Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

フィンランド

Swallow the Sun 『Songs From The North I, II & III』

Artist Swallow the Sun
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Album 『Songs From The North I, II & III』
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Disc I [Songs From The North I]
Cover

Tracklist 
01. With You Came The Whole Of The World's Tears
02. 10 Silver Bullets
04. Heartstrings Shattering
05. Silhouettes
06. The Memory Of Light
07. Lost & Catatonic
08. From Happiness To Dust

Disc II [Songs From The North II]
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Tracklist
01. The Womb Of Winter
02. The Heart Of A Cold White Land
03. Away
04. Pray For The Winds To Come
05. Songs From The North
06. 66°50´N,28°40´E
07. Autumn Fire
08. Before The Summer Dies

Disc III [Songs From The North III]
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Tracklist
01. The Gathering Of Black Moths
02. 7 Hours Late
03. Empires Of Loneliness
04. Abandoned By The Light
05. The Clouds Prepare For Battle

イェンス・ブーム ・・・スウェーデンのDraconianと並んでメロドゥーム界を牽引するフィンランドのSwallow the Sunも、00年代後半のメタルシーンに突如として巻き起こった【イェンス・ブーム】、そのビッグウェーブに乗ってイェンス・ボグレン【No 実質 Jens!! プロデューサー】に起用した2009年作の4thアルバムNew Moonで、いわゆるメタル界の迷信を説き明かす事に成功したバンドの一つだ。しかし、間もなくイェンスから離れ、再び地元フィンランド人中心の人選でレコーディングされた次作の5thアルバムEmerald Forest And The Blackbirdでは、従来のOpethリスペクトやシンフォブラックなどの他に、アコースティック/フォーク・ミュージックの要素を大胆に取り入れ始めていた。しかし、如何せんイェンス・マジックによって生まれた傑作『New Moon』と比べると、元Nightwishアネット・オルゾンとのフィーチャリング以外これと言って特に見所はなかった気がする。そんな彼らの約三年ぶりとなる6thアルバム『Songs From The North I, II & III』は、何を血迷ったのかCD三枚組トータル約二時間半、軽く映画越えしちゃう超特大ボリュームとなっている。



『Ⅰ』 ・・・まずは一枚目の『Songs From The North I』。幕開けを飾る#1”With You Came The Whole Of The World's Tears”は、まるでX JAPAN”Voiceless Screaming”を彷彿とさせる、寂寥感を煽る80年代のフォーク・ソング顔負けのしみったれたアルペジオから始まり、前作を踏襲したまるでオーロラの如くエメラルドグリーンに、いや瞳のように透き通ったエメラルドブルーに煌めくキーボード、デプレブラック流れのノイズ感というかモダンだが粗暴な轟音ヘヴィネスからはポストブラックとも取れるアプローチを垣間見せ、鬱屈かつ荒涼とした空間が支配する一種のドゥームゲイズが、フィンランドという名の極寒の地に蠢くカオティックな狂気を浮き彫りにする。一枚目のリード・トラックとなる#3”Rooms And Shadows”では、フロントマンであり"ニット帽おにいさん"ことミッコの寂寥感溢れるボーカル・メロディからは、フォーク・ミュージックや北欧民謡の名残を漂わせるし、アウトロのGソロではX JAPAN”THE LAST SONG”に匹敵する泣きメロっぷりを発揮。ex-KATATONIAのノーマン兄弟が加入した事でも知られる、バンドの中心人物であるギタリストJuha RaivioのサイドプロジェクトTrees of Eternityでお馴染みのAleahとフューチャリングした#4”Heartstrings Shattering”、ドイツ出身のSarah Elisabeth Wohlfahrtとフィーチャリングした#6”The Memory Of Light”と#7”Lost & Catatonic”などの女性ボーカルをフューチャーした楽曲は、氷上の女神を司った今作のフェミニンなアートワークを象徴するかのよう。そして、ケルティックな音色とストリングスが優美に氷上を舞い踊るイントロから、雪の結晶の如し繊細なメロディに魅了される”From Happiness To Dust”で、美しくも清らかなエンディングを迎える。

懐メロ ・・・この一枚目は、前作を踏襲したフォーキーなアプローチ、俄然アンビエントな音響空間を意識したより幅広いアレンジが施されたキーボード、LantlôsAlcestをはじめとしたフレンチ産ポスト・ブラック勢からの強い影響下にある轟音ヘヴィネス、そして昭和歌謡を経由したX JAPANばりの歪んだ泣きメロを全面にフューチャーした叙情性と極寒の地の厳しさや孤独感を露わにする暴虐性、その静と動のコントラストを強調した、要するにこれまでのSWSらしいゴシック・ドゥームの王道的な作風となっている。その持ち味とも呼べる静から動への転換がプログレ並にスムーズで、安直に「いつものSWS」とか言いながらも、音の細部には確かな進化を伺わせる。これはフィンランド映画の巨匠アキ・カウリスマキの映画に使われている音楽を聴いて思ったんだが、フィンランド人の音楽的嗜好って日本を含む東アジアの歌謡曲が持つ民謡的で情緒的なメロディに近い、極めて親和性が高いというか、少なくともこの『Ⅰ』の音には、このSWSもそのフィンランド人特有の"懐メロスキー"の継承者である事を証明する、と同時にスオミ人の知性と(気候とは裏腹に)心温かい情念が込められている。

『Ⅱ』 ・・・今時、メタルバンドがアコースティック路線に傾倒する例は決して珍しくない。この手のバンドで代表されるところでは、スウェーデンのKATATONIAやリヴァプールのANATHEMAがそうだ。その時代の流れに取り残されんとばかり、この『Ⅱ』の中でSWSはアコギやピアノ主体のフォーク・ミュージックを展開している。川のせせらぎと共に、真夜中の浜辺でただ独り佇むような悲しみの旋律を奏でるダークなピアノインストの#1”The Womb Of Winter”で幕を開け、アルペジオを駆使した優美でフォーキーなサウンドがフィンランドの雪景色のように純白の心を映し出すような#2”The Heart Of A Cold White Land”KATATONIAのヨナスきゅんや中期ANATHEMAのヴィンセントリスペクトなミッコのボーカル・メロディが俄然フォーキーに聴かせる”Away”、そしてフィンランドのSSWで知られるKaisa Valaとフューチャリングした表題曲の”Songs From The North”では、Kaisa『叙事詩カレワラ』に登場する『大気の処女イルマタル』となってフィン語で優しく歌い上げることで俄然民謡チックに聴かせ、この三部作のハイライトを飾るに相応しい一曲となっている。その後も、Alcestもビックリのリヴァーヴを効かせたデュリーミーな音響空間とトリップ・ホップ的なアレンジを施したオルタナ風のオープニングから、緯度"66°50´N,28°40´E"に位置する北国の幻想的な白夜の静けさを音(インスト)だけで描き出し、An Autumn for Crippled ChildrenHypomanie、そしてCold Body Radiationをはじめとしたダッチ産シューゲイザー・ブラック顔負けの吹雪くような美メロをフューチャーした#7”Autumn Fire”、そしてラストの”Before The Summer Dies”までの後半の流れは、決して「いつものSWS」ではない、言わば新機軸とも呼べるモダンなアプローチや音使いをもって情緒豊かに聴かせる。もはや「こいつらコッチ路線のがいい曲書くんじゃネーか?」ってくらい、モダンな要素と持ち前の懐メロ感を絶妙な具合にクロスオーバーさせている。

『Ⅲ』 ・・・一枚目の『Ⅰ』では「いつものSWS」を、二枚目の『Ⅱ』では「新しいSWS」を、そして三枚組の最終章に当たる三枚目の『Ⅲ』では、メロディを極力排除したフューネラル/デス・ドゥームメタルの王道を展開している。さっきまでの美メロ泣きメロの洪水とは打って変わって、アートワークの下等生物を見下すドSな女神に「もう許して...許してクレメンス・・・」と懺悔不可避な容赦ない破滅音楽っぷりを見せつけ、さっきまでの夢の世界から一転して惨憺たる絶望の淵へと追いやられる。曲の中にも静と動の緩急を織り交ぜるだけでなく、アルバム単位でも音の強弱やギャップを効かせた演出を織り交ぜた謎のスケール感を強調する。

大気の処女イルマタル ・・・やっぱり、この三枚組で最も面白いのは二枚目だ。隣国のスウェーデン人の音楽と比べると、どうしても不器用さが気になってしまうフィンランド人の音楽だが、この二枚目ではフィンランド人なりの器用さを垣間見せている。それこそ、今作のアートワークを冠した女神『大気の処女イルマタル』が身にまとった大気(Atmospheric)を体外に放出するかの如く、とにかく真珠が煌めくような音響空間に対する意識の高さが尋常じゃない。この二枚目で目指した理想像でもある、KATATONIA『Dead End Kings』をアコースティックに再構築したDethroned & Uncrownedとほぼ同じ作風とアレンジだが、Alcestリスペクトな音響/音像をはじめ民謡風のメロディだったり、フィンランド人の根幹にある民族的な土着性とフォーク/アコースティックなサウンドとの相性は抜群で、さすがにヨナスと比較するのはヨナスに失礼かもしれないが、ミッコのボーカル・メロディに関してもイモ臭さは程々によく練られているし、歌い手としてのポテンシャルを過去最高に発揮している。

臨界点 ・・・この手の界隈で比較対象にされるDraconianと同郷のAmorphisイェンス・ボグレンデイビッド・カスティロを起用した、いわゆる【勝利の方程式】を説き明かして今年2015年に勝ちに来た一方で、このSwallow the Sunはこの三枚組の中で、メロドゥームとしての王道路線で対抗すると共に、KATATONIAANATHEMAなどの先人たちにも決して引けを取らない、モダンでアコースティックな路線でも対等に勝負できることを証明した、どの方向性、どのジャンルにも一切の妥協を許さない攻めの姿勢に僕は敬意を表したい。失礼だが、フィンランド人だけでここまでの仕事ができるなんて思ってなかったし、新作が三枚組だと聞いた時は血迷ったなって全く期待してなかったから、いい意味で裏切られた。ある意味、未だ誰も超えたことがなかったスオミ人としての臨界点を超えたと言っていいかもしれない。正直スマンかった。
 
Songs From the North I & II & III
Swallow the Sun
Century Media (2015-11-13)
売り上げランキング: 6,741

Amorphis 『Under the Red Cloud』

Artist Amorphis
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Producer/Engineer/Mixing/Mastering Jens Bogren
Jens Bogren
Engineer(#5) David Castillo
David Castillo

Album 『Under the Red Cloud』
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Tracklist
01. Under The Red Cloud
02. The Four Wise Ones
03. Bad Blood
04. The Skull
07. Dark Path
08. Enemy At The Gates
09. Tree Of Ages
10. White Night
11. Come The Spring
12. The Wind

「No Jens No Life」 ・・・今やあのBABYMETAL凛として時雨すらライブ作品などでイェンス・ボグレンと絡んでるくらい、今のメタル界隈には「No Jens No Life」みたいな風潮あって、これは別に自慢じゃあなんだが、おいら、初めてベビメタの記事を書いた時、偶然にも「イェンス・ボグレン」の名前を一緒に出していて、恐らくあの時点でベビメタとイェンスの邂逅を予知していたのは世界でも自分だけだと思う。しかし、ベビメタを【アイドル界のDIR EN GREY】と解釈している者ならば、あの程度の予測は容易に可能で、勿論プロデューサーのコバメタルが当ブログを読んでいるなんて自意識過剰なことを言うわけじゃあないが、兎も角それぐらいイェンス・ボグレンは今のメタル界にとって欠かすことのできない最重要人物なんだ。

実質プロデューサー ・・・北欧フィンランドの重鎮で知られるAmorphisの近況といえば、00年代を締めくくる傑作となった9thアルバムSkyforger以降イマイチパッとしない作品が続き、前作のCircleに至ってはどんな作風どんな内容だったかすらも記憶になくて、辛うじて「デスメタル回帰」したんじゃね~?的なイメージが残ってるくらい。で、近年のアモルフィスは中期の作品と比べると深刻なライティング不足、つまりベテランメタルバンドにありがちなスランプに陥っていた。そんなアモルフィスが約二年ぶりとなる12thアルバム『Under the Red Cloud』を制作するにあたって、プロデューサーすなわち【復活請負人】として任命したのが、他でもないイェンス・ボグレンだ。ここ最近はイェンス関連の記事ばかりで、まるであたかも「全ての作品をイェンス・ボグレンがプロデュースしている」みたいな勢いで書いてしまっているのも事実で、読者に誤解を与えかねないので一応訂正したいんだが、イェンスが"プロデューサー"として関わっている作品はほんの一部で、彼がメインとする仕事は主にミキシングをはじめとしたエンジニアワークである。しかし、例えばDark TranquillityConstructBTBAMComa Eclipticのように、"プロデューサー"ではなくあくまでもミキシング/マスタリング・エンジニアとしてクレジットされているのにも関わらず、確信的にバンド側がイェンスの嗜好に合わせて曲を書き上げてくるパターン、このような現象を僕は"実質プロデューサー"と表現している。
 

『怒りのデスロード』 ・・・しかし、この『Under the Red Cloud』では"実質プロデューサー"ではなく、MoonspellExtinctと同様に"プロデューサー"名義でイェンス・ボグレンが深く作品に関わっている、という事を念頭に置いて話を進めたい。先行シングルの”Death of a King”は、まるでアフガンのように情熱的に燃えたぎる赤鯉魂が描かれた、Orphaned Landの作品でもお馴染みのMetastazisValnoirによるオリエンタルラグ(アラビア絨毯)をモチーフにした今作のアートワークを象徴するかのような一曲だ。そのアラビックな中東的メロディをフューチャーしたイントロのリフから、EluveitieChrigel Glanzmannによるフィンランドの民族叙情詩カレワラを司るようなフルート&ティン・ホイッスルとex-Opethマーティン・ロペスによるドーフ・ウォリアー顔負けのリズミカルなパーカッションが、ギタリストホロパイネンによるグルーヴを乗せたモダンなヘヴィネスとともに"音"で士気高揚させる姿は、まるで魔改造されたドーフ・ワゴンさながら、そしてチャームポイントのドレッドヘアを捨てたフロントマントミ「Death of a King!! Death of a King!!」と野太く咆哮する姿は、まさしく『マッドマックス 怒りのデスロード』イモータン・ジョーそのもの、すなわち本作の『王=キング』だ。要するに→日本のゲーム界屈指のクリエイター小島秀夫監督が『MGSV』の中で表現したように、この曲...いや今作は映画『マッドマックス 怒りのデスロード』の世界観を音楽で表現したかのような、まるで五人のワイブスを奪われ、その中でも"オキニ"のスプレンディドとお腹の中の子供(息子)を亡くしたイモータン・ジョー『復讐心』『報復心』という名の『怒り』をアフガニスタンの広大な大地に轟かせるような名曲なのだ。
 
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【勝利の方程式】 ・・・この『Death of a King』すなわち『死の王』がいかに凄い曲なのか?それについて、まずは本作が「打倒Opeth」を謳った作品である事を理解しなければならない。今作は、いわゆる「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信を裏付けるような、Opethの8thアルバム『Ghost Reveries』からの影響が強く垣間見れる一枚でもあって、中でもそれを顕著に象徴するのが#4”The Skull”と#8”Enemy at the Gates”、そしてボートラの#12”The Wind”だ。#4はメロトロンをフューチャーした叙情性からリフ回し、そしてプログレ然とした転調から何から何まで『Ghost Reveries』リスペクトで、#8はホモバンド化した後期Opethの"Prog-Rock"な俄然エスニックな芳ばしい香りを漂わせる。まるで「打倒Opeth」を実現させるには、あの名盤『Ghost Reveries』を超えるには、対抗して「イェンスと組んだ一作目は名作になる」というメタル界の迷信に賭けるしかない・・・そのアモルフィスの「勝ちたいんや!」精神、その答えこそ『Death of a King』の中に凝縮されていて、それこそex-Opethマーティン・ロペスを、全盛期のOpethを支えた裏の立役者であるマーティン・ロペスという「打倒Opeth」の最終メンヘラ兵器を援軍に迎え、そしてマーティンのパーカッションを手がけた張本人こそ、他でもないイェンスの相棒であり【勝利の方程式】を紐解く鍵となるデイビッド・カスティロなのだ。

マッドマックス 怒りのデス・ロード

「外に開かれている」 ・・・話は変わるが→おいら、数年前に「DIR EN GREYデイビッド・カスティロと一緒に仕事するべきだ」と書いたんだが、まるでそれを合図にしたように、ここ最近ではSoilworkMoonspellをはじめ、今やエクストリーム・メタル界の帝王に成り上がったLeprousまでも、立て続けにデイビッドと組むメタル界の重鎮が増えてきている。しかし、肝心のDIR EN GREYと言えば、KATATONIA『死の王』からの影響も垣間見れた最新作の『ARCHE』以降何も音沙汰なしで、今やEarthsideとかいう無名バンドですら【勝利の方程式】を解き明かしているというのに、流石の薫も審美眼に衰えが生じ始めているんじゃあないかと少し心配になった。確かに、僕は『ARCHE』二万文字レビューの時に→「今のDIR EN GREYは外に開かれている」と某赤いバンドのギタリスト津野米咲の言葉を一部引用したんだが、その予想どおりシンヤの有吉反省会出演やパーソナリティ薫のラジオ番組が始まったりして、メロディア露出という意味では確かに今のDIR EN GREYは「外に開かれている」。その流れで今度は音楽面にも開かれた『説得力』が欲しいところだ。少なくとも、このアモルフィスは前作で長年連れ添ったフィンランドの大物エンジニアミッコ・カルミラとの決別を宣言している。そう、比較的地元愛の強い保守的な国のバンドですら音楽的に開国されつつあるのだ。つまり前作でワンクッションを置いてから、今作で満を持してメタル界の最大勢力であるイェンス組に入門してきた、というわけ。

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黄金のヘヴィネス ・・・まぁ、それはともかくとして→今作を象徴する『Death of a King』はアモルフィスのポテンシャルの全てが引き出された、それと同時に、欧州最後の砦だったMoonspellが名曲”Medusalem”の中で80年代のUKミュージックと中東音楽の邂逅を実現させたように、この曲は民族叙情詩カワレラと中東音楽を邂逅させた歴史的瞬間でもあるのだ。それこそ欧州は元より北欧全土に蔓延る中東問題を痛烈に皮肉るかのような、まるで今の時代、この先のメタル界で生き残っていくには中東要素との共存が不可欠であること物語るようだ。それと並んで本作を象徴する一曲で、幕開けを飾る表題曲の”Under The Red Cloud”では、名盤『Skyforger』の再来を予感させるイントロのピアノや同作のシングル”Silver Bride”の傑作リフから更に低音を盛って洗練を施したようなモダンなヘヴィネスを聴かせる。他にも『Eclipse』『Silent Waters』、そして『Skyforger』という中期アモルフィスの黄金を連想させる、まるでワイブスを奪われたイモータン・ジョーの如く、自慢のドレッドヘアを奪われたVoトミのボーカリストとしてのポテンシャルを極限まで引き出されたボーカル・パフォーマンスを筆頭に、同郷のSwallow The Sun界隈でもお馴染みのAleah Stanbridge【王=キング】の妾、すなわちワイブスとして迎え入れた所も俄然『マッドマックス 怒りのデスロード』の裏コンセプトであるフェミニズムの世界観とリンクさせられるし、特に今作の基礎的な部分を担うアモルフィス屈指の名リフである”Silver Bride”黄金比』で形成されたキザミリフを再解釈したような黄金のヘヴィネスには、並々ならぬセンスの塊を感じる。

【真・勝利の方程式】 ・・・またしてもイェンス・ボグレンという男は、界隈のベテランをNEXT-ステージへとブチ上げる事に成功し、ここ最近の二作で感じた「ライティング不足」が嘘のように、ソングライティングの幅が広がったのは言わずもがな、とにかく全てにおいて著しく音の洗練化が進んでいる。メロデスやらサブジャンルとして以前に、そのバンドの根幹にある「メタル」としてのポテンシャルを限界まで引き出し、それと同時にバンドが持つ"Progressive"な側面を具現化するイェンスのプロデュース能力が顕著に表れた、そしてポッと出の新人バンドに対してベテランならではの凄みを見せつけるような、まさしく【真・勝利の方程式】を解き明かすような大傑作だ。
 

Children of Bodom 『I Worship Chaos』

Artist Children of Bodom
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Album 『I Worship Chaos』
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Tracklist
01. I Hurt
02. My Bodom (I Am The Only One)
04. Horns
05. Prayer For The Afflicted
07. Hold Your Tongue
08. Suicide Bomber
09. All For Nothing
10. Widdershins

アンチ・イェンス同盟 ・・・昨今のメタル界隈には「イェンス・ボグレンと仕事してないバンドは時代遅れ」みたいな風潮が無きにしもあらずで、その証拠に今やメロデス四天王のうち、スウェーデンのSoilworkArch Enemy、そしてDark Tranquillityイェンス・ボグレンの手中に収められ、しかしその一方で、そんな風潮クソ食らえという勢力があるのも事実で、その言わばアンチイェンス・ボグレン同盟の先陣を切って立つバンドこそ、北欧フィンランドのギター・ヒーローことアレキシ・ライホ率いるChildren of Bodomだ。このチルボドといえば、初期の頃は"エクストリーム・パワーメタル"とかナントカ呼ばれたりしたけど、しかし00年以降のメロデス界に降りかかったUSを発祥とするモダン・ヘヴィネス、いわゆるモダン化の流れを直に受け、それが特に顕著に表れた5thアルバム『Are You Dead Yet?』、そして近年メタル界の三大駄作の一つで知られる6thアルバム『Blooddrunk』をトドメに、「もうどうにでもな~れ」と彼らに見切りをつけた人も少なくないだろう。その結果、いわゆる初期厨やニードル厨が大量発生する事態となった。



黄鎌 ・・・そんなわけで、チルボドのアルバムを聴くのは6thアルバム以来実に数年振りで、今のチルボドが一体どうなっているのか、試しにピーター・テクレンをプロデューサーに迎えた8thアルバム『Halo of blood』を、俺たちのアップル・ミュージックを使って聴いてみたら驚いた。一曲目から赤鎌アルバムのパチモンで、しかしその内容は普通に傑作で笑ったんだが、そんな"チルボド復活"の兆しを受けて、その前作から約二年ぶりとなる9thアルバム『I Worship Chaos』を発表した。前作の勢いはそのままに、メロデス然としたファストなアグレッションを発揮する#1,#4,#6,#7,#8、ド派手なGソロだったりキーボードとのソロバトルを繰り広げるドラマティックなスローナンバーの#5,#9、そしてサノバビッチ系モダン・ヘヴィネスの#2,#10など、スロー/ミドル/ファストな曲でメリハリを効かせながら、メンバーそれぞれのソロパートという名の見せ場も要所で垣間見せ、従来のシリアルキラー的効果音みたいなタマタマフィンフィンパフパフキラキラした音じゃなくて、それこそジャケの黄泉の入り口に誘うような神秘的かつ妖艶な神秘性を帯びた、同郷のSwallow the Sunを彷彿とさせるキーボードのアトモスフィアを広域に展開しつつ、そしてアレキシのギターとのハーモニーを全面に押し出している。前作より展開に幅をもたせている印象。

モダン化再びッ!! ・・・なんだろう、前作が赤鎌こと『Hate Crew Deathroll』回帰路線なら、今作の黄鎌は彼らのモダン化が加速した5thアルバム『Are You Dead Yet?』を、隣国のメシュガーやDjentをはじめ、7ギョン(弦)ギターを駆使した現代的モダン・ヘヴィネス的な解釈をもって再構築したようなイメージ。しかし”モダン”という言葉を聞くと、あの頃のトラウマが甦る人もいるかもしれない。とは言え、あの頃とは違って往年の"ボドムらしさ"を前提にモダン化しているので、さすがに白鎌ほどの勢いがあるというわけじゃあないが、少なくともモダン化以降の作品の中では上位に置けるくらいは聴けます。スウェーデンのSoilworkイェンス・ボグレンという名の電車に乗って、アメリカ主導のモダン化の波から無事逃れることに成功したが、Soilworkと同じようにモダン化して落ち目となったこのチルボドは、本作品で他人の力を借りず自らの手で再びッ!!モダン化の道を歩もうとしている。なおインフレイムス。
 
I Worship Chaos
I Worship Chaos
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Children of Bodom
Nuclear Blast Americ (2015-10-02)
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Ghost Brigade 『IV – One With the Storm』

Artist Ghost Brigade
Ghost Brigade

Album 『IV – One With the Storm』
IV – One With the Storm

Tracklist
01. Wretched Blues
02. Departures
03. Aurora
04. Disembodied Voices
05. Electra Complex
06. Stones And Pillars
07. Anchored
08. The Knife
09. Long Way To The Graves
10. Elämä On Tulta

北欧フィンランドの音楽といえば→Sonata ArcticaStratovariusなどのコッテコテなヘヴィメタルバンドを数多く輩出している国というイメージが強いが、この2005年にフィンランドはユヴァスキュラで結成された6人組のGhost Brigadeは、その名をシーンに知らしめた2ndアルバムIsolation Songsでは、全盛期Opethに匹敵するリフ回しを中心とした幽玄かつ荒涼感のある音使いをもって、同郷のCallistoの影響下にある”静と動”のコントラストで聴かせる美しくも儚い”覇道のPost-Metal”を展開していた。続く3rdアルバムUntil Fear No Longer Defines Usでは、Insomnium直系のエピカルな叙情性やAlcestKATATONIA流れのオルタナ感を高めつつ、ポストメタルはポストメタルでも隣国のCult of LunaNeurosisを連想させる、よりモダンでドゥーミーに洗練された”進撃のPost-Metal”を繰り広げていた。つまり、伝統的なフィニッシュ・メタルと現代的なポストメタルがクロスオーバーした、言うなれば”メロデスラッジ”みたいな面白い立ち位置にいる、自分の中では新世代メタルの一つとして認識しているバンドで、個人的にもフィンランドでは一番お気に入りのバンドだ。そんな前フリがあって、前作の『UFNLDU』から約二年ぶりの4thアルバム『IV - One With The Storm』は、傑作だった『Isolation Songs』を彷彿とさせるアートワークで、その内容も2ndの再来を期待させる。

リッピング失敗したかと思った→オリジナルメンバーのベーシストが脱退し、新しくベーシストとキーボーディストを迎えて6人組体勢になったことが、バンドサウンドに大いに影響している。オープニングナンバーの#1”Wretched Blues”を聴けばわかるように、確かに雪国フィンランドの情緒漂うInsomnium譲りのエピカルな叙情性は不変だが、以前までのスラッジーな重さというより硬くてソリッドな低音リフに、そして高音がキツ過ぎる音質の悪さに嫌な予感が頭をよぎる。なんだろう、次の#2”Departures”を聴いたら納得した。Opeth?Insomnium?Cult of Luna?Neurosis?・・・コイツら一体誰の後継者なんだ?って、この曲でわかった気がする。コイツらKATATONIAの後継者だわ。この高音のシャリシャリ感は『Last Fair Deal Gone Down』リスペクトだと半ば強引に考えれば納得できるし、そうかコイツら”オルタナティブ・ヘヴィ”だったんだな・・・って思い知らされた気分だ。確かに、2ndや3rdの時点でフィンランドらしからぬ”オルタナティブ”なセンスを垣間みせていたし、今作ではそれが表面化してきている。あえりえなくもなかったけど、でも少し意外な方向転換をしてきた。新しくキーボーディストを迎えたことで、音響的(ATMS)なアレンジ面での確かな成長は伺えるし、いい意味でも悪い意味でも音を含めて全ての音がモダンに洗練されている。でもボク思うんスよ、この手の音楽やりたいんならさっさとイェンス・ボグレン引っ張ってこいやって、ボク思うんスよ。いや、僕が言いたいのはただ一つで→隣国Dark TranquillityConstruct聴いてから出直してこい、っつーわけです。なんだろう、フィンランド人って深いところで”オルタナティブ・ヘヴィ”をナメてる気がする。なんだろう、田舎もんの大学生が都会に出てきて大学デビューに失敗したみたいな、こっ恥ずかしいノリすらある。ボートラにドヤ顔でリミックス入れちゃうあたりもうホントにスベってる。なんだろう、全体的に無理しちゃってる感じ。

  「GBよ、お前はANATONIAにはなれない...」


とにかく音の悪さ→それと相性の悪さも相まって、第一印象は過去最悪だった。当然、これは意図的にやってるんだろうけど、いかんせん音が致命的過ぎる。少なくとも、僕にとっては何回も聴きたいと思う音ではなかった。是非ともフィンランドのエンジニアには【オルタナティブ・ヘヴィ 音作り】で検索してほしいって思っちゃったんだからしょうがない。しかし、楽曲自体は前作からスラッジーなヘヴィネスを取り払って、中期ANATHEMAあたりのオルタナ方面へと大きく舵を切ってて、それはむしろ個人的に大好きな方向性ではあるし、メロディの充実度や完成度という点では前作を軽く凌駕しているのは確かだ。でも自分は前々作や前作ほど俺の感性に響かなかった。これはただ音の”進化”からなる音の”変化”に僕が順応できなかっただけかもしれない。それともガチでリッピング失敗しただけなのかもしれない。それでもやっぱり、この手の音楽の最上級はKATATONIAの最高傑作『Last Fair Deal Gone Down』ANATHEMA『Judgement』だと信じてやまない自分としては、頼むからこの手の”オルタナティブ”がやりたかったらイェンス連れてきてくれって、本当にただそれだけなんですね。もしイェンスがミックスしてたらまた違った結果になったのかな~とか、考えるだけ無駄だけど。

IV: One With the Storm
IV: One With the Storm
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Ghost Brigade
Season of Mist (2014-11-10)
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Sons of Aeon 『s/t』 レビュー

Artist Sons of Aeon
Sons of Aeon

Album 『Sons of Aeon』
Sons of Aeon

Track List
01. Faceless
02. Cold Waves
03. Burden
04. Enemy Of The Souls
05. The Centre
06. Havoc & Catharsis
07. Weakness
08. Seeds Of Destruction
09. Wolf Eyes
10. Black Sheep Process
 
Ghost Brigadeや元Swallow the Sunのメンバーからなる北欧フィンランドの五人組、Sons of Aeonのデビュー作『s/t』なんだけど、その音楽性としては、その手の北欧メロドゥームやイエテボリ・メタルそしてGB譲りの【暗黒プログレッシヴ・ヘヴィ】成分配合の、実にフィンランド産らしいというか、叙情的なメロディは抑え目で重厚なリフでゴリ押していく、比較的直球スタイルのアグレッシヴなメロデスやってる。で、このSons of Aeonを象徴するかのような、メロドゥームやGB的ヘヴィネスそしてマシへばりのスラッシーな展開など幾多の要素を飲み込んだ#1から、典型的な叙情派イエテボリ・メタルの#3やGBの2ndIsolation Songsライクな#4、再びGBの今度は3rdUntil Fear No Longer Defines USライクな哀愁香るフォーキーなアコギを擁した#5、爆走ハーコーパンク大好きな#6、ゴジラ大好きな#8、再びイエテボリスキー・・・?うん!イエテボリスキー!な#9、ラストのドゥーミーなインストまで、全10曲トータル約50分。ハッキリ言って本作、フィンランド人特有の悪い癖が出てるというか、影響を受けたスタイル/音を自己流に昇華しきれてないのが如何せん聴いててツラい所で、そのせいか既聴感が強いし、真新しさというのが一切ないため、その結果→完全にメタルマニア向けのオナニー作品になっちゃってる。あのBarren Earthとはえらい違いだ。個人的に、GBのメンバーが参加してるからと期待して聴いてみたナニがあったんだけど、イマイチハマりきれなかったし、単純に曲が辛気臭いというか味気なかった。まぁ、オススメはしません。つうか、そんな事より、これ聴いたら本家GBの新作が俄然楽しみになってきた、というわけです。
 
Sons of Aeon
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