Artist 赤い公園
Album 『猛烈リトミック』
Tracklist
・・・「はじめまして!赤い公園です!」
・・・「グハハ!貴様も『黒水公園』にしてやろうか!?」
・・・「キャ~!ホモ~!」
・・・「ぶっさw赤い後援会抜けるわw」
約一年前くらいに話題を呼んだ”今更”のMVを観た時の赤い公園の第一印象といえば→なんかちょっと気取った軽音サークルのサバサバ系女子大生が、ちょっとサブカルっぽいちょっと初期相対性理論っぽい事やってみた感じの印象で、その時は特に良い印象はなくて、むしろ逆に「ぶっさwコミュ抜けるわw」くらいのネガティヴなイメージしか持てなくて、その当時は完全にスルーしていた。他には、ギターの津野米咲さんが極度の℃ヲタだって事くらいの認識しかなくて(つい最近、念願の℃-uteとの対バンが実現したらしい)、そんな自分なんだけど、偶然たまたま新曲の”NOW ON AIR”のMVを観ちゃったら最後、マイ・ハートにズキュウウゥン!!という擬音と共に”ナニか”が注入された。
女性SHINE! ・・・このMVはちょっとした衝撃だった。まるでピーチジョンあるいはサイバーエージェントの社名を連想させる、総勢38人のイマドキ系女子が一つの画に凝縮された女子力の高い映像と、その某アイドルリスペクトな映像と同調するかのような、ノイジーに歪んだギターやエレクトロやピアノの音が激しく共振するkawaiiイントロから、まさしく「売れたい、売りたい」という明確な意思が「レディオ 冴えない今日に飛ばせ 日本中の耳に」という歌詞に込められたサビへと繋がる、とにかく”POP”過ぎる甘酸っぱくて刹那的なポップ・サウンドに→My Heart is kawaii!!キモチになったんだ。持ち前のヒネクレた音使いは影を潜め、とにかく「売れたい、売りたい」という意思を感じるポップ・ソングで、赤い公園の今の勢いがハードなドライブ感と共に赤裸々にハジケ飛ぶかのような、もはやShiggy Jr.やSilent Sirenなんて目じゃないくらいの女の子パワーに溢れたキラーチューンだ。確かに、このセクシャルなMV共々赤い公園らしからぬ楽曲だと感じるかもしれない、だが僕はそうは思わなかった。この”kawaii”を全面に押し出したMVの映像に、一人の女の子がタバコを吹かすシーンがある。近年、映画やドラマでも自粛されつつある喫煙シーンが醸し出すヤニ臭さと38人のイマドキ系女子が醸し出すフェミニンな香りが入り混じった、なんとも言えないような独特の猥臭がム~ンと漂ってきそうな、それこそ『猛烈リトミック』を象徴するこのワンシーンに感銘を受けたというか、もともと僕の赤い公園に対するイメージの一つに”ガールズ・ロック界のマイルドヤンキー”みたいな謎のイメージがあって、でも本作のkawaii de POPなコンセプトとその”ちょいワル”なイメージって真逆だったりするから、どうしても妙な違和感が拭いきれなくて、でも”NOW ON AIR”を何回も聴いていくうちに、バンドの雰囲気は”アウトロー”っぽいのに音はインテリ・・・そんな一種の”ギャップ”というか、逆に対極に位置するかこそ”POP”とはナニかが理解できるんじゃあないか?って。なんだろう、ヤンキー少女の方が本物のkawaiiを知ってる、みたいな逆転の発想的な感覚?
「刮目せよ!鈴木愛理を超える表情力を!」
・・・「umm...Red Park is kawaii...?」
赤い公園VS,黒水公園 ・・・要約すると→この赤い公園の2ndアルバム『猛烈リトミック』のコンセプトは「売れたい、売りたい」で、そのコンセプトを実現させるとなると、やはり赤い公園のメンバーだけじゃ不足するのもがあって、その足りない要素を補うために、今作では亀田音楽専門学校の校長亀田誠治氏やKREVAなどのゲストや著名なプロデューサーを複数迎えて制作されている。その氏が手がけた二曲目の”絶対的な関係”は、一曲目の”NOW ON AIR”から一転して、まるで赤い公園のネジ曲がった根性のようにギッチギチに歪ませたノイズ・ロックをぶっ放し、次の#3”108”は数字的な意味でノルウェーの22的なマスロック感あふれる津野ちゃんのトリッキーなカッティング・ギターでリズミカルに展開する。再び亀田氏がプロデュースした#4”いちご”は、可愛らしいキューティクルなエレクトロニカをフューチャーした曲で、いちごをテーマにした子供向けの歌詞まで全てがユニークなNHK教育風ナンバーだ。そして、シューゲイザー風のアプローチを垣間みせるポスト-メタルバラードの#6”私”を皮切りに、初期の椎名林檎や森田童子あるいは鬼束ちひろを連想させる昭和歌謡ばりにレトロで鬱々しい超絶轟音ナンバーの#7”ドライフラワー”からヒップホッパーKREVAとコラボした#8”TOKYO HARBOR”、極めつけとなる#9”ひつじ屋さん”までの流れを聴けば僕たちは理解するだろう→ボーカルの”佐藤千明はメタル”だって事を、そして”赤い公園はメタル”だって事を...ッ。その中でも、9曲目の”ひつじ屋さん”には驚かされた。これ、ただのプログレじゃん!って。いや、ただのプログレなんかじゃあない。この”ひつじ屋さん”とかいうクソみたいなタイトルや悪夢かと思うくらい前衛的なMVからは全く想像できない、それはまるで『クリムゾン・キングの公園』の世界...あるいはブラック・サバスの『Paranoid』を彷彿とさせる、往年の70s暗黒ヘヴィ・サイケ/プログレッシブ・ロックを目の当たりにした僕は、宮殿ジャケのような顔をして只々唖然とするしかなかった。で、これは#8でも思ったんだが、赤い公園の毒素のある陰気な音使いってなんかスゲーUKバンドっぽくね?って。つまり、ようやくここで最初のミカエル・オーカーフェルトと赤い公園の会話に繋がってくるわけです。そう、僕はOpethの『黒水公園』をプロデュースしたUKの奇才スティーヴン・ウィルソンの姿を今作の中に垣間見たのである。ちょっとインテリっぽいヒネクレた音楽を”ポップス”あるいは”メジャー”に昇華するスタイル、そのスティーヴン・ウィルソンと赤い公園に共通する音楽的理念、その”大衆性”を極めんとするスタイルに親和性を見出すことに成功したのである。その衝撃の事実に気づいた瞬間は、ほぼ初めて赤い公園を聴いているのにも関わらず、驚くくらいスンナリと耳に馴染む、馴染んだワケを理解した瞬間だった。つうか、こいつらの本性ってコッチ側だったのかって、津野ちゃんってコッチ側の人間だったのかって、当然いい意味で驚かされたというか、なんか逆に嬉しくなった。こいつら、”俺の感性”が求めていた真のジェイポッパーなんじゃねーかって。あの黒水公園VS,赤い公園という構図は何一つ間違っちゃいなかったんだって。だからメタラーやオペサーをはじめ、SW先生が好きなら大人しく聴くべきアルバムなんじゃねーかって。もちろん、SWソロの1st『Insurgentes』と一緒にね。
・・・「Red Park is better than Blackwater Park!!」
クリムゾン・キングの公園 ・・・赤い公園の内に秘められた鬼エネルギーが爆発するような中盤の怒涛の流れを抜けると→「私たち、こんな曲もできちゃうんですテヘペロ☆」とばかりの、疾走感あふれるエネルギッシュなメロコアチューンの#10”サイダー”から、タイトルどおり楽しくバカ騒ぎする曲でワンピースの主題歌っぽいサビが印象的な#11”楽しい”、イントロのダーティなリフと間奏の官能的なフレーズに津野米咲の初期椎名林檎へのアツいリスペクトを感じる#12”牢屋”、再びチルいエレクトロとトリップ・ホップ的なアレンジを効かせた#13”お留守番”は、パスピエの”瞑想”を彷彿とさせる子守唄のようなNHK教育的ナンバー。で、津野っちのディストーション・ギターから始まって、夕暮れ時のノスタルジックな雰囲気を醸し出す摩訶不思議(オリエンタル)なアレンジを施しながら力強くリリカルに、そしてPost-Progressiveに展開する#14”風が知ってる”から、そのリリカルな流れを汲んでミニマルに聴かせる#15”木”までの流れはハイライトで、なんだろう・・・終わりが近づくにつれ→「終わらないでくれ、もっと聴いていたい、僕はもっと赤い公園という名のテーマパークで遊んでいたいんだ」という、まるで子供時代に立ち返ったような気分になった。全部で15曲あるにも関わらず、ツカミの序盤から目玉となる中盤のテンションを最後の最後まで持続させる馬力の強さは、まさしく今の赤い公園の勢いを象徴しているかのよう。特に終盤に近づくにつれて「おおっ!」と耳を刺激する、噛めば噛むほど味が出るスルメのようなギターのフレーズ、メロディの充実っぷりからは、津野米咲とかいうアーティストの絶対的な才能を垣間見ることができるし、こんなん聴かされちゃあ津野ニー不可避ですわ。で、これは最終的に”NOW ON AIR”の例のワンシーンに帰結してくるのだけれど、パッと聴きでは初々しいガールズ・ロックで可愛らしんだけど、随所で顔を覗かせる不穏な空気感や時として狂気的な音使いに、思春期の乙女心に潜むオンナの本性を、隠しきれない赤い公園のヒネクレた性根を、それこそ見てはいけないものを見てしまったような気がして、背筋がゾクゾクしてしまった。だからある意味、ホラーなアルバムだと思う。まるで放課後の夕日に赤く焼けたクリムゾン・キングの公園で、「よってらっしゃい、みてらっしゃい」の合図で幕を開ける、全部で15枚の闇芝居もとい紙芝居劇を観ているかのような、なんだろう、例えるなら江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを読んでいるかのような、そんなエキゾチックでノスタルジックな郷愁をふと呼び起こすような、それこそ『猛烈リトミック』の真のコンセプトである、誰しもが持つ子供時代の思い出を、その普遍的なテーマを冒険活劇のように力強く描き出している。
津野米咲≒SW ・・・あらためて、今作のコンセプトは「売れたい、売りたい」だ。だから音が一点に偏っているなんて事はなく、Jポップ/パンク/メタル/ノイズ/プログレ/シューゲイザー/メロコア/エレクトロ/マスロック/ポストロックなど様々なジャンルを網羅した、めっちゃポジティヴな曲からイギリスの音楽顔負けの薄暗くて内省的な曲、ハードな曲からソフト&ウェットな曲まで、もはやできない曲はないと言わんばかりのバラエティに富んだ”オルタナティブ”な曲調、それらをカラフルに彩るオシャンティかつ個性的なアレンジからは、赤い公園が持つ無限の可能性(ポテンシャル)を感じ取ることができる。で、赤い公園の底知れぬポテンシャルを実現させているのって、ひとえにボーカルの佐藤千明の業なんじゃねーかって。決して天才的に上手いというわけではないし、正直どこに特徴があるのかイマイチ掴めない、少なくともイマドキの媚びたようなボーカルではなく、どちらかと言えばヤンキーみたいな巻き舌がよく似合う泥臭いタイプのボーカルなんだけど、シャウトするように声を張り上げるメタルバラードから繊細に優しく歌い上げるNHK教育ソングまで、どのジャンルどの場面もソツなく柔軟に歌いこなす姿は、歌手佐藤千明というより女優佐藤千明に見えてしょうがなかった。特に#7の病んだ歌詞を激情的に演じてみせるエモーショナルなシーンは主演女優賞もんだし、なんだかんだ赤い公園のボーカルは佐藤千明じゃなければ成り立たないってのが分かるはずだ。事実、今作の「売れたい、売りたい」というコンセプトを一番わかりやすく表現しているのって彼女だからね。ともあれ、音がメジャー色に洗練されて大衆性が著しく増しつつも、これまで通りツウが喜ぶツボというのをシッカリと押さえた”らしい”サウンドに、津野米咲が奏でる絵の具のパレットように色彩豊かなギター・フレーズに、津野ネキがただの℃ヲタじゃなかったことに、そして津野ネキのソングライティングから溢れ出す”Psot”な感性に→My Heart is Happy!! だから僕は、この赤い公園が日本で初めてスティーヴン・ウィルソンにプロデュースされるバンド・・・になる可能性を諦めない。僕は、諦めない。まぁ、それは半分冗談なんだけど→その【津野米咲≒スティーヴン・ウィルソン】という今世紀最大の衝撃的な”答え”を導き出し、遂には【SW】【昭和歌謡】【ポップ】【Psot-Progressive】という4つのキーワードから、DIR EN GREYの”サVカル系男子”こと京率いるsukekiyoの存在が逆さまの状態で脳裏に浮かび上がってきた。これは冗談じゃなしに、リアルにsukekiyoと赤い公園の対バンありそうな予感はする。だから頼んだで~京。あと今作に℃-uteの鈴木愛理がコメント寄せてて笑ったんだけど、その流れで”NOW ON AIR”の鈴木愛理Ver作って欲しいと思っちゃったんだからしょうがない小宮山。
・・・「なぁウィルソン、俺たちの名盤『黒水公園』をプロデュースした君なら赤い公園を上手くプロデュースできるんじゃないか?」
・・・「あぁ...だがなぜ女なんだ・・・」
『猛烈リトミック』を支持する理由 ・・・この赤い公園の2ndアルバム『猛烈リトミック』は、今年の邦楽界を代表する傑作だ。日本中の音楽好きに『夢』と『希望』を与えるかのような、メンバー4人の音楽愛が魂となってそれぞれの楽器に宿り、その過程で音エネルギーへと変化し、その4つの音エネルギーが一つに融け合った名盤だ。それでは、リードトラックの”NOW ON AIR”の歌詞にあるように、このアルバムがヒット・チャートを賑わせているか?日本中の耳に届いているか?と言われたらNO ON AIRだ。週間アルバムランキングで最高27位という現実に目を疑った。売れなきゃいけないアルバムが売れない、邦楽界の現状を垣間見た気がした。こんな素晴らしいアルバムが一万枚も売れない時代なんだって。いくらスマップに楽曲提供しているからといって、いくら名プロデューサーや著名なゲストを迎えているからといって、いくらゴリ押しに宣伝したからといって簡単に売れるような時代じゃないんだって。この夢も希望もない今の邦楽シーンに絶望した!理想と現実のギャップに絶望した!っつっても、イマドキのデジタルで売れてるってんならそれまでの話だが。。。これは俺たちのアイドル池田智子擁するShiggy.Jrの”LISTEN TO THE MUSIC”でも思ったんだが、赤い公園の”NOW ON AIR”にある「Please Don't Stop The Music Baby!!」とかいう歌詞からは、現代に蔓延る音楽リスナーの減少問題を暗に表しているようで、「なんてエモーショナルなのだろう・・・」と思うと同時に、”音楽を聴いて欲しい”という彼女たちの切なる願いを感じ取った。話は変わるが→おいら、きのこ帝国やtricotは死ぬまで聴くことはないと思う。なぜなら、その例に出した2バンドには”聴いて欲しい”という意思が音に感じないから。しかし赤い公園の『猛烈リトミック』は違う。日本中に聴いて欲しいという明確な意思が音に込められている。その”意思”に聴き手がどう反応してやれるか?その結果が今作の売上に直接繋がっているんじゃあないかって。別に現代音楽リスナーの審美眼の低下を憂いているわけじゃあなくて、実際問題、今の邦楽シーンにおいて、その”売れたい”という意思って最も大事なことなんじゃあないかって。だから僕は、”売れたい”と願った赤い公園の意思を無駄にしたくはないんだ。以上が、僕が赤い公園の『猛烈リトミック』を支持する理由だ。ちなみに、僕の推しメンはドラムの歌川菜穂ちゃんです。って・・・ん?
(公式HPのプロフィールから)
歌川菜穂(Dr)
LIVEサポート
・・・
<<<<<Vampillia>>>>>
・・・
「なぜお前がそこにいるううううう!?うわあああああああああああああああ」
・・・ともあれ、はたして本当に赤い公園は”メタル”なのか?その真相を確かめるため、今月の下旬から始まるワンマンツアーに行って、実際にこの目で確かめてこようと思う。なのでオペサーは『黒水公園』のTシャツを着て参戦するように!
Album 『猛烈リトミック』
Tracklist
01. NOW ON AIR
02. 絶対的な関係
03. 108
04. いちご
05. 誰かが言ってた
06. 私
07. ドライフラワー
08. TOKYO HARBOR feat.KREVA
09. ひつじ屋さん
10. サイダー
11. 楽しい
12. 牢屋
13. お留守番
14. 風が知ってる
15. 木
・・・「はじめまして!赤い公園です!」
・・・「グハハ!貴様も『黒水公園』にしてやろうか!?」
・・・「キャ~!ホモ~!」
・・・「ぶっさw赤い後援会抜けるわw」
約一年前くらいに話題を呼んだ”今更”のMVを観た時の赤い公園の第一印象といえば→なんかちょっと気取った軽音サークルのサバサバ系女子大生が、ちょっとサブカルっぽいちょっと初期相対性理論っぽい事やってみた感じの印象で、その時は特に良い印象はなくて、むしろ逆に「ぶっさwコミュ抜けるわw」くらいのネガティヴなイメージしか持てなくて、その当時は完全にスルーしていた。他には、ギターの津野米咲さんが極度の℃ヲタだって事くらいの認識しかなくて(つい最近、念願の℃-uteとの対バンが実現したらしい)、そんな自分なんだけど、偶然たまたま新曲の”NOW ON AIR”のMVを観ちゃったら最後、マイ・ハートにズキュウウゥン!!という擬音と共に”ナニか”が注入された。
女性SHINE! ・・・このMVはちょっとした衝撃だった。まるでピーチジョンあるいはサイバーエージェントの社名を連想させる、総勢38人のイマドキ系女子が一つの画に凝縮された女子力の高い映像と、その某アイドルリスペクトな映像と同調するかのような、ノイジーに歪んだギターやエレクトロやピアノの音が激しく共振するkawaiiイントロから、まさしく「売れたい、売りたい」という明確な意思が「レディオ 冴えない今日に飛ばせ 日本中の耳に」という歌詞に込められたサビへと繋がる、とにかく”POP”過ぎる甘酸っぱくて刹那的なポップ・サウンドに→My Heart is kawaii!!キモチになったんだ。持ち前のヒネクレた音使いは影を潜め、とにかく「売れたい、売りたい」という意思を感じるポップ・ソングで、赤い公園の今の勢いがハードなドライブ感と共に赤裸々にハジケ飛ぶかのような、もはやShiggy Jr.やSilent Sirenなんて目じゃないくらいの女の子パワーに溢れたキラーチューンだ。確かに、このセクシャルなMV共々赤い公園らしからぬ楽曲だと感じるかもしれない、だが僕はそうは思わなかった。この”kawaii”を全面に押し出したMVの映像に、一人の女の子がタバコを吹かすシーンがある。近年、映画やドラマでも自粛されつつある喫煙シーンが醸し出すヤニ臭さと38人のイマドキ系女子が醸し出すフェミニンな香りが入り混じった、なんとも言えないような独特の猥臭がム~ンと漂ってきそうな、それこそ『猛烈リトミック』を象徴するこのワンシーンに感銘を受けたというか、もともと僕の赤い公園に対するイメージの一つに”ガールズ・ロック界のマイルドヤンキー”みたいな謎のイメージがあって、でも本作のkawaii de POPなコンセプトとその”ちょいワル”なイメージって真逆だったりするから、どうしても妙な違和感が拭いきれなくて、でも”NOW ON AIR”を何回も聴いていくうちに、バンドの雰囲気は”アウトロー”っぽいのに音はインテリ・・・そんな一種の”ギャップ”というか、逆に対極に位置するかこそ”POP”とはナニかが理解できるんじゃあないか?って。なんだろう、ヤンキー少女の方が本物のkawaiiを知ってる、みたいな逆転の発想的な感覚?
「刮目せよ!鈴木愛理を超える表情力を!」
・・・「umm...Red Park is kawaii...?」
赤い公園VS,黒水公園 ・・・要約すると→この赤い公園の2ndアルバム『猛烈リトミック』のコンセプトは「売れたい、売りたい」で、そのコンセプトを実現させるとなると、やはり赤い公園のメンバーだけじゃ不足するのもがあって、その足りない要素を補うために、今作では亀田音楽専門学校の校長亀田誠治氏やKREVAなどのゲストや著名なプロデューサーを複数迎えて制作されている。その氏が手がけた二曲目の”絶対的な関係”は、一曲目の”NOW ON AIR”から一転して、まるで赤い公園のネジ曲がった根性のようにギッチギチに歪ませたノイズ・ロックをぶっ放し、次の#3”108”は数字的な意味でノルウェーの22的なマスロック感あふれる津野ちゃんのトリッキーなカッティング・ギターでリズミカルに展開する。再び亀田氏がプロデュースした#4”いちご”は、可愛らしいキューティクルなエレクトロニカをフューチャーした曲で、いちごをテーマにした子供向けの歌詞まで全てがユニークなNHK教育風ナンバーだ。そして、シューゲイザー風のアプローチを垣間みせるポスト-メタルバラードの#6”私”を皮切りに、初期の椎名林檎や森田童子あるいは鬼束ちひろを連想させる昭和歌謡ばりにレトロで鬱々しい超絶轟音ナンバーの#7”ドライフラワー”からヒップホッパーKREVAとコラボした#8”TOKYO HARBOR”、極めつけとなる#9”ひつじ屋さん”までの流れを聴けば僕たちは理解するだろう→ボーカルの”佐藤千明はメタル”だって事を、そして”赤い公園はメタル”だって事を...ッ。その中でも、9曲目の”ひつじ屋さん”には驚かされた。これ、ただのプログレじゃん!って。いや、ただのプログレなんかじゃあない。この”ひつじ屋さん”とかいうクソみたいなタイトルや悪夢かと思うくらい前衛的なMVからは全く想像できない、それはまるで『クリムゾン・キングの公園』の世界...あるいはブラック・サバスの『Paranoid』を彷彿とさせる、往年の70s暗黒ヘヴィ・サイケ/プログレッシブ・ロックを目の当たりにした僕は、宮殿ジャケのような顔をして只々唖然とするしかなかった。で、これは#8でも思ったんだが、赤い公園の毒素のある陰気な音使いってなんかスゲーUKバンドっぽくね?って。つまり、ようやくここで最初のミカエル・オーカーフェルトと赤い公園の会話に繋がってくるわけです。そう、僕はOpethの『黒水公園』をプロデュースしたUKの奇才スティーヴン・ウィルソンの姿を今作の中に垣間見たのである。ちょっとインテリっぽいヒネクレた音楽を”ポップス”あるいは”メジャー”に昇華するスタイル、そのスティーヴン・ウィルソンと赤い公園に共通する音楽的理念、その”大衆性”を極めんとするスタイルに親和性を見出すことに成功したのである。その衝撃の事実に気づいた瞬間は、ほぼ初めて赤い公園を聴いているのにも関わらず、驚くくらいスンナリと耳に馴染む、馴染んだワケを理解した瞬間だった。つうか、こいつらの本性ってコッチ側だったのかって、津野ちゃんってコッチ側の人間だったのかって、当然いい意味で驚かされたというか、なんか逆に嬉しくなった。こいつら、”俺の感性”が求めていた真のジェイポッパーなんじゃねーかって。あの黒水公園VS,赤い公園という構図は何一つ間違っちゃいなかったんだって。だからメタラーやオペサーをはじめ、SW先生が好きなら大人しく聴くべきアルバムなんじゃねーかって。もちろん、SWソロの1st『Insurgentes』と一緒にね。
・・・「Red Park is better than Blackwater Park!!」
クリムゾン・キングの公園 ・・・赤い公園の内に秘められた鬼エネルギーが爆発するような中盤の怒涛の流れを抜けると→「私たち、こんな曲もできちゃうんですテヘペロ☆」とばかりの、疾走感あふれるエネルギッシュなメロコアチューンの#10”サイダー”から、タイトルどおり楽しくバカ騒ぎする曲でワンピースの主題歌っぽいサビが印象的な#11”楽しい”、イントロのダーティなリフと間奏の官能的なフレーズに津野米咲の初期椎名林檎へのアツいリスペクトを感じる#12”牢屋”、再びチルいエレクトロとトリップ・ホップ的なアレンジを効かせた#13”お留守番”は、パスピエの”瞑想”を彷彿とさせる子守唄のようなNHK教育的ナンバー。で、津野っちのディストーション・ギターから始まって、夕暮れ時のノスタルジックな雰囲気を醸し出す摩訶不思議(オリエンタル)なアレンジを施しながら力強くリリカルに、そしてPost-Progressiveに展開する#14”風が知ってる”から、そのリリカルな流れを汲んでミニマルに聴かせる#15”木”までの流れはハイライトで、なんだろう・・・終わりが近づくにつれ→「終わらないでくれ、もっと聴いていたい、僕はもっと赤い公園という名のテーマパークで遊んでいたいんだ」という、まるで子供時代に立ち返ったような気分になった。全部で15曲あるにも関わらず、ツカミの序盤から目玉となる中盤のテンションを最後の最後まで持続させる馬力の強さは、まさしく今の赤い公園の勢いを象徴しているかのよう。特に終盤に近づくにつれて「おおっ!」と耳を刺激する、噛めば噛むほど味が出るスルメのようなギターのフレーズ、メロディの充実っぷりからは、津野米咲とかいうアーティストの絶対的な才能を垣間見ることができるし、こんなん聴かされちゃあ津野ニー不可避ですわ。で、これは最終的に”NOW ON AIR”の例のワンシーンに帰結してくるのだけれど、パッと聴きでは初々しいガールズ・ロックで可愛らしんだけど、随所で顔を覗かせる不穏な空気感や時として狂気的な音使いに、思春期の乙女心に潜むオンナの本性を、隠しきれない赤い公園のヒネクレた性根を、それこそ見てはいけないものを見てしまったような気がして、背筋がゾクゾクしてしまった。だからある意味、ホラーなアルバムだと思う。まるで放課後の夕日に赤く焼けたクリムゾン・キングの公園で、「よってらっしゃい、みてらっしゃい」の合図で幕を開ける、全部で15枚の闇芝居もとい紙芝居劇を観ているかのような、なんだろう、例えるなら江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを読んでいるかのような、そんなエキゾチックでノスタルジックな郷愁をふと呼び起こすような、それこそ『猛烈リトミック』の真のコンセプトである、誰しもが持つ子供時代の思い出を、その普遍的なテーマを冒険活劇のように力強く描き出している。
津野米咲≒SW ・・・あらためて、今作のコンセプトは「売れたい、売りたい」だ。だから音が一点に偏っているなんて事はなく、Jポップ/パンク/メタル/ノイズ/プログレ/シューゲイザー/メロコア/エレクトロ/マスロック/ポストロックなど様々なジャンルを網羅した、めっちゃポジティヴな曲からイギリスの音楽顔負けの薄暗くて内省的な曲、ハードな曲からソフト&ウェットな曲まで、もはやできない曲はないと言わんばかりのバラエティに富んだ”オルタナティブ”な曲調、それらをカラフルに彩るオシャンティかつ個性的なアレンジからは、赤い公園が持つ無限の可能性(ポテンシャル)を感じ取ることができる。で、赤い公園の底知れぬポテンシャルを実現させているのって、ひとえにボーカルの佐藤千明の業なんじゃねーかって。決して天才的に上手いというわけではないし、正直どこに特徴があるのかイマイチ掴めない、少なくともイマドキの媚びたようなボーカルではなく、どちらかと言えばヤンキーみたいな巻き舌がよく似合う泥臭いタイプのボーカルなんだけど、シャウトするように声を張り上げるメタルバラードから繊細に優しく歌い上げるNHK教育ソングまで、どのジャンルどの場面もソツなく柔軟に歌いこなす姿は、歌手佐藤千明というより女優佐藤千明に見えてしょうがなかった。特に#7の病んだ歌詞を激情的に演じてみせるエモーショナルなシーンは主演女優賞もんだし、なんだかんだ赤い公園のボーカルは佐藤千明じゃなければ成り立たないってのが分かるはずだ。事実、今作の「売れたい、売りたい」というコンセプトを一番わかりやすく表現しているのって彼女だからね。ともあれ、音がメジャー色に洗練されて大衆性が著しく増しつつも、これまで通りツウが喜ぶツボというのをシッカリと押さえた”らしい”サウンドに、津野米咲が奏でる絵の具のパレットように色彩豊かなギター・フレーズに、津野ネキがただの℃ヲタじゃなかったことに、そして津野ネキのソングライティングから溢れ出す”Psot”な感性に→My Heart is Happy!! だから僕は、この赤い公園が日本で初めてスティーヴン・ウィルソンにプロデュースされるバンド・・・になる可能性を諦めない。僕は、諦めない。まぁ、それは半分冗談なんだけど→その【津野米咲≒スティーヴン・ウィルソン】という今世紀最大の衝撃的な”答え”を導き出し、遂には【SW】【昭和歌謡】【ポップ】【Psot-Progressive】という4つのキーワードから、DIR EN GREYの”サVカル系男子”こと京率いるsukekiyoの存在が逆さまの状態で脳裏に浮かび上がってきた。これは冗談じゃなしに、リアルにsukekiyoと赤い公園の対バンありそうな予感はする。だから頼んだで~京。あと今作に℃-uteの鈴木愛理がコメント寄せてて笑ったんだけど、その流れで”NOW ON AIR”の鈴木愛理Ver作って欲しいと思っちゃったんだからしょうがない小宮山。
・・・「なぁウィルソン、俺たちの名盤『黒水公園』をプロデュースした君なら赤い公園を上手くプロデュースできるんじゃないか?」
・・・「あぁ...だがなぜ女なんだ・・・」
『猛烈リトミック』を支持する理由 ・・・この赤い公園の2ndアルバム『猛烈リトミック』は、今年の邦楽界を代表する傑作だ。日本中の音楽好きに『夢』と『希望』を与えるかのような、メンバー4人の音楽愛が魂となってそれぞれの楽器に宿り、その過程で音エネルギーへと変化し、その4つの音エネルギーが一つに融け合った名盤だ。それでは、リードトラックの”NOW ON AIR”の歌詞にあるように、このアルバムがヒット・チャートを賑わせているか?日本中の耳に届いているか?と言われたらNO ON AIRだ。週間アルバムランキングで最高27位という現実に目を疑った。売れなきゃいけないアルバムが売れない、邦楽界の現状を垣間見た気がした。こんな素晴らしいアルバムが一万枚も売れない時代なんだって。いくらスマップに楽曲提供しているからといって、いくら名プロデューサーや著名なゲストを迎えているからといって、いくらゴリ押しに宣伝したからといって簡単に売れるような時代じゃないんだって。この夢も希望もない今の邦楽シーンに絶望した!理想と現実のギャップに絶望した!っつっても、イマドキのデジタルで売れてるってんならそれまでの話だが。。。これは俺たちのアイドル池田智子擁するShiggy.Jrの”LISTEN TO THE MUSIC”でも思ったんだが、赤い公園の”NOW ON AIR”にある「Please Don't Stop The Music Baby!!」とかいう歌詞からは、現代に蔓延る音楽リスナーの減少問題を暗に表しているようで、「なんてエモーショナルなのだろう・・・」と思うと同時に、”音楽を聴いて欲しい”という彼女たちの切なる願いを感じ取った。話は変わるが→おいら、きのこ帝国やtricotは死ぬまで聴くことはないと思う。なぜなら、その例に出した2バンドには”聴いて欲しい”という意思が音に感じないから。しかし赤い公園の『猛烈リトミック』は違う。日本中に聴いて欲しいという明確な意思が音に込められている。その”意思”に聴き手がどう反応してやれるか?その結果が今作の売上に直接繋がっているんじゃあないかって。別に現代音楽リスナーの審美眼の低下を憂いているわけじゃあなくて、実際問題、今の邦楽シーンにおいて、その”売れたい”という意思って最も大事なことなんじゃあないかって。だから僕は、”売れたい”と願った赤い公園の意思を無駄にしたくはないんだ。以上が、僕が赤い公園の『猛烈リトミック』を支持する理由だ。ちなみに、僕の推しメンはドラムの歌川菜穂ちゃんです。って・・・ん?
(公式HPのプロフィールから)
歌川菜穂(Dr)
LIVEサポート
Vampillia
The SALOVERS
・・・
<<<<<Vampillia>>>>>
・・・
「なぜお前がそこにいるううううう!?うわあああああああああああああああ」
・・・ともあれ、はたして本当に赤い公園は”メタル”なのか?その真相を確かめるため、今月の下旬から始まるワンマンツアーに行って、実際にこの目で確かめてこようと思う。なのでオペサーは『黒水公園』のTシャツを着て参戦するように!
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