Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

レビュー (T)

TesseracT 『Sonder』

Artist TesseracT
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Album 『Sonder』

Sonder

Tracklist
01. Luminary
02. King
03. Orbital
04. Juno
05. Beneath My Skin
06. Mirror Image
07. Smile
08. The Arrow

実質初代ボーカリストのダニエル・トンプキンスくんの復帰作となる、かのKscopeから発表された3rdアルバム『Polaris』の中でTesseracTがやってのけたのは、A Perfect Circleの2ndアルバム『Thirteenth Step』の影響下にある”オルタナティブ・ジェント”で、しかしそのTesseracTを裏で操っていた黒の組織・・・それが「秘密結社K」の創始者スティーヴン・ウィルソンと映画音楽界の巨匠ハンス・ジマーだった事を、あの日の僕たちはまだ知らない。

あらためて、前作の『Polaris』って一体どんなアルバムだったのか?まず、1stフルアルバム『One』の後にダニエルくんが脱退し、その後のEP『Perspective』では新ボーカルにエリオットくんを迎えるが、その翌年にエモボーイのアッシュ・オハラくんを迎えた2ndアルバム『Altered State』をリリースする。そのアルバムでは、Djent史上最も”エモ”くてスパイス・ガールズみたいな”アイドル”顔負けのポップでキャッチーなアプローチを強め、それによりDjentとかいうアンダーグラウンドのメタルをオーバーグラウンドのエモキッズの耳に届けることに成功、今では本国最大のダウンロードフェスの常連となっていることからも、その成功はバンドの未来にとってもDjentの未来にとっても歴史的な快挙だった。

そのアルバムから一転して、ダニエルくんの復帰作となった3rdアルバムの『Polaris』は、正直はじめは駄作かと思ったけど、次第に「でもなんだこの得体の知れない感覚」みたいになって、遂にはTesseracTが変拍子の数式で作り出した四次元立方体の中で”TTポーズ”してたら誰かに見られているような気がして、その四次元立方体の外側にある”本棚の裏”という名の五次元空間をチラッと覗いてみたら、スティーヴン・ウィルソンハンス・ジマーが仲良く”TTポーズ”をしていたんだ。それこそニーチェの「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」の理論を地で行くような、それこそ劇伴をハンス・ジマーが手がけたSF映画『インターステラー』ばり五次元空間=本棚の裏にほっぽり出されたような、あるいは「それは人類が宇宙に進出して数百年後の世界、地球から二万光年離れた『惑星ポラリス』を舞台に”引力、即ち愛”を描く壮絶な物語」、そんな超絶epic!!な世界観があって、その作風的にも徹底した繰り返しの美学、徹底したミニマリズムの追求を目論んでいた。

ダニエルくん復帰第二弾となる今作の『Sonder』は、そんな「得体の知れない何か」みたいな予測不能のヤバさのあった、言うなれば”オルタナ系ジェント”すなわち”オルタード・ジェント”やってた前作の『惑星ポラリス』とは打って変わって、もはや現存するギターが鳴らせる低域の底が抜けたんじゃねぇかくらいのDjent史上最高に重厚なヘヴィネスを轟かせる、言うなれば”ジェント・ドゥーム”すなわち”ジェンドゥー”、あるいはスラッジ×ジェント=スラッジェントと称すべきメタルの新ジャンルを開拓している。そして、今作は過去最高に”ヘヴィ”なサウンドであると同時に、その一方でダニエルくんのボーカルは過去最高に”ポップ”な2ndアルバムに回帰している印象もあって、つまりヘヴィなのにポップで、相変わらず一般人を理詰めで論破するインテリヲタクのようで、要するにわかりやすくシンプルにTesseracTの魅力が37分に凝縮された作品となっている。



その、アルバム『Sonder』を構成する”重さ””ポップさ”という二大キーワードを象徴するのが、幕開けを飾る1stシングルの”Luminary”、そしてアルバムのリード曲で2ndシングルの”King”だ。その”重さ”=”絶望”を司るドゥーミーで鬼ヘヴィな七弦ギターと、”ポップさ”=”希望”を司るダニエルくんの時に激しいシャウトを交えたボイス・パフォーマンス、その”ポップ”と”ヘヴィ”の対比/コントラストをより強調した曲構成は、アルバム冒頭から今作の作風/コンセプトを明確に表している。

ハンス・ジマーが劇伴を手がけた映画『インターステラー』のメイン楽曲である”Cornfield Chase”、その名曲が奏でる主旋律の刹那的かつエモーショナルなメロディをフラッシュバックさせたのが、前作の2曲目に収録された”Hexes”に他ならなくて、まぎれもなくその系譜にある3曲目の”Orbital”は、もはやJulianna Barwick顔負けのアンビエント・ポップみたいな、とにかくSF映画ばりに超スペクタクルなアトモスフィアとダニエルくんによる”ボーカル講師”ならではの感情/表現力豊かな美声に謎の感動を覚える。【ボーカル講師兼テッせのフロントマン】という彼の肩書きは今作でも健在。

一転して再びドゥーミーなヘヴィネスとリーダーのアクルくんお得意のスラップ奏法を披露する4曲目の”Juno”、また一転して前作の名曲”Tourniquet”の系譜にある曲で、それこそAlcest『KODAMA』を彷彿とさせるノスタルジックな夢幻世界の中で、ダニエルくんのスピリチュアル・ボイスと洗練された美しすぎるボーカルが輝き放つ5曲目の”Beneath My Skin”、続く6曲目の”Mirror Image”は序盤から前作譲りのミニマルなアプローチを効かせながら、ダニエルくんのメインストリームのポップスをフォローしたメジャー感溢れるボーカル・メロディとともに安らかに展開し、そして中盤以降のスラッジ・メタルばりの無慈悲な轟音ヘヴィネスから怒涛のドゥーム展開へと繋がる、まさに今作イチのギャップ萌えな曲だ。この手のメシュガーがルーツの現代的なモダン・ヘヴィネスのスタイルでドゥームやったのって、それこそKATATONIA『Night Is the New Day』が初めてだと思うのだけど、この曲ではそのスタイルを更に重くアップデイトしている。先行公開された7曲目の”Smile”もシングルと同じ今作の”重さ”を量るキートラックの一つで、もうなんか重力を超越してドローンみたいな音の壁ができそうなくらいのヘヴィネスに脳が揺さぶられること必須。ラストを飾る8曲目の”The Arrow”は、7曲目の実質アウトロ的な役割を果たしている。

やってることは本当にシンプルで、2ndアルバムのポップなキャッチーさと前作のSF映画の劇伴およびアンビジェント/アトモスフィアを絶妙にブレンドしつつ、そこへ鬼ごっついヘヴィネスをプラスαして、曲単体だけでなくアルバム全体にも音の強弱とメリハリを与えている。完成度は前作以上だが、しかしその驚きは想定外ではなく想定内だ。確かに、「得体の知れない何か」=「未知との遭遇」のような驚きは少ないが、万人におすすめできる安定感抜群の良作には間違いない。聴きやすさという点では、それこそDjent入門書としても全然入りやすいので、このアルバムを期にそろそろ来日しそうな雰囲気もなくはない(皆んなで一緒に”TTポーズ”もといウェイ!!したい)。つうか、SWが来日決めた時点でもう何があっても驚かないです。ちなみに、国内盤には今作の3Dバイノーラルミックス盤が収録されており、手持ちのヘッドホニャイヤホンを使って生のスタジオライブのような臨場感溢れる、よりフラットでオーガニックなサウンドが楽しめる。

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TesseracT 『Polaris』

Artist TesseracT
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Album 『Polaris』
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Tracklist

01. Dystopia
02. Hexes
04. Tourniquet
05. Utopia
06. Phoenix
08. Cages
09. Seven Names
 
『十二支ん会議』
十二支ん会議

十二支ん会議 ・・・TesseracTKscopeの運命の引かれ合い、その伏線というのは過去にあって、それは当ブログの2013年度の年間BEST記事でも紹介したように、その年のイギリスの著名なプログレ専門雑誌『Prog Magazine』の年間BESTアルバムに、Kscopeの最高責任者兼CEOことスティーヴン・ウィルソン『The Raven That Refused To Sing』に次いで、TesseracTAltered Stateが二位に選出されたのだが、この時SWの号令によりKscopeおよびPost-Progressive界隈を取り仕切る幹部勢が緊急召集され、いわゆる現代プログレ界の『十二支ん会議』が秘密裏に執り行われた結果、満場一致でTesseracTKscope入りが『許可』された、そんな嘘のような本当の話がある(ネーよ)。

シックリ ・・・話は変わるけど→おいら、子供の頃から『MGS』ことメタルギアシリーズのフアンで、しかし新作が発売される度に「そういえばMGSってコナミのゲームなんだよな」みたいな、違和感というほどじゃあないけど妙なモヤモヤ感は無きにしもあらずで、とはいえ「コナミ以外から発売されるMGS」なんて想像もつかなかったし、なんだかんだ「MGSはコナミのゲーム」という認識は揺るぎなかったし、それについてこれ以上深く考えることはなかった。何を隠そう、このTesseracTCentury Mediaから華々しいデビューを飾り、これまで複数の作品を発表し続けていたのだけど、先ほどのコナミとMGSの関係性じゃあないが、やっぱり「妙な違和感」というのを感じていて、そして2ndアルバムAltered Stateを聴いた時にその違和感というのが自分の中で不快感に変わるくらい大きくなっていた。しかし、3作目となる『Polaris』Kscopeからリリースされると聞いた時は、驚きとともにこれまでの「妙な違和感」は完全に払拭され、なんだろう、パズルの最後のピースがハマった時のように物凄く「シックリ」きた。それはメタルギアシリーズの生みの親である小島秀夫監督がコナミを退社し、新しいプロジェクトをソニーの元で制作することを発表した時と全く同じで、どうだろう、思いのほか「シックリ」くるじゃあないか。

雇われ ・・・何も「シックリくる」のはそれだけじゃあない。おいら、過去の記事で「ジェントは雇われボーカルで、アルバムを出す度にボーカルが脱退するのがジェント界のオキテ」的な事を書いたような気がするのだけど、その伏線を回収するかのように、2012年に実質五代目ボーカリストとしてテッセラクトに加入したFF系イケメンデブことアッシュ・オハラ君が、いわゆる「音楽性の違い」を理由に2014年に脱退。その後任としてバンドに招き入れられた人物こそ、他でもないテッセラクトの三代目ボーカリストダニエル・トンプキンス君が奇跡的な復帰を果たしてる。ダニエルくんといえば、メタルシーンに衝撃を与えたデビュー作のEP『Concealing Fate』、その組曲で構成された1stフルアルバム『One』のボーカリストで知られ、しかし長年の夢だったボーカル講師に専念するため2011年に脱退、彼の脱退はジェントシーンに大きな衝撃を与え、これからジェントムーブメントを起こすぜ!って時に、始まる前から早くもジェントの終わりを告げたかのように見えた。しかし、テッセラクトはアッシュ君を迎えて2ndアルバムの『Altered State』を発表し、絶対的な存在だったダニエル君が不在でもやっていけることを証明した。そして彼らは、再びジェント界のアイドル「スパイス・ボーイズ」あるいは「ジェント界のワンダイレクション」としての地位を確立したのだった。



三年後 ・・・目出度くダニエル君がバンドに復帰したのは良いとして、じゃあ実際のところ、アッシュ君の持ち味である高域中心のパフォーマンスに焦点を合わせた、ドチャクソエピカルなサウンド・スケープを形成していた『Altered State』の楽曲を、果たしてダン君は歌いこなせるのか・・・?という疑問にぶち当たる。しかし「安心してください、歌えますよ」とばかり、ダン君が復帰して間もなくテッセラクトは初のライブ作品『Odyssey/Scala』を発表し、そのライブの中でダン君は2ndアルバムの曲を完璧に自分のモノにすると同時に、まるで某漫画の『二年後』ならぬ『三年後』にパワーアップして「帰ってきたダニエル・トンプキンス」を新旧のフアンに復帰報告がてら堂々披露している。こうしてライブ映像およびダン君のライブ・アレンジ能力の高さと圧倒的なナルシー系ボイス・パフォーマンスを観ても、伊達に三年間ボーカル講師として修行積んでこなかったなというか、やはりテッセラクトのボーカルにはダニエル君が歴代の中でも一番「シックリ」くる、その事を再確認させる。要するに、いくらFF系のイケメンでもデブにはテッセのボーカルは務まらない、というわけだ。

惑星ポラリス ・・・そんな流れがあって発表された、3rdアルバムの『Polaris』を一言で表すなら、やはりダニエルの復帰およびKscopeに移籍した影響はあまりにも大きかった、ということ。彼らは盟友ペリフェリーとは違った形で、テッセラクトなりにジェントとかいうアンダーグラウンドな新興ジャンルをメインストリームにブチ上げようとしている。まず幕開けを飾る#1の”Dystopia”からして、前作の”Of Matter – Proxy”のポストジェント路線を素直に踏襲した、まるで機械都市を形成するかの如し無機的かつ理知的な変拍子サウンドとダニエル君の多彩なボイス&コーラス・ワーク、そして1stアルバムを彷彿とさせるアンビエント感マシマシな神秘的なサウンド・スケープに、俺たちのテッセラクトが帰ってきたと歓喜するのもつかの間、アウトロのアンビエーションな音響空間を引き継いで始まり、まるで映画『インターステラー』のメインテーマである”Cornfield Chase”の主旋律に通じる、まるでガルガンチュアの中を独りで彷徨うマシュー・マコノヒーのように猛烈な孤独感に苛まれる、トリップ・ホップ/アンビエンスなアトモスフィアを全域に噴出する始まりから、ゲストに迎えられたマーティン・グレッチの憂愁な歌声をフューチャーした曲で、そのマーティンとダン君による無慈悲なハーモニーが織りなす「存在の耐えられないエモさ」に、まるで時空の歪みのように胸が締め付けられる#2”Hexes”、UKポストハードコアあるいはOGのKarnivoolを彷彿とさせるダン君の潤いのあるボーカル・メロディを中心に、彼らが完全に歌モノ化したことを証明するかのような#3”Survival”、そして本作のハイライトを飾る#4”Tourniquet”では、彼らがPost-Progressive化したことを裏付けるポストロック然としたミニマルなリフ、そしてCynicポール・マスヴィダルあるいはUKのガールズ・グループが偶に歌ってそうなフェミニズムをまとった、女性ボーカル顔負けの繊細で美しすぎるダニエル君のボイス&コーラスでアンビエント・ポップ的な静寂を奏でる始まりから、「I Promise You.」とかいう無垢で真っ直ぐなリリックとともに、『ポラリス』=「こぐま座で最も明るい恒星」であるという物理学的な事実に基づいた、地上の暗闇を切り拓き星空を突き抜け、そして地平線を超えて『北極星』として煌めき放つかのような、これまでの全てのディストピアから解放するダニエル君の超絶ハイトーン・ボイスへと繋がった瞬間、人類は「エモさ」の限界点を超える。

本棚の裏 ・・・オープニングから続いたディストピアの世界から開放された彼らテッセラクトは、それと対になる楽園都市”Utopia”に辿り着く。ダニエル君の歌い始めから「ジェント界のメイナード・ジェームス・キーナン」を襲名するこの曲は、Destiny Potato顔負けの軽快なリフやラップ調のボイス・パフォーマンスを垣間見せたりと、それこそToolSikthというテッセの”ルーツ”を音楽という名の宇宙空間の中で紡ぎだすかのような一曲だ。そして、ライブ作品の『Odyssey/Scala』でも垣間見せた、ダン君の超絶ファルセットボイスが不死鳥のように銀河を駆け巡る"6”Phoenix”、今作の中では最も異色ながら最も普遍的なジェントでもある#7”Messenger”、それはワームホールさながら、それはアンビエンスな音の粒子が降り注ぐガルガンチュアを彷徨うマシュー・マコノヒーさながらの#8”Cages”、ガルガンチュアの底すらない暗闇(本棚の裏)に堕ちたテッセラクト(四次元立方体)は、彼ら(五次元)の意思を三次元の人類に伝えるメッセンジャーとして、本棚の裏から2進数を用いて超絶epicッ!!な感情を爆発させる#9”Seven Names”、そのアウトロの余韻あるいはカタルシスは映画『インターステラー』を観終えた時、あるいは漫画『ジョジョ6部』を読み終えた時と全く同じものだった。

new_new_1280x720「やっぱ俺ら、お前がいないとダメだわ。復帰してくれないか?」

new_new_1280x720kkm「・・・いいけど、一つだけ条件がある」

new_new_1280x720「・・・条件って?」

new_new_1280x720kkm「お前ら今日から俺のバックバンドな?」

new_new_1280x720「えっ」

new_new_1280x720kkm「バックバンドな?」

new_new_1280x720「は、はい・・・」 

new_new_1280x720kkm「ククク...(計画通り)」 

したたかな関係 ・・・賛否は間違いなくある。そう言い切れるほど、もはやダニエル君がバンド復帰する条件として→「自分中心のバンドになれ」という要求を提示し、その条件にリーダーのアクルが屈した、そんなダニエル復帰の裏取引があったんじゃあないかと邪推してしまうほど、その光景が容易に浮かんでくるくらい「ダニエル推し」のアルバムとなっている。これまでは、ボーカルは人工知能ロボットのように感情を制御された一つの楽器、一つの音みたいな役割を担い、その音の一つ一つの緻密な作業の積み重ねによって、バンドのコンセプトでもあるテッセラクト(四次元超立方体)を構築していく音楽性が彼らの特徴で、その点では前作はバンドとアッシュ君のエモ・ボイスのバランスは理想的だったが、今作では「絶対的なフロントマン」すなわち「ジェント界の夜神月」になりたいダニエル君側の思惑と、テッセラクトがKscope入りしてPost-Progressive化したことを界隈の幹部に認めさせたいアクル率いるバンド側の利害が一致した形と言える。つまり、これまで音の根幹を担っていたバンド側が、今作ではダニエル君のボイスという名のリード楽器に逆に引っ張られる形となっている。なんつうか、この一種の「したたかな関係」というかビジネスライクな関係って、まさしく「ジェント界のDream Theater」と呼ぶに相応しいというか、皮肉だがその「したたかな関係」が明るみになった所が、今作一番の面白さに繋がっているのも事実。しっかし・・・いいね~この関係性、ゾクゾクしちゃう。

答え ・・・これまでのジェント然としたポリカルなリフ/グルーヴ主体というより、ハンス・ジマーが手がけた映画『インターステラー』のサントラあるいはPost-P界の元祖であるピンク・フロイドリスペクトなアンビエンス/プログラミングを筆頭に、まさしくポスト-系特有のリリカルな展開力だったり、ラップやファルセットを駆使したダニエル君の実に"オルタナティブ"なボイス・パフォーマンスだったり、そして唯一のゲストがジェント界隈からではなくオルタナ界隈からという人選的にも、確信的にPost-Progressive界隈の音に直結したオルタナ/アート・ロック風のアレンジを軸に楽曲を組み立てている。当然、ジェントの特性である「音で聴かせるジャンル」として考えると、その「音で聴かせる」イメージは皆無に等しいし、もはやこれまでのテッセラクトとは別バンドとして捉えることも決して不可能ではない。もはやジェントというより"ポスト系"のバンドという認識を持つべきかもしれない。なぜなら、今作をジェントとして聴くと過去作と比べて数段格落ちしてしまうからだ。今作は、あくまでもポスト系のサウンドを主体に、そにへ調味料としてジェント成分を小さじいっぱいまぶしている形で、だからPost-Djentという呼び方がこれ以上「シックリ」くるものはない。それこそ、Leprousみたいなボーカル主導のポストジェントとして聴けば俄然「シックリ」くるハズだ。しかし、「歌えるボーカリスト」がフロントマンにいると必然的にこうなってしまうのは、もはや仕方のないことなのかなというか、これがテッセラクトなりの「ジェントをメインストリームにブチ上げる」ことへの答えなんだって。作品を重ねる毎に、初期の普遍的なジェントとはかけ離れていくという意味では、前作からのポストジェント化が著しく進行した結果、という風に納得できなくもない。でもまさか、先行公開時は地味に聴こえた”Messenger”が今作で最もギョントしてるなんて思いもしなかった。

黄金の距離感 ・・・極端な話、今作に対する評価って、『傑作』か『駄作』の真っ二つに別れると思う。勿論、Century Media在籍時のテッセラクトと比べると→「音がスカスカじゃねーか」とか「バンドのインストクソじゃねーか」とか、復帰したダニエル君に対しては「ボーカル講師の技能検定試験かな?」とか「オメーはニコニコ動画のインターネットカラオケマンかよ」とか「自慰行為はSkyharborでやれ」とか「バンドを私物化するな」とか、皮肉交じりにディスる輩も少なくないだろう。事実、それくらいボーカルアゲ↑↑からのバンドサゲ↓↓が顕著に出た作品だ。しかし、「Kscope所属のテッセラクト」であると考えれば、今作における変化は全て想定内の出来事でしかなくて、勿論Kscopeに移ったことで「音がスカスカ」になるという懸念は現実のものとなったが、アルバムを聴きこんでいく中で実は「スカスカじゃなかった」という結論に辿り着いた。それというのも→過去最高のボイス・パフォーマンスを披露しているダニエル君とバンドの距離感、パッと見「スカスカ」に思えた音の空間や隙間を埋めるアンビエンス/音響の今作における役割と存在感を考えれば、これ以上の音を入れる余地や空間はゼロに等しかったと『理解』できる。要するに→「最小の音数であることが最大の音数である」と言わんばかり、そのバンドの音とボーカルの音と粒子の音という名の無数の小さな四次元立方体が点と点で繋がって一つの大きな『惑星ポラリス』を創造し、その音と音の距離感は他でもない黄金比』で描き出された距離感であり、これは「欠けた鉄球は楕円球になり、完璧な無限の回転ではなくなる」という『ジョジョ7部』の主人公ジャイロ・ツェペリの鉄球理論と同じで、これ以上音数が増えたり減ったりしたらその時点で完璧な四次元立方体は完成しない、それぐらい極限まで研ぎ澄まされたサウンド・スケープは、まさしく「音のワームホール」としか他に例えようがない。自分も初め聴いた時は「もしかして駄作なんじゃねーかこれ」って思った。けど、どうだろう、これが黄金比』の距離感で形成された黄金の音』だと、この音の重力方程式を解明することに成功した瞬間、『駄作』が『傑作』に化け、そして気づくと僕はマシュー・マコノヒーばりに咽び泣いていた。

選ばれし者 ・・・この重力方程式を解き明かした結果→『彼ら』=???『意思』本棚の裏という【テッセラクト=四次元立方体】を介して、三次元の現代人に伝えるMessengerとして五次元の『彼ら』「選ばれた」のがTesseracTだったんだ。まさにProgressiveに『進歩』した「プログレの未来」を象徴するかのような一枚であり、そして何よりも「やっぱテッセのボーカルはダニエル君がナンバーワン!」だと確信させた一枚でもあり、そして「シックリ」とは『納得』することでもあるんだと思い知らされた作品でもあった。ちなみに、国内盤はANATHEMA『Distant Satellites』でもお馴染みのワードレコーズからという事で、昨年ANATHEMAの来日公演を実現させたセーソクとも信頼関係のあるレーベルなんでワンチャン来日を期待したいし、欲を言うならこのテッセラクトと同じく新作のLove, Fear and the Time Machineでポスト界入りを果たしたRiversideとのカップリングで来日したらリアルにマシュー・マコノヒー以上に咽び泣く自信あります。だからセーソク頼む!
 
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tricot 『爆裂トリコさん』&『小学生と宇宙』

Artist tricot
tricot

1st mini Album 『爆裂トリコさん』
爆裂トリコさん

Tracklist
01. 爆裂パニエさん
02. bitter
03. 42℃
04. アナメイン
05. slow line
06. Laststep (Acoustic)

2nd mini Album 『小学生と宇宙』
小学生と宇宙

Tracklist
01. G.N.S
02. 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
03. しちならべ
04. ひと飲みで
05. フレミング
06. MATSURI

ガールズ・ロック界のBABYMETAL ・・・あのインスタグラムからも一目置かれ始め、着々と"ガールズ・ロック界のBABYMETAL"への道を辿りつつある京都発の変拍子(オカン顔)ガールこと、tricotの2ndアルバムA N Dと1stアルバムのT H Eが思いのほか俺の感性のツボにハマって、特に最新作の『A N D』は盟友赤い公園の名盤『猛烈リトミック』に一矢報いるかのような、それこそUK発祥の"Post-Progressive"とかいう新興ジャンルが(少なくともこの日本では)"女性的"なジャンルである事を立証するかのような一枚だった。となると、これだけじゃ飽きたらず最初期の音源も気になってくるのは必然的な流れで、何よりも二度目の正直的なノリでBOOM BOOM SATELLITESのサポート・ライブの予習がてら、2011年にリリースされた1stミニ・アルバム『爆裂トリコさん』をリマスターして再発された昨年の音源と、2012年にリリースされた2ndミニ・アルバム『小学生と宇宙』を聴いてみた。
 

『爆裂トリコさん』 ・・・オープニングを飾る”爆裂パニエさん”はトリコ屈指の名曲とされる曲で、ウリとする爆裂変拍子やイッキュウによるお得意の似非ラップ・パートを織り交ぜながら、まだ初々しさの残る不安定なリズム感と荒削りなサウンドが独特のアンサンブルを形成していく、それこそトリコの音楽を象徴するかのような一曲だ。で、シュールなコーラス主体の”bitter”やマスロック然としたインスト曲の”アナメイン”、そして惜しくも解散した宇宙コンビニ辺りに強い影響を与えていそうな”42℃”やパニエさんと並んで初期の名曲として知られる”slow line”などのオルタナ風のエモーショナルな楽曲からアコースティックな”Laststep”まで、ミニ・アルバムであるのにも関わらず、この頃から既にユニークなライティング能力や濃厚なバンド・アンサンブル&グルーヴ、そしてメンバーの高いポテンシャルを発揮している。こりゃ話題になるわけだ。

・・・この頃のクレジットを見ると、基本的にキダモティフォことキダ先輩が作曲を担当していて、その作風としてもキダ先輩のギター主導からなる教科書通りのマスロック曲で構成されている。確かに、リズム面やボーカルを含めた演奏技術はまだまだ発展途上といった感じは否めないが、コピバン軽音サークル上がりみたいなシロウト臭い雰囲気は初期の特権と言えるし、一点の曇もない純度100%のエモさは初期音源ならではの味がある。フルアルバムのように肩肘張ったバッキバキな変拍子の押し売りは一切なくて、このEPではあくまでもバンドのアンサンブルを重視した作品、バンドが今やれることを凝縮した最初期ならではの一枚となっている。こうして遡って音源を聴いていくと、俄然komaki♂の存在の大きさを痛感するばかりで、まぁ、それはしょうがない小宮山。ともあれ、この『爆裂トリコさん』赤い公園で言うところの黒盤レベルの完成度はあります。



『小学生と宇宙』 ・・・その翌年にリリースされたのが『小学生と宇宙』で、まずリマスターされた『爆裂トリコさん』と比べるとデモ音源かと思うくらい露骨に音質が悪い。でもって、このジャケが意味不明過ぎて笑える。そのジャケが醸し出すオモロいイメージとは裏腹に、イッキュウによるウィスパーボイスとドリーミーな世界観が織りなす"オルタナティブ宇宙"みたいな”G.N.S”で幕を開け、いわゆる"非・踊れる系"を宣言するかのような”夢見がちな少女、舞い上がる、空へ”をはじめ、オシャンティな側面を垣間見せる”しちならべ”『A N D』”QFF”の原形とも取れるような”フレミング””庭”の原形となるような”MATSURI”まで、前作とは一転して今作ではロキノン系ライクなノリとポストロッキンなメロさの側面をフューチャーした作風となっている。ちなみに、この作品から作曲はtricot標記に変わってたりする。

過去三作品≠『A N D』 ・・・トリコはこの2枚のミニ・アルバムを経て、その翌年に自身初のフルアルバムとなる『T H E』へと繋がっていくのだが、なんやかんやトリコがやってる事(やりたいこと)は初期の頃から一貫して変わっていないのがわかる。つまり、前作の『爆裂トリコさん』で表の顔を披露してから、次作の『小学生と宇宙』で裏の一面を垣間見せ、そしてその二作を表裏一体化させて素直にアップデイトさせたのが1stアルバムの『T H E』みたいな、シッカリと段階を踏んだ上で誕生した1stアルバムだという事が理解できる。この2枚のEPは、フルアルバムへの伏線やトリコの音の原点が詰まった作品であり、良くも悪くも中嶋イッキュウの歌唱力は今と比べても大して変わってないので、お陰で今の音源と聴き比べてもそこまで古い音源という違和感はない。しかし、その"やりたいこと"に顕著な変化が訪れたのが最新作の『A N D』とかいう存在で、この2枚のミニ・アルバムから1stフル『T H E』までの一貫したサウンド・スタイルからの脱却を図り、俄然ソリッドに洗練されたサウンドへと著しい変化を見せたこのアルバムは、それこそPost-Progressiveに精通するオシャンティなアレンジやポスト-プログレスな展開力に磨きをかけた、つまり音楽的な面白さを見出すことに成功した、と同時に"オルタナティブ・バンド"としての可能性を示した"攻め"の作品だった。このアルバムでトリコの音楽性、その振り幅は間違いなく広がったし、シングル『E』のカップリング曲でベースのヒロミ・ヒロヒロが初めて作詞作曲とボーカルを担当した”ダイバー”では、一種の激情系胸キュンポストブラックみたいな事やってたりと、個々のメンバーがそれぞれマルチな才能を多方に発揮し始めているのも実に興味深い(ヒロミ・ヒロヒロのソロデビュー不可避)。ともあれ、今月の赤い公園のマンマンツアーの前に何としてもヒロミ・ヒロヒロをこの目で確かめねば!なお、ライブ当日は台風が直撃する模様・・・
 
爆裂トリコさん
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tricot 『T H E』

Artist tricot
tricot

Album 『T H E』
T H E

Tracklist
1. pool side
3. 飛べ
4. おもてなし
5. art sick
6. C&C
8. 初耳
10. タラッタラッタ
11. CGPP
12. Swimmer
13. おやすみ

イッキュウ中嶋 ・・・ところでtricot中嶋イッキュウって、子供の頃に隣に住んでいた同級生のちょっとエロくてちょっと胸元に隙のあるマイルドヤンキー風のオカン、みたいなフインキのある顔してて、この手の顔が好きな奴には本当に好きな顔なんだろうなって想像したりするのだけど、そんなイッキュウ中嶋率いる"ドヤ顔変拍子ガール"ことtricotの2ndアルバムA N Dは、ドラマーKomaki♂の脱退という危機的な状況の中で、これからのトリコの可能性と方向性を必死にもがき苦しみながら模索する姿に真の"エモさ"を垣間見た、それはそれは面白いアルバムだった。そうなると必然的に、2013年にリリースされた1stフルアルバム『T H E』の存在が気になってくる。この『T H E』は、さすがに1stアルバムというだけあって、バンドの熱気と初期衝動的な勢い、そして一番のウリである変拍子まで、tricotの魅力が余すことなく披露されている。
 


『A N D』≠『猛烈リトミック』 ・・・セッション風の静かなイントロで幕を開ける#1に次いで始まる#2"POOL"からして、まるでロキノン厨のようにハメ外してドンチャン騒ぎするパンキッシュなノリと専売特許である変拍子が変幻自在に絡み合い聴く者を翻弄していく、それこそ自称"非・踊らせ系"を地で行くようなキラートラックだ。で、ゴリゴリなギターで「後ろを振り向くな」とばかりに全力疾走するハードコア・パンクなイントロから、抑えきれない初期衝動と猛烈な焦燥感を伴って、モティフォヒロミ・ヒロヒロによるコーラスを交えたエモーショナルなサビへと、音という名の感情を激情的に爆発させていくtricot屈指の名曲と名高い#3"飛べ"初期椎名林檎リスペクトな中嶋イッキュウによるサビメロとモティフォによるプログレッシヴ・デスメタルばりに鬼エゲツナイGリフの応酬がスリリングに交錯する#4"おもてなし"までの完璧な流れを耳にすれば、この時点で2ndアルバムA N Dの完成度を遥かに凌駕する作品だという事がわかる。と同時に、これを聴くといかに『A N D』が異質で異様なアルバムだったのか、という事も垣間見えてくる。とにかく、音数の多さや音の密度が濃ゆい。突拍子もなく"トリコ流のマスパペ"やってみたり、時にサブカル気取ったり、はたまたロキノン厨に媚び売ったり、しまいにはH Zett Mのジャズィなピアノぶっ込んできたりと、まるで流れもクソもない阪神タイガース打線ばりにチグハグした、もはや「こいつら一体ナニがやりたいんだ!?」ってくらい迷走していた『A N D』とは違って、この『T H E』では至極真面目なマスロックやってて、最初から最後まで一貫して"やりたい音楽"が貫かれている。確かに、2ndの『A N D』は幅広い曲調が詰め込まれた、いわゆる"バラエティ豊か"な作品と言えるかもしれない。が、それは作品としての"まとまり"がある上で"バラエティ豊か"と言って初めて成立する事で、しかし『A N D』の場合は"バラエティ豊か"というより統一感がなくてバラバラと言う方が的確な気もする。そういった意味では、赤い公園猛烈リトミックこそ"バラエティ豊か"という表現を用いるのに相応しい最もたる例だ。やはり『A N D』は、どうあがいても猛烈リトミックの代わりにはなれないのだ。
 


変拍子≒突拍子 ・・・そのマスロック然とした弾力のあるリフから放たれる破天荒なリズムと、中嶋イッキュウによる熱量に溢れたエモーショナルな爆裂ボーカル、そして在りし日のKomaki♂によるドラム・グルーヴが絶妙な相乗効果を生んでいて、そのシンクロ率は次作のA N Dとは比じゃないくらい高濃度の音エネルギーを発している。特にサビに持っていくまでの過程が練りに練られている事もあって、それ故にインディレーベルらしい良い意味でシロウト臭いイッキュウの歌がド直球に耳に入ってくる。しかし、トリコの凄さは衝動的かつ本能的な勢いだけじゃあなくて、次作への伏線となる"おちゃんせんすぅす"のようなフュージョンセンス溢れるオシャンティーな楽曲や、そしてトリコが"ただの変拍子バンド"ではない事を裏付ける、初期Whirrに匹敵する胸キュンシューゲ/オルタナチューンの#5"art sick"では、「変拍子はあくまで曲のギミックに過ぎない」と言わんばかり、変拍子に頼らずとも"いい曲"が書けるという作曲能力の高さを証明している。実際のところ、『A N D』ではちょっと突拍子もない事やってるのもあって、こういったスロー&ミドルテンポで"聴かせる"曲も書ける自身の"強み"を蔑ろにしていたキライがあった。事実『A N D』には、中嶋イッキュウの青臭~いエモーショナルなボーカル・メロディも、それこそ名曲"art sick"で聴けるような"エモさ"はすっかり影を潜めていた。この辺が賛否両論を呼ぶところで、少なくとも"完成度"という点では『T H E』に軍配が上がる、これだけは誰も否定しようがない事実だ。

・・・しかし"面白さ"という点ではA N Dに軍配が上がる。確かに、今作の『T H E』の方がイッキュウのエモいボーカルにしても、モティフォの変則的かつ変態的なリフ回しにしても異常に凝った工夫がなされていて、かつ圧倒的な音密度で聴き応えもアリアリアリーヴェデルチなのだけど、しかし突拍子(変拍子)もない事やりながらもより音楽的な作曲能力を身につけた『A N D』"面白さ"は、良くも悪くも優等生過ぎる『T H E』にはないもので、映画『2001年宇宙の旅』で例えると→無数のモノリス(知性)に触れたことで無限の可能性を得ることに成功し、そして何よりも"Post-Progressive"な"Sound"を取り入れ始めた事実が、個人的な嗜好を含めて『A N D』"面白さ"にジカに繋がっている。結局はそこに"面白さ"を見出せるか否か、だ。どっちが良い、みたいな低次元の話じゃあなくて、チャラいノリ重視でより邦楽(ロキノン)的なのが『T H E』で、より音楽的なアレンジ力を高めて洋楽的な音に歩み寄ったのが『A N D』『2001年宇宙の旅』で例えると→モノリスに触れる前のサルがウッキー!!と喜びそうなのが『T H E』で、モノリスに触れた後のサルがウッキー!!と喜びそうなのが『A N D』、みたいな感覚もあって、つまり『T H E』の濃厚な音密度と『A N D』の音楽的に洗練されたサウンドが、要するに『T H E』というストレートと『A N D』という変化球が組み合わさったら最強のピッチャー(3rdアルバム)が出来上がると思う。海外ウケという点では、国内向けの『T H E』よりも『A N D』の方が海外リスナーにウケそうな音は多い。なにはともあれ、この『T H E』が従来のJ-POPにマスロックとかいうジャンルを落とし込んだ名作であることに何の異論もないし、とりあえず"art sick"だけで初期の赤い公園は一蹴できるレベルにはあります。わりとどうでもいいけど、12曲目の"Swimmer"のメイン・リフがOpeth"Face of Melinda"のリフっぽくて好き。しかし近頃のガールズ・ロック界・・・マジでアツいッ!
 
T H E
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tricot
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tricot 『A N D』

Artist tricot
tricot

Album 『A N D』
A N D

Tracklist
1. Noradrenaline
2. 走れ
3. E
4. 色の無い水槽
5. 神戸ナンバー
6. 消える
7. ぱい~ん (A N D ver.)
8. 食卓
9. 庭
10. CBG
11. QFF
12. Break

ガールズ・ロック界のメタリカ ・・・自分の中で、京都発の変拍子大好きスリーピース・ガールズ・ロックバンドことtricotは、先日のライブツアーのチケットを発券したにも関わらず、音源を事前に予習できなかったり平日だったりというしょーもない理由で結局行くのやめたレベルの関心しかなくて、そもそもパンクというジャンルが好きじゃあないので、これからも一生聴くことはないんだろうと思った矢先、最近ようやく1stアルバムのT H Eと約二年ぶりとなる2ndアルバム『A N D』を聴く時間ができて、しかもこれが思いのほか良くて、「あ~やっぱり無理してでもライブ行っときゃよかった・・・」って後悔させるほどの内容なのだ。まず何が驚いたって→今作のリード・トラック担う”E”の冒頭部分が、あまりにもメタリカ”Master of Puppets”の「デッ デッデッデーンwwwwwwwwwwwww」という、あの世界的に有名な冒頭を彷彿とさせたもんだから、僕は思わず・・・

こんな風に↓↓
ベビメタ大好きおじさん

あるいはこんな風に↓↓
ベビメタ大好きおじさん2

・・・まるで"ベビメタ大好きおじさん"ことラーズ・ウルリッヒばりに高らかにガッツポーズしていた。つまり何を隠そう、メタリカがヘヴィメタルにパンクを持ち込んだ偉大なバンドならば、このtricotは日本のガールズ・ポップに80年代初期スラッシュ・メタルのハードコア・パンク精神を持ち込んだ偉大なバンドなのかもしれない、ということ。
 


デッ デッデッデーン ・・・この『A N D』は、1stアルバムT H Eのように初期衝動的な勢いで最初から最後まで青臭く駆け抜ける作風ではなくて、想像した以上にアレンジ面に力を入れたアルバムとなっていて、これぞヘタウマな中嶋イッキュウの刹那的な爆裂ボーカルをはじめ、キダ モティフォの俄然マスロック/ポストハードコア然としたリフ回し、ヒロミ・ヒロヒロによるガチ恋不可避なベースプレイ、そしてプログレ度マシマシな楽曲展開まで、ありとあらゆる面でバンドの進化と個人の成長が著しい作品となっている。で、オープニングを飾る#1”Noradrenaline”こそ1stアルバムの流れを素直に踏襲した、持ち前のコーラスを駆使した比較的ストレートな疾走感溢れるセカイ系の青春パンクではあるが、次の”走れ”以降はtricot"進化"をまざまざと見せつけられる事になる。この”走れ”は、1stアルバムの中でも一際異彩を放っていたトリコ屈指の名曲”art sick”を彷彿とさせるリヴァーヴィな雰囲気とオルタナティブ/アート・ロック的なアレンジが光る曲で、イントロからヒロミ・ヒロヒロのガチ恋不可避な妖しいベースが冴え渡り、特に2:13秒の不意をつくベースの絶妙な入り以降に繰り返されるミニマルな曲展開は、トリコの魅惑的な作曲センスと"Post-Progressive"に対する意識の高さを伺わせるし、同時に1stアルバムとの明確な違いと着実な進化を確信づけるような一曲と言える。で、例の「デ...デッデッデーンwwwwwwwwww」を合図に、トリコ流のマスパペやってのける”E”では、トリコの純粋な変拍子愛を適度な緊張感とタイトな疾走感を伴って爆発させる。俄然ポストハードコア然としたリフ回しでノリよく展開する”色の無い水槽”相対性理論”品川ナンバー”ならぬ”神戸ナンバー”では、一転してイッキュウの「アタシ超サブカルkawaii」アピールがウザいくらいに光るシティ・ポップ的な一面を垣間見せ、そして再びさり気ないアレンジや予測不能な展開力を発揮する”消える”で前半の流れを締めくくる。

スティーヴン・ウィルソン
スティーヴン・ウィルソン・・・「WOW!! I Like Ikkyu Nakajima. Welcome to Kscope!!」

中嶋イッキュウ
中嶋イッキュウ・・・「Kyaaaaaaa----(照)」 

   ぼく
ゲスニックマガジンの西条・・・「OK. I Like Hiromi Hirohiro」

ヒロミ・ヒロヒロ
ヒロミ・ヒロヒロ・・・「No Thank You」

キダ モティフォ
キダ モティフォ・・・「LOL」

   ぼく
ゲスニックマガジンの西条・・・「LOL」 

おっぱい~ん ・・・ここまではtricotの持ち味を活かした楽曲が続いたが、しかしこの『A N D』がより面白く、トリコの"進化"が顕著に表れるのは後半からで、まずジャズィでエレガントなピアノを大胆に取り入れ全面にフューチャーした”ぱい~ん”は、一瞬スティーヴン・ウィルソン”Luminol”が始まったのかと錯覚するレベルのスリリングなドラミングへと繋がる幕開けから、再びトリコのArt-Rock/Post-Progressiveに対する見識の広さを垣間見せ、そして1stアルバムの”おちゃんせんすぅす”の流れを汲んだ、ジェント/フュージョン然としたオシャンティーなアプローチを効かせた”食卓”までの流れは今作のハイライトで、そのセンスフルなアレンジ力およびユニークな作曲能力の高さを実証している。で、一転して「サンバ!」という掛け声を合図に、中嶋イッキュウがシュールなリリックを激しくまくしたてながら、リズミカルなサウンドにノッてロキノン系キッズがバカになって踊り狂うような”庭”は、それこそ自称"非・踊らせ系"がメジャーな大衆性を帯びたイマドキの踊らせ系に擦り寄った一曲で、一種のヌー・ロック的な曲調は面白いけど、このロキノン系みたいなノリだけは賛否両論ありそう。なんかもう「もうどうにでもなれ」感すごい、エモい。で、一際バッキングのコーラスがカッコイイ”CBG”、雰囲気のあるスロー・バラードかと思ったら後半からピアノを使って軽快にテンポアップする”QFF”、そしてシングルの”Break”まで、後半の曲は新機軸とも取れる流行りのノリやオシャンティーな雰囲気重視の曲が中心で、持ち前の粗暴な勢いは少し抑えられて比較的ゆったりと"音楽的"に"曲"を聴かせにくる。


プログレ界のBABYMETAL ・・・光の戦士こと南條愛乃やBSニュースの堤真由美キャスター、そして中嶋イッキュウみたいなこの手のダメ男にDVされてそうな絵面が似合う、俗にいう"DV映え"する顔に弱い男って僕だけじゃないと思うのだけど(中嶋イッキュウが可愛いという風潮)、その中嶋イッキュウが自身で赤い公園ファン担当と謳っているだけあって、初期の赤い公園をはじめ椎名林檎や初期の凛として時雨ライクな少しシニカルな雰囲気もあるのだけど、それこそ1stアルバムの『T H E』赤い公園の通称をリスペクトしたような、時にシュールに、時にカオティックに、時にエモーショナルに、時にションベン臭い青春パンクみたいな、ちょっとサブカル入った特に珍しくもない音楽性で、なんというか初期の赤い公園を洋楽視点で捉えるとこうなる、みたいな雰囲気すらあった。しかし、メンバーの技量的にも音的にもまだまだ未熟な所が多々あって、執拗に騒がれるようなバンドではなかった。で今作、衝動的な勢いに身を任せて、やりたいことが明確化していた1stアルバムとは違って、何を血迷ったのか結構突拍子もない事やってる、悪く言えば流れもクソもない阪神タイガースの打線ばりにチグハグでまとまりのないアルバムなのだけど、でもそれはドラムが辞めて解散一歩手前の危機的状況を打開するための、バンドの可能性を模索し色々と試行錯誤した結果と思うので、これはこれで納得できるし、むしろ逆に"もがいてる"感あってスゲーエモいです。だから完成度という点では『T H E』の方が上だし、本能的というより理性的、しかし野性的なのは相変わらずだが、持ち前の粗暴な勢いは抑制されてリズム重視の作曲意識が強く、同時にトリコの一つの魅力だった"エモさ"も減ったが、今作での中嶋イッキュウは"ボーカリスト"としての自覚が芽生え始めているし、その表現力は幾倍にも増している。個々の技量的な意味でも楽曲のアレンジ的な意味でもその成長は顕著だ。しかしまだアレンジの単調さは否めないし、あらゆる面で成長段階といった感じだが、”走れ””消える”のような聴き手の意表を突く予測不能な曲展開だったり、おっ”ぱい~ん””QFF”で聴けるようなアート志向の強いピアノの導入だったり、とにかく”Post-Progressive”然とした作曲センスに終始驚かされっぱなしで、正直ここまで次作への期待がかかるバンドは他にないってくらい、クソ面白いアルバムだと思う。もしこの流れでメジャー行ったら絶対に面白くなるというか、むしろトリコみたいなバンドが、逆にこういうバンドこそメジャーに行って化けるパターンを期待したい。同時に海外からも注目を集めるトリコだが、そろそろKerrang!あたりに取り上げられて、ダウンロード・フェス参戦からのKscopeデビューして欲しいと思っちゃったんだからしょうがない。そしてガールズ・バンド初のDjentやって欲しい。というか、これはマジにメタリカのマスパペカバーして欲しい。まぁ、それは冗談として→海外メディア的にはメルトバナナの後釜にしたい所だろうし、今後の海外展開の行末も俄然楽しみでしょうがない。目指すは"プログレ界のBABYMETAL"だ!

   ぼく
ゲスニックマガジンの西条・・・「おいイッキュウ!トリコは”art sick”みたいな曲も書けるのが強みだって事を忘れるんじゃあない!」 

中嶋イッキュウ
中嶋イッキュウ・・・「庭には二羽のニワトリが踊り続けた!庭には二羽のニワトリがずっとそこで踊り続けた!」 

   ぼく
ぼく・・・「庭には二羽ニワトリがいる!庭には二羽ニワトリがいる!」 

超えちゃいけないライン ・・・驚いた。こんな"音楽的"に面白いバンドやったのかと、聴かず嫌いしていた以前までのイメージとのギャップに驚いた。これは昨年に赤い公園の名盤猛烈リトミックを聴いた時と同じ体験、というかデジャヴだった。その猛烈リトミックのレビューの中で→「僕はtricotなんか聴かない(キリッ)」とか発言してからほんの数ヶ月でトリコの虜になってて笑う。それでは、この『A N D』赤い公園『猛烈リトミック』に取って代わるような名盤かと聞かれたら、その答えはノーだ。このアルバムを聴く限り、中嶋イッキュウ赤い公園の1stアルバム公園デビューが相当好きなんだろうという事が伝わってくる。でも次作の猛烈リトミックで露骨に大衆性を帯びたメインストリーム向けのサウンドに舵を切った事で、初期赤い公園からの影響をモロに受けている中嶋イッキュウは一体ナニを思うのだろう。しかし、この『A N D』から漂う"わてメジャー行きたいどす感"は、どちらかと言えば最近メジャーに行ったきのこ帝国フェイクワールドワンダーランドのソレに近くて、そのフェイクワールドワンダーランドと同じでこの『A N D』は別に”売れなきゃいけないアルバム”ではないけど、恐らく次のアルバムでは"売りにくる"と予測できる。名盤『猛烈リトミック』に習って次作で化けるかどうか、その可能性とバンドのポテンシャルは今作で十二分に証明している。そこでようやくDV中嶋津野米咲とタイマン張れるレベルになるんじゃあないか?だからこそ、このトリコには"エモさ"を忘れたロキノン厨もといニワトリのようなバカにはなって欲しくはないんだ。今後、もし”庭”みたいなロキノン厨に媚びを売るような方向に行ったら、こいつら本当に終わりだと思う。前作の”art sick”を取るか今作の”庭”を取るか、はたまた”超えちゃいけないライン”に入るか、、、色々な意味で今後のトリコに目が離せない。

めちゃ後悔だよなぁ

tricot×sukekiyo ・・・おいら、バンドで一番重要なパートってドラムだと思ってる人で、それこそtricotのドラムが辞めたって風のウワサで聞いた時は、リアルに「こいつら終わったな」って思ったのだけど、どうやらこの『A N D』を聴く限りでは余計な心配だった模様。今作、脱退したドラムに代わって五人のドラマーがゲスト参加していて、そのドラマー陣がまた良い仕事してます。相対性理論との仕事でも知られる千住宗臣氏やex-東京事変で現ニートの刄田綴色氏をはじめとした豪華なメンツの中でも、凛として時雨TKがリミックスしたsukekiyo”zephyr”でドラムを叩いてるBoBo氏が#3#7で叩いてるとのことで、まさかこんな所でsukekiyoと繋がるとは思ってなかったし、とにかく人脈および人選が無駄に面白かった。どうせだからsukekiyotricotで対バンして欲しいと思っちゃったんだからしょうがない。それこそ【変態男VS.変態女】みたいなノリで、頼むぜン゛ギョウ。ともあれ、変拍子とかいうどうでもいいようなギミックに頼らず、この『A N D』で純粋に楽曲で勝負しにきた、しかしそこにはまだ未熟な部分や課題も沢山あるが、ドラマー脱退という鬱屈した状況を打開しようとあらゆる方向性と多方への可能性を模索しながら、ガムシャラにもがき苦しみながらも攻めに攻めてきたトリコに僕は盛大な拍手を送りたい。少なくとも今年のガールズ・ロックでは、ねごとVISIONと並んでマストアイテムです。ちなみに、僕はDV中嶋よりもベースのヒロミ・ヒロヒロ派です(ヒロヒロ派ならシングルカップリング曲の”ダイバー”は必聴です)。
 
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