Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

レビュー (P)

Pallbearer 『Heartless』

Artist Pallbearer
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Album 『Heartless』
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Tracklist

01. I Saw The End
02. Thorns
03. Lie Of Survival
04. Dancing In Madness
05. Cruel Road
06. Heartless
07. A Plea For Understanding

いつぞやのFallujahといい、メタル最王手レーベルで知られるNuclear Blastがここ最近積極的にやってる、「今キテる若手バンド」に対する節操のない「青田買い」ってどうにも好きになれなくて、それこそ一時期のCentury Mediaを思い出して余計に好きになれないんだけど、2015年に初来日公演が実現した”クマラー”ことアーカンソー州はリトルロック出身のPallbearerも、そのNuclear Blastによる「青田買い」に巻き込まれたバンドの一つだ。

2012年作の1stアルバムSorrow and Extinctionでは、ブラック・サバス直系の伝統的(トラディショナル)なドゥーム・メタルを現代に蘇らせたような音楽性で、かのピッチフォークをはじめ数多くの音楽メディアから賞賛され話題を呼び、続く2014年作の2ndアルバムFoundations of Burdenでは、その伝統的かつ叙情的なドゥーム・メタルという強固な地盤を維持しながらも、IsisAgallochをはじめとしたポストメタル勢からのモダンな影響とアンニュイなセンスを垣間見せ、よりアトモスフェリックでプログレッシブ、そしてより現代的なドゥーム・メタルへと化けてみせた。

その前作の「現代的」すなわち「Post-系」のアプローチを踏襲し、IsisToolなどの作品を手掛けた名エンジニアのジョー・バレーシがミックスを担当した、約三年ぶりとなる3rdアルバムの『Heartless』は、前作のモダンで現代的な方向性を更に推し進め、よりエピカルに、より叙情的な泣きのメロディやフロントマンBrett Campbellのキャッチーな歌メロを全面にフィーチャーし、そして全編に渡って「お前はどこのギターヒーローだよ」とツッコミ不可避な流麗なソロワークを披露した、過去最高に挑戦的で広大なスケールに溢れた作品となっている。



まず本作を聴く前に妙な違和感というか一つ気づくことがあった。それは、10分超えの大作が全6曲中4曲あった前作に対して、今作には10分超えの大作は全7曲中2曲しかないことだ。さっそく一曲目が6分台、続く二曲目が5分台という、前作の”Ashes”を例外として除けば実質最短を記録する冒頭の二曲の存在が、本作の「異質さ」を物語っていると言っても過言じゃあない。まず6分台の#1”I Saw the End”から、今作が過去最高に「メロディ重視」のアルバムであることを裏付けるような、フロントマンBrett Campbellの感情表現豊かなボーカルとツインリードの叙情味溢れるメロディを中心に、ドラムの手数の多さは言わずもがな、モダンに洗練されたプロダクション、いわゆるプログレ・メタルと言うより、もはや様式美メタルと呼ぶべきベッタベタな構成とダイナミックな展開力を発揮する。続く5分台の#2”Thorns”でも、もはやドゥームと呼んでいいのかすら分からないソリッドなリフ回し主体で、そして中盤にスロウコアパートを織り込んだ、いわゆる「静と動」のコントラストを効かせた非常に分かりやすい楽曲となっている。その冒頭の二曲の次に短い5曲目の”Cruel Road”や表題曲となる6曲目の”Heartless”でも同様の事が言える。前作のようにスロウコアにも精通するミニマルなフレーズやドゥーミーなリフで曲を構成するのではなく、過去最高に感情を込めてエモーショナルに歌いまくりなボーカルに負けじと、それこそ「ドゥーム・メタル」とは一線をがした、キザミ系のリフやスラッジーでメタリックなリフを駆使して曲を上下左右に動かしまくる姿は、初期のMastodonBaronessを連想させなくもない。

それ以外の、いわゆる「大作」と呼べる3曲目の”Lie of Survival”では、イントロから哀愁を帯びたATMS系のシンセとゲイリー・ムーアばりにブルージーな泣きのギターをフィーチャーしている。4曲目の”Dancing in Madness”は、イントロからElsianeを彷彿させるジャジーでアンニュイな雰囲気を漂わせながら、ムード歌謡ばりにクサいムードを醸し出すシンセと超絶怒涛の泣きのギターソロをあざといくらいにこれでもかとブッ込みつつ、その長いイントロが終わると、中盤以降はまるで「山の神」である岩人間デイダラボッチが深い眠りから目覚めて必殺ローリングアタックをブチかますような、暴力的かつ粗暴な、ソリッドかつアグレッシヴなリフを駆使しながら壮大なプログレッシヴ・ドゥーム地獄絵巻を描き出していく。ラストを飾る歴代最長作となる#7”A Plea for Understanding”は、40 Watt Sunの1stアルバムを彷彿させる泣きのスロウコアナンバー。

サザンロックばりに、それこそ映画『ダーティ・ハリー』のクリント・イーストウッドばりに泥臭くて男臭い、すなわち土葬不可避な死臭漂う淀んだ空気感というか初期のフューネラル・ドゥーム感は皆無に近い。従って、本来のウリであるトラディショナルでサイケデリックなドゥームっぽさも希薄で、とにかく本作ではドゥームならではの「遅さ」やスラッジにも精通する「重さ」よりも、アイアン・メイデン顔負けのツインリードによる叙情的な旋律とハーモニーが織りなす「泣きメロ重視」の作風に路線変更している。

「君もピッチフォーカーかい?」

元々というか、どっちかっつーと、ドゥーム・メタルの開祖であるブラック・サバスからの影響は元より、それ以前に初期ANATHEMAType O Negativeなどのゴシック系への強い憧れを持っていたバンドでもあって、それらのベアラーを司る音楽的嗜好、その根幹部にあるインフルエンサーが顕著に現れた結果と言えなくもない。そう考えてみると、この度のNuclear Blastへの移籍は至極納得できるというか、つまり完全にピッチフォーク路線からは外れた方向性である。

「はい、私はピッチフォーカーです。」

本作がピッチフォークで低評価(6点)となった理由はそこにある。ピッチフォークが大好きなヘヴィロック系のドゥーム/ポストメタルではなく、いわゆるヘビメタチックなリフ回しをはじめ、それこそシンセのクサい鳴らし方を筆頭に、本作にはピッチが毛嫌いしている欧州のクサメタル的な「ダサさ」、そう「メタルにダサいは褒め言葉」でお馴染みのその「ダサさ」が作品全体を支配している。それこそIsisがドゥーム化したというよりは、誤解を恐れず端的に言っちゃうとメイデンがドゥーム化したみたいなイメージ。確かに、前作が高評価だったピッチフォーク目線で見ると、本作はただのクソダサいヘビメタにしか聴こえないし、ピッチ目線だとベアラー本来のウリや持ち味の全てを失ってしまったように感じるかもしれない。だから、自身がピッチフォーカーorメタラーかで今作の評価がガラッと変わってくるだろうし、逆にUKゴシック御三家をはじめとした、その手のメロドゥーム系が好きな人には間違いなく最高傑作として聴こえる代物ではある。

ベアラーの良さって、あくまでもトラディショナルなドゥームを下地にさり気ない泣きメロが入ってくる絶妙なバランス感覚で、でも今作みたいに泣きメロが主役になっちゃうと、「いや、そうじゃない」と感じる人が出てくる。その露骨な「あざとさ」が癪にさわるみたいな感覚。初期のインディ/アンダーグラウンドな香りから一転して、鮮明かつクリアに、悪く言えばチープに聴こえるプロダクションも相まって、良くも悪くも聴きやすいキレイでクリーンな普通のメロドゥームだ。もはや別バンドと言われても納得するほど。

確かに、1stアルバムから2ndアルバムまでは正統な「進化」と呼べるが、2ndアルバムからこの3rdアルバムまでは「進化」というより「変化」の部分の割合の方が大きい。これまでの「求心力」や「オリジナリティ」の面では前作に遠く及ばないが、その「進化」と「変化」が上手く調和したドゥーム・メタル界の新たなる傑作の誕生だ。しかし、僕のように前作を年間BESTに選んだピッチフォーカーは、本作を今年の年間BESTに選んじゃアカンやつなのは確か。それくらい、ちょっと、というか、だいぶ変わっちゃってる。
 
HEARTLESS (ハートレス: +bonus disc)
PALLBEARER (ポールベアラー)
Daymare Recordings (2017-03-22)
売り上げランキング: 99,536

Power Trip 『Nightmare Logic』

Artist Power Trip
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Album 『Nightmare Logic』
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Tracklist

01. Soul Sacrifice
04. Nightmare Logic
05. Waiting Around to Die
06. Ruination
07. If Not Us Then Who
08. Crucifixation

このテキサス州はダラス出身の五人組ことPower Tripは、なんかもう元メガデスのギタリストマーティ・フリードマンSpotifyで毎月やってるメタルジュークボックス企画のプレイリストにブッ込んできそうなくらいの極悪非道なスラッシュ・メタルで、それこそエクソダススレイヤーを筆頭に、スラッシュ全盛だった頃の”パンク”をルーツとする80年代の伝統的なスラッシュ・メタルがそのまま現代に蘇ったかのような、かつConvergeにも精通するハードコア・パンクやメタルコアあるいはメタリックハードコアやら、その手のハードコア/パンク成分がクロスオーバーした、最高に頭悪くて最強最悪のスラッシュ・メタルだ。

まず一曲目の#1”Soul Sacrifice”から、稲川淳二ばりに「ダメだダメだダメだこいつダメだ。こいつ危ない。こいつ怖い。」ってなる。そんな荒廃したスラム街に立ち込む淀んだ空気漂うイントロのSEから、ミョ~ンと唸るギターや「ヴァ゛ッ゛!!」と吠えるボーカルを交えながらリズミックなキザミに乗せてミドルテンポで進み、そしてボーカルの「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!!」という叫び声を合図に、それこそクソ頭の悪いスラッシャー親父とクソド低脳なパンクスが今にも殴り合いおっ始めそうな、それこそサークルモッシュヘドバンを誘発するかのような、それこそスプラッター映画ばりに極悪非道かつ鋭利な刃物の如し切れ味抜群のスラッシーなキザミと共に猪突猛進し、その猛烈な勢いのままノンストップでギターソロに突入する姿は、まさに全盛期のスレイヤーさながらの猟奇的なシリアルキラーだ。



今話題のあんな人やこんな人も登場する、このアングラ感全開のMVも最高だ。そのMVからタイトなキザミリフまで全てが80年代仕様で最凶にカッコ良ければ、ボーカルのSwing of the Axe!という雄叫びやむさ苦しい歌い方もクソカッコよくてハゲあがるかと思った。イントロからV系好きのバンギャが拳を上げてプルプルさせそうなハードコア・パンク然とした暴れ曲で、それこそDIR EN GREY(中期)のが好きそうな#3”Firing Squad”、唸るようなギターとグルーヴィなリフで始まるイントロからタイトなキザミ主体の曲で、後半からテンポが変わってフロントマンRiley Galeの暴力的なボイスパフォーマンスが炸裂する表題曲の#4”Nightmare Logic”、現代的なイントロから往年のメタリカを彷彿とさせるリズミックなリフでデレッデレと展開する#5”Waiting Around To Die”、初期のマストドンにも精通する獣性むき出しのソリッドかつヘヴィな#6”Ruination”、中盤以降の怒涛のキザミ祭りがとにかく気持ちよすぎてトリップできる#7”If Not Us Then Who”、ラストの#8”Crucifixation”まで、超絶怒涛のキザミに次ぐキザミ、バリエーション豊かなリフからリフの応酬で、休む暇もなくノンストップで約32分間を一気に駆け抜ける。
 

もちろん、「速い」ところは全盛期のスレイヤーばりにトコトン「速い」のは確かなんだけど、「ただ速い」だけじゃないのがこのバンドの魅力の最もたる所で、そこは80年代スラッシュのリバイバルバンドと呼ばれるだけあって、「速さ」よりも往年のメタリカを彷彿とさせるグルーヴィなリズムおよびテンポやノリを重視したスタイルで、それこそミドルテンポのリフで聴かせられるバンドこそ本物のスラッシャーだと証明するかのような、彼らはミドルテンポの時にその類まれなるスラッシャーとしてのセンスを発揮する。だから、「速い(ファスト)」からミドルへの繋ぎ方と曲展開が凝っていて、最後まで全く飽きさせない。「キザミ」のキレ味と鮮度抜群に調理する凶悪なプロダクションも相まって、その「音」からしてメタクソ気持ちがいい。

元々は、アングラ界隈の名門レーベルで知られるSouthern Lord出身のエリート集団で、既にDEAFHEAVENとの対バンも経験し、その実績も十二分にあって、後はブレイクするだけみたいな状況、このタイミングでこの傑作をブッ込んできた。そろそろ某Nuclear Blastに引き抜かれないか心配になるくらい、とにかく今年のスラッシュ・メタルではマストバイです。とりあえず、デフヘヴンと一緒に来日したら神!デフヘヴンと一緒に来日したら神!
 
NIGHTMARE LOGIC (ナイトメア・ロジック)
POWER TRIP (パワー・トリップ)
Daymare Recordings (2017-02-22)
売り上げランキング: 46,423

Pain of Salvation 『In The Passing Light Of Day』

Artist Pain of Salvation
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Producer/Mixing Daniel Bergstrand
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Album 『In The Passing Light Of Day』
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Tracklist
01. On A Tuesday
02. Tongue Of God
04. Silent Gold
05. Full Throttle Tribe
07. Angels Of Broken Things
08. The Taming Of A Beast
09. If This Is The End
10. The Passing Light Of Day

 稲川VR淳二
new_スクリーンショット (34)「こんばんわ、稲川VR淳二です。」

 稲川VR淳二

new_スクリーンショット (34)「ところで最近、私が長年応援してきたスウェーデンのペイン・オブ・サルヴェイションが新しいアルバムを出したって言うんでね、さっそく買って自前の音楽プレイヤーで再生してみたんですよ。」

 稲川VR淳二
new_スクリーンショット (34)「するとねぇ、一曲目のイントロからポリリズムを多用した、それこそメシュガーみたいなモダン・ヘヴィネスが聴こえてきて、妙に変だなぁ・・・って、だっておかしいじゃない、PoSの新作を再生したはずなのにガーガーとメシュガーガーが聴こえてくるんだもん。」

 稲川VR淳二
new_スクリーンショット (34)「そんでもって、遂には亡者の囁きみたいな声が聞こえてきて、うわ~ヤダなぁ~怖いなぁ~って、グワァ~!っと身の毛もよだつほどの鳥肌が立った瞬間、私ねぇ・・・気づいちゃったんですよ」

「あぁ、これPoS復活したんだって」 
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1984年にスウェーデン南部の都市エシルストゥーナで結成された、奇才ダニエル・ギルデンロウ率いるPain of Salvationは、1997年に1stフルアルバムの『Entropia』でプログレ・メタル界の未来を背負っていく期待の新星として華々しいデビューを飾り、初期の頃はプログレ・メタル界の旗手として順調にキャリアを重ね、2000年代に入ると3rdアルバム『The Perfect Element I』と2002年作の4thアルバム『Remedy Lane』というプログレ・メタル界のみならずメタル界屈指の名盤と評される二枚の歴史的な金字塔を打ち立て、遂には「アメリカのDream Theater、北欧のPain of Salvation」とまで称されるまで、このシーンにおける確固たる地位を確立した。しかし、順風満帆に見えた彼らの音楽人生は前途多難のものだった。そのDTの名盤『Metropolis Pt. 2: Scenes From a Memory』と対をなす二枚の傑作から、バンドの中心人物であり奇才ダニエル・ギルデンロウの「変態性」および「アヴァンギャルド」な嗜好が顕著に作中に露見していたが、それ以降はダニエルの独創的かつ奇抜で破天荒なセンスとオルタナティブ方面への嗜好が優先されるようになり、その後は「ダニエル、お前と音楽やるの息苦しいよ・・・」という真っ当な理由から幾度とないメンバーチェンジを経て発表された2004年作の5thアルバム『蜂』と問題作となる『スカシッペ』というスランプ期ならぬメンヘラ期を経験し、これまでも多種多様な音楽遍歴を辿ってきた彼らは、2010年代に差しかかるとクラシックなヴィンテージ・ロックに目覚めた『塩1』『塩2』を立て続けにドロップする。しかし、十数年間もの間休みなく創作活動を続けてきた無理がたたって、ダニエルに病魔が襲いかかる。どうやら原因は塩分の過剰摂取みたいで、それを期に意識高い系健康オタクとなったダニエルは、糖質制限ダイエットとライザップによって鍛え上げられた鋼の肉体を手に入れることに成功し、その体脂肪率2パーセントまで絞り上げられたダニエルの背中に「鬼の貌=オーガ」が宿りし時、Pain of Salvationは奇跡の完全復活を遂げる(ここまで全部嘘)。これは、『死』という人生最大の危機に直面し、そして『死』に立ち向かった男の、『魂』揺さぶる奇跡のカムバック物語だ。 その男の名は・・・

「サンシャイィィィィン!!」
「ダニエ゛ル゛ッ!!」
「ギルデン゛ッ!!」
「ロ゛ォウ゛ゥ!!」

「イエエエエェェエエエエエェェエィイ!!」
kakaka

ごめん、このブックレットにある今にも飛び出してきそうな疾走感溢れるダニエルの写真見て笑わんかった奴おる?僕は笑った。とにかく、そのダニエル・ギルデンロウの範馬勇次郎顔負けの肉体が音像化したように、一曲目の”On a Tuesday”からMeshuggah×Gojiraなポリリズムを駆使したポスト-スラッシュ系のゴリゴリなキザミ&ヘヴィネス、『死』という人生最大の危機に直面した男の『心の闇』に迫るパーソナルな歌詞を、それこそ一人二役も三役もこなすダニエル・ギルデンロウ主演の前衛的な演劇ばりにコンセプチュアルに歌い上げ、そしてアイスランドの雄大な自然と崇高な雪景色が一面に広がるようなフォーキーなメロディと内省的なピアノの音色が、まるで『死』という悪夢と『生命』への渇望が激しくせめぎ合うように、『静=(生)』と『動=(DIE)』のメリハリを効かせながら場の緊張感を繋いでいき、そしてまさに映画のクライマックスシーンを飾るスケール感マシマシのアウトロまで、そのリリカルでドラマティックな世界観が重くのしかかる。

鬼の顔

『死』に直面し、数ヶ月の入院生活を余儀なくされたダニエルの孤独な精神状態がリアルに反映された、「I cry in the shower And smile in the bed」と繰り返し何度も連呼する憂鬱で病んだ歌詞と、魑魅魍魎がネッチョリと身体にまとわり付くかのようなヌー・メタル風のダークなヘヴィネスで展開する#2”Tongue of God”、そしてシングルの#3”Meaningless”のイントロのもはや人間の声にすら聞こえる奇才ならではのフォーキーな美メロを聴けば、あらためてPoSが完全復活したことを実感する・・・というより、実はこの曲の原曲がイケメンギタリストのRagnar Zolbergがフロントマンを担うアイスランドのバンドSign”Rockers Don't Bathe”という曲のカバーで、原曲の方はもっとヌメヌメして病んだイメージだが、PoS版だとラグナルの「美しすぎるハイトーンボイス」をフィーチャーした、全体的にその「メロディの美しさ」にフォーカスしている。 
 


2013年に加入したアイスランド人の超絶イケメンギタリストRagnar Zolbergを筆頭に、2014年作のカバーアルバム『Falling Home』を除くと、ダニエル以外の他のメンバーが加入してからは初のオリジナルアルバムということで、その中でもやはりダニエルとともに今作のコ・プロデューサー(Co-producer)を務めたイケメンRagnar Zolbergの本作における役割、その存在感というのは絶大なものがあって、彼の出身地であり、それこそシガーロスにも精通するアイスランドの雄大な自然を雪化粧で染め上げるような、繊細かつスケール感溢れるPost-系サウンドを繰り広げていく。とにかく、ラグナルが今作のコ・プロデューサーを担っている影響が、そのPost-系のサウンドをはじめ、コーラス/ボーカル面などの各パートから否応にも伺うことができる。これにはラグナル「抱かれたい」と妄想しちゃう腐女子続出だ。



中盤のハイライトを飾る大作の#5”Full Throttle Tribe”は、往年のPoSおよび往年のダニエルを彷彿とさせるボーカルワーク、それよりもレーベルメイトのJollyって今何してんの?って思っちゃったんだからしょうがないというか、とにかくアウトロの伏魔殿が降臨して世界に破壊と混沌をもたらすかのような鬼ヘヴィネスがヤバい。「メタル回帰」を堂々宣言する#6Reasonsは、ゴジラやメシュガーは元より、レーベルメイトのLeprousTesseractをはじめとした、イマドキの若手がやってるPost-Djent界隈からの影響を強く伺わせる。超絶怒涛のギターソロが炸裂する#7”Angels of Broken Things”、ミニマルに繰り返されるキーボードとダニエルのダーティな歌声をフィーチャーした#8”The Taming of a Beast”、ルーテやツィターなどの弦楽器やアコーディオンを駆使したダーティなスロウコア風のパートと、本棚の裏という五次元空間へと堕ちたマシュー・マコノヒーばりに「STAY!」と咆哮するヘヴィネスパートが激しく交錯する#9”If This Is the End”、そしてこのカムバック物語のクライマックスを飾る約15分の大作の#11”The Passing Light of Day”には、ここまでの痛みと恐怖に支配された苦難の道から解放され、再び「光」という名の「生命」を取り戻し、「神」への信仰心と「神」からの赦しを得たダニエルが再び歩み始めたその先には、「清らか」な心と「幸福」に満ち溢れた「未来」の世界が広がっていた。

やってることは思った以上に、音使いやアレンジも至ってシンプルで、PoSというよりダニエル・ギルデンロウがここまで洗練されたド直球のアルバム作るなんて逆に新鮮だし、これまではあらゆる音楽ジャンルを巧みに吸収し、それを変態的な感性をもってエクストリーム合体させてきたが、今作ではそれこそダニエルの鋼のような肉体のごとし、無駄な要素(贅肉)を身体から削ぎ落とした実にソリッドでヘヴィなメタルを展開している。『死』を目の前にして極限まで研ぎ澄まされた感覚と肉体が気高い精神となって音に宿り、それこそ「プログレッシブ」で「オルタナティブ」、そして「メタル」な往年のPoSが現代に蘇ったかのような、PoSにしか出せないセンスの塊みたいな、紛れもなくPoSの音世界である。実際、もう10年以上もヘンテコな音楽やってきて、ただでさえブランクの長いバンドに対して、いざまた「メタルやれ」って言われてもそう簡単に出来るもんじゃあないです。でも、それを軽くやっちゃう辺りが天才集団たる所以で、でも今回は音が変態というより、その音楽性に合わせて己の肉体を鍛え上げちゃうダニエルが一番変態だわ。

デビュー当時からシーンの流れを先読みして、いち早くヘヴィメタルにラップやヌー・メタルおよびオルタナティブ・メタル的な要素を取り入れ、常にシーンの流行りを的確に捉え、前衛的かつ先進的な音楽スタイルを貫き通してきた彼らだが、しかし今回ばかりは多少のブランクはあるものの、現代的なオルタナティブメタルとされるMeshuggah的なモダン・ヘヴィネスを取り入れ始めたのは、「オルタナティブバンド」としてもはや必然的な引かれ合いだったのかもしれない。そのように、メシュガーの存在が90年代のヌー・メタルに代わる「現代のオルタナティブ・メタル」と解釈すれば、もはやダニエル・ギルデンロウにしてみれば「メインストリーム音楽」同然で、むしろ赤子の手をひねることのように簡単な事だったのかもしれない。

「オルタナティブバンド」として、常に「新しいメタル」、常に「新しい音」を追い求めてきたPoSが、本格的に「メタル」から離れ始めてからというもの、21世紀の「新しいメタル」として最もシーンを賑わせたのが、他ならぬメシュガーやシン・ゴジラの音で、それは後にDjentなる新興ジャンルを生み出すことになるのだが、数ヶ月ものあいだ病室のベッドの上に拘束され精神的にも肉体的にも衰弱しきったダニエルは、ふと「若さ」を羨み、ふと「若さ」を嫉み、そして「若い音」への強い渇望が目覚め、そしてダニエルは若かりし頃の自分=「メタル」こそ「生命の源」であることに気づく。『死』から解き放たれた彼は、若くて新しい血に飢えて飢えてしょうがなかったのか、カラッカラなダニエルの喉の渇きを潤すかのように、すかさず「若いイケメン」という「新しい血」を新メンバーとして迎え入れ、そして「新しいメタル」という名の「生命エネルギー」ズキュウウウン!!と己の身体とバンドに注入している。 結果、老人ホームで流れてるようなヨボヨボなクラシック・ロックの印象から一転して、イマドキのお肌ツヤツヤでエネルギッシュな音に若返っている。もはやダニエルは「メタル界のディオ」だ。

今でこそスウェーデンを代表する、いやメタル界を代表するエンジニア/プロデューサーといえばイェンス・ボグレンだが、しかしイェンスがエンジニアとしてまだ駆け出しの頃、90年代から00年代初頭のスウェーデンのエンジニアの頃と言ったら、今作のプロデュースを担当したダニエル・バーグストランドに他ならなくて、彼はMeshuggahをはじめ、BehemothIn Flamesなどの誰もが知るエクストリーム系メタルバンドのプロデュースを数多く手がけたエンジニア界屈指の重鎮で、その良くも悪くもメタルシーンがある意味最も面白かった時期に活躍した彼とダニエル・ギルデンロウという「二人のダニエル」が、一世紀の時を経て遂に邂逅した、何とも感慨深い作品である。それこそ、メシュガーをよく知る一人、というより、メシュガーをここまでの怪物バンドにまで育て上げた生みの親と言うべき、繁忙期のメタルシーンを語る上で欠かせない偉大な人物の一人だ。比較的オールラウンダーに何でもこなすイェンス・ボグレンと違って、エクストリーム系バンドに特化したトガッた音作りに定評のあるダニエルのエンジニアリング・スタイルは、21位世紀となった今でも色あせることなく、常に最先端の音であり続けている。

しっかし、90年代のフレドリック・ノルドストロームに始まって、00年代のダニエル・バーグストランド、 そして10年代のイェンス・ボグレンという、昔と今のメタルシーンを『裏』から支え続けてきた3人の名エンジニア、そしてダニエル・ギルデンロウを生み出したスウェーデン人ってやっぱ音楽の天才だわ。
 
イン・ザ・パッシング・ライト・オヴ・デイ
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Periphery 『Periphery III: Select Difficulty』

Artist Periphery
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Album 『Periphery III: Select Difficulty』
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Tracklist

01. The Price is Wrong
02. Motormouth
03. Marigold
04. The Way The News Goes…
05. Remain Indoors
06. Habitual Line-Stepper
07. Flatline
08. Absolomb
09. Catch Fire
10. Prayer Position
11. Lune
 
21世紀のメタルシーンに突如として現れた「Djent」とかいう新興界隈にも「変化」が訪れつつある。このPeripheryは、Djent界の第一人者で知られる”Bulb”ことミーシャ・マンソー率いる6人組で、彼らは2010年にセルフタイトルのPeripheryで颯爽とメタルシーンに登場すると、その緻密に構成されたテクニカルでメカニカルな、インテリジェンスに溢れた近未来型のメタル・サウンドで、それこそ今までになかった「メタルの新しい形」をシーンに提示し、瞬く間に「テクニカルなメタル」が好きなオタクを中心に多くの支持を集めることに成功し、そして今に至る。

このPeripheryもその音楽性から垣間見れるように相当頭のいいスマートなバンドで、というより、自分たちが置かれた立場とDjent界の第一人者としての役割というのをよく理解していて、2012年作の2ndアルバムPeriphery IIでは「ジェントってなんぞ?」ってなってる、イマイチDjentのことをよく理解していない、主にDream Theaterが好きな老害プログレ・メタラーに擦り寄ったかと思えば、ポケモンシリーズをオマージュした2015年作のダブルアルバムJuggernaut: Omega&Alphaでは、Djentの可能性を広げるエモキッズ向けのポストハードコア然とした作風で、 今度はオッサンから一転してティーンエージャーに擦り寄った作品を発表した。そして、再びバンド名を冠した本作の『Periphery III: Select Difficulty』は、その2ndアルバムとダブルアルバムで釣り上げた、1stアルバムの『Periphery』を知らないオッサンとキッズをドン引きさせると同時に、2ndとダブルアルバムで(ジェントとかいうジャンルに)馴れさせたオッサン&キッズに、何度目の正直じゃあないが、あらためてDjentの素晴らしさを知らしめるかのような作品となっている。

その老害プログレ親父やエモキッズにDjentたるやをガツンと叩き込むかの如し、幕開けを飾る#1”The Price Is Wrong”から、1stアルバム『Periphery』をよりゴリゴリかつアグレッシヴかつカオティックにアップデイトしたエクストリーム・ジェントとフロントマンのスペンサー・ソテロのキレッキレなブチギレボイスが、「これがジェントや」と言わんばかり、それこそジェント・リーばりの百烈拳を叩き込むかのような曲で、これにて『Periphery』のカムバックを堂々宣言する。引き続きジェント・リーの激しい攻撃で畳みかける#2”Motormouth”、前作のダブルアルバムを彷彿とさせるキャッチーなメロディ重視の曲かと思いきや、中盤以降は壮大なクワイヤやストリングスを織り交ぜつつ、アウトロでは「宇宙すごい」としか言いようがないUneven Structureばりの超宇宙空間を形成し始める#3”Marigold”、一転してイントロからフュージョンチックな雰囲気でオシャンティでムーディに聴かせながら、ブラストで突っ走りながらスペンサーがメロディックに歌い上げるサビへと怒涛の展開を見せる#4”The Way The News Goes...”、ゲーム音楽的なピコピコアレンジがもはや狂気的なナニかにしか聞こえない#5”Remain Indoors”、2ndアルバムのストリングスをより上品に完成させたのが#6”Habitual Line-Stepper”、前作のダブルアルバムで培ったスペンサーのエモキッズ歓喜なボーカルが冴え渡る#7”Flatline”、アルバムのハイライトを飾る#8”Absolomb”、一転してメロウに聴かせる#9”Catch Fire”、映画『セッション』のフレッチャー先生が「これがジェントのファッキン・テテテテンポだ!」とキッズに説教するかのような#10”Prayer Postion”、そしてクライマックスを飾るは#11”Lune”で、ANATHEMA”Distant Satellites”ばりの壮麗優美なオーケストラとグルーヴィなドラミングが、超絶スケールの宇宙を描きながらアツいビートを刻んでいく。

セルフタイトルを冠した1stアルバムの近未来型ジェントと2ndアルバムのDTリスペクトな王道プログレ・メタルとダブルアルバムのエモ/ポップなそれぞれの要素をエクストリーム合体させたような、とにかく2ndアルバムとダブルアルバムという異種目の界隈で培った経験が揺るぎない糧となって本作に現れている。勿論、ジェント・リーの部分だけじゃなくて、スペンサーのボーカル面をはじめ、イントロやアウトロでのストリングスを擁したギミックも2ndアルバムを俄然スケールアップさせた感じで、要するにバンドの集大成的なアルバムと呼べるし、これはもう最高傑作と言っても過言じゃあない。

彼らと並んでDjent界を代表するUKのTesseracTは、ご存じスティーヴン・ウィルソンが取り仕切るPost-Progressive/Kscope界隈の方面へと向かい、一方で一躍世界的なギタリストとなったトシン・アバシ率いるAnimals As Leadersトシンの独自路線というかアンタッチャブルな存在だし、となると、このDjentとかいうジャンルを大衆音楽すなわちメインストリームへと押し上げるため、その布教活動をたった一人で恥を忍んで孤軍奮闘してきた張本人がこのPeripheryだ。彼らはそうして、2ndアルバムと前作のダブルアルバムでプログレ親父とエモキッズに「ジェントとはナニか」を上から目線で優しく説き伏せてあげたつもりだったが、実はそれはむしろ逆で、むしろ逆に彼ら自身がプログレ親父とエモキッズから様々なことを学び、そこで学んだアイデアを吸収して今のPeripheryがあるのだと、そう「気づかされた」一枚でもある。正直、ここまで聴いてて素直に気持ちがいいド直球のジェントは久々かもしれない。最も重要なのは、それをやったのが他ならぬ界隈を最前で牽引してきたペリフェリーってのが何よりも嬉しい。これは、「やるべき奴らがやった結果」です。
 
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Protest the Hero 『Pacific Myth』

Artist Protest the Hero
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EP 『Pacific Myth』
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Tracklist

01. Tidal
02. Ragged Tooth
03. Cold Water
04. Cataract
05. Harbinger
06. Caravan
07. Tidal(Instrumental)
08. Ragged Tooth(Instrumental)
09. Cold Water(Instrumental)
10. Cataract(Instrumental)
11. Harbinger(Instrumental)
12. Caravan(Instrumental)

や映画業界やアニメ/ゲーム業界はじめ、アイドル界隈やらフェス界隈やらを引っ括めた音楽業界など、多岐の分野に渡って「クラウドファンディング」を活用した創作現場の「新しい形」が徐々に広がりを見せている。その流れはとどまることを知らず、もはや「主流」となる勢いだ。中でも、この音楽の世界でいち早く「クラウドファンディング」を駆使した、全く新しい「音楽制作の現場」をシーンに指し示したのが、カナダ生まれの「Kick-Ass!!」「スーパーヒーロー」ことProtest the Heroだ。そんな彼らが「クラウドファンディング」でアルバムの制作資金を募って完成させたのが、2013年にリリースされた4thアルバムのVolitionだ。

しかし、その2013年から現在の間に、この日本でもSpotifyApple Musicなどの音楽ストリーミングサービスが続々とローンチし、それにより僕たち音楽リスナーを取り巻くリスニング環境は大きく一変した。もはや何が正しい音楽活動なのか?今の時代に「アルバム」としてリリースする意味はあるのか?彼らは、21世紀における音楽活動および音楽制作の現場に疑問を呈していた。そんな意識の高さに定評のあるカナダ人の先進的かつリベラルな考え方は、音楽の世界でも遺憾なく発揮されている。前作から約三年ぶりとなる今回のEPも「クラウドファンディング」で制作資金を募り、今度は「アルバムの時代は終わった」、これからは「シングル」=『アルバム』であるという新定義を掲げ、毎月連続して新曲をリリースするという、またしても彼らは斬新かつ画期的な「音楽制作」のあり方をシーンに提示してみせた。

しかし、彼らの画期的なアイデアと斬新な発想に賛同するファンや同業のミュージシャン達の英知が集結し、それが奇跡の賜物となって完成した前作のVolitionを発表した直後に、主要なソングライターでありドラマーのが、その翌年にはベーシストのアリフが脱退し、バンド結成時からのオリジナルメンバーの二人がバンドを去り、もはや基本的な音楽活動すらままならない存続の危機に陥った今の彼らは、まさに「崖っぷちのスーパーヒーロー」だ。そんな期待と不安が蠢く中で幕開けを飾る#1”Tidal”から、フロントマンのロディ・ウォーカーによるスクリーム系のボイスを排除したポップでキャッチーな歌を主体に、PtHらしいBPM指数の高いテクニカルなサウンドをはじめ、PtHなりに「Djentとはナニか」を解釈して応用したインストパートからドラマティックな曲構成まで、この目まぐるしい展開力は嘘偽りなくPtHそのものだが、しかしどこか「年老いた感」は否めない。その#1以上に転調/変拍子/ポリリズムを複雑に織り交ぜながら、よりプログレスに展開する#2”Ragged Tooth”Scale the SummitPolyphiaなどのインスト系バンドを連想させる叙情的なフレーズを用いて奇想天外に展開する#3”Cold Water”「スーパーヒーロー」だったあの頃の栄光を追いかけるような#4”Cataract”まで・・・

二人のオリメンを欠いた「スーパーヒーロー」は、ベーシスト不在のまま、2013年から交友のあるドラマーのミカエルを正式メンバーとして迎え入れ、現状の戦力とスキルで可能な限りを尽くして「過去のスーパーヒーロー」に少しでも近づけるように、最善かつ最大の努力を惜しむことなく発揮している。が、「スーパーヒーロー」の専売特許である急転直下型の緩急を織り交ぜた鬼気迫る展開や予測不能でドラマティックな曲構成は、初期すなわち全盛期の頃と比べるともはや天と地の差がある。しかし、それは「全盛期と比較して」の話で、あくまで全盛期と比べると「様式美的」に感じるというだけであって、「過去のスーパーヒーロー」と比較さえしなければ十分に質の高いプログレ・メタルに違いない。

4曲目を聴き終えたあたりで、「いつ解散してもおかしくない瀕死の状態で良くやってるよ」と慰めというよりは同情の言葉を発しかけたその時、次の#5”Harbinger”とラストの#6”Caravan”を聴いて僕は耳を疑った。まだ「スーパーヒーロー」だった初期のブルータルな攻撃性とカナダ人特有の変態性とインテリジェンスが融合した、ここまでの4曲とは明らかにクオリティが違い過ぎる曲で、特に約9分ある大作の#6ではヘヴィでスリリングなリフ回しとロディの「やんちゃボーイ」全開のボーカルパフォーマンスをはじめ、そして彼らの最高傑作と名高い2ndアルバム『Fortress』を彷彿とさせるストリングスをぶっ込んでくる演出面を含めて、「これだ、これが俺たちが聴きたいスーパーヒーローだ。まだ解散の二文字を出すのは時期尚早だ。まだまだやれるやん!」そう思わせる名曲だ。

これは、在りし日に一世を風靡した「スーパーヒーロー」が再び翼を広げ、21世紀の現代に飛び立つカムバック物語だ。 当時(全盛期)のメンバーの半数が去った「崖っぷちのスーパーヒーロー」は、21世紀の複雑で流動的な音楽シーンをどう見極め、そしてどう生き抜いていくのだろう。しかし『希望』は、この『Pacific Myth』の中にある。僕は、映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のラストで『奇跡』を目撃したエマ・ストーンと全く同じ表情をしながら、次のフルアルバムを聴いていることを強く願うとともに、「スーパーヒーロー」の完全復活を期待したい。
 
Pacific Myth
Pacific Myth
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