Artist Opeth
Opeth

Mixing/Sexual Steven Wilson
Steven Wilson

Album 『Pale Communion』
Pale Communion

Tracklist
04. Elysian Woes
05. Goblin
06. River
07. Voice Of Treason
08. Faith In Others
 
ミカエル・オーカーフェルトの頭脳

カミングアウト ・・・今年、2014年度のメタル界を最も賑わせた衝撃ニュースといえば→USのレジェンドCynicの頭脳ポール・マスヴィダル”ホモ”をカミングアウトした事だと思うが、まさか北欧スウェーデンが誇るゆるキャラ”オペにゃん”ことOpethも約三年ぶりの11thアルバム『Pale Communion』”ホモ”をカミングアウトするなんて...一足先にリークされたフェイクのアートワークを目にして「パチもんクセぇw」なーんて笑い転げていた当時は、まるで知る由もなかった。で、ここで前回までのOpethをおさらいしてみると、自分の中で前作の10thアルバムHeritageというのは→”9thアルバムWatershedという伏線()があって、結成から20周年を迎えた記念すべき10作目という事から”納得”した作品”だった。では本作の作風はどうだろう?結論から言ってしまえば→問題作となった『Heritage』の流れを踏襲した、言うなれば”70年代回帰路線”である。そんな彼らオペットゥの11作目は、”髭もじゃおじさん”ことペルが脱退して元イングヴェイのヨアキムが正式加入してから初のアルバムで、7thアルバムの『Damnation』以来約10年ぶりの再会となる、いわゆる”俺の界隈”の代表取締役兼CEOとして知られるスティーヴン・ウィルソンをミックスに迎え、そしてバンドのフロントマンミカエル・オーカーフェルトがセルフプロデュースを手がけている。

Opeth is Djent!! ・・・一概に”70年代回帰路線”と言ってみても、前作の『Heritage』のようなディープ・パープル系のヴィンテージ臭あふれるクラシック・ハード・ロックあるいはフォーク・ロックというよりは、これは明らかに盟友スティーヴン・ウィルソンの影響だろうけど、70sは70sでも前作とは一転して今回はインテリ風のモダン・プログレに大きく舵を切っている。その”プログレ大好きおじさん”っぷりは幕開けを飾る#1”Eternal Rains Will Come”からフルスロットルに発揮されていて、まずイントロから「Animals as Leadersかな?」って「遂にオペにゃんがDjent化したか!?」ってくらいのオシャンティでジャジーなリズム&グルーヴに意表を突かれ、前作譲りのクラシックなリフ回しやSWソロの2nd『Grace For Drowning』と3rd『The Raven That Refused To Sing』に通じるユラユラ~~~っとしたメロトロンとピアノが曲全体を一際叙情的に演出しながら、中盤以降はリリカルでヒロイックなメロディと共にミカエルの叙情的なボーカルとウィルソンのコーラスが織りなす黄金のホーモニーからの初期Riversideを思わせる哀愁のGソロという、ベッタベタでありながらも確かな展開力を見せつける。とにかく”プログレ”に特化したレトロ感あふれる少し湿り気のある音使いを中心とした、要するに前作よりは本来のオペットゥらしい音に回帰している事が理解できる、というよりSWソロを嫌でも思い浮かばせる情緒感に溢れた淡い音使いに驚かされる。とにかく”アコースティック”で”メロウ”、そんな印象を聴き手に強く与える。

あのキザミ ・・・今年はホモもといポール・マスヴィダル率いるUSのCynicも3rdアルバムKindly Bent to Free Usの中で古典的なプログレに挑んでいたが、それで言うところの”True Hallucination Speak”を彷彿とさせる、ジュクジュクと前立腺を刺激する”あのキザミ”リフを軸に展開する#2”Cusp Of Eternity”は、そのキザミリフを中心とした申し訳程度の幽玄な世界観からは中期すなわち全盛期のオペットゥをフラッシュバックさせたりして、その”70年代回帰路線”であると同時に今作は”オペットゥ回帰路線”でもある事に気がつくと、無性に(ニヤリ)とせざるを得なかった。元々、4thアルバムの『Still Life』や5th『Blackwater Park』そして8th『Ghost Reveries』の中でも”あのキザミ”の只ならぬセンスを要所で垣間みせていたし、あらためてこうやってガッツリと刻んでくれると素直にブヒれるってもんです。鍵番が主導権を握る今作で唯一”リフ主体”のメタリックなナンバーでもあって、アルバムの二曲目に動きの激しい曲を配置する構成は、Mastodonクラック・ザ・スカイ的な匂いを感じる。

再構築 ・・・10分を超える大作で早くも今作のハイライトを飾る#3”Moon Above, Sun Below”は、再びSW譲りの少し仄暗いサイケデリカやアコースティック中心の情緒豊かな音使い、名盤『Still Life』の流れを汲んだ暗黒リフや『Heritage』譲りのオーガニックなリフが繊細かつ鮮やかに交錯していき、中盤にさしかかると一転して不穏な空気感を纏った漆黒の表情を垣間みせ、来たるクライマックスでは『Watershed』”Heir Apparent””Burden”で聴けたような”繰り返し”の美学、その作法が用いられている。まるで過去のOpetを今の70s型Opethの解釈をもって再構築したような、それこそOpetの”旨味”その全てが凝縮されたような集大成と呼べる楽曲だ。それこそナチスドイツ(ヒトラー)が終戦間際、秘密裏に建設した地下シェルターの最奥部に眠るとされる3つの歴史的な宗教画のように、お馴染みのトラヴィス・スミス氏が手がけたアートワークが醸し出す崇高であり深淵な音世界に不思議と吸い寄せられるようだ。

イタリアン・ホラー ・・・ここでも名盤『Still Life』を思わせる、寂寥感に苛まれそうになるムーディ&フォーキーなアコギがミニマルに響き渡る#4”Elysian Woes”は、”ノルウェイの森のクマさん”ことUlverKristoffer Rygg顔負けの妖艶なダンディズムが込められたミカエルの歌声、そのミカエルのボーカリストとしての才能を再確認させるダーティな一曲だ。そして、もはや本作品の主役と言っても決して過言じゃあない、新メンの鍵盤奏者ヨアキムが奏でる時にユラユラユウゲンと、時にトリトリトリッキーなメロディ、そのヨアキムの腕前が顕著に表れているのが五曲目の”Goblin”だ。その名のとおり、70年代に活躍したイタリアのプログレッシブ・ロック・バンドゴブリンをリスペクトしたインストナンバーで、そのゴブリンが音楽を手がけたイタリアの巨匠ダリオ・アルジェント監督の映画『ゾンビ』『サスペリア』シリーズなどの代表的なイタリアン・ホラーに登場する、主人公の背後に一歩づつ忍び寄る”姿のない恐怖”を主観映像で追体験させるハラハラドキドキした緊迫感とB級ゾンビ映画特有のコミカルでファンキーなノリが融合したような、それこそ70sプログレがソックリそのまま現代に蘇ったかのような楽曲で、まさしく本作の作風を象徴するかのような一曲と言える。そしてこの曲には→??「オペットゥはドラマーが代わって終わった」と言われるほど、??「オペットゥはマーティン(メンデスじゃない方)が辞めて終わった」と言われるまでの人物であり、オペットゥの黄金を支えたドラマーのマーティン・ロペスがゲストで参加している、そんなファン泣かせの粋な計らいがなされている。もしこの曲のMVを作るとしたら→オペットゥが演奏するレトロなジャズバーに(過去メンバーを含む)大量のゾンビがやってきて観客をコミカルに食い荒らしていく映像が浮かんだ。

今年のトレンドはホモ ・・・ここまで散々Cynicポール・マスヴィダルスティーヴン・ウィルソンの面影を感じさせた、それらの伏線()が遂に回収される、満を持して今年のメタル界のトレンドは”ホモ”だと確信させる曲の登場だ。今年の初めにAlcestシェルターの記事の中で、Opethミカエル・オーカーフェルトAlcestネージュの親和性について少し言及したが、この6曲目の”River”という曲は、まるで古代スカンジナビアの遊牧民と化したミカエルとその親友ウィルソンとその仲間たちが青々とした草原の中で仲良く手を繋いでキャッキャウフフ♥と股間辺りを弄り合っている、とっさに目を背けてしまいそうになる危険な情事が瞼の裏に半ば強制的に映し出されるような民謡歌で、つまり晴れて念願のシューゲイザーバンドになれたアルセスト=ネージュのように、子供の頃から憧れていた念願のプログレバンドになれて人生最大の『幸福』を感じているミカエル・オーカーフェルトのリアルな心情を歌ったような、これはもうミカエルとウィルソンとその愉快な仲間たちによる男だらけのミュージカル『愛と哀しみのホモ』あるいはアニメ『月刊少女ミカエルくん』だ。そんな風にミカエルとネージュの親和性を改めて考察させる曲なんだけど、それをより決定的な物にするかの如く、このたび目出度くOpethとAlcestのカップリングツアーが決まったらしい、そんな面白さもある。まぁ、そんな冗談は置いといて→これまでのオペットゥからは想像できないような、温もりのあるホットホットなホモーションもといエモーションに満ち溢れたこの曲では、コーラスを担当する脇役のウィルソン君と主演のミカエル君が織りなす黄金のホーモニーに只ならぬ恍惚感を味わうことができる。それこそ腐女子が大喜びしそうな801展開に絶頂不可避だし、この曲では他の楽曲同様に『Ghost Reveries』を彷彿とさせる”へゔぃ”なリフ回しを台風の目とした怒涛のインストバトルを繰り広げている。

真っ昼間の淫夢 ・・・イントロからサスペンスドラマ風のミステリアスなストリングスを大胆に取り入れた#7”Voice Of Treason”は、その荘厳なストリングスを軸にアラビアン・ミュージックリスペクトなエスニックなアレンジが際立った曲で、中でもクライマックスを飾るミカエルの情感(ホモーション)が溢れ出す歌声は大きなヌキどころ...もとい聴きどころだ。その”クサい”流れを引き継いで始まるラストの#8”Faith In Others”は、悲哀を奏でるストリングスで昼ドラばりにドロドロした悲壮感を演出し、それと同調するかのように、同郷レジェンドABBA直系のスウェディッシュ・ムード歌謡リスペクトなミカエルの通称”ウッフン歌唱”は真骨頂すなわち絶頂を迎え(この瞬間は、ミカエル・オーカーフェルト『世界一美しいデスボイス』『世界一醜いウッフンボイス』に敗北した瞬間でもあった)、歴代のプログレ勢とも決して引けを取らない中盤以降のガチで泣かせにくる感動的なシーンを最後に、このメタルゴッドロブ・ハルフォード主催の恋物語『真っ昼間の淫夢』は盛大に幕を閉じる...(ここでエンドクレジット)。

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ミカエル「俺気づいたんだ、やっぱお前がいないとダメなんだって」

スティーヴン・ウィルソン
ウィルソン「どうやらそうみたいだね(ニコッ)」

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ミカエル「10年も待たせてゴメンな。また俺という名の楽器を奏で...もとい、また俺たちの音をミックスしてくれるかい?」

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ウィルソン「もちろんさ///」

ミカエル・オーカーフェルト
ミカエル「ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-ア-♪」

スティーヴン・ウィルソン
ウィルソン「アーイキソ」

ミカエルバンド ・・・自分の中で、このオペットゥというのは1stの『Orchid』から3rdの『My Arms, Your Hearse』までが初期の第一期で、4thの『Still Life』から8thの『Ghost Reveries』までが第二期つまりオペットゥの全盛期、そして9thの『Watershed』から現在までがプログレ期つまり第三期Opeth・・・そんなザックリした認識を持っているんだけれど、ハッキリ言って9th『Watershed』以降のオペットゥはフロントマンミカエル・オーカーフェルトのワンマンバンド、つまり実質ミカエルのソロバンドすなわち”ミカエルバンド”だという事は否定しようがない事実で、その”ミカエルバンド”感は今作で俄然強くなっている。そして、やはり約10年ぶりの再会を果たした盟友ウィルソンの存在も大きくて、勿論そのSWソロからの影響もそうなんだけど、2012年に発足されたミカエルとウィルソンの”初めての共同作業”ことStorm Corrosionからの影響も隠しきれていなくて、やっぱり二年前の味が忘れられなかったのか?なんて事は知る由もないけど、要するに『Pale Communion』の本質はOpethという名のブヨブヨの皮を被ったSWなんじゃあないか?って。もはや「これオペットゥちゃうやん、SWやん!」って、それくらいスティーヴン・ウィルソンの影が異様にチラつく。そのSWによるミックスだけあって存外アッサリした感じで、前作のように徹底してヴィンテージな雰囲気はないし、どちらかと言えばクラシック・ロックというよりモダンなプログレっつーイメージのが強い。だから変に外れた音は一つもないし、むしろ僕のようなプログレ耳にはドン引きするぐらい馴染みのある音なんだけど、その代わり”意外性”というのは皆無だし、「いや、今更これやるのかよ?それならまだ『ヘリテイジ』のがインパクトあったんじゃねーか?」というような批判にも全然納得できる。結局のところ→前作の鍵を握るのがディープ・パープルなら、今作の鍵を握るのはゴブリンっつー至ってシンプルな話でしかなくて、要するに「プログレ好きによるプログレ好きのためのプログレ」で、もうなんかプログレ好きだけが楽しめればいいじゃん(いいじゃん)的な作品だから、その間口は意外と狭いのかもしれない。けれど『ヘリテイジ』との差別化はハッキリしているんで、ホント、プログレが好きかそうでないかの世界です。ただ一つ僕が心配しているのは、はたしてミカエル・オーカーフェルトは憧れのスティーヴン・ウィルソンになれたのだろうか?という一点だけ。

俺の金玉の方がヘヴィだ! ・・・レーベル側のウリ文句として→【深遠な静けさを感じさせるような曲や、獰猛に炎を吹き出すかのようなヘヴィな曲、さらには、初期オーペスを想起させるようなオールド・スクールなオーペス・サウンド】とのプロパガンダらしき謳い文句があって、とりあえず【深遠な静けさを感じさせるような曲】←わかる、【獰猛に炎を吹き出すかのようなヘヴィな曲】←うーん?、【初期オーペスを想起させるようなオールド・スクールなオーペス・サウンド】←??!!!?!?!!!??といった感想を持った人が大多数だと思われる。これって結局、何をして”ヘヴィ”と捉えるか?の話であって、別にそのプロパガンダを擁護するわけじゃあないけど、事実『Ghost Reveries』や最高傑作『Still Life』をはじめとした、(当然、その音像はいわゆるデスメタル然としたデロデロ感はないが)オペットゥ自らのルーツを廻るような往年のヘヴィなリフ回しを露骨に意識して曲を書いていると率直に感じた、と同時に名盤『Blackwater Park』を彷彿とさせる幽玄な空間形成は全盛期のオペットゥそのもの...と言ってみても完全に別物だし今さら無意味かもしれないけど、あの頃のオペットゥを幾度となく連想させるギターのリフがフレーズが、ユラユラとユラめく鍵番のメロディが、マーティン・ロペスのヤンデレドラミングが、そしてAya-StyleもといOpe-Style然としたドラマティックな展開が、それらに加えてストリングスなどの新要素も積極的に取り込んできているのは確かで、だから【獰猛に炎を吹き出すかのような~】【初期オーペスを想起させる~】とかいう謳い文句もあながち間違っちゃあいないわけです。要するに→所詮”オペットゥ回帰路線”というのはキモチの問題で、あくまでも前作の『ヘリテイジ』を基礎に、過去作のリフやメロディを今のオペットゥで再解釈し、ドヤ顔でオマージュしてみせる一種の余裕というか、実にミカエルらしいユニークな感性ここに極まれりって感じだし、それこそ6部で世界を一巡させた荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』のように、世界が一巡して過去(70s)からリスタートしたパラレル世界のオペットゥを僕たちは目撃しているんじゃあないか?って。あのホモもといCynic『Kindly Bent to Free Us』で21世紀のプログレをクラシックな視点から総括していたが、そのホモと決定的に違うのは→「ポール・マスヴィダルは21位世紀のプログレを総括したが、ミカエルは自身の過去を精算し、そして総括した」ところだ。つまり、これはOpetであってOpethではない、いやOpethであってOpetではない、そんな”一巡説”を考察として織り込みながら本作を聴けば、より一層楽しく面白く聴けるに違いない。これはもはや-君はどれだけオペットゥを理解しているか?君はどれだけプログレを理解しているか?-これはオペットゥからオペサーへの挑戦状です。だから今さらメタルだメタルじゃないなんて言ってる輩には回答権すら与えられていないんです。

・・・しっかし、ミカエルって本当にドSだよなぁって、絶対に”攻め”だよなぁって。ここで、あらためて宣言しよう!今年のトレンドは”ホモ”だ!この『Pale Communion』を今年のBESTに挙げる奴らはホモだ!俺もホモだ!お前ら全員ホモダチだ!

(PS. ミカエルへ、訴えないでください)

ペイル・コミュニオン
オーペス
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