Artist ANATHEMA
Album 『Fine Days 1999 - 2004』
Music for Nations ・・・今年驚いたニュースの一つに、90年代のメタルシーンを支えた偉大なインディ・レーベルとしてその名を馳せたMusic for Nationsの復活で、過去にはOpethやParadise Lost、そしてANATHEMAをはじめ著名なメタルバンドが数多く在籍していた事で知られるMFNだが、そのMFNが2004年に消滅してしまい路頭に迷ったANATHEMAはKscopeと契約し、すると間もなく人気に火がついたこのタイミングで→ここぞとばかりに「ANATHEMAのオルタナ期(全盛期)を支えたのは他でもないワイらや!」という"したたか"な主張とともに、ANATHEMAがMFNに在籍していた1999年から2004年までの間に発表されたアルバムおよびライブ作品、要するにANATHEMAが最も"オルタナティブ"していた中期の名作、つまり『Judgement』と『A Fine Day to Exit』と『A Natural Disaster』の三作品の音源にリマスターを施し、そこにライブ作品『Were You There?』をプラスして再発したのが、今作の『Fine Days 1999 - 2004』というわけ。正直、1999年発の『Judgement』はまだしも、2001年発の『A Fine Day to Exit』や『A Natural Disaster』あたりはリマスターするほど悪いプロダクションじゃあないのだが、とは言いながらも今回のリマスター&再発はファンとして素直に嬉しい限りだし、そして何よりもMFNの復活を素直に祝福したい。
『Judgement』 ・・・初期の絶望と破滅を描いたデス/ドゥーム・メタルから現在のラブ&ピースなオルタナティブ路線に至るまで、音楽性の振り幅が世界で最も大きいバンドとして有名なアナセマだが、そもそもアナセマの"オルタナ化"というのは、いわゆる"UKゴシックメタル御三家"として名を馳せていた3rdアルバム『Eternity』、そして4thアルバム『Alternative 4』の頃から既に"オルタナバンド"としての素質やその片鱗を音から垣間見せていて、その"オルタナ化"がより顕著に表面化する事になったのが、1999年にリリースされた名盤と名高い5thアルバム『Judgement』だ。このアルバムは、まだ90年代特有の垢抜けないアングラな雰囲気やギター・サウンドもメタル然とした歪んだ音作りではあるが、しかしバンドは新たにキーボードによるPink Floydばりのアトモスフェリックな浮遊感を身に付け、それこそ現在のPost-Progressiveなサウンドの先駆け的な変化を呼んでいる。幕開けを飾る"Deep"のアルペジオは、近年のアナセマを代表する傑作『Weather Systems』の名曲”Untouchable, Part 1”を彷彿とさせるし、それこそ『Weather Systems』はこの『Judgement』の世界を一巡させたアルバム、という俺の解釈がシックリくる。今回リマスターされた三作の中で最もリマスターの恩恵を受けているアルバムでもあって、今作が一番のウリとする荘厳な世界観と『デビルマン』のラストシーンばりに慈悲深きコンセプトが、輪郭のクッキリハッキリした音と相まってより鮮明に、かつ深裂に浮かび上がってくる。
『A Fine Day to Exit』 ・・・21世紀に差しかかると、2001年にアナセマは6thアルバムとなる『A Fine Day to Exit』をリリースする。かのトラヴィス・スミスが手がけたアートワークをはじめ、そのサウンド的にも一気に垢抜け始めるとともに、少し湿り気のあるUKロック的なアンニュイな色気とグランジにも通じるダウナーな気だるさが融合した、ほのかにアート・ロック的な側面を持つオルタナへと大きく変化し、完全にメタルからの脱皮に成功する。もはや90年代の不毛のメタルシーンを生き抜いたアナセマの面影はなく、そこには"オルタナティブ・バンド"としてのアナセマが存在しているだけだった。このアルバム、今回のリマスター版とオリジナル版では少し異なる所があって、まずリマスター版の一曲目には”A Fine Day”というインストが新曲として追加されていて、それによりオリジナル版の一曲目を飾る”Pressure”がリマスター版では6曲目に、オリジナル三曲目の”Looking Outside Inside”がリマスターでは8曲目になってたり、”Barriers”にいたっては(Breaking Over The)の部分が取り払われて”Breaking Down The Barriers”に改名されたりと、もの凄い曲順に違和感あるけど逆に言えば新鮮な気持ちで聴ける利点もある。このアルバムは、とにかくイギリスの空模様のように不機嫌な空気感と憂鬱な雰囲気がたまらなく魅力的で、音使い的には中期アナセマの中では最も今のアナセマに近い、存外ソフト&ウェットなアトモスフェリック・ロックを展開している。しかし、このアルバムも結構特殊なアルバムで、ラストの大作がほぼSEメインだったり、色々と個性的なアルバムではあるが、持ち前のコンセプティブな世界観は不変である。イメージ的には、このアルバムの世界を一巡させたのが『We're Here Because We're Here』みたいな、ちょっと強引な解釈もできなくもない。
『A Natural Disaster』 ・・・前作で完全に脱メタル化したアナセマは、その二年後、更に"オルタナティブ・バンド"としての真価を発揮し始める。2003年にリリースされた7thアルバム『A Natural Disaster』は、Post-系のヘヴィネスや俄然幽玄さを増した音響的な意識を高めると同時に、UKオルタナ界の長であるRadiohead顔負けのエレクトロな要素を積極的かつ大胆に取り入れた、これまでで最も実験的かつ賛否両論を呼んだ作品と知られていて、それこそ『Judgement』から本格化したオルタナ路線の一つの終着点であり、名実ともにオルタナバンドとしての音を極め尽くした、中期アナセマの集大成と位置づけられる一枚だ。今聴いても、やはり最新作の10thアルバム『Distant Satellites』には、この『A Natural Disaster』からのエレクトロな要素やミニマリズムを意識した作曲面における実験的な部分からも、ソレと限りなく近いフィーリングが感じ取れる。それこそ映画『インターステラー』の深宇宙(ワームホール)の中を彷徨うかの如し、『A Natural Disaster』の狂気的なコンセプトと五次元的な世界観を一巡すなわち『メイド・イン・ヘブン』にブチ上げたのが『Distant Satellites』、という俺の解釈に説得力が生まれるんじゃねー的な。また表題曲に(まだ正式加入する前の)リー・ダグラスをメイン・ボーカルに携える所も、リー姐さんが未来のアナセマのキーパーソンとなる重要な存在である事を示唆している。あと約10分を超えるラストナンバーの”Violence”は、現代ポストブラックの先駆けと言っても過言じゃあない。全てにおいて、声を大にして傑作と呼べる一枚だ。
『黄金の道』 ・・・惜しまれながら2004年にMFNが消滅し、数年間の空白期間を経て、2008年にスティーヴン・ウィルソン主宰のKscopeと契約したアナセマは、今回の三作を含む過去作の名曲をアコースティック・リメイクした『Hindsight』をリリースする。そして、2010年にはSWのプロデュースにより晴れて"Post-Progressive"界の仲間入りを果たす8thアルバム『We're Here Because We're Here』をドロップし、2012年には近年アナセマの最高傑作と名高い9thアルバム『Weather Systems』を、その二年後には最新作の10thアルバム『Distant Satellites』を、まるで水を得た魚の如くコンスタントに作品を発表し、今現在の『黄金期』に至る。正直なところ近年のアナセマは、細部の所では微妙な違いはあるものの、広義で見れば"Post-Progressive"という一つのジャンルに定義することは容易に可能で、しかし今回リマスターされた三枚のアルバムというのは、それぞれ音使いも音色も世界観もコンセプトもライティングも何一つとして同じ要素がなくて、それだけで如何に中期のアナセマが豊富なアイデアと創作者としてのポテンシャル/インスピレーションを多感に切り拓いていった時期であったか、それすなわちアナセマの"全盛期"だったのかが分かるし、と同時に如何に彼らが"真のオルタナティブ・バンド"であったのか、その証明でもある。時の流れ(流行り)を巧みに咀嚼すると共に、その時代その時代の音に合わせてその姿を変え、常に"オルタナティブ"な存在であり続けたアナセマは、こうしている今も自らの『黄金の道』を突き進んでいる事だろう。そう遠くない未来、アナセマはワームホールを抜けた先にある五次元世界、すなわち人類未達の地に辿り着き、そして遂にアナセマは黄金界隈の神(未来人)となるッ!
ファッ◯ンソニー ・・・しかしながら、いま聴いても新たな発見があるし、むしろ今だからこそ再評価されるべき名作だと思う。アナセマが如何様にして、これらのクリエイティブ!!deエキサイティング!!な経験を経て今のスタイルに至ったのか、その数奇な音楽遍歴を改めておさらいするという意味でも、バンドのディスコグラフィー的な意味でも大変重要な作品と言える。同時に、この時期のアナセマの面白さ、つまりアナセマが音楽的に最も充実していた時期、それこそ1999年から2004年までの『Fine Days』を追憶する事で、今のアナセマとの違いや面白さというのが浮き彫りになってくる。とにかく、これからアナセマを聴いてみようって人に打って付けの作品だし、むしろ「黄金すげぇ!」みたいなノリで今のアナセマを崇拝している人にオススメしたい。ちなみに、ライブDVDの方はPAL方式うんぬんで観れない可能性が高いので注意が必要です。で、個人的に面白いと思ったのは→アナセマの『Distant Satellites』は"Post-JPOP"であるという俺の解釈を、"いま最も評価されるべきバンド"であるねごとの3rdアルバム『VISION』が証明してくれた事で、そもそもMusic for NationsはソニーBGMとなった2004年にレーベル閉鎖に至るのだが、奇遇にもねごともソニー所属のアーティストだったりと、要するにこの"偶然"めちゃくちゃ面白くね~?しかし当時のアナセマを路頭に迷わせたソニー許すまじ!
『A Natural Disaster』 ・・・前作で完全に脱メタル化したアナセマは、その二年後、更に"オルタナティブ・バンド"としての真価を発揮し始める。2003年にリリースされた7thアルバム『A Natural Disaster』は、Post-系のヘヴィネスや俄然幽玄さを増した音響的な意識を高めると同時に、UKオルタナ界の長であるRadiohead顔負けのエレクトロな要素を積極的かつ大胆に取り入れた、これまでで最も実験的かつ賛否両論を呼んだ作品と知られていて、それこそ『Judgement』から本格化したオルタナ路線の一つの終着点であり、名実ともにオルタナバンドとしての音を極め尽くした、中期アナセマの集大成と位置づけられる一枚だ。今聴いても、やはり最新作の10thアルバム『Distant Satellites』には、この『A Natural Disaster』からのエレクトロな要素やミニマリズムを意識した作曲面における実験的な部分からも、ソレと限りなく近いフィーリングが感じ取れる。それこそ映画『インターステラー』の深宇宙(ワームホール)の中を彷徨うかの如し、『A Natural Disaster』の狂気的なコンセプトと五次元的な世界観を一巡すなわち『メイド・イン・ヘブン』にブチ上げたのが『Distant Satellites』、という俺の解釈に説得力が生まれるんじゃねー的な。また表題曲に(まだ正式加入する前の)リー・ダグラスをメイン・ボーカルに携える所も、リー姐さんが未来のアナセマのキーパーソンとなる重要な存在である事を示唆している。あと約10分を超えるラストナンバーの”Violence”は、現代ポストブラックの先駆けと言っても過言じゃあない。全てにおいて、声を大にして傑作と呼べる一枚だ。
『黄金の道』 ・・・惜しまれながら2004年にMFNが消滅し、数年間の空白期間を経て、2008年にスティーヴン・ウィルソン主宰のKscopeと契約したアナセマは、今回の三作を含む過去作の名曲をアコースティック・リメイクした『Hindsight』をリリースする。そして、2010年にはSWのプロデュースにより晴れて"Post-Progressive"界の仲間入りを果たす8thアルバム『We're Here Because We're Here』をドロップし、2012年には近年アナセマの最高傑作と名高い9thアルバム『Weather Systems』を、その二年後には最新作の10thアルバム『Distant Satellites』を、まるで水を得た魚の如くコンスタントに作品を発表し、今現在の『黄金期』に至る。正直なところ近年のアナセマは、細部の所では微妙な違いはあるものの、広義で見れば"Post-Progressive"という一つのジャンルに定義することは容易に可能で、しかし今回リマスターされた三枚のアルバムというのは、それぞれ音使いも音色も世界観もコンセプトもライティングも何一つとして同じ要素がなくて、それだけで如何に中期のアナセマが豊富なアイデアと創作者としてのポテンシャル/インスピレーションを多感に切り拓いていった時期であったか、それすなわちアナセマの"全盛期"だったのかが分かるし、と同時に如何に彼らが"真のオルタナティブ・バンド"であったのか、その証明でもある。時の流れ(流行り)を巧みに咀嚼すると共に、その時代その時代の音に合わせてその姿を変え、常に"オルタナティブ"な存在であり続けたアナセマは、こうしている今も自らの『黄金の道』を突き進んでいる事だろう。そう遠くない未来、アナセマはワームホールを抜けた先にある五次元世界、すなわち人類未達の地に辿り着き、そして遂にアナセマは黄金界隈の神(未来人)となるッ!
ファッ◯ンソニー ・・・しかしながら、いま聴いても新たな発見があるし、むしろ今だからこそ再評価されるべき名作だと思う。アナセマが如何様にして、これらのクリエイティブ!!deエキサイティング!!な経験を経て今のスタイルに至ったのか、その数奇な音楽遍歴を改めておさらいするという意味でも、バンドのディスコグラフィー的な意味でも大変重要な作品と言える。同時に、この時期のアナセマの面白さ、つまりアナセマが音楽的に最も充実していた時期、それこそ1999年から2004年までの『Fine Days』を追憶する事で、今のアナセマとの違いや面白さというのが浮き彫りになってくる。とにかく、これからアナセマを聴いてみようって人に打って付けの作品だし、むしろ「黄金すげぇ!」みたいなノリで今のアナセマを崇拝している人にオススメしたい。ちなみに、ライブDVDの方はPAL方式うんぬんで観れない可能性が高いので注意が必要です。で、個人的に面白いと思ったのは→アナセマの『Distant Satellites』は"Post-JPOP"であるという俺の解釈を、"いま最も評価されるべきバンド"であるねごとの3rdアルバム『VISION』が証明してくれた事で、そもそもMusic for NationsはソニーBGMとなった2004年にレーベル閉鎖に至るのだが、奇遇にもねごともソニー所属のアーティストだったりと、要するにこの"偶然"めちゃくちゃ面白くね~?しかし当時のアナセマを路頭に迷わせたソニー許すまじ!
Fine Days 1999
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