Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

レビュー (M)

℃-ute解散がショック過ぎるので更新停止します

Marika Hackman 『We Slept At Last』

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Tracklist
01. Drown
02. Before I Sleep
04. Open Wide
05. Skin
06. Claude’s Girl
08. In Words
09. Monday Afternoon
10. Undone, Undress
11. Next Year
12. Let Me In

UKのシンガー・ソングライター事情といえば・・・実はよく知らないんだが、とは言えイングランド南部はハンプシャー州出身のマリカ・ハックマンのデビュー・アルバム『We Slept At Last』が、寂れた郊外のバーで語り弾きする光景が脳裏に浮かびそうなくらいダーティなムード漂う激シブなインディ・フォークやってて、例えるならex-Trespassers WilliamLotte KestnerがUSのChelsea WolfeTrue Widow、あるいはUKの2:54みたいな暗黒面に堕ちたヤンデレ系フォーク・ミュージックやってて、とにかく一見ありがちなインディ・フォークかと思いきや、そこはUK出身ならではの”オルタナティブ”なアレンジ/メロディ・センスを垣間見せたりと、なんとも「イギリスらしいシンガー・ソングライター」としか他に形容しがたいSSWだ。
 

イントロから不協和音にも近い不穏な空気感をまといながら、気だるくも落ち着いた、しかしどこか色気のあるマリカの歌声とアコギのリフレインが、Kayo Dotばりの暗黒物質という名の多彩なアレンジとともに絶妙な距離感で調和し、素直に心地良く、しかしどこか深い闇がある音世界を構築するオープニング曲の”Drown”、いわゆるスティーヴン・ウィルソン界隈を彷彿とさせるArt-Rock然とした音使いと叙情的なストリングス・アレンジの絡みが完全にPost-系のソレな二曲目の”Before I Sleep”Trespassers Williamリスペクトな#3”Ophelia”、そしてもはや確信犯と言っていい四曲目の”Open Wide”では、一転してバンド・サウンドを主体に、USのWarpaint顔負けのダウナーなドリーム・ポップを繰り広げる。この序盤の流れを耳にすれば、彼女のシンガー・ソングライターとしての才能は元より、一人のマルチミュージシャンとしての才能にド肝を抜かれる事ウケアイで、それと同時に彼女が産み落とす音楽が”俺の感性”のド真ん中であるということが理解できる。それすなわち、Warpaint大好き芸人のスティーヴン・ウィルソンが一番のオキニにしそうなSSWである、ということ。



再びダーティなアコギを靡かせながら、ロンドン出身のSivuとかいう男性ボーカルとのデュエットを披露する#5”Skin”、70年代のフォーク・ソングのカバー曲と言われても疑わない#6”Claude’s Girl”、一転してDevin Townsend”Blackberry”ばりのカントリー調でノリよく展開する#7”Animal Fear”、哀愁漂うシンプルな#8”In Words”、遊牧民を誘き出すようなフルートや優美なストリングスを擁した民謡風の曲調からポスト-系の展開力を発揮する#9”Monday Afternoon”、そして後半のハイライトを飾る#10”Undone, Undress”は、そのタイトルどおり、まるで「UKの森田童子」と言わんばかりの、底すらない闇へとどこまでも堕ちていくような、ただそこに蠢くドス黒い狂気の中に彼女の底知れぬ『闇』を垣間見る。Opethミカエル・オーカーフェルトが悶絶しそうなメロトロンとフルートの音色が俄然サイケかつサイコに演出する#11”Next Year”、最後はアコギを片手にドチャシブな歌声を聴かせる。

なんだろう、一見至って普通のシンガー・ソングライターかと思いきや、全然普通じゃない、とにかく闇が深すぎるSSWだった。 ピアノやシンセ、メロトロンやオルガンをはじめ、民族楽器のサーランギーやディルルバまで難なく弾きこなす、それこそプログレ界隈もビックリのマルチな才能が遺憾なく発揮された傑作です。

もはや「UKのSusanne Sundfør」と呼んでも差し支えないレベルだし、もちろん我らがスティーヴン・ウィルソンをはじめ、少しベクトルは違うがUSのRhye、そして近年のUlverOpethなど、そして最終的にはビートルズという偉大な先人をルーツに浮かび上がらせる、そのメランコリーでサイコーパスな音楽性は、普段の日常生活の中に潜む『闇』に気づいたらスッと片足突っ込んじゃってた感すらある。

あとは単純にメロディが素晴らしいのと、何度も言うけど曲の展開が一々ポスト-系のソレでツボ過ぎる。正直、ここまでPost-Progressive系のアーティストとリンクするSSWは他に類を見ない。逆に「繋がり」が一切ない事の方がおかしいレベル。でも逆に「繋がり」がないからこそ「面白い」くもある。
 
We Slept At Last
We Slept At Last
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Marika Hackman
Imports (2015-02-24)
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Moonspell 『Extinct』

Artist Moonspell
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Producer/Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren
Recording (guitar, bass) 
David Castillo
David Castillo

Album 『Extinct』
Extinct

Tracklist
04. Domina
05. The Last Of Us
06. Malignia
07. Funeral Bloom
08. A Dying Breed
09. The Future Is Dark
10. La Baphomette
11. Until We Are No Less (Bonus Track)
12. Doomina (Bonus Track)
13. Last Of Them (Bonus Track)
14. The Past Is Darker (Bonus Track)

勝利の方程式 ・・・ポルトガルの英雄、Moonspellが2008年にリリースした傑作『Night Eternal』MVは、いつ見てもメタル史に残る名MVだと思うのだけど、続く2012年作の10thアルバム『Alpha Noir』は、ボーナスアルバム『Omega White』を含む二枚組の大作のわりには、個人的にイマイチのめり込めなかったのが正直な所で、その前作から約三年ぶりとなる11thアルバム『Extinct』は、近作のプロデュースを担当していたチュー・マッドセンから離反し、遂にイェンス・ボグレンとの初タッグが実現、そしてレコーディングエンジニアとしてデイビッド・カスティロを起用、すなわち【イェンス・ボグレン×デイビッド・カスティロ=勝利の方程式】が実現している。ともあれ、これにて目出度くイェンス童貞を卒業した、というわけ。元々、このMoonspellは初期の頃こそブラックメタルやってたバンドで、それこそスウェーデンの皇帝KATATONIAの音楽遍歴を辿るように、作品を重ねる毎に徐々にゴシック・メタル路線へとその音楽性をシフトしていったが、近年ではシンフォニックなアプローチを積極的に取り入れたスタイルへと流動的にその姿を変えている。そして、その流動的な変化は、メタル界の必殺仕事請負人ことイェンス・ボグレンを招き入れた本作品で、更なる化学反応を巻き起こしている。そう、何を話そうこの『Extinct』は、まさしく「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信をまた一つ裏付けるような大傑作なのだ。
 

中東ロマン ・・・幕開けを飾る#1"Breathe (Until We Are No More)"から、フロントマンFernando Ribeiroによる男のフェロモン全開の低音ボイスをフューチャーしながらも、しかし北欧メロデスを経由したエピカルなキザミリフとドスの入ったフェルナンドのダミ声が織りなす終末的かつ刹那的なサビ、そして今や絶滅危惧種となったParadise Lost直系の幽玄なGソロからアウトロの壮麗優雅でアラビックなオーケストラまで、もうなんか「イントロからクライマックス」感あって、禿げ上がるほどクソカッコイイ。続く表題曲の#2"Extinct"は、鍵盤奏者Pedro Paixãoが奏でるアート・ロック顔負けの可憐な美メロとイェンスとOpethが初タッグを組んだ傑作『Ghost Reveries』リスペクトなリフ回し、そしてサビはキャッチーなクリーンボイスという存外シンプルな構成で聴かせる。そして、イントロからエスニックな芳ばしい香り漂う#3"Medusalem"では、キュアーをはじめとした往年のUKニューウェーブ/ポストパンク/ゴシックリスペクトなフェルナンドのフェミニンな低音エロボイスと、こちらもイェンス一族の仲間入りを果たした某イスラエルのバンドを彷彿と...って、それもそのはず、今作にはOrphaned Landのギタリストであり、僕のツイッターのフォロアーでもある (えっ)Yossi Sassiがゲストで参加しており、そのOR直系の中東音楽/民謡風のオリエンタルな旋律を奏でる、まるでインド映画の如く今にも踊り出しそうな情熱的かつ扇情的なオケが織りなす灼熱の中東ロマン、それこそ80年代のUKミュージックと現代のイェンス・ミュージックが邂逅した歴史的瞬間だ。それはまるで、欧州メタル界最後の砦であるMoonspellが中東音楽に支配された瞬間、それすなわち現在の欧州における中東問題を皮肉るかのよう。ただ"面白い"のはそれだけじゃあない、終盤怒涛の転換から僕のフォロワーことYossi Sassiが奏でる民族楽器ブズーキとMahafsounなるイランの女性モデルによるナレーション、そして疾走感溢れる叙情的なGソロへと繋がるクライマックスの展開には→yes!!yes!!Jens!!という雄叫びとともにガッツポーズ、そしてこの瞬間、僕は『Extinct』の傑作を確信するのだった。



イェンス・マジック ・・・ノスタルジーを誘うフォーキーな美旋律を奏でるイントロのギターを皮切りに、最初から最後まで優美なギター・メロディに酔いしれる#4"Domina"、ここにきて完全にHIM顔負けのゴスロック化する"ラスアス"こと#5"The Last Of Us"、と思ったら今度はThe Birthday Massacreばりのキラキラインダストリアル・ロック化する#6"Malignia"、ツーバスドコドコ超絶epicッ!!ナンバーの#7"Funeral Bloom"、そして今作のハイライトを飾る曲で、トリップ・ホップ/アトモスフェリックなイントロとギターの美旋律がとにかくメランコリックで号泣不可避な#9"The Future Is Dark"、まるで世界崩壊後の荒廃した街の寂れたバーで世界崩壊前の出来事を老人がフランス語で語りかけるような本編ラストの#10"La Baphomette"まで、大袈裟な話、近年イェンスがプロデュースした作品の中でもイチニを争うレベルの傑作です。ここまで笑っちゃうほど興奮したアルバムは久々かもしれない。ここまでくるともはやあざとい。それこそ『Night Eternal』のシンボルである女帝が終焉した世界で装束を全て引剥され悪魔化したような、毎度お馴染み盟友SepticfleshSpiros Antoniouが描き下ろしたスプラッターなジャケのイメージどおり、HIMThe Birthday Massacreみたいなインダストリアル/ゴスロックとして聴けちゃう懐の広さがある。それならば、この『Extinct』MoonspellなりのParadise Lost『Host』なのか?と聞かれたらまたちょっと違った代物かもしれない。とは言え、この"ゴスロック化"の伏線は過去既にあって、正式には【ボーナスアルバム】という位置づけだった前作『Omega White』のゴス路線を更に深いところまで突き詰めたような作風で、それを証明するかのように、今作のボーナストラックにはKATATONIAで言うところのBサイド的な、最近のDIR EN GREY界隈が好きそうなインダストリアル/ノイズやアコースティック/オルタナ等のアレンジを施したリミックス音源が収録されている。そもそも、このMoonspellにオルタナ化する器量があるなんて微塵も思ってなかったから、色々な意味で驚きと笑いに満ち溢れたアルバムだった。当然、ブラック・メタルやってた頃の面影は皆無だし、フロントマンのフェルナンドにいたっては一流に洗練されたクリーンなボーカル・メロディを中心に歌い上げ、ここにきてボーカリストとしての才能とV系的ナルシストとしての才能を開花させている。しかしそれ以上に、今作は鍵盤奏者Pedro Paixãoの存在感に脱帽してしまう。今作での彼は、言うなればDark Tranquillityの10thアルバムConstructにおけるMartin Brändströmと同じ役割を果たしている。要するに→結成から20年を超えるメタル界の大ベテランをワンランク上のNEXT-ステージへとブチ上げている。もはや別バンドに聴こえるほどの化学変化を巻き起こしているし、しかしどう聴いてもこれはMoonspell以外ナニモノでもないのが意味不明過ぎて笑えるし、そうか...これがイェンス・マジックなのかって。あらためて、僕はもっともっとイェンスの事が知りたいし、もっともっとイェンスの事を『理解』したくなった。

その男、イェンス・ボグレン ・・・なんだろう、ゴシック・メタルとかシンフォニック・メタルとかブラック・メタルとかいうサブジャンルとして以前に、そのバンドの根幹にある本来の"メタル"としての普遍的なカッコ良さを抽出し、それを幾倍にも肥大化させてしまうイェンス・ボグレンのプロデュース能力、その良さが分かりやすく顕著に出たアルバムだと思う。正直、この傑作の国内盤がリリースされない所を見ると、まだまだ日本はメタル後進国なんだとシミジミしてしまう。ちなみに、限定版にはイェンス・ボグレンとメンバーのインタビューを交えたアルバム制作の現場を収めた、約1時間半に渡るドキュメンタリー映像が収録されており、このドキュメンタリーを観るだけでも、いかに今作がプロデューサーであるイェンスとの相当な話し合いを経て、相当に作り込まれた、相当な苦労を重ねて完成したレコードだと言う事がわかるハズだ。あとイラン人女性が美人過ぎる。しっかし、中東音楽と80sUKゴシックを何食わぬ顔で平然と邂逅させちゃうイェンス・ボグレンとかいう男・・・天才かよ。この男...やはり恐るべしッ! 

Extinct
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Moonspell
Napalm (2015-03-17)
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mori wa ikiteiru 『森は生きている』

Artist mori wa ikiteiru
ikiteiruの森

Album 『森は生きている』
森は生きている

Tracklist

01. 昼下がりの夢
02. 雨上がりの通り
03. 回想電車
04. 光の蠱惑
05. 断片
06. ロンド
07. 日傘の蔭
08. 帰り道

森は生きている ・・・の2ndアルバムグッド・ナイトは、Porcupine Treeスティーヴン・ウィルソンミカエル・オーカーフェルトもビックリの"プログレ"以外ナニモノでもない、2014年の邦楽界を代表する現代プログレの傑作だったが、彼らが2013年にリリースしたセルフタイトルの1stアルバム『森は生きている』は、その2ndアルバムとは一味違って→「ほーん、これがインディかぁ」って感じの作品となっている。それはオープニングを飾る”昼下がりの夢””雨上がりの通り”を聴けばわかるように、ジャズィなピアノと竹川くんのユル~いボーカルで優美な雰囲気で聴かせる曲調に、サックスやトランペットなどの吹奏楽器を使ってファンキーなノリを積極的に取り入れている。次作の『グッド・ナイト』のように、スケール感のあるプログレッシブな構成力やスリリングな展開力などの過剰演出で聴かせるのではなくて、あくまでも自然な流れでシンプルに、言うなればジャズ的な即興演奏(インプロビゼーション)を意識した、まるで森のせせらぎを奏でる妖精音楽隊となって癒しの空間を提供している。より身近で、より日常的な空気感を纏った、より斉藤和義をイメージさせる大人びたサウンド・スタイルだ。

・・・とはいえ、”回想電車””断片”の音使いからは60~70年代のヴィンテージなクラシック・ロックを彷彿とさせ、”光の蠱惑”や大作の”ロンド”では次作への伏線とも取れる展開力の高さを発揮していたりと、その持ち前のミニマリズムやさり気ないプログレスなアプローチを加えた音には、確かに名盤『グッド・ナイト』の片鱗が随所に散りばめられている。要するに→この1stアルバムを"原型"に、若さ溢れる咀嚼力によってサイケ/アンビエント/現代プログレ/アヴァンギャルドなどのジャンルへの視野が広がって音がスケールアップし、そしてバンドの中心人物である岡田君のライティング能力の覚醒が重なった結果というか、謎の突然変異で『グッド・ナイト』が生まれたのではなく、この1stアルバムを素直に発展させたのが『グッド・ナイト』だという事がわかる。つまり"化けた"と表現するより"正統進化"と言ったほうが的確か。あらためて、"プログレッシブ"という明確な意志をもって曲作りに徹したアルバムが『グッド・ナイト』だって事。その2ndアルバムほどのインパクトや凄みこそないが、その音はデビュー作とは思えない高水準の完成度を誇っている。少なくとも、あの『グッド・ナイト』を作るだけのポテンシャルはスデに今作のアチラコチラに点在している。なんだろう、この1stアルバムがメインボーカルの竹川くん主体で、次作の2ndアルバムがバンドの心臓部である岡田くん主体に作られているイメージがあって、その違いは主に作曲面やボーカル面からも垣間見ることができるのだが、とにかく『グッド・ナイト』では岡田くんが本気出しちゃった感が強くて、というより、あらゆる面で"欲"を出してきたというか、明らかに勝負しにきた感がある。とにかく、岡田くんと竹川くんの関係性は見ていて面白いし、というより、このコンビの力加減でどうにでもなるし、その二人の仲介役となっている歌詞担当の増村くんの存在に俄然萌える。

幕開けを飾る”昼下がりの夢”の「走り出す少女の影」を題材にした歌詞は、2ndアルバム『グッド・ナイト』の一曲目を飾る”プレリュード”の歌詞とリンクしていてニヤリとする。そして、このタダモノじゃなさを醸し出すプロダクションと音使いからは、あらためて彼らの"音"に対する異常なほどの”こだわり”や新人離れした音楽家としての意識の高さを伺わせる。一転してシュビドゥバ系のレトロなコーラスと心弾むようなピアノでノリの良いリズミカルなビートを刻んでいく曲で、一部童謡から引用した歌詞が印象的な”雨上がりの通り”、ハモンド・オルガンとアンニュイにユラめくギターのプログレスキーな音色を中心に、田舎の無人の一両編成電車の如くユッタリと聴かせる”回想電車”、哀愁ただようピアノと竹川くんの歌声による悲しげな幕開けから、一転して多彩な楽器を擁しエレクトリカルなアレンジを効かせた賑やかな展開を見せる”光の蠱惑”、再びクラシックなオルガンの音色やトランペットとギターがファンキーなジャズ感を醸し出す”断片”、次作への伏線となるミニマルな大作の”ロンド”、岡田くんがメイン・ボーカルを担うサイケ・ポップな”日傘の蔭”、今作のハイライトを飾る曲で、雨上がりのアスファルトの匂いが立ち込めるノスタルジックな”帰り道”、最後はカントリー風アコースティック・ナンバーの日々の泡沫で終演。

相変わらず数多くのチェンバーな楽器を駆使した、意識高い系文学青年もといハルキストあるいはトクマルシューゴ大好き武蔵野芸人の皆さんが、森のほとりで執り行われる質素なエレクトリカル・パレードを仲よさげに繰り広げている。しかし気になるのは、このまま2ndの流れを踏襲したプログレ路線が続くのか、はたまたインディ路線に回帰するのか・・・?早くも彼らの次作が楽しみでしょうがないし、次世代の邦楽界を担うであろう若者の音楽を僕は後押ししていきたい。

森は生きている
森は生きている
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森は生きている
Pヴァイン・レコード (2013-08-21)
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Monuments 『The Amanuensis』

Artist Monuments
Monuments

Album 『The Amanuensis』
The Amanuensis

Tracklist
02. Origin Of Escape
03. Atlas
04. Horcrux
05. Garden Of Sankhara
06. The Alchemist
07. Quasimodo
08. Saga City
09. Jinn
10. I, The Destroyer
11. Samsara

【ex-Periphery】・・・2012年にCentury Media Recordsからデビューした、ex-Fellsilentex-Cyclamenのメンバー擁するUKはロンドン出身の五人組、Monumentsの約二年ぶりとなる2ndフル『The Amanuensis』は、ex-Peripheryのボーカリスト兼サックス奏者であり、Djent界のアイドルことスパイズ・ボーイズもといTesseracTとも交流の深いChris Barrettoを新メンバーとして迎えている。ちなみに本作はデイヴィッド・ミッチェルの小説『クラウド・アトラス』からインスパイアされた作品とのこと。

【TesseracTの亜種】・・・このMonuments、UK出身というだけで同郷のTesseracTの”亜種”という勝手なイメージを持っていて、事実その音楽性やソリッドな音像的にも、開祖Meshuggahという名のDjentの教則本に則った、それこそジェント・リー然としたディグりまくりのリフ回しで縦ノリ系のグルーヴィなポリリズムを刻んでいく本格派-Djentで、つまり1stの頃のTesseracTダニエル・トンプキンズくん率いるSkyharborを連想させる、ジェント特有のフェミニンなナルシズムと神秘的なエクスペリメンタリズムを押し出したDjentなんだけど、今回新しくChrisを迎えた事で、(作風こそ大きな違いはないが)時にメロディックなネオ・プログレ風のコーラス、時にLinkin ParkFuneral For A Friend風のUKメロコア系クリーン・ボイス、時にエクストリーム系のヤンチャなスクリームを吐き散らすボーカルワークがよりブルータルに、より暴虐的かつ骨太へと正統進化している。ここで、またしてもUK出身のジェントにありがちな只ならぬ”FFAF感”を垣間みせ、ジェントというジャンルを聴きこめば聴き込むほど、全く関係のないFuneral For A FriendがDjentに与えた影響力、その存在感を痛感する謎の現象について考察したくなった。それもそのはず、実はFuneral For A Friendの作品でも知られるエンジニアが今作のドラム面のプロデュースに携わっている、なんてトリビアもある。

【Djent界のシキタリ】・・・終始Djentというジャンルをリスペクトした硬派なDjentを貫きながらも、ゴスペル調のユニークな幕開けで始まる#8”Saga City”やらGojiraLamb of Godを連想させるゴッリゴリなヘヴィネスを披露する#9”Jinn”、そして”輪廻転生”というタイトルから仏教的な宗教感あふれる、Ulver顔負けのアンビエントナンバーの#11”Samsara”をクライマックスに置くことで、より作品のスケール感と幅広いコンセプティブな意識を聴き手に植えつける。この辺の宗教観はex-Cyclamenのメンバーによる影響もなきにしもあらずか。少なくとも前作にはなかったような、もうTesseracTの”亜種”とは言わせないとばかりの、二作目にして初めてMonumentsとしてのオリジナリティが芽生えた作品であることは確かだ。さすがにBlack SabbathRush、そしてLed Zeppelinの作品を世に送り出してきた世界有数のスタジオMonnow Valley Studioでレコーディングされたとあって、同時に界隈の重鎮クリスの加入をはじめプロダクションも一流を揃えた結果→トータルレベル(総合力)の高い正統派-Djentに更に磨きがかかり、もはやDjent界の地位を不動のものとしている。しかし、こう順風満帆に見えて数カ月後にクリスが脱退するまでが”Djent界のシキタリ”だから・・・。

Amanuensis
Amanuensis
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Monuments
Century Media (2014-07-08)
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Mastodon 『Once More 'Round The Sun』

Artist Mastodon
Mastodon

Album 『Once More 'Round The Sun』
Once More 'Round The Sun

Tracklist
01. Tread Lightly
02. The Motherload
04. Once More 'Round the Sun
05. Chimes at Midnight
06. Asleep in the Deep [feat. Valient Himself & Ikey Owens]
07. Feast Your Eyes
08. Aunt Lisa [feat. The Coat Hangers & Gary Lindsey]
09. Ember City
10. Halloween
11. Diamond in the Witch House [feat. Scott Kelly]

【俺たちのマストドンが帰ってきた】・・・自分の中で、大手のロードランナーからリリースされた2011年作の5thThe Hunterを境に、日和ってキッズ向けの歌モノ商業ロックバンドに成り下がった感のある、そんな新世代メタルの雄MASTODONの約三年ぶりとなる通算6作目『Once More 'Round The Sun』がリリースされた。賛否両論を生んだ前作、その批判に日和ったのか、今作は再び古巣のRepriseに出戻った形となっている。確かに、マストドンと言えば毎回毛色の異なるコンセプト、異なる音、異なる作風で聴き手を楽しませてくれる優秀なメタルバンドだが、それを理解した上で前作のナニがダメかって→単純にリフが絶望的につまらないし、いくらロードランナー主導でキッズを釣り上げるために仕方なかったと言っても、初期の『Leviathan』や名盤Crack The Skyeを崇拝している従来のコアなファン的には、もはや馬鹿にされている気分にしかならなかった。そんな前作に対するアツいネガキャンを踏まえて、ラッシュやフー・ファイターズの作品やデブ豚の『恋の予感』でも知られるニック・ラスクリネッツをプロデューサーに、そして前作同様かのテッド・ジェンセンをマスタリングに迎えた今作の『Once More 'Round The Sun』はどうだろう?結論から言っちゃえば→「ザ・ハンターよりは良い」だ。極端な話→前作の『The Hunter』はマストドン流の”エモ”をやってたわけなんだけど、しかし今作では『Leviathan』や名盤『Crack The Skye』などの名作陣の延長線上にある、初期のマストドンらしい複雑怪奇なリフ回しやゴッリゴリの轟音ヘヴィネスと3rd以降のサイケデリックなクラシック・ロックが融合した、要するに”俺たちのマストドンが帰ってきた”状態なんだ。それは今作にクレジットされたゲストを見れば分かるように、NeurosisのフロントマンScott Kellyをはじめ、The Mars VoltaIkey OwensThe Coat Hangersなど複数の幅広いミュージシャンと共演している所から全てを察する事ができる。

【音のコア】・・・オープニングを飾るのは、MelvinsHelms Aleeなどのノイズロック感ほとばしる#1”Tread Lightly”で、いい意味でも悪い意味でも”マストドンにしては普通”な感じの幕開けというか、各アルバムのカラーやコンセプトを象徴してきたこれまでのオープニング曲とは少し違って、無個性というわけではないがイマイチ掴みどころがなくて、今作の音の”コア”がどこにあるのか?これを聴くだけでは正直把握できないのは確かだ。しかし、次の#2”The Motherload”を聴けば分かるように、まるでオジー・オズボーンを思わせるトロイとブランとブレントによる陽気なボーカルと前作譲りの軽快なノリとキャッチーなポップネスを兼ね備えたハードロックナンバーだが、前作と明確に違うのは、後半からの疾走感あふれるGソロをフューチャーしたダイナミックかつドラマティックな展開力だ。続く、MVが映画『キック・アス』みたいな#3”High Road”では、これまたマストドンにしては驚くほどストレートなゴリゴリフを用いて獣性むき出しの轟音ヘヴィネスを披露し、表題曲の#4を挟んで、初期の面影を感じさせるスラッシーなリフ回しでゴリ押していくタイプの#5”Chimes at Midnight”、#2に通じるオジーリスペクトなヤンデレ系ボーカルを軸に、今作のアートワークの如くサイケデリックかつスペーシーな世界観に容赦なく惹き込まれる#6”Asleep In The Deep”では、それこそ”ツカミ”のない今作の”コア”を確認する事ができる。

【Hey! Ho! Let's fucking go!】・・・スラッジからプログレ・メタル、クラシック・ロックからプログレッシブ・ロック、ストーナー・ロックからノイズ・ロック、ポップスからエモまで、その紆余曲折した音楽遍歴の中でも己のハードコア精神を貫き通し、今やメジャーシーンを代表するモンスターバンドにまで駆け上がった彼らだが、その方向性の一つの到達点(ゴール)となる楽曲こそ、ゲストにアトランタ出身のThe Coat Hangersを迎えた#8”Aunt Lisa”なんじゃあないかって。それくらい、The Coat Hangersによる“Hey! Ho! Let's fucking go! Hey! Ho! Let's get up and Rock 'n' Roll!”とかいう、曲のクライマックスで突如現れる謎のチャントに笑いを禁じ得ない。なんだろう、この”もうどうにでもな~れ”感が今のマストドンの現状を的確に表してるようで、一見オフザケのように見えるが、実はスゲー深い意味が込められた曲なんじゃあないかって。あとOpeth”Deliverance”を彷彿とさせる、いわゆる”プログレッシヴ・ヘヴィ”なリフもあって、そういった意味でも彼らの集大成を感じる曲だ。続く#9”Ember City”も#2や#6の系譜にある、いわゆる今作の”コア”を感じる、CynicScale the Summitを連想させるプログレ・メタル然としたテクニカルなムシムシリフ主体の楽曲で、先ほどの#8とともにアルバムの絶対的なハイライトとしてその存在感を発揮している。終盤の流れは、焦燥感あふれる#10”Halloween”、そしてラストはニューロシスのスコットをゲストに迎えた”Diamond in the Witch House”という、まるで「ザ・ハンターとはなんだったのか」と言わんばかりのドゥーミーなヘヴィネスを憤怒した金剛力士像のごとく轟かせる。

【ザ・ハンターは間違いではなかった?】・・・あらためて、前作と比較すると”マストドンらしい”と胸を張って言えるアルバムだ。例えば#3を聴けば初期のマストドンを、#6をはじめ全編に渡って繰り広げられるクラシックなGソロを聴けば4th『Crack The Skye』を、#7をはじめとしたポップネスを聴けば5th『The Hunter』を、#9のテクニカルなリフ回しを聴けば3rd『Blood Mountain』を、そしてカギを握る#2や#6や#9をはじめとしたオジー風のボーカルを聴けば、もし前作『The Hunter』の時に”お歌の練習”をしていなかったら今作は存在し得なかったかもしれない。そう考えると、前作でキッズを釣ったのは戦略的に間違いじゃなかったのかもしれない。つまり、あの前作は決して日和ったのではなく、今後もメジャーシーンで生き残るために必要不可欠な音だった・・・?この『Once More 'Round The Sun』は、それを証明するかのような作品でもあるのだ。そのキッズでもすんなり入り込める、メジャーシーンで活躍する上で必須となる必要最低限のポップネスと本来の”マストドンらしさ”を、決して複雑かつ難解過ぎないようにスタイリッシュにまとめた、と同時にマストドンらしい変わらない普遍性をシンプルかつダイナミックに押し出した、新たなるマストドン(職業コメディアン)という名の化身が地獄の底から蘇ったかのような一作だ。

【悪く言えば焼き直し】・・・確かに、Gリフは過去作の焼き直しといったイメージもなくはないけど、それでもやっぱマストドンはヘヴィなリフ刻んでナンボなバンドだと再確認した。そして、ほぼ全曲に顔を出している4th『Crack The Skye』の流れにあるクラシック・ロック譲りの豊富なGソロには、彼らの普遍的な”メタル魂”が直に感じ取れるだろう。正直、前作はギタリストビル・ケリハーの持ち腐れみたいな感じだったが、今作ではビル大活躍なのが素直に嬉しい。要するに→ヘヴィなマストドン、サイケデリックなマストドン、クラシックなマストドン、ポップなマストドン、エモいマストドン、プログレッシブなマストドン、時にはプライドを投げ捨ててやれることの全てをやってきた、これまでのマストドンがシンプルかつコンパクトに凝縮された集大成と言っても決して過言じゃあない。しかし、これは世の”集大成”と謳われる作品の全てに言えることだが、悪く言えば過去作の”焼き直し”といったネガキャン風に、作品としての”個”すなわち”オリジナリティ”が薄くなってしまうのは音楽という分野の定めなのか、事実コンセプトや音の色に対する意識は歴代の中で最も薄い部類に入るのは確か。とは言いつつも、少なくとも前作よりは普通に楽しめる、いわゆるプログレ・メタル好きをはじめとした全てのメタルファンには決して損はさせない一枚だ。
 
Once More Round the Sun
Once More Round the Sun
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