Artist DECAYS

Album 『Baby who wanders』

Tracklist
今どきロックバンドのフロントマンがソロプロジェクトを始めるなんて事は珍しくもないし、むしろソロ活動しない方がおかしいレベルで、同じようにフロントマン以外のバンドメンバーもソロプロジェクトなるものを始めるのも何も珍しいことではないし、むしろフロントマンのソロ活動以上に活き活きとしてるのが多いくらいだ。それは、僕がティーンエイジャーの頃に夢中だったJanne Da Arcも決して例外ではなかった。ジャンヌダルクは今から約10年前に活動休止状態に入ると同時に、メンバーはそれぞれソロ活動を開始し、ご存じフロントマンのyasuはAcid Black Cherryとかいうソロプロジェクトを継続して早くも十周年を迎える。その後、ベーシストのka-yuもDAMIJAWとかいう自身のバンドを立ち上げ、ドラムのshujiおじさんもサポメンみたいな形でバンドに参加していた。でもちょっと待ってほしい、この話のポイントはバンドのソロ活動に対する賛否の話ではなくて、例えばロックバンドのフロントマンが自身でボーカルを務めるソロバンドを組むのは誰も疑問に思わないが(例ABC)、ではフロントマン以外の、例えばベーシストやギタリストがソロプロジェクトでバンドを組んだ場合(例DAMIJAW)、肝心のボーカルは一体誰がやるんだ・・・?という単純な疑問が生まれる。僕は、そんなシンプルな疑問を抱えながら、いざダミジョウ初音源のサンプルを試聴した時→「え、これ歌ってるの粥やん。いやいやいや、粥めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、なに歌ってんねん粥」ってなったし、その時の驚きというか不思議な感覚は、今でも昨日のことのように思い出せる。

Album 『Baby who wanders』

Tracklist
01. Aesthetics of the transgression
02. Zero Paradise
03. 愛と哀を遺さず... <Baby who wanders Ver.>
04. Drifting litter
05. Where are you going?
06. Vagabond
07. Imprisonment Leaving
08. シークレットモード
09. HELLO!NEW I
10. Eve
11. Rana
12. D/D
13. 綺麗な指
今どきロックバンドのフロントマンがソロプロジェクトを始めるなんて事は珍しくもないし、むしろソロ活動しない方がおかしいレベルで、同じようにフロントマン以外のバンドメンバーもソロプロジェクトなるものを始めるのも何も珍しいことではないし、むしろフロントマンのソロ活動以上に活き活きとしてるのが多いくらいだ。それは、僕がティーンエイジャーの頃に夢中だったJanne Da Arcも決して例外ではなかった。ジャンヌダルクは今から約10年前に活動休止状態に入ると同時に、メンバーはそれぞれソロ活動を開始し、ご存じフロントマンのyasuはAcid Black Cherryとかいうソロプロジェクトを継続して早くも十周年を迎える。その後、ベーシストのka-yuもDAMIJAWとかいう自身のバンドを立ち上げ、ドラムのshujiおじさんもサポメンみたいな形でバンドに参加していた。でもちょっと待ってほしい、この話のポイントはバンドのソロ活動に対する賛否の話ではなくて、例えばロックバンドのフロントマンが自身でボーカルを務めるソロバンドを組むのは誰も疑問に思わないが(例ABC)、ではフロントマン以外の、例えばベーシストやギタリストがソロプロジェクトでバンドを組んだ場合(例DAMIJAW)、肝心のボーカルは一体誰がやるんだ・・・?という単純な疑問が生まれる。僕は、そんなシンプルな疑問を抱えながら、いざダミジョウ初音源のサンプルを試聴した時→「え、これ歌ってるの粥やん。いやいやいや、粥めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、なに歌ってんねん粥」ってなったし、その時の驚きというか不思議な感覚は、今でも昨日のことのように思い出せる。
その例え話と全く同じ話がこのDECAYSだ。DIR EN GREYのフロントマンである京は、sukekiyoとかいうソロプロジェクトを始めて久しいが、このDECAYSはギタリストのDieとMOON CHILDの樫山氏を中心としたユニットで、現メンバーにはシンガーソングライターの中村中と「美人過ぎるバイオリニスト」のAyasaを迎えた6人編成となっている。しかし、およそ10年前に「粥のトラウマ」を経験している僕は、一抹の不安を抱えながら、2016年に発表された彼らのメジャー1stアルバム『Baby who wanders』を聴いてみた。
Die
「ナントカカントカトランスミッション!」
ぼく下僕
「ナントカカントカトランスミッション?!」
Die
「ナントカカントカトランスミッション!」
ぼく下僕
「粥ダミジョウ...寄与ツイッタ芸人...湯ギター侍...修二オッサン...うっ、頭が」
僕は耳を疑った。「いやいやいや、ダイ君めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、ダイ君めっちゃナントカカントカトランスミッションしてるやん」と。 それこそ、「粥のトラウマ」が10年の時を経て現代にトランスミッションしたかと思った。まぁ、厳密には「Aesthetics of the transgression」なんだけど、アルバムの幕開けを飾るこの曲は、近未来溢れるモダンな電子音とベースがウネウネと鳴り響く妖しげなイントロから始まり、「90年代」という今よりはまだ日本がイケイケだった頃の音楽シーンを賑わせたTKこと小室哲哉とTM NETWORKリバイバルみたいなDie君による「ナントカカントカトランスミッション!」やX JAPANの”WEEK END”を彷彿とさせるサビメロ、要所でAyasaの妖艶に演出するヴァイオリンをフューチャーしつつ、Die君のパリピボイスと中さんによるツインボーカルならではの掛け合いを披露し、つまり90年代のパリピ音楽を作り上げたTKとV系とかいうジャンルをメインストリームにブチ上げたX JAPAN(YOSHIKI)とかいう日本の音楽界にムーブメントを起こした二大アーティストが、約20年の時を経て『音楽』という名の『五次元空間(ワームホール)』の中で邂逅した・・・って、それどこのV2だよ。
その幕開けから、それこそMOON CHILDとかいう90年代を代表する”ESCAPE”だけの「一発屋」をはじめ、バブル崩壊後とは言えまだ日本がイケイケだった頃の謎のパリピ感というか無駄に自己評価の高いキモナルシスティックな社会的ムード、その良くも悪くもノスタルジックな世界観および音像をこの21世紀に蘇らせるのが、このDECAYSというバンドだ。と思えば、2曲目の”Zero Paradise”では一転してメロコア然とした疾走感溢れるサウンドに爽やかなDieのボーカル・メロディを乗せたシンプルでキャッチーなギターロックが聞こえてきて、それこそティーンエージャー向けのポップな青春エモパンクみたいな曲で、僕は「ダイ君これダミジョウよりわかんねぇな...」とか思いつつも、とにかくその感情表現豊かなクサい歌詞を筆頭に、全ての面においてDie君がDIR EN GREYでやってる事と180度違う、もはや可愛いメイドさん達が「北斗の拳イチゴ味」みたいなノリで鬼ごっついメタルやること以上の「ギャップ萌え」は面白いっちゃ面白いかもしれないが、その「面白さ」より勝るのが「戸惑い」であることは、このアルバムを再生すれば2秒で分かることだ。
Dieがメインボーカルを務めた”Zero Paradise”と対になる曲で、今度は中さんがメインボーカルとなる3曲目の”愛と哀を遺さず...”、このDieと中さんがそれぞれメインを飾る、言うなればダブル・リードソングでアルバムのツカミを強烈に演出する。また一転して、まるで魔界に迷い込んだような重苦しい世界観が繰り広げられる#4”Drifting litter”は、それこそ魔界で開催される晩餐会の大トリを務める『闇の宝塚』歌劇団、その男役トップに君臨する中さんと女役トップのDie君が織りなす凄艶じみた舞踏会である。これ初め聴いた時は、男のゲストボーカルかな?と思ったら普通に中さんでビビったというか、中村中さんって時々男性ボーカルに聴こえるくらい中性的というか独特の歌声の持ち主で、だから偶に中さんの声とDieの声が男女逆転して性別不能になるというか、それこそジェンダーの壁を超えたツインボーカルは、このDECAYSを語る上で欠かせないとても大きな魅力の一つと言える。
このDECAYSの妖艶な世界観を作り上げるのに最も効果的な存在としてあるのが、他ならぬ「美人すぎるヴァイオリニスト」こと岡部磨知もといAyasaだ。つうか、「美人すぎるヴァイオリニスト」って何人おんねん!とツッコミたくなる気持ちを抑えながらも、Ayasaの他を顧みず自由気ままに弾き倒すヴァイオリンの存在は、DECAYSの耽美的かつ官能的な異世界設定の根幹を司る重要な演者であることは確かだ。そのAyasaのSubRosaばりに妖しく響き渡るヴァイオリンを大々的にフューチャーした#5”Where are you going?”、中さんメインの曲でちょっとだけDirっぽいネットリ感のある#6”Vagabond”、今度はジェンダーの垣根を超えた二人のツインボーカルが冴え渡る曲で、モダンなV系っぽい雰囲気を纏った#7”Imprisonment Leaving”、再び90年代風のナルシスティックさとディスコ感溢れるビートを「鼓動」のようにズンチャズンチャと刻みながら高速道路を駆け抜ける#8”シークレットモード”、Boom Boom Satellitesリスペクトなデジロックの#9”HELLO!NEW I”、Dirにも通じるDie君らしい神秘的かつメロディアスなギターから壮大に展開していく#10”Eve”は今作のハイライトで、キーボードのポップなメロディを乗せたアップテンポで疾走感溢れる#11”Rana”、AyasaのヴァイオリンとDie君らしいギターとエロい歌声が織りなす#13”綺麗な指”を最後に、この悪魔城の奇妙な晩餐会は盛大のうちに幕を閉じる。これはアニメ『悪魔城ドラキュラ』の主題歌あるんじゃねー的な。
正直、Die君が「ナントカカントカトランスミッション!」とか言い始めた時点で、10年前の「粥のトラウマ」が蘇って聴くのやめようかと思ったけど、次々に曲を聴いていくうちにその「戸惑い」は晴れ、 「これ普通にダサカッコイイじゃん」ってなります。確かに、DIR EN GREYというバンドからイメージされる音楽からは程遠い、【TKパリピサウンド×90年代V系】からBIGMAMAを彷彿とさせる歌モノ系のメロコア曲まで、それこそ京中心でやってるsukekiyoよりもDie君以外のメンバーの存在感が強すぎるお陰で、音楽的な方向性がどうこうよりも割りと好きなことを好き勝手にやってる印象。TK的な音楽という意味でも、このDECAYSって冷静に見ると相当エイベックスの息がかかったメンツが揃ってるんだけど、でもこれだけ濃ゆいメンツを集めて、そのそれぞれに尖った個性をよくここまで一つにまとめたな感は、このアルバムで最も感心させる所だ。
失礼ながら、自分の中で中村中のイメージって随分前にMステ出てたくらいの印象しかなくて、それこそロックを歌うイメージなんてなかった。でも今回のアルバムを聞いたら、中さんとロックって思いの外ハマってるというか、もの凄い適当なことを言うと中さんて凄い「パンクだな」と感じる所があって面白かったし、シンガーソングライターの彼女にとってもバンドのグループの一員として歌うのは全くの「新境地」だと思う。そのメンバーそれぞれの「新境地」という科学的要素の集合体が化学反応を起こし、DECAYSとして産声を上げ、そして『Baby who wanders』の中で花開いている。
Die

ぼく下僕

Die

ぼく下僕

僕は耳を疑った。「いやいやいや、ダイ君めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、ダイ君めっちゃナントカカントカトランスミッションしてるやん」と。 それこそ、「粥のトラウマ」が10年の時を経て現代にトランスミッションしたかと思った。まぁ、厳密には「Aesthetics of the transgression」なんだけど、アルバムの幕開けを飾るこの曲は、近未来溢れるモダンな電子音とベースがウネウネと鳴り響く妖しげなイントロから始まり、「90年代」という今よりはまだ日本がイケイケだった頃の音楽シーンを賑わせたTKこと小室哲哉とTM NETWORKリバイバルみたいなDie君による「ナントカカントカトランスミッション!」やX JAPANの”WEEK END”を彷彿とさせるサビメロ、要所でAyasaの妖艶に演出するヴァイオリンをフューチャーしつつ、Die君のパリピボイスと中さんによるツインボーカルならではの掛け合いを披露し、つまり90年代のパリピ音楽を作り上げたTKとV系とかいうジャンルをメインストリームにブチ上げたX JAPAN(YOSHIKI)とかいう日本の音楽界にムーブメントを起こした二大アーティストが、約20年の時を経て『音楽』という名の『五次元空間(ワームホール)』の中で邂逅した・・・って、それどこのV2だよ。
その幕開けから、それこそMOON CHILDとかいう90年代を代表する”ESCAPE”だけの「一発屋」をはじめ、バブル崩壊後とは言えまだ日本がイケイケだった頃の謎のパリピ感というか無駄に自己評価の高いキモナルシスティックな社会的ムード、その良くも悪くもノスタルジックな世界観および音像をこの21世紀に蘇らせるのが、このDECAYSというバンドだ。と思えば、2曲目の”Zero Paradise”では一転してメロコア然とした疾走感溢れるサウンドに爽やかなDieのボーカル・メロディを乗せたシンプルでキャッチーなギターロックが聞こえてきて、それこそティーンエージャー向けのポップな青春エモパンクみたいな曲で、僕は「ダイ君これダミジョウよりわかんねぇな...」とか思いつつも、とにかくその感情表現豊かなクサい歌詞を筆頭に、全ての面においてDie君がDIR EN GREYでやってる事と180度違う、もはや可愛いメイドさん達が「北斗の拳イチゴ味」みたいなノリで鬼ごっついメタルやること以上の「ギャップ萌え」は面白いっちゃ面白いかもしれないが、その「面白さ」より勝るのが「戸惑い」であることは、このアルバムを再生すれば2秒で分かることだ。
Dieがメインボーカルを務めた”Zero Paradise”と対になる曲で、今度は中さんがメインボーカルとなる3曲目の”愛と哀を遺さず...”、このDieと中さんがそれぞれメインを飾る、言うなればダブル・リードソングでアルバムのツカミを強烈に演出する。また一転して、まるで魔界に迷い込んだような重苦しい世界観が繰り広げられる#4”Drifting litter”は、それこそ魔界で開催される晩餐会の大トリを務める『闇の宝塚』歌劇団、その男役トップに君臨する中さんと女役トップのDie君が織りなす凄艶じみた舞踏会である。これ初め聴いた時は、男のゲストボーカルかな?と思ったら普通に中さんでビビったというか、中村中さんって時々男性ボーカルに聴こえるくらい中性的というか独特の歌声の持ち主で、だから偶に中さんの声とDieの声が男女逆転して性別不能になるというか、それこそジェンダーの壁を超えたツインボーカルは、このDECAYSを語る上で欠かせないとても大きな魅力の一つと言える。
このDECAYSの妖艶な世界観を作り上げるのに最も効果的な存在としてあるのが、他ならぬ「美人すぎるヴァイオリニスト」こと岡部磨知もといAyasaだ。つうか、「美人すぎるヴァイオリニスト」って何人おんねん!とツッコミたくなる気持ちを抑えながらも、Ayasaの他を顧みず自由気ままに弾き倒すヴァイオリンの存在は、DECAYSの耽美的かつ官能的な異世界設定の根幹を司る重要な演者であることは確かだ。そのAyasaのSubRosaばりに妖しく響き渡るヴァイオリンを大々的にフューチャーした#5”Where are you going?”、中さんメインの曲でちょっとだけDirっぽいネットリ感のある#6”Vagabond”、今度はジェンダーの垣根を超えた二人のツインボーカルが冴え渡る曲で、モダンなV系っぽい雰囲気を纏った#7”Imprisonment Leaving”、再び90年代風のナルシスティックさとディスコ感溢れるビートを「鼓動」のようにズンチャズンチャと刻みながら高速道路を駆け抜ける#8”シークレットモード”、Boom Boom Satellitesリスペクトなデジロックの#9”HELLO!NEW I”、Dirにも通じるDie君らしい神秘的かつメロディアスなギターから壮大に展開していく#10”Eve”は今作のハイライトで、キーボードのポップなメロディを乗せたアップテンポで疾走感溢れる#11”Rana”、AyasaのヴァイオリンとDie君らしいギターとエロい歌声が織りなす#13”綺麗な指”を最後に、この悪魔城の奇妙な晩餐会は盛大のうちに幕を閉じる。これはアニメ『悪魔城ドラキュラ』の主題歌あるんじゃねー的な。
正直、Die君が「ナントカカントカトランスミッション!」とか言い始めた時点で、10年前の「粥のトラウマ」が蘇って聴くのやめようかと思ったけど、次々に曲を聴いていくうちにその「戸惑い」は晴れ、 「これ普通にダサカッコイイじゃん」ってなります。確かに、DIR EN GREYというバンドからイメージされる音楽からは程遠い、【TKパリピサウンド×90年代V系】からBIGMAMAを彷彿とさせる歌モノ系のメロコア曲まで、それこそ京中心でやってるsukekiyoよりもDie君以外のメンバーの存在感が強すぎるお陰で、音楽的な方向性がどうこうよりも割りと好きなことを好き勝手にやってる印象。TK的な音楽という意味でも、このDECAYSって冷静に見ると相当エイベックスの息がかかったメンツが揃ってるんだけど、でもこれだけ濃ゆいメンツを集めて、そのそれぞれに尖った個性をよくここまで一つにまとめたな感は、このアルバムで最も感心させる所だ。
失礼ながら、自分の中で中村中のイメージって随分前にMステ出てたくらいの印象しかなくて、それこそロックを歌うイメージなんてなかった。でも今回のアルバムを聞いたら、中さんとロックって思いの外ハマってるというか、もの凄い適当なことを言うと中さんて凄い「パンクだな」と感じる所があって面白かったし、シンガーソングライターの彼女にとってもバンドのグループの一員として歌うのは全くの「新境地」だと思う。そのメンバーそれぞれの「新境地」という科学的要素の集合体が化学反応を起こし、DECAYSとして産声を上げ、そして『Baby who wanders』の中で花開いている。
Baby who wanders(通常盤)
posted with amazlet at 17.02.11
DECAYS
ドリーミュージック (2016-12-07)
売り上げランキング: 43,052
ドリーミュージック (2016-12-07)
売り上げランキング: 43,052