしそうなアルバムだということ。あとやっぱ丼スゲーなみたいな話。

Gore
Gore
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Deftones
Repri (2016-04-08)
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