Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

レビュー (S)

Sólstafir 『Berdreyminn』

Artist Sólstafir
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Producer/Mixing Jaime Gomez Arellano
Jaime Gomez Arellano

Album 『Berdreyminn』
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Tracklist

02. Ísafold
03. Hula
04. Nárós
05. Hvít Sæng
06. Dýrafjörður
07. Ambátt
08. Bláfjall

アイスランドといえば、ビョークやシガーロスをはじめ、世界的に有名なアーティストを数多く排出している音楽大国の一つで、最近のロックシーンでは菅野よう子が手がけた『残響のテロル』のサントラのボーカリスト率いるAgent Frescoが注目されているが、その一方でメタル界のアイスランド代表といえば、2015年にANATHEMAとともに奇跡の初来日公演を果たした、「ブラックメタル界のシガーロス」の異名を持つソルナントカさんことSólstafirに他ならない。

2014年に発表された前作の5thアルバム『Ótta』では、シガーロスやビョークの作品でもお馴染みのアイスランドのエンジニアBirgir Jón Birgissonをプロデューサーに、「ヨンシー親衛隊」ことストリングスカルテットのAmiinaをゲストに迎えてアイスランドの老舗Sundlaugin Studioで制作された、つまりアイスランドの音楽界を支えるオールスターのバックアップを得ることに成功した作品で、ソルナントカさん「ブラック・メタル界のシガーロス」の名に相応しい地位を確固たるものとする。ところで、その「ブラック・メタル界のシガーロス」といえば、同年にフランスの貴公子ネージュ率いるAlcestが発表した『Shelter』も、エンジニアにBirgir Jón BirgissonAmiinaをゲストに迎えてSundlaugin Studioで制作された、言うなればネージュ『夢』『憧憬』が詰まった"オールスター"作品で、偶然か必然か、ほぼ同じタイミングでポスト・ブラックメタル界の二大巨頭がアイスランドの英雄シガーロスへの迎合を図ったのは、小さな界隈で起こった非常に大きな重大事件として後に語り継がれる事となる。

ちょっと面白いのは、この日本で「ブラック・メタル界のシガーロス」といえばブルータルオーケストラを自称するVampilliaで、彼らも同年にアイスランドの地でシガーロスやビョークの血が(間接的に)通った1stアルバムをリリースしており、つい最近では「日本のビョーク」として知られる戸川純とのコラボ作品『私が鳴こうホトトギス』を発表し、このたび目出度くフジロック出演も果たしている。ご存じ、Alcestの初来日ツアーからVampilliaがサポートとして付きまとっているが、それはまた別の話で、AlcestSólstafirを繋ぎ合わせる存在、そのキーパーソンとなるのが他ならぬANATHEMAの存在だ。AlcestANATHEMAは2012年に初めて対バンツアーを経験し、そのANATHEMAが2015年にSólstafirとともに初来日公演を果たすという奇跡は、未だに『夢』のような出来事としか思えない。とにかく、2014年にポスト・ブラック界で巻き起こったアイスランド音楽およびシガーロスへの迎合、しかしその影にANATHEMAの存在その影響があったことは、あの日の僕たちはまだ知らない。

2014年にネージュの『夢』を実現させた『Shelter』、その二年後の2016年にAlcestがドロップした"ビッグ・イン・ジャパン"アルバムこと『Kodama』では、さっきまでの「アイスランド音楽への迎合」から一転して、本来のポスト・ブラックメタルとしてのAlcestへの回帰、それと同時にバンドのポテンシャルおよびネージュとドラムのヴィンターハルターの"プレイヤー"としてのポテンシャルを活かした、過去最高にオーガニックなサウンドを展開していた。何を隠そう、Alcestと同じく2014年に「シガーロスへの迎合」を図ったSólstafirも、前作に引き続きプロデューサーにBirgir Jón Birgissonを迎えてSundlaugin Studioで制作され、そしてマスタリングに世界的なエンジニアで知られるテッド・ジェンセンを迎えた、前作から約三年ぶりとなる6thアルバムの『Berdreyminn』で本来の漢らしい姿を取り戻している。



それを象徴するのが、今作のオープニングを飾る"Silfur-Refur"だ。それこそ『七人の侍』ならぬ『マグニフィセントセブン』たちが荒野を舞台に西部劇を繰り広げるような、ヴァイキングの血が通った男臭い旋律を奏でるダーティなイントロから、まるで「ライオン・キング」の如くフロントマンAðalbjörn Tryggvasonの唸るようなボーカル、砂利を細かくすり潰したようなオラついたモダンなギター、いつにも増して生々しいドライブ感を放つ手数の多いドラムとベースのリズム隊が織りなす、変化球なしのドストレートなバンド・サウンドを勢い良く、目の前一面に広がるアイスランドの雄大な大地に叩きつける。

2015年の初来日公演の時に自分の前方左の座席に座っていた謎の美人が、Sólstafirのライブが終わった後に隣りのツレに放ったライオン・キングみたい・・・という、これ以上ないくらい言い得て妙な一言が、二年経った今でも忘れられないでいる。そんなSólstafirといえば、アイスランドという地の幻想的な空気感を描写するギターの歪みを最大限に利用した幽玄なアトモスフィアが一つの大きな武器で、初来日公演でもその極上の空間表現および崇高な世界観を描き出していたが、今作ではそのアトモスフェリックな空間描写は極まった感すらあり、Amiinaのストリングスを全面的にフィーチャーした前作から一転して、今作ではある種の原点に立ち返ったかのように、より素っ裸の彼らというか、獣性むき出しの男臭さと土着的な風土が混じり合ったフェロモンを身にまとった各メンバーの「プレイヤー」としての魅力、その4人のポテンシャルからなる楽器の生音を全面的に押し出した「オーガニック」なバンド・サウンドを展開している。

今作のキーワードとなる「オーガニック」な音作りの正体こそ、今作のプロデューサーおよびミキシングを担当した、Ulver界隈でもお馴染みのジェイミー・ゴメス・アレラロの手腕によるもので、つまりBirgir Jón BirgissonとともにアイスランドのSundlaugin Studioでレコーディングされ、その生音がOrgone Studiosジェイミーによって施されたミキシングを通過し、そして最後はSterling Soundテッド・ジェンセンによって施されたマスタリングで完成・・・すなわち「世界最高峰のエンジニア」と「世界最高峰のスタジオ」によって産み落とされた「世界最高峰のサウンド・プロダクション」の極上クオリティが、また「オーガニック」で「ポストメタリック」な生音感を強調する大きなギミックとしてその存在感を示している。中でも#1,#4,#8,のモダンでソリッドなギター・リフを聴けば、ジェイミーが手がけた”ポスト・ブラック界の伝説”ことAltar of Plaguesの名盤『Teethed Glory And Injury』を彷彿させるハズだし、そして全編においてドラムの音が異常に良いことが分かるハズだ。近年では、かのイェンス・ボグレンデイヴィッド・カスティロがタッグを組んだLeprous『The Congregation』に匹敵するプロダクションの良さだ。この『音』に関することだけで、前作の”オールスター”超えを目論む世界最強の布陣で挑まれた作品なのかが分かるし、正直こんな贅沢な裏方今まで見たことないわ。

その「オーガニック」なキーワードを更に強く印象づけるのが2曲目の”Ísafold”で、イントロからギターのヒロイックな美旋律をフィーチャーしながら、雄々しくもリリカルでエピカルな構成力を発揮しつつ、そのド真ん中でベーシストのSvavar Austmanによるベースソロをじゃじゃーん!と豪快にブッ込んでくる。この曲のように、曲終わりのアウトロでAmiinaがちょっと通りますよ的なノリでストリングスを靡かせるが、しかしAmiinaのストリングスが「主役」と言っても過言じゃなかった前作とは打って変わって、あくまでも今作の主役は「プレイヤー」の演奏であると、裏方や脇役(ゲスト)ではなく、あくまでもメンバー4人が織りなすバンド・サウンドが主役だと念を押すかのようなキラートラックだ。

ピアノと管楽器が織りなすアイスランドならではの素朴な音色、そしてクワイヤとソプラノボーカルを駆使してよりスケール感を増すシンフォニックなアプローチがアイスランドの雄大な自然と大地に響き渡る3曲目の”Hula”、幻想的なアトモスフィアをミニマルに形成していく幕開けから、突如プログレスに転調してメタリックなギターのモダン・ヘヴィネスでゴリ押していく4曲目の”Nárós”、アイスランドという自然豊かな絶景の地の優美なオモテの世界を描写するAmiinaのストリングス、一転してアイスランドという厳しい極寒の地のウラの側面を歪んだギターで描写する6曲目の”Dýrafjörður”、ヴィンテージ風のキーボードと初期Alcestを彷彿させる曲調および世界観の中で、今度は新ドラマーのSæþór M. Sæþórssonによるドラムソロが主役となる7曲目の”Ambátt”、キーボードとパイプオルガンによる宗教絵画の如し神聖な幕開けから、徐々にギアを上げてスピード感を増していき、途中でメタリックなギターのキザミリフを挟んで、その勢いのままポストブラック畑出身らしく刹那的な感情を撒き散らしながら最後まで走り抜ける。

あらためて、『黄金比』で象られた雪の結晶が真っ白な雪化粧を施すかのように、それこそオーロラの如し繊細なアトモスフィアとアイスランドの雄大な自然と大地を象徴するかのようなスケール感溢れるバンド・サウンドの融合は、通算6作目となる本作でも、よりリズム隊を中心としたグルーヴ感マシマシの飲んだくれ系ロックンロールは健在かつ不変で、もはやポストロックやブラック・メタルなどのジャンルを超えた先にあるアイスランド・ミュージック、それこそソルナントカ・ミュージックを極めている。確かに、今作は余分な贅肉を削ぎ落としたような「オーガニック」な音作りだけに、これまでと比べると一見地味に聴こえるかもだが、しかしロックバンドらしい「オーガニック」な音を求める人には間違いなく前作以上の傑作に聴こえるハズだ。ましてや、Alcest『Kodama』と共振させれば、この上ない面白さで楽しめるに違いない。正直、あれ(ブラック・メタル界のシガロ)以上やれることないんじゃないか、ドラムが脱退して一体どうしたものかと不安に思っていたけれど、実際は全然そんなことはなかった。是非またANATHEMAとともに再来日を期待したい。

SikTh 『Opacities』

Artist SikTh
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EP 『Opacities』
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Tracklist
01. Behind The Doors
02. Philistine Philosophies
03. Under The Weeping Moon
04. Tokyo Lights
05. Walking Shadows
06. Days Are Dreamed

復活 ・・・2001年にイギリスはワトフォードで結成された6人組のSikThは、2002年にEPの『How May I Help You?』で鮮烈なデビューを飾り、2003年には1stフルアルバム『The Trees Are Dead & Dried Out Wait for Something Wild』を発表、そして2006年に傑作と名高い『Death of a Dead Day』をリリースし、その破天荒で複雑怪奇な展開とラップ&ハイトーンのツインボーカルを駆使した、言うなればハチャメチャごった煮エクストリームおっぱいサウンドでリスナーのド肝を抜き、一瞬にしてその名をアンダーグラウンド・メタルシーンに轟かせた。しかし2008年に解散。今なお一部のフアンの中ではカルト的な、一種のレジェンド的なバンドとして崇拝されている。そんなドチャクソ変態クソ野郎が解散から約7年の時を経て、かのPeacevilleから奇跡の復活作となるミニアルバム『Opacities』を発表した。



音合せ ・・・幕開けを飾る#1”Behind The Doors”からして、Textures顔負けのグルーヴィなヘヴィネスを乗せてメタルコアっぽく始まり、ドレッドヘアをチャームポイントとするミキー・グッドマンのラップとバンドの中心人物であるジャスティン・ヒルによるエモいハイトーンボイスが奇妙奇天烈に絡み合い、転調を効かせた中盤以降の展開もSikThらしさに溢れている。次の#2”Philistine Philosphies”では、俄然USヌー・メタル的な縦ノリグルーヴを効かせたモダン・ヘヴィネスとミキーのアヴァンギャルドなラップ、そして今世紀最大のエモーションをブチかますジャスティンの超絶ハイトーン・ボイスに胸を打たれ、そして全盛期のSikThがカムバックしたような転調以降のテクデス然とした展開は、これは紛れもなくシクス、変わらないシクスの完全復活を宣言するかのよう。その後も、今作をリリースした直後に来日公演を行うほどの親日家ぶりを垣間見せる#4”Tokyo Lights”を織り込みながら、初期のマスコア的な要素とアトモスフィアを取り入れた#5”Walking Shadows”、バンドの新機軸を予感させるPost-的要素を取り入れた#6”Days Are Dreamed”まで、流石に復活前のメカニカル感やドが付くほどぶっ飛んだ変態度こそ薄いが、全盛期のシクスと比べると比較的素直というかマジメなグルーヴ・メタルやってて、でも中には新しい試みを垣間見せたりして、そう遠くない未来に出るであろうフルアルバムに俄然期待を持たせる、この全6曲トータル27分に凝縮された音から次作を無限大に妄想させるような一枚だ。というより、彼らにとってこのEPはあくまでも顔合わせ、すなわち音合せ(サウンドチェック)程度の実力に過ぎないのかもしれない。

元祖 ・・・解散から7年の間、この手の界隈には様々な変化が起きた。中でも筆頭なのはDjentの台頭で、シーンを代表するUSのペリフェリーやUKのテッセラクトをはじめ、この手のジャンルやテクデス界隈のバンドでシクスの影響を受けていないバンドなんてこの世に存在しないんじゃないかってくらい(その影響は日本のマキシマム・ザ・ホルモンにまで及ぶ)、スウェーデンのメシュガーとともにDjentの元祖であり、Djentの原型を作り出した偉大なバンドである。彼らが冬眠する間、ペリフェリーやテッセラクトがシーンを牽引し、共に3作目でこれまで"アンダーグラウンド"なジャンルだったジェントを"メインストリーム"にブチ上げることに成功した。もはやシクスが産み落とした子(後継者)が親から授かった使命を貫き通し、切磋琢磨し合いシーンの『未来』を切り拓いていく姿に、子が親という偉大な存在を超えていく姿に、僕はマシュー・マコノヒーばりに咽び泣いていた。

新世界の神 ・・・テッセラクトのフロントマンことダニエル君が『惑星ポラリス』の中で「俺がジェント界の夜神月だ」とシーンに宣言したこのタイミングで、夜神月の「新世界の神」となる『野望』を阻止するため、ニアとメロのツインボーカル率いるシクスは復活したんだ、という風に考察すると俄然この手の界隈が面白く見えてくるかもしれない。ともあれ、このEPは「フルいけるやん!」と確信させるような、文句のつけようがない復活作です。
 
Opacities
Opacities
posted with amazlet at 16.02.20
Sikth
Imports (2015-12-11)
売り上げランキング: 21,096

Swallow the Sun 『Songs From The North I, II & III』

Artist Swallow the Sun
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Album 『Songs From The North I, II & III』
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Disc I [Songs From The North I]
Cover

Tracklist 
01. With You Came The Whole Of The World's Tears
02. 10 Silver Bullets
04. Heartstrings Shattering
05. Silhouettes
06. The Memory Of Light
07. Lost & Catatonic
08. From Happiness To Dust

Disc II [Songs From The North II]
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Tracklist
01. The Womb Of Winter
02. The Heart Of A Cold White Land
03. Away
04. Pray For The Winds To Come
05. Songs From The North
06. 66°50´N,28°40´E
07. Autumn Fire
08. Before The Summer Dies

Disc III [Songs From The North III]
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Tracklist
01. The Gathering Of Black Moths
02. 7 Hours Late
03. Empires Of Loneliness
04. Abandoned By The Light
05. The Clouds Prepare For Battle

イェンス・ブーム ・・・スウェーデンのDraconianと並んでメロドゥーム界を牽引するフィンランドのSwallow the Sunも、00年代後半のメタルシーンに突如として巻き起こった【イェンス・ブーム】、そのビッグウェーブに乗ってイェンス・ボグレン【No 実質 Jens!! プロデューサー】に起用した2009年作の4thアルバムNew Moonで、いわゆるメタル界の迷信を説き明かす事に成功したバンドの一つだ。しかし、間もなくイェンスから離れ、再び地元フィンランド人中心の人選でレコーディングされた次作の5thアルバムEmerald Forest And The Blackbirdでは、従来のOpethリスペクトやシンフォブラックなどの他に、アコースティック/フォーク・ミュージックの要素を大胆に取り入れ始めていた。しかし、如何せんイェンス・マジックによって生まれた傑作『New Moon』と比べると、元Nightwishアネット・オルゾンとのフィーチャリング以外これと言って特に見所はなかった気がする。そんな彼らの約三年ぶりとなる6thアルバム『Songs From The North I, II & III』は、何を血迷ったのかCD三枚組トータル約二時間半、軽く映画越えしちゃう超特大ボリュームとなっている。



『Ⅰ』 ・・・まずは一枚目の『Songs From The North I』。幕開けを飾る#1”With You Came The Whole Of The World's Tears”は、まるでX JAPAN”Voiceless Screaming”を彷彿とさせる、寂寥感を煽る80年代のフォーク・ソング顔負けのしみったれたアルペジオから始まり、前作を踏襲したまるでオーロラの如くエメラルドグリーンに、いや瞳のように透き通ったエメラルドブルーに煌めくキーボード、デプレブラック流れのノイズ感というかモダンだが粗暴な轟音ヘヴィネスからはポストブラックとも取れるアプローチを垣間見せ、鬱屈かつ荒涼とした空間が支配する一種のドゥームゲイズが、フィンランドという名の極寒の地に蠢くカオティックな狂気を浮き彫りにする。一枚目のリード・トラックとなる#3”Rooms And Shadows”では、フロントマンであり"ニット帽おにいさん"ことミッコの寂寥感溢れるボーカル・メロディからは、フォーク・ミュージックや北欧民謡の名残を漂わせるし、アウトロのGソロではX JAPAN”THE LAST SONG”に匹敵する泣きメロっぷりを発揮。ex-KATATONIAのノーマン兄弟が加入した事でも知られる、バンドの中心人物であるギタリストJuha RaivioのサイドプロジェクトTrees of Eternityでお馴染みのAleahとフューチャリングした#4”Heartstrings Shattering”、ドイツ出身のSarah Elisabeth Wohlfahrtとフィーチャリングした#6”The Memory Of Light”と#7”Lost & Catatonic”などの女性ボーカルをフューチャーした楽曲は、氷上の女神を司った今作のフェミニンなアートワークを象徴するかのよう。そして、ケルティックな音色とストリングスが優美に氷上を舞い踊るイントロから、雪の結晶の如し繊細なメロディに魅了される”From Happiness To Dust”で、美しくも清らかなエンディングを迎える。

懐メロ ・・・この一枚目は、前作を踏襲したフォーキーなアプローチ、俄然アンビエントな音響空間を意識したより幅広いアレンジが施されたキーボード、LantlôsAlcestをはじめとしたフレンチ産ポスト・ブラック勢からの強い影響下にある轟音ヘヴィネス、そして昭和歌謡を経由したX JAPANばりの歪んだ泣きメロを全面にフューチャーした叙情性と極寒の地の厳しさや孤独感を露わにする暴虐性、その静と動のコントラストを強調した、要するにこれまでのSWSらしいゴシック・ドゥームの王道的な作風となっている。その持ち味とも呼べる静から動への転換がプログレ並にスムーズで、安直に「いつものSWS」とか言いながらも、音の細部には確かな進化を伺わせる。これはフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキの映画に使われている音楽を聴いて思ったんだが、フィンランド人の音楽的嗜好って日本を含む東アジアの歌謡曲が持つ民謡的で情緒的なメロディに近い、極めて親和性が高いというか、少なくともこの『Ⅰ』の音には、このSWSもそのフィンランド人特有の"懐メロスキー"の継承者である事を証明する、と同時にスオミ人の知性と(気候とは裏腹に)心温かい情念が込められている。

『Ⅱ』 ・・・今時、メタルバンドがアコースティック路線に傾倒する例は決して珍しくない。この手のバンドで代表されるところでは、スウェーデンのKATATONIAやリヴァプールのANATHEMAがそうだ。その時代の流れに取り残されんとばかり、この『Ⅱ』の中でSWSはアコギやピアノ主体のフォーク・ミュージックを展開している。川のせせらぎと共に、真夜中の浜辺でただ独り佇むような悲しみの旋律を奏でるダークなピアノインストの#1”The Womb Of Winter”で幕を開け、アルペジオを駆使した優美でフォーキーなサウンドがフィンランドの雪景色のように純白の心を映し出すような#2”The Heart Of A Cold White Land”KATATONIAのヨナスきゅんや中期ANATHEMAのヴィンセントリスペクトなミッコのボーカル・メロディが俄然フォーキーに聴かせる”Away”、そしてフィンランドのSSWで知られるKaisa Valaとフューチャリングした表題曲の”Songs From The North”では、Kaisa『叙事詩カレワラ』に登場する『大気の処女イルマタル』となってフィン語で優しく歌い上げることで俄然民謡チックに聴かせ、この三部作のハイライトを飾るに相応しい一曲となっている。その後も、Alcestもビックリのリヴァーヴを効かせたデュリーミーな音響空間とトリップ・ホップ的なアレンジを施したオルタナ風のオープニングから、緯度"66°50´N,28°40´E"に位置する北国の幻想的な白夜の静けさを音(インスト)だけで描き出し、An Autumn for Crippled ChildrenHypomanie、そしてCold Body Radiationをはじめとしたダッチ産シューゲイザー・ブラック顔負けの吹雪くような美メロをフューチャーした#7”Autumn Fire”、そしてラストの”Before The Summer Dies”までの後半の流れは、決して「いつものSWS」ではない、言わば新機軸とも呼べるモダンなアプローチや音使いをもって情緒豊かに聴かせる。もはや「こいつらコッチ路線のがいい曲書くんじゃネーか?」ってくらい、モダンな要素と持ち前の懐メロ感を絶妙な具合にクロスオーバーさせている。

『Ⅲ』 ・・・一枚目の『Ⅰ』では「いつものSWS」を、二枚目の『Ⅱ』では「新しいSWS」を、そして三枚組の最終章に当たる三枚目の『Ⅲ』では、メロディを極力排除したフューネラル/デス・ドゥームメタルの王道を展開している。さっきまでの美メロ泣きメロの洪水とは打って変わって、アートワークの下等生物を見下すドSな女神に「もう許して...許してクレメンス・・・」と懺悔不可避な容赦ない破滅音楽っぷりを見せつけ、さっきまでの夢の世界から一転して惨憺たる絶望の淵へと追いやられる。曲の中にも静と動の緩急を織り交ぜるだけでなく、アルバム単位でも音の強弱やギャップを効かせた演出を織り交ぜた謎のスケール感を強調する。

大気の処女イルマタル ・・・やっぱり、この三枚組で最も面白いのは二枚目だ。隣国のスウェーデン人の音楽と比べると、どうしても不器用さが気になってしまうフィンランド人の音楽だが、この二枚目ではフィンランド人なりの器用さを垣間見せている。それこそ、今作のアートワークを冠した女神『大気の処女イルマタル』が身にまとった大気(Atmospheric)を体外に放出するかの如く、とにかく真珠が煌めくような音響空間に対する意識の高さが尋常じゃない。この二枚目で目指した理想像でもある、KATATONIA『Dead End Kings』をアコースティックに再構築したDethroned & Uncrownedとほぼ同じ作風とアレンジだが、Alcestリスペクトな音響/音像をはじめ民謡風のメロディだったり、フィンランド人の根幹にある民族的な土着性とフォーク/アコースティックなサウンドとの相性は抜群で、さすがにヨナスと比較するのはヨナスに失礼かもしれないが、ミッコのボーカル・メロディに関してもイモ臭さは程々によく練られているし、歌い手としてのポテンシャルを過去最高に発揮している。

臨界点 ・・・この手の界隈で比較対象にされるDraconianと同郷のAmorphisイェンス・ボグレンデイビッド・カスティロを起用した、いわゆる【勝利の方程式】を説き明かして今年2015年に勝ちに来た一方で、このSwallow the Sunはこの三枚組の中で、メロドゥームとしての王道路線で対抗すると共に、KATATONIAANATHEMAなどの先人たちにも決して引けを取らない、モダンでアコースティックな路線でも対等に勝負できることを証明した、どの方向性、どのジャンルにも一切の妥協を許さない攻めの姿勢に僕は敬意を表したい。失礼だが、フィンランド人だけでここまでの仕事ができるなんて思ってなかったし、新作が三枚組だと聞いた時は血迷ったなって全く期待してなかったから、いい意味で裏切られた。ある意味、未だ誰も超えたことがなかったスオミ人としての臨界点を超えたと言っていいかもしれない。正直スマンかった。
 
Songs From the North I & II & III
Swallow the Sun
Century Media (2015-11-13)
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Soilwork 『The Ride Majestic』

Artist Soilwork
Soilwork

Producer/Mixing/Mastering Jens Bogren

Jens Bogren
Recording/Engineer David Castillo
David Castillo

Album 『The Ride Majestic』
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Tracklist
01. The Ride Majestic
02. Alight In The Aftermath
03. Death In General
04. Enemies In Fidelity
05. Petrichor By Sulphur
06. The Phantom
07. The Ride Majestic (Aspire Angelic)
08. Whirl Of Pain
09. All Along Echoing Paths
10. Shining Lights
11. Father And Son, Watching The World Go Down

ビョーン「イェンス先生、復活したいです・・・」

イェンス「ならテメーら大人しく俺の言うこと聞いとけや」

ビョーン「は、はい・・・」

イェンス「ソイルよ、モダン(アメリカ)の時代は終わった!北欧魂を取り戻せ!」

ビョーン「うおおおおお!!ピロピロピロピロピロ♪ランランララランランラン♪」

勝利の方程式 ・・・いわゆる「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信には、時として例外も存在する。厳密には、時としてイェンス・ボグレンは迷走したベテランの進路修正役としてその任務を果たしたり、時としてイェンス・ボグレンは落ち目バンドを蘇らせる"復活請負人"としての役割を担う事がある。元嫁が怪談作家の宍戸レイで知られる、フロントマンビョーン・スピード・ストリッド率いるこのSoilworkも例外ではなく、2007年作の7thアルバム『Sworn to a Great Divide』をリリースした時は、00年代以降のモダン・メタルコア/メロデスブームの終焉を告げる近年メタル界三代駄作の一つで、もはや「こいつらこれからどーすんの...」ってくらい、事実解散する可能性すら否定できない謎の絶望感すらあって、しかしその解散危機を回避する為にSoilworkが"復活請負人"として選んだ人物こそが、他でもないイェンス・ボグレンだ。イェンスとのなりそめは、世紀の駄作から約三年ぶりとなる2010年作の8thアルバムThe Panic Broadcastで、この時点ではまだミキシングエンジニアとしての関係だったが、二枚組の大作となった次作の9thアルバムThe Living Infiniteで、本格的にプロデューサーとして初タッグを組んだ結果、かつての栄光を失ったSoilwork『イェンスという名の電車』に乗って、見事メタルシーンに返り咲く事に成功するのである。実質的に、「イェンスと組んで3作目」となるSoilworkの10thアルバム『The Ride Majestic』は、いわゆる「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信を只の迷信で終わらせるような、一時はどん底まで堕ちたバンドには到底思えないほど、「This is Melodeathッ!!」な傑作となっている。それもそのはず、彼らは遂にイェンスだけじゃ飽きたらず、MoonspellLeprousの新譜でもお馴染みのDavid Castilloをエンジニアとして迎えており、つまり今作は【Jens Bogren×David Castillo=勝利の方程式】が実現した、約束された傑作なのだ。

集大成 ・・・オープニングを飾る表題曲#1”The Ride Majestic”のストリングスを交えたメッロメロなイントロから、ビョーンのクリーン・ボイスが炸裂するサビメロや叙情的なGソロまで、俺たちがソイルに求めている要素が凝縮された楽曲で、ダークという名のブラストに乗ってカオティックに展開する#2”Alight In The Aftermath”、ここにきてボーカリストとしてのポテンシャルを限界突破していくビョーンのクリーン・ボイスが冴え渡る#3”Death In General”、そして今作のハイライトを飾る#4”Enemies In Fidelity”までの序盤だけでガッツポーズ不可避だ。しかしそれ以降も走るのなんの。中でもメロブラ然としたブルータリティ溢れる#6、Rolo Tomassiみたいなマスコア風のオシャンティな単音リフを擁した裏表題曲の#7、その勢い最後まで衰えるばかりか、まるで今の脂が乗った彼らのように増すばかりだ。それこそ、"メロデス"とかいうサブジャンルとしての彼ら以前に、"北欧メタル"として"北欧メタル"であるべき真の姿を取り戻すかのよう。なんだろう、イェンスから「とりあえず走れ」「とりあえず弾け」「とりあえず歌え」という3つのシンプルな指令があったんじゃあないかってくらい、いま最もメタル界隈でキテるエンジニアが一同に集結した、そして「イェンスと組んで3作目」の円熟からなる近年ソイルの集大成であり最高傑作だ。
 
ライド・マジェスティック
ソイルワーク
マーキー・インコーポレイティド (2015-08-26)
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Symphony X 『Underworld』

Artist Symphony X
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Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren

Album 『Underworld』
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Tracklist
01. Overture
03. Underworld
06. Charon
07. To Hell And Back
08. In My Darkest Hour
09. Run With The Devil
10. Swan Song
11. Legend

ドタキャン ・・・今や日本で”ドタキャン”という言葉を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、Mステドタキャンのt.A.T.u.じゃなくてラウパドタキャンのSymphony Xだが、そんな彼らも2007年作のParadise Lostというアルバムで、かのイェンス・ボグレンの手によって、これまでDream Theaterの影に隠れていたアングラオタクな存在感を表舞台に、それまでのB級メタルバンド的なイメージを覆すように、一流バンドとしてその存在をシーンに示した。個人的に、2011年作の8thアルバム『Iconoclast』はイマイチハマりきれなかったのだけど、その前作から約四年ぶりでイェンスと組んでからは三作目となる9thアルバム『Underworld』は、まさに「イェンスと組んだ一作目は名作になる」という”メタル界の迷信”を真実だと裏付けるような傑作『Paradise Lost』の再来を予感させる力作となっている。

影響 ・・・DTの影に隠れながらも、実力派オタク・パワー・メタルバンドとして高い評価を得ているSymphony Xだが、実はそのスタイルもDTを意識しながら順応し変化していったのも事実で、近年ではDTPeripheryらの若手Djent勢からの影響を受けたセルフタイトル作のDream Theaterをリリースしていたが、その影響を受けてこのSymphony X『Underworld』も、Protest the Heroをはじめとした若手?テクニカル・メタル勢からの影響を随所に垣間見せる作風となっている。その影響が顕著に表れているのが、「アルバムの一曲目がインストじゃないチンポリオはチンポニーじゃない!」という前作の不満を解消する#1”Overture”に継いで始まる#2”Nevermore”で、もはや確信犯的なディグりを感じるメインリフや中盤のインストゥルメンタルを耳にすれば理解できるように、それこそProtest the Heroの3rdアルバム『Scurrilous』”C'est La Vie”を彷彿とさせるトリッキーなリフ、同作の”Hair-Trigger”を思わせるスリリングなインスト・パートからして、若手の影響を直に受けて尚も新たなるチンポニーへと進化し続ける、バンドの中心人物であるマイケル・ロメオの貪欲な姿勢からは、「もうイングヴェイの影武者とは呼ばせない!」・・・そんな魂の鳴き声が聞こえてくるかのようだ。

・・・で、傑作『Paradise Lost』の名曲”Set the World on Fire”の流れを汲んだイントロからガッツポーズ不可避な表題曲の#3”Underworld”、まるで『Paradise Lost』の表題曲に匹敵するバラードナンバーの#4”Without You”、若いもんには負けん!とばかりのグルーヴィなリフやブラストを交えてゴッリゴリに展開する#5”Kiss Of Fire”、ロメオのギターオタクっぷりを垣間見せるキザミリフを多用した#6”Charon”、そして今作のハイライトで約10分におよぶ#7”To Hell And Back”は、往年のHR/HMを彷彿とさせるクラシックな雰囲気と男気あふれるラッセルの熱唱が俄然ドラマティックに曲を演出する。以降はイントロからプログレ全開の#9”Run With The Devil”とイントロからSW”3 Years Older”を彷彿とさせる#11”Legend”まで、確かに傑作『Paradise Lost』ほどのネオクラ要素はないが、その代わりにプログレ要素マシマシの一枚と言える。とにかく、今作のラッセル・アレンは、もはやオールブラックスのセンターフォワードばりにガチムチな”攻め”の姿勢を貫き通し、持ちうるメタルシンガーとしてのポテンシャルをパワー&フルに発揮している。あとイェンスと組んで3作目だけあって、お互いに全てを知り尽くした者同士だからこそのプロダクションの質の高さは、ぐうの音も出ないほど音の説得力に溢れている。少なくとも、ラウパドタキャンの理由として納得できる内容だとは思う。でも、中には「ラウパドタキャンしといてこれかよ」みたいに思う人もいるかもしれないw

Underworld
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