Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

DOOM

Messa - Close

Artist Messa
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Album 『Close』
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Tracklist
01. Suspended
02. Dark Horse
03. Orphalese
04. Rubedo
05. Hollow
06. Pilgrim
07. 0=2
08. If You Want Her To Be Taken
09. Leffotrak
10. Serving Him

「Messaめっさ(Messa)いい!」みたいなしょうもないダジャレしか思いつかないくらい、イタリアはヴェネト出身の4人組、Messaの3rdアルバム『Close』がめっさ良い件について。というのも、本作の幕開けを飾る#1“Suspended”からして、古き良きトラディショナルなドゥームメタルを源流としながらも、ネオ・プログレ/サイケやブルース/ストーナー・ロック、そしてダークジャズやフュージョン等の多彩な表情を兼ね備えたヴィンテージなサウンド・スタイルと、いかにもこの手のヘヴィサイケに映える紅一点フィメールボーカルのサラによる呪詛を唱えるかの如し妖艶な歌声が、そのオカルティズムに溢れた(それこそPS版『ワールド・ネバーランド』的な)スピリチュアルでミステリアスな異世界を司(祭)る祈祷師さながらの怪異的な存在感を放っている。なんだろう、例えるならスウェーデンのPaatosCynicの前身バンドのPortalがドゥームメタル化した感じと言ったら変だけど。

追い込み馬並にスロースターターなドゥームメタル然とした冒頭から一転して、逃げ馬のごとしBPMのギアを上げてストーナーロック然とした「動き」のあるムーブで砂を駆ける#2“Dark Horse”、ゲストミュージシャンによるイントロのサックスソロを皮切りに、アラブ諸国の民族楽器であるウードやダルシマー、そしてアルメニアやアゼルバイジャンの民族楽器であるドゥドゥクが織りなす、それこそジャバンノリもといJambinaiを想起させる民族音楽的なトライバリズムを垣間見せる#3“Orphalese”、MastodonBaronessを連想させるプログレッシブな展開力を発揮するストーナーロックの#4“Rubedo”、短尺インストの#5“Hollow”のオリエンタルな流れを引き継いで、そして本作のハイライトを飾る#6“Pilgrim”では、アマゾンの奥地に棲む未接触部族に伝承する密教的なリチュアリズム、伝統的なドゥームメタルというよりはThouやニューロシス的なスラッジ/ポストメタル寄りの重厚なヘヴィネスが織りなす、それこそTOOLや在りし日のOpethに肉薄する一般的なドゥームメタルとは一線を画す緩急を効かせたプログレスな展開やドラマ性を孕んだエクストリーミーな楽曲構成は、ただのトラディショナルなドゥームメタルへの回帰にとどまらない、現代的(モダン)なトレンドを正確に捉えた彼らの審美眼の高さを裏付ける一曲となっている。

MastodonBaronessらのハードコア由来のストーナーロックをはじめ、それこそボストンのConvergeにも精通するハードコア・パンクならではの破天荒なリフメイクはMessaの「めっさいい」ところの一つで、そんなMessaの動的な側面を体現する#8“If You Want Her To Be Taken”のアウトロにおけるブラックメタル然とした悪魔的な黒魔術を唱える勢いに乗って、俄然カオティック/ハードコア・パンク然としたエクストリームーブを1分弱の中に集約した#9“Leffotrak”など、とにかく「めっさイイ」以外の言葉が見つからないくらいの完成度。

Author & Punisher - Krüller

Artist Author & Punisher
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Album 『Krüller』
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Tracklist
01. Drone Carrying Dread
03. Centurion
04. Maiden Star
05. Misery
06. Glorybox
07. Blacksmith
08. Krüller

カリフォルニアはサンディエゴ出身のトリスタン・ショーンによるワンマンプロジェクト、Author & Punisherの約4年ぶりとなる6thアルバム『Krüller』の一体何が凄いって、UKのJesuGodfleshの系譜にある無機的なインダストリアルデザイン、オーダーメイドの特殊な精密機械から生成されるドローン/ノイズが内在したThou顔負けのスラッジ/ドゥームメタル然とした邪悪ネス、Nirvanaに代表される90年代グランジの鬱々とした内向性を破滅的にクロスさせながら、そしてDeftones(†††)やパラロスを連想させるゴシックな耽美性(エロティシズム)を醸し出すダークシンセのミステリアスな旋律が無機質な世界をアーバンに彩る、ありがちなインダストリアルミュージックにとどまらない、全く新しい現代ポストメタルの形を提示している件について。

そんなA&Pのオルタナティブな側面を裏付ける、USオルタナレジェンドTOOLのベーシストであるジャスティン・チャンセラーが参加した曲で、ホラー/サスペンス映画のサントラばりに不気味なシンセと機械的な打ち込みが織りなす#3“Centurion”や同じくドラマーのダニー・ケアリーが参加した#5“Misery”を筆頭に、幻想的に煌めくシンセをフィーチャーしたドローンmeetポストメタルの#4“Maiden Star”、Portisheadのカバー曲の#6“Glorybox”、Ulverがエレクトロに傾倒し始めた『Perdition City』をグリッチ/ノイズまみれに魔改造してバグらせたような#7“Blacksmith”、そしてDeftonesのチノ・モレノ顔負けの中性的な歌声を擁しながら官能的かつダークアーバンな世界観を形成する表題曲の#8“Krüller”まで、いわゆる90年代初頭から後半に黎明を迎えたオルタナ/グランジやニューメタルなどの当時のヘヴィロックを、(マシズモほとばしる前衛的なジャケが示唆する)実験的なアプローチをもって現代的なポストメタルにアップデイトさせたような作品。それこそTOOLが2019年に発表した『Fear Inoculum』を足がかりに、2020年にDeftonesが発表した『Ohms』に象徴される“20年代のヘヴィネス”を別路線から合流してきたイメージ。例えば、20年代以降のThouEmma Ruth Rundleのコラボアルバム『May Our Chambers Be Full』Humの復活作『Inlet』とはまた少し方向性の違ったアヴァンギャルドでオルタナティブなヘヴィネスとして。

Dream Unending - Tide Turns Eternal

Artist Dream Unending
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Album 『Tide Turns Eternal』
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Tracklist
01. Entrance
02. Adorned In Lies
03. In Cipher I Weep
04. The Needful
05. Dream Unending
06. Forgotten Farewell
07. Tide Turns Eternal

カナダのデスメタルバンド=Tomb MoldのギタリストであるDerrick Vellaとボストンのデスメタルバンド=Innumerable FormsのドラマーであるJustin DeToreの二人がタッグを組んだ新プロジェクト、その名もDream Unendingの音楽性を端的に言ってしまうと(それこそバンド名に「Dream Unending=終わらない夢」と名付けるだけあって)ドリーミーなデス/ドゥーム・メタルのソレで、それこそ90年代のPeacevilleが誇るAnathemaMy Dying Brideに代表されるゴシック御三家の影響を公言するロマンチシズムに溢れた叙情的なドゥームメタルを繰り広げている。要するに、本作のエンジニアであり今をときめくアーサー・リザークとPeaceville時代のAnathemaと現代アンダーグラウンド/デスメタルシーンを支える20 Buck Spinの黄金トライアングルが完成している時点で既に勝ち確なんですね。

そんな彼らの記念すべき1stアルバム『Tide Turns Eternal』は、彼らのドリー夢ーな音楽を司る夢世界の入り口へと聞き手を誘う#1“Entrance”を皮切りに、もはやピンク・フロイド級に音響意識の高いリヴァーブを効かせたギターのアルペジオ/幽玄なリフレーンとトラディショナルなデス/ドゥー夢メタル然とした邪悪ネスが悪夢の中で邂逅する#2“ Adorned In Lies”、キュアーばりに官能的なギターの肌触りに淫夢を感じる#3“In Cipher I Weep”、もはや在りし日のCynicや前身のPortalが創造するスピリチュアルなイーサリア夢の世界にアセンションする#4“The Needful”、デスメタル然とした悪夢のような前半パートから一転して内省的な泣きのメロディに慟哭不可避な後半パートのギャップ萌えに“名は体を表す”かの如し大作の#5“Dream Unending”、HR/HM界の伝説的なギターヒーローであるゲイリー・ムーア級の泣きのギターインストを披露する#6“Forgotten Farewell”、そして(#4の伏線回収とばかり)最後の最後でイーサリア夢なアルペジオをバックに女性ボーカルをフィーチャーした約10分におよぶ表題曲の#7“Tide Turns Eternal”まで、幻夢や淫夢やイーサリア夢など様々なドゥー夢の世界が無限に広がり続け、やがてカオナシそっくりの未知なる生命体と遭遇する、そんな「終わりのないのが終わり」みたいな明晰夢の無限ループって怖くね?

そのPeaceville全盛期リスペクトなドゥーム志向のみならず、フロイドはもとより往年のニューロマンティックを彷彿とさせる魅惑のリフレーンや幽玄なソロワーク、中でもHR/HM界のギターレジェンド=ゲイリー・ムーアとシンクロするかのような泣きのギターソロも本作における見せ場の一つだ。と同時に、#3,#4,#5におけるダイナミックかつプログレスでありながらもシームレスな展開力にも尋常じゃないセンスを伺わせ、とにかくバンド以前にプレイヤーおよびコンポーザーとしてのスキルが伴ってなければ実現不可能な楽曲構成をはじめ、そのウェッティな音作りの面でもオリジナリティの確立および作品の完成度に驚愕する。あとUKチックな泣けるドゥームと言えば、個人的に40 Watt Sunの伝説的な1stアルバムを思い出した。最近ではThouEmma Ruth Rundleのコラボアルバムが比較的シックリくるか。

Blackwater Holylight - SILENCE/MOTION

Artist Blackwater Holylight
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Album 『SILENCE/MOTION』
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Tracklist
01. Delusional
02. Who The Hell
04. Falling Faster
05. MDIII
07. Every Corner

近年のヘヴィミュージック界におけるマストアイテムの一つとして挙げられるのが、他ならぬ女性SSWのEmma Ruth Rundleとヘヴィミュージック界の帝王ことThouのコラボアルバム『May Our Chambers Be Full』である。このオレゴンはポートランド出身のガールズロックバンド、Blackwater Holylightの約2年ぶりとなる通算三作目『SILENCE/MOTION』は、持ち前のキング・クリムゾンに代表される70年代のプログレッシブ・ロックをはじめ伝統的なクラシックロックに対するリスペクトが込められた、ガルバンらしからぬヴィンテージ臭とストーナー気質に溢れたネオ・サイケデリックなドゥームロックはそのままに、まさに昨今の金字塔と呼べる名盤『May Our Chambers Be Full』にチューニングを合わせてきたかのような作風となっている。

というのも、本作にはThouのブライアン・ファンクやInter Armaのマイク・パパロがゲストボーカルとして参加、そしてバンド史上初となる外部プロデューサーとして同郷ポートランドのブラックメタルバンド=מזמור(Mizmor)A.L.N.を迎えて制作され、そういったガワの面でも過去イチでヘヴィかつエクストリーミーな楽曲的強度を著しく高めている。


それこそ、Thouのブライアンによる猟奇的な咆哮とバンドの中心人物であるアリソン(Ba,Vo)の慈悲に溢れた歌声、その『美女と野獣』あるいは『天使と悪魔』が織りなす魅惑のハーモニーからして名盤『May Our Chambers Be Full』をフラッシュバックさせる#1“Delusional”を皮切りに、界隈の重鎮チェルシー・ウルフ姐さんリスペクトな呪詛を唱えるかのごとし歌声とプログレ風のミニマルなシンセやメロトロンがゆらり揺らめくガールズ版キング・クリムゾンな#2“Who The Hell”、アコースティックなフォークソングから始まって徐々にメロトロンやストリングス、まるで黒魔術を詠唱するかの如くブラックメタル然としたトレモロ・リフを交えながらプログレスに展開する表題曲の#3“Silence/Motion”、言うなれば初期のWarpaintが70年代にタイプトリップしたかのようなドリーミーでミニマルなスロウコア、と見せかけて後半からオサレな転調を織り交ぜた俄然プログレスな楽曲構成も彼女らのインテリジェンスな非凡さを印象付ける#4“Falling Faster”、テキサスのTrue Widowを連想させるドリーム・ポップ/シューゲイザー風の希望に溢れた前向きでポップなアレンジが施された#6“Around You”は、まさに「光(Holylight)」「闇(Blackwater)」が表裏一体化しているバンド名の「光(Holylight)」側を司るような一曲となっている。

そしてアルバムのエンディングを飾る、Inter Armaのマイク・パパロの悪魔的な咆哮をフィーチャーした曲で、本作において音響意識の高いプロダクション含めて完全にプログレッシブ・ロックの領域に片足のみならず両足突っ込んじゃった事を示唆する#8“Every Corner”まで、それこそバンド名はもとより『SILENCE/MOTION』という表題が意味する「静(SILENCE)」「動(MOTION)」のコントラストとメリハリを効かせた、そのプログレ然としたダイナミックな展開力に脱帽すること請け合いの一枚と言える。

Emma Ruth Rundle & Thou 『May Our Chambers Be Full』

Artist Emma Ruth Rundle & Thou
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Collaboration Album 『May Our Chambers Be Full』
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Tracklist
01. Killing Floor
02. Monolith
03. Out Of Existence
04. Ancestral Recall
05. Magickal Cost
06. Into Being
07. The Valley

チェルシー・ウルフの姐御といえば、同レーベルSargent HouseのポストメタルバンドRussian Circlesとのコラボに感化されて何かに目覚めたのか、ポストメタル界のレジェンド=Isisのアーロン・ターナーを迎えた4thアルバム『Abyss』以降、明確にゴシック・ドゥーム/ポストメタル路線に方向転換して驚いたのも今は昔。そんなチェルシー姐さんを筆頭に、実はこの手の女性SSWとポストメタルという一見関連性のなさそうなジャンル同士の異文化交流は古くから独自のルートを通じてあるにはあって、(SSWではないけど)一つ例を挙げるなら「しばらく冬眠するわ」と無期限活動休止を宣言したのに、ブルックリン出身のJulie Christmasとのコラボ作品で何事もなかったように復活したスウェーデンのCult of Lunaが記憶に新しい。それらに象徴される「コラボレーション」の機運が著しく高まってきている流れを汲んで、満を持してチェルシー姐さんの妹分であり同じカリフォルニア出身の同レーベルで同い年のEmma Ruth Rundleが、日本のVampilliaとのコラボでもお馴染みのThe Bodyの盟友でありルイジアナ州の激遅重ヘヴィロックバンド=Thouとのコラボを実現させるという神コラボ展開。

Emma Ruth Rundleって、元はといえばIsis人脈が立ち上げたRed Sparowesのメンバーで、2010年を境にバンドの活動が止まってからはソロ名義でSSWとして活動しつつ、2015年にはMarriagesというポストロック系のバンドでアルバムを発表したり、当時まだ同レーベルだったDeafheavenのツアーにソロで参加したりと、もう完全に「ポストメタル界の姫」のイメージが定着しているSSWだ。しかし、実際に彼女がソロ作でやってる音楽性といえば、ポストメタルとは無縁のTrespassers WilliamやUKのEsben And The Witchとも共振するインディ/ドリーム・ポップやドリーン/ノイズの素養を含んだポストロックの影響下にあるネオフォーク的な抒情的な憂いを帯びたメランコリックな音楽で、例えば姉貴分のチェルシー姐さんがゴシック/イーサリアルをルーツとするSSWなら、妹分のエマはフォーク・ミュージックをルーツとするSSWといったイメージ。変な言い方だけど、それら数々の“前科”があるERRThouのコラボは不思議でもなんでもない案件なんですね。

ちなみに、初期の頃は「UKの相対性理論」だったEsben And The Witchも今やスティーヴ・アルビニを長とするノイズ界隈の一員として活動し、今やSeason Of Mistというバリバリのメタルレーベル所属で、過去にはアンダーグラウンド/ヘヴィミュージックの祭典Roadburn Festivalにも出演している。ちなみに、残念ながら中止が発表された今年のRoadburnではEER40 Watt Sunのコラボをはじめ(←このコラボはエグい)、冒頭のJulie Christmasや2020年のメタルを象徴するOranssi PazuzuRussian CirclesRed Sparowesの再結成ライブ、そしてCult of Lunaのフロントマン=ヨハネスの出演が予定されており、俄然それらの夢のコラボや夢の再結成ライブが実現しなかったのは本当に残念で仕方ない(来年に期待)。要するに、「Roadburn界隈」の一言で全部説明できちゃう案件が今回のコラボなんですねw

今年のヘヴィミュージック界隈で一番興味深い出来事って、それこそ22年ぶりに復活作の『Inlet』を発表したUSオルタナ界のレジェンド=Humが、Deftonesの新作にも影響与えてんじゃねえかぐらいの、むしろDeftonesが新作の『Ohms』で本当にやりたかった事をHumがやっちゃったんじゃねぇかぐらいの、その新時代の「ヘヴィネスの基準」をヘヴィミュージック・シーンに提示してきた事で、何を隠そう、今回のERRThouによるコラボ作品は、結論から言えば「新世代ポストメタル」のビッグウェーブに乗っかった傑作なんですね。

ERRのSSWとしての音楽性が持つエモーショナルな叙情性と、Thouの音楽性が持つ(Nirvanaのカヴァーからもわかるように)90年代のシアトルサウンドをリスペクトしたハードコア/パンク精神溢れるスラッジーなDIYヘヴィネスの相性はこの上なくグンバツで、一見、水と油のように交わることのないモノ同士だからこそ、言わば光と影の関係性のように、闇の中にある一筋の光、あるいは光の中に差し込む闇の如し、(男と女の関係のように)切っても切れない表裏一体の関係性から成り立つ相乗効果により、お互いの新たな一面と未知のポテンシャルを引き出し合っている。これは本当に極端な例えだけど、ERRのインディ・フォーク的な側面とThouのブルージーな側面は、まさに日本のSSWを代表する岡田拓郎がドゥームメタル化したらこんな感じになると妄想しても存外シックリきちゃうのがまた面白い。

初期のPallbearerを彷彿とさせる、フューネラル・ドゥーム然とした重厚なヘヴィネスと一種のメロドゥーム的な慟哭不可避のギターのフレーズや叙情的なギターソロが織りなすポスト・アポカリプス時代の『死亡遊戯』を描き出す#1“Killing Floor”とThouバンド主体のスラッジーな#2“Monolith”、チェルシー姐さんリスペクトなERRによる艶美なパートと獰猛な咆哮とエゲツない重低音を轟かせるThouパートの対比を描きながら、ブルーズじみた泣きのギターソロ/フレーズと著しく感情的に歌い上げるエマのエモーショナルな歌声が邂逅する哀愁ダダ漏れの終盤の展開、その想定外にドラマティックな楽曲構成に脳天ブチ抜かれる#3“Out Of Existence”、スラッジ/デスメタル要素の色濃い#4“Ancestral Recall”、同レーベルのレジェンド=EarthCult of Lunaを連想させるブルーズ臭溢れるスロウコアな前半パートからブラストでブルデス化する後半パートに分かれた#5“Magickal Cost”、そして本作のハイライトを飾る約9分にも及ぶ#7“The Valley”は、冒頭から西部劇映画のサントラ顔負けの情緒的なフィドルの音色をフィーチャーした、それこそERRの叙情的なアンビエント~ポストロックの側面が表面化したような曲で、まさに「女版Hum」を襲名するかのような新世代ポストメタル然としたヘヴィネスをクライマックスに持ってくる完璧な流れ。

改めて今回の異種コラボ、単なるThouのソロとERRのソロをミックスさせただけのコラボじゃない所がミソで、むしろPallbearerに代表される現代ヘヴィロック界のトレンドと直結するような、それこそPallbearerの1stアルバム~2ndアルバムにおけるトラディショナル・ドゥームとポスト・メタルの狭間にあるような抒情的なヘヴィミュージックで、そして90年代のグランジにも精通しているのも俄然同時期にアンダーグラウンドで名を馳せたHum、彼らが発表した今年のヘヴィロックを象徴する金字塔であり復活作の『Inlet』へと結びついていく。そこからたぐり寄せた紐の先にある謎の覆面の正体こそ「女版Hum」だったという「よくあるオチ」。ERRERRで、エマよりもいち早くヘヴィミュージックを取り入れたチェルシー姐さんをイメージ/オマージュしている部分もあって、実際にERRのソロ作におけるメロディを聴いてもDeftonesに影響されてそうな曲もあったりするので、そういった意味でも俄然なるべくしてなった必然的なコラボと言える。
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