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昨年、グライムスの”REALiTi(現実)”にドハマりした僕が、この水曜日のカンパネラ”ツチノコ”に反応しないわけがなかった。この曲は、メジャー第一弾となる『UMA』のリードトラックなのだが、その内容については、持ち前のコミカルでファニーなB級カン溢れるテンションが露骨に減退して、メジャー感マシマシの本場志向マシマシの洋モノ感マシマシのトラック全開でちょっとガチってきた、ということ以外別段語ることはないと思うので、ここいらで僕はサブカルクソ女界の威信をかけた、グライムスとコムアイのダンス対決に注目したい。実はこの二人、その奇抜な才能と音楽センス、そして現代サブカルチャー界の象徴すなわち”アイコン”として生ける姿はじめ、イマドキのサブカルクソ女として互いに共通する部分が多いのだ。



まずはグライムスのMVから見てみよう。このMVは、東京大阪そして名古屋を含む日本の各都市をはじめ、東アジアの様々な都市、そのロケーションをバックにグライムスがそこかしこに不思議な踊りを踊りまくるというMVで、グライムスはADHDみたいな挙動を基調としたキレッキレなメルヘンダンスを披露している。つうか、そんな事より、日本国内のロケ選びで”名古屋飛ばし”をしなかったというだけで無条件に高評価連打しちゃうMVだわこれ(なお、名古屋がどのカットなのか分からない模様)
 


一方のコムアイだ。ダンスのキレという点ではグライムスに軍配が上がるかもしれない、しかしグライムスと比べると整然と靭やかに、コンテンポラリーで少しセクシャルな匂いを醸し出すダンス・・・というより、それこそ「蝶のように舞い蜂のように刺す」かの如くコムアイのパフォーマンスは、まるで一人の舞踏家さながらだ。渋谷系のホームタウンである東京というロケーションをバックに、終盤燃え盛る花束がコムアイの端正な顔立ちと某まな板をまた一段と妖艶な曲線美へと変え、大都市東京の夜の街に映し出している。聖火台から花束に火を灯し、東京の街を練り踊るコムアイの姿は、2020年の東京五輪で選ばれし聖火ランナーが滑走する未来とその勇姿を暗示するかのよう。

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少しだけアルバム『UMA』の話をすると、オープニングを飾る#1チュパカブラから金玉取られそうになるくらい洋モノ志向のパリピなダンスポップチューンで、未開の地に生息する部族が夜な夜な宴を上げるかの如しオリエンタルでエキゾチックな#3”雪男イエティ”、4曲目の”ユニコ”はアコースティックなアルペジオとクラップ中心に展開する癒し系の脱ラップナンバーで、新機軸的っぽい感じがポイント。後半の曲は意識高い系みたいな、リミックス音源みたいなガチったトラック主体で、約半数の曲を外部プロデューサーを迎えて制作された今作を象徴した流れとなっている。それこそ『UMA』というタイトル通り、未だかつて誰も目撃したことのないコムアイという未知なる謎の生物をお披露目している。少なくとも言えるのは、水曜日のカンパネラのイメージや世界観を決定づけた傑作『私を鬼ヶ島に連れてって』”桃太郎”みたいなノリを期待するとズッコケるし、良くも悪くも「メジャーデビューしちゃった感」に溢れた一枚となっている。それゆえに、以前までのUSラッパーSadistikにも通じるダーティなブラックビッグディック感、もといストリングスを多用したB級オルタナティブ・ヒップホップ感が希薄となってしまったのは、フアンの間で賛否両論あるかもしれない。ともあれ、メジャーデビューした影響を要所で垣間見せつつ”らしさ”を散りばめた前半、一転して洋モノ志向と実験的な傾向が顕著に現れる後半に別れた、言わば「現在進行形の水曜日のカンパネラ」を余すことなく凝縮した作品と言える。

UMA <通常盤>
UMA <通常盤>
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水曜日のカンパネラ
ワーナーミュージック・ジャパン (2016-06-22)
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