Welcome To My ”俺の感性”

音楽のレビューというか感想をてけとーに書き殴るブログです。

J-pop

℃-ute解散がショック過ぎるので更新停止します

きのこ帝国 『桜が咲く前に』

Artist きのこ帝国
きのこ帝国

Single 『桜が咲く前に』
桜が咲く前に

Tracklist
01. 桜が咲く前に
02. Donut
03. スピカ

メジャーデビュー ・・・きのこ帝国が昨年リリースした2ndアルバムフェイクワールドワンダーランドが邦楽ロックリスナーの間で話題を呼び、某『ネットの音楽オタクが選んだ2014年のベストアルバム』では、幸か不幸か総合2位を獲得するくらいには評判を呼んで久しい。と同時に、1stアルバムではあいつをどうやって殺してやろうかとかなんかぜんぶめんどくせえとか言って邪気眼に目覚めた根暗の厨二病患者が、この2ndアルバムでは何を血迷ったのか日々あなたを思い描くとか言って西野カナばりのラブソングを歌い始め、その音楽性も従来のオルタナ/シューゲイザー/ポストロックから、椎名林檎は元よりチャットモンチーYUIを連想させるメジャー感と大衆性に帯びたJ-POPへと姿を変え、従来のフアンの間で大きな戸惑いと猛烈な賛否両論を巻き起こした。そして、きのこ帝国がアルバム『フェイクワールドワンダーランド』の中で指し示した→"アンダーグラウンド"から"メインストリーム"への移行は、メジャー移籍第一弾となるシングルの『桜が咲く前に』をもって堂々の完結を迎える。 



東京→桜 ・・・アルバムフェイクワールドワンダーランドの幕開けを飾った、アルバムのリード曲でありシングルの"東京"は、それこそ新種のマッシュルームが邦楽シーンに芽生えたことを暗示するかのような曲で、これまでのきのこ帝国が歩んできたサウンドとは一線を画したものだった。何を話そう、このシングルの『桜が咲く前に』は、その"東京"から10年前の物語をテーマに、桜舞い散る卒業の季節にピッタリな刹那い春ソングとなっている。しかし"東京"の次に"桜"という流れは、今時珍しいメジャーアーティスト感満載だし、ライティングよりも普遍的なテーマからなるメッセージ性や季節感とリンクさせた話題性を重視した戦略を見ると、彼らがメジャー・デビューしたことを強く実感させる。で、佐藤tricotヒロミ・ヒロヒロと同じ1988年生まれ勢の自分的に、いわゆる"桜""春"をテーマにした曲で思い出深い曲といえば→MVに鈴木えみの全盛期が記録されている事でも知られ、「さくら舞い散る中に忘れた記憶と 君の声が戻ってくる」で有名なケツメイシ"さくら"、そしてJanne Da Arc"桜"や卒業ソングの"振り向けば・・・"は、遡ること約十年前...まさに自分がリアルタイムで高校卒業を迎える時に聴いていた、とても思い入れの深い曲だ。あの頃は、まさかコッテコテのビジュアル系が出自のJanne Da Arcが、まさかまさか"卒業ソング"を書くなんて・・・「こ、これがメジャーの力かッ!」って、そしてその後のJanne Da Arcに何が起こったのかを考えると・・・メジャー許すまじ!



「あなた」と「君」 ・・・このMVは、フロントマン佐藤千亜妃の生まれ故郷である盛岡市を舞台に撮影され、そして前作で「"東京"で生きていく」と誓った佐藤千亜妃"過去"が赤裸々に浮かび上がるような、リアルに上京組である佐藤のパーソナルな経験をもとに、この曲の歌詞は生まれている。少し考察すると→"東京"ではあなたという主語を使っているのに対し、この"桜が咲く前に"では意図的にという主語を用いていて、前者が『LIFE!』女優の臼田あさ美が演じる女性視点からの歌詞で、後者は深水元基演じる男性視点からの歌詞となっており、つまり深水元基演じる男を想う臼田あさ美が演じる女の切ない恋心を描き出したのが"東京"、しかし男=(あなた)心の中に他の誰か=(君)がいた事を示唆する"桜が咲く前に"という風に、それら2つの曲の無垢で無邪気な歌詞が紡ぎ上げるストーリーからも、思春期から10年後の大人へと成長する青春物語として繋がりや一つの解釈を持たせる事ができる。しかし双方に共通するのは、いずれもその恋心が"不完全"に描かれている所で、そのポスト-ネガティヴな儚さや尊さを映し出す描写力は、実にきのこ帝国らしいと言えるのかもしれない。まぁ、"完全"なラブソングは西野カナ辺りに任せるとして、それとは対極に人間の心内に眠る不穏な空気感だったり、心の闇に潜む狂気だったりを、このメジャー・シーンで描き出さんとするきのこ帝国の反骨精神は、2000年代はじめに邦楽界の風雲児として名を馳せた椎名林檎の片鱗、その面影をデジャブさせる。

『トリハダ』 ・・・このMV、何と言っても駒井蓮演じる「君」の存在が大きな見どころで、それこそ昔仲の良かったあの子・・・的な、一種の"幻"のような非現実的かつ刹那的な存在感は、それこそ岩井俊二映画ようなノスタルジーを誘うプロフェッショナルな演出と物語に聴き手を引き込むには十分過ぎる魅力を放っている。しかし、まるで漫画のキャラクターでもあるかのように、なぜここまで徹底して純粋無垢な描き方をしたのだろう・・・?それは、この十年の間に東北で何が起こったのかを考えれば、自ずとその答えやこのMVが伝えたい裏のメッセージが見えてくるのかもしれない。まさかと思ったけど、やっぱり最初と最後のアパートの部屋と”東京”の部屋は同じ部屋らしい。その最後の部屋のシーンは妙な殺気が漂ってて、それこそ"過去"佐藤千亜妃が役者として出演した恐怖系ドラマ『トリハダ』のワンシーンに見えてどうしても笑ってしまう。どう見てもこの後に臼田あさ美が後ろから男に襲いかかる前のシーンじゃん(笑) これ狙ってやったんだとしたら面白いな。次作の伏線みたいな。しかしあの『トリハダ』に佐藤が出てたなんて驚いた。自分は全話観たことあるのだけど、コレに佐藤が出てたなんて全く記憶になかったから。まぁ、それはそうとして、このMVを見るに岩井俊二作品とは相性良さそうだから、いずれコラボしそうな予感はする。ともあれ、ほぼ間違いなく年間BEST MVです(でも音量の小ささは気になった)。

上京する前のYUI→「東京は怖いって言ってた

上京したYUI→「恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょ?

ぼく→「あっ、大丈夫っす・・・」

初期佐藤千亜妃→「あいつをどうやって殺してやろうか」 

中二病から目覚めた佐藤→「日々あなたを思い描く

ぼく→「東京コワイ」

YUIリバイバル ・・・アルバム『フェイクワールドワンダーランド』の面白さ、及び"東京"の面白さって、やっぱり初期椎名林檎初期YUIがクロスオーバーしたハイブリッド・ポップだからであって、何を話そうこの"桜が咲く前に"は、その邦楽界の一時代を築いた椎名林檎YUIが過去に歩んできた"根暗なりの王道"を行く楽曲となっている。まるで初期の"WHIRLPOOL"から"余分な音を削ぎ落した"ような、それこそ"WHIRLPOOL"を一巡させたようなイントロのギターが奏でる叙情的な旋律からして、アルバム『フェイクワールドワンダーランド』のリア充的世界観を踏襲しているのが分かる。その、今流行りの"余分な音を削ぎ落した"系のシンプルで脱力感のある優美なアコースティック・サウンドと、俄然初期のYUIをデジャブさせる儚くも美しい、そして素朴な佐藤千亜妃の歌声が、いわゆるJ-POPの教科書どおりのコード進行を描きながら、そして桜の花びらが美しく咲き乱れ可憐に舞い散るかの如く、誰しもが持つ"あの頃"の思い出と故郷への郷愁を記憶の底から呼び覚ますような、佐藤千亜妃の扇情感かつ情熱的なサビらしいキャッチーなサビへと繋がっていく。正直、初めて聴いた時は猛烈に心揺さぶられた。僕が10年前にJanne Da Arc"振り向けば・・・"を初めて聴いた"あの頃"と同じ感動をフラッシュバックさせるほどに。とにかく、この往年のJ-POP然とした起伏を効かせたドラマティックな曲展開、そして何よりもバンドの圧倒的個性でありアイコンでもある佐藤千亜妃の歌声から解き放たれるエモーショナルな感情表現に涙不可避で、佐藤はまた一段と"ボーカリスト"としての才能を開花させている。これはメジャー・デビューの影響もあるのか、この曲の佐藤は大衆の耳に耐えうる"ポップ"な歌声を意図的にチョイスしている。マジな話、ここまでJ-POPの王道を行く明確なサビが書けるバンドって今の時代どれくらい存在するのだろうか。前作の"東京"もそうなのだけど、今回の上京物語的なテーマも俄然初期のYUIリバイバル感あって、クシャ顔で今にも泣き出しそうな佐藤の歌い方的にも"余分な音を削ぎ落した"系の音像的にも、それこそ初期のYUIが椎名林檎カバーしてみたノリすらある。アルバム『フェイクワールドワンダーランド』の中に、初期のYUI椎名林檎とかいう福岡が生んだファッション・メンヘラ・コンビの面影を感じたのは、決して間違いじゃあなかったんだと。それを核心的に裏付けると同時に、もしやきのこ帝国YUI椎名林檎が成し遂げられなかった"ヤミ系J-POP界"の高みへ向かっているんじゃないかと勘ぐりたくなるほどだ。事実、全盛期のYUI椎名林檎のような、その時代の絶対的なアイコンに成りうるヤミ系女性ボーカルの不在が近年著しくて、しかし佐藤千亜妃はその端正なビジュアルや凛とした存在感も含めて、この時代のアイドルもといアイコンに成りうる唯一の可能性を秘めている。この"桜が咲く前に"を聴いて、長らく空席だったそのピースが埋まったような気がした。でもこのままYUI路線に行って、ある時期に「あの頃の俺達はどうかしてたのさ・・・」みたいな海外メタルバンドのインタビューみたいなこと言い出したら笑う。笑う。

   佐藤千亜妃
new_photo06・・・「誰かと出会いたい一心で音楽をやっている

       ぼく
ゲスニックマガジンの西条・・・「佐藤千亜妃...僕と出会おう!」

  佐藤千亜妃
new_photo03・・・「アホくせぇ

       ぼく
ぼく・・・「てか佐藤の下の名前標記って千亜妃だったの!?」

  佐藤千亜妃
new_kinokoteikoku・・・「イカくせぇ

    ぼく
イカ大王様・・・「イカ大王様だーーーーーーーーー!!」

黄金の道』 ・・・この曲は、いわゆる"余分な音を削ぎ落した"系の音使いなのだけど、それにより音の隙間や空間、あるいは一つ一つの楽器の残響感を大事にした繊細かつ静寂的なサウンドを鳴らしていて、これまでのノイズという轟音のベールに誤魔化されていた、もといかき消されていたバンドの音が、バンドのアンサンブルがより鮮明に浮き彫りとなった事で、演奏力や技術力までも生々しく赤裸々に、それはまるで水彩画のように浮かび上がってくる。それこそ佐藤千亜妃の某インタビューにもあるように→「きのこ帝国はジャンルにこだわったグループではない」という言葉の意味を立証するかのような曲で、洗練されていながらも今のきのこ帝国にしか成し得ないバラードと言える。むしろ、今の時代にここまでベタで王道的な曲やってるのは逆に新鮮で面白いというか、それくらい今じゃ珍しいほどのポップスやってて、しかもそれをやってんのが元根暗の奴らだってんだから尚さら面白くて、それこそ佐藤が某インタビューで語った→光の強さを知ってるからこそ闇が描けるという言葉の説得力ったらなくて、それこそANATHEMAが歩んできた"オルタナティブ"な音楽変遷に通じる、すなわち『ジョジョの奇妙な冒険』の作者であり東北出身の荒木飛呂彦が提唱する黄金の道』を歩もうとしているのかもしれない。これがきのこ帝国が目指す黄金の道』なんだ。これはANATHEMAは元より、『ARCHE』DIR EN GREYにも同じことが言えるのだけど、 過去に一度 "人間の底すらない悪意"を極めたバンドは、何故ある日突然悟りを開いたようにシンプルなアンサンブル重視の路線に回帰するのか・・・?初めから普遍的な音楽をやっても何一つ面白くないけど、過去に黒歴史(中二病)みたいな闇を抱えたバンドが、突拍子もなく普遍的な事をやりだすとどうしてこんなに面白いのか。それが光の強さを知ってるからこそ闇が描けるという佐藤の言葉の意味なのかもしれない。とはいえ、このきのこ帝国はキャリア的に一応は若手に分類されるのだろうけど、そういった視点でモノを考えてみると、このきのこ帝国の成長性の高さに俄然驚かされる。しかし、その成長スピードの早さがキャリアの中で仇となる場合もある。それが良いか悪いかは、今後のきのこ帝国が歩む道のみぞ知る。

桜が咲く前に

次作『漆黒の殺意』 ・・・このシングル『桜が咲く前に』には、他に"Donut""スピカ"の二曲が収録されている。前者の"Donut"は、それこそノイズ・ロック化した椎名林檎とでも例えようか、このシングルの中では最も”らしさ”のある曲だ。まずイントロからお得意のノイズバーストして、初期林檎リスペクトな佐藤のボーカルと”あるゆえ”を彷彿とさせるアンニュイなムードを醸しながら、そして三分あるアウトロでは再び轟音ぶっ放して、ライブ感溢れる終わり方で締めくくる。後者の"スピカ"は、このシングルで、というよりきのこ帝国史上最もポップスのイメージに近いラフさが印象的な曲で、特に繰り返し響き渡る凛としたミニマルなメロディが印象的。”桜が咲く前に”は元より、この二曲のメロディ・ラインやアレンジを耳にすれば、前作の”東京”に引き続いて椎名林檎界隈の井上うにをエンジニアとして起用した理由が嫌でもわかるハズだ。しっかし、佐藤が"椎名林檎ごっこ"やるにはまだまだ全然シニカルさが足りないな(笑) とは言え、それぞれ三者三様に今のきのこ帝国らしさに溢れているし、同時にきのこ帝国の未来予想図が詰まった極めて良質なシングルだと思う。そんなこんなで、リアルに高校生だったあの頃は、何も疑問に感じずにシングルCDなんて買ってたなーとか昔を懐古しつつ、あれから約10年の月日が過ぎ去り、昔と比べて音楽シーンも大きく変わりゆく中で、今日日こうやってきのこ帝国のメジャー・デビュー・シングルを買うなんて、俺はあの頃から何も変わっちゃあいないのかって、我ながら本当に時代に取り残された人間だなって、この瞬間もこうやって彼らが描き出す『桜』を聴いているなんて・・・でもまぁ、それも別に悪くないんじゃネーのって。冗談じゃなく、まるで僕の青春の記憶と今を紡ぎ出すかのような一曲だった。つまり、これが佐藤が語る→誰かと出会いたい一心で音楽をやっている、という言葉が示す一つの答えであり、その結果なのかもしれない。もし次回作で、心の中に他の誰か=(君)がいた事に気づいちゃった臼田あさ美演じるアラサー女の復讐劇、その名も『漆黒の殺意』とかいうタイトルで、つまり『東京』→『桜が咲く前に』→『漆黒の殺意』みたいな女の復讐三部作完結せたら俺マジで一生佐藤についていくわ。
 
桜が咲く前に
桜が咲く前に
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きのこ帝国
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tricot 『T H E』

Artist tricot
tricot

Album 『T H E』
T H E

Tracklist
1. pool side
3. 飛べ
4. おもてなし
5. art sick
6. C&C
8. 初耳
10. タラッタラッタ
11. CGPP
12. Swimmer
13. おやすみ

イッキュウ中嶋 ・・・ところでtricot中嶋イッキュウって、子供の頃に隣に住んでいた同級生のちょっとエロくてちょっと胸元に隙のあるマイルドヤンキー風のオカン、みたいなフインキのある顔してて、この手の顔が好きな奴には本当に好きな顔なんだろうなって想像したりするのだけど、そんなイッキュウ中嶋率いる"ドヤ顔変拍子ガール"ことtricotの2ndアルバムA N Dは、ドラマーKomaki♂の脱退という危機的な状況の中で、これからのトリコの可能性と方向性を必死にもがき苦しみながら模索する姿に真の"エモさ"を垣間見た、それはそれは面白いアルバムだった。そうなると必然的に、2013年にリリースされた1stフルアルバム『T H E』の存在が気になってくる。この『T H E』は、さすがに1stアルバムというだけあって、バンドの熱気と初期衝動的な勢い、そして一番のウリである変拍子まで、tricotの魅力が余すことなく披露されている。
 


『A N D』≠『猛烈リトミック』 ・・・セッション風の静かなイントロで幕を開ける#1に次いで始まる#2"POOL"からして、まるでロキノン厨のようにハメ外してドンチャン騒ぎするパンキッシュなノリと専売特許である変拍子が変幻自在に絡み合い聴く者を翻弄していく、それこそ自称"非・踊らせ系"を地で行くようなキラートラックだ。で、ゴリゴリなギターで「後ろを振り向くな」とばかりに全力疾走するハードコア・パンクなイントロから、抑えきれない初期衝動と猛烈な焦燥感を伴って、モティフォヒロミ・ヒロヒロによるコーラスを交えたエモーショナルなサビへと、音という名の感情を激情的に爆発させていくtricot屈指の名曲と名高い#3"飛べ"初期椎名林檎リスペクトな中嶋イッキュウによるサビメロとモティフォによるプログレッシヴ・デスメタルばりに鬼エゲツナイGリフの応酬がスリリングに交錯する#4"おもてなし"までの完璧な流れを耳にすれば、この時点で2ndアルバムA N Dの完成度を遥かに凌駕する作品だという事がわかる。と同時に、これを聴くといかに『A N D』が異質で異様なアルバムだったのか、という事も垣間見えてくる。とにかく、音数の多さや音の密度が濃ゆい。突拍子もなく"トリコ流のマスパペ"やってみたり、時にサブカル気取ったり、はたまたロキノン厨に媚び売ったり、しまいにはH Zett Mのジャズィなピアノぶっ込んできたりと、まるで流れもクソもない阪神タイガース打線ばりにチグハグした、もはや「こいつら一体ナニがやりたいんだ!?」ってくらい迷走していた『A N D』とは違って、この『T H E』では至極真面目なマスロックやってて、最初から最後まで一貫して"やりたい音楽"が貫かれている。確かに、2ndの『A N D』は幅広い曲調が詰め込まれた、いわゆる"バラエティ豊か"な作品と言えるかもしれない。が、それは作品としての"まとまり"がある上で"バラエティ豊か"と言って初めて成立する事で、しかし『A N D』の場合は"バラエティ豊か"というより統一感がなくてバラバラと言う方が的確な気もする。そういった意味では、赤い公園猛烈リトミックこそ"バラエティ豊か"という表現を用いるのに相応しい最もたる例だ。やはり『A N D』は、どうあがいても猛烈リトミックの代わりにはなれないのだ。
 


変拍子≒突拍子 ・・・そのマスロック然とした弾力のあるリフから放たれる破天荒なリズムと、中嶋イッキュウによる熱量に溢れたエモーショナルな爆裂ボーカル、そして在りし日のKomaki♂によるドラム・グルーヴが絶妙な相乗効果を生んでいて、そのシンクロ率は次作のA N Dとは比じゃないくらい高濃度の音エネルギーを発している。特にサビに持っていくまでの過程が練りに練られている事もあって、それ故にインディレーベルらしい良い意味でシロウト臭いイッキュウの歌がド直球に耳に入ってくる。しかし、トリコの凄さは衝動的かつ本能的な勢いだけじゃあなくて、次作への伏線となる"おちゃんせんすぅす"のようなフュージョンセンス溢れるオシャンティーな楽曲や、そしてトリコが"ただの変拍子バンド"ではない事を裏付ける、初期Whirrに匹敵する胸キュンシューゲ/オルタナチューンの#5"art sick"では、「変拍子はあくまで曲のギミックに過ぎない」と言わんばかり、変拍子に頼らずとも"いい曲"が書けるという作曲能力の高さを証明している。実際のところ、『A N D』ではちょっと突拍子もない事やってるのもあって、こういったスロー&ミドルテンポで"聴かせる"曲も書ける自身の"強み"を蔑ろにしていたキライがあった。事実『A N D』には、中嶋イッキュウの青臭~いエモーショナルなボーカル・メロディも、それこそ名曲"art sick"で聴けるような"エモさ"はすっかり影を潜めていた。この辺が賛否両論を呼ぶところで、少なくとも"完成度"という点では『T H E』に軍配が上がる、これだけは誰も否定しようがない事実だ。

・・・しかし"面白さ"という点ではA N Dに軍配が上がる。確かに、今作の『T H E』の方がイッキュウのエモいボーカルにしても、モティフォの変則的かつ変態的なリフ回しにしても異常に凝った工夫がなされていて、かつ圧倒的な音密度で聴き応えもアリアリアリーヴェデルチなのだけど、しかし突拍子(変拍子)もない事やりながらもより音楽的な作曲能力を身につけた『A N D』"面白さ"は、良くも悪くも優等生過ぎる『T H E』にはないもので、映画『2001年宇宙の旅』で例えると→無数のモノリス(知性)に触れたことで無限の可能性を得ることに成功し、そして何よりも"Post-Progressive"な"Sound"を取り入れ始めた事実が、個人的な嗜好を含めて『A N D』"面白さ"にジカに繋がっている。結局はそこに"面白さ"を見出せるか否か、だ。どっちが良い、みたいな低次元の話じゃあなくて、チャラいノリ重視でより邦楽(ロキノン)的なのが『T H E』で、より音楽的なアレンジ力を高めて洋楽的な音に歩み寄ったのが『A N D』『2001年宇宙の旅』で例えると→モノリスに触れる前のサルがウッキー!!と喜びそうなのが『T H E』で、モノリスに触れた後のサルがウッキー!!と喜びそうなのが『A N D』、みたいな感覚もあって、つまり『T H E』の濃厚な音密度と『A N D』の音楽的に洗練されたサウンドが、要するに『T H E』というストレートと『A N D』という変化球が組み合わさったら最強のピッチャー(3rdアルバム)が出来上がると思う。海外ウケという点では、国内向けの『T H E』よりも『A N D』の方が海外リスナーにウケそうな音は多い。なにはともあれ、この『T H E』が従来のJ-POPにマスロックとかいうジャンルを落とし込んだ名作であることに何の異論もないし、とりあえず"art sick"だけで初期の赤い公園は一蹴できるレベルにはあります。わりとどうでもいいけど、12曲目の"Swimmer"のメイン・リフがOpeth"Face of Melinda"のリフっぽくて好き。しかし近頃のガールズ・ロック界・・・マジでアツいッ!
 
T H E
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tricot
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森は生きている 『グッド・ナイト』

Artist 森は生きている
森は生きている

Album 『グッド・ナイト』
グッド・ナイト

Tracklist
01. プレリュード
02. 影の問答
03. 磨硝子
04. 風の仕業
05. 痕跡地図
06. 気まぐれな朝
07. 煙夜の夢
  a. 香水壜と少女
  b. 空虚な肖像画
  c. 煙夜の夢(夜が固まる前)
08. 青磁色の空
09. グッド・ナイト



あ...ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 「いや~、やっぱりスティーヴン・ウィルソンの新作イイな~」・・・なんて思ったら日本のバンドだった・・・。な...何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった...頭がどうにかなりそうだった...催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...

邦楽界にプログレの波がキテいる・・・これは紛れもない事実だ。それを真っ向から証明するかのようなバンドが、東京は武蔵野生まれの6人組、その名も森は生きているだ。何が驚いたって、彼らの2ndアルバム『グッド・ナイト』に収録された"煙夜の夢"という約17分の大作ナンバーの存在で、まずはじめに、その大作をMVにしちゃう彼らの心意気に、そのプログレ魂に僕は敬意を表したいと思う。この”煙夜の夢”は、第一幕に”香水壜と少女”、第二幕に”空虚な肖像画”、そして第三幕に”煙夜の夢 (夜が固まる前)”に分かれた三部構成となっていて、まず第一幕の”香水壜と少女”からゴイスー。まずイントロのアコギの靡かせ方からのフルートの導入部からして→「スティーヴン・ウィルソンの新曲かな?」って勘違いするくらい、完全にSW関連事業の音使いというか"プログレ"以外ナニモノでもない幕開けから始まって、とりまプログレ然とした音や楽器をあざとくもふんだんに使ってプログレヲタの琴線をブヒらせながら、時に優美に、時に喜劇的に入り乱れながら、時に中東の民謡音楽ばりのエスニックな旋律をもって、秋枯れの荻が生い茂ったどこまでもつづく原野の如し情緒感あふれる素朴な風景を描き出し、そこから中期Porcupine Treeを想起させるクラシック・ロック然としたギター・リフ~アコギとフロイドリスペクトなエフェクティブなサウンドをバックに、この物語の語り部となる竹川悟史の歌へと繋がっていく。続く第二幕の”空虚な肖像画”では、リーダーの岡田拓郎をメインボーカルに携えてTemples顔負けのインディ・サイケ~アンビエントなシーンへと物語は移り変わっていき、そして最終章となる第三幕の”煙夜の夢 (夜が固まる前)”では、一転してカントリー調のポップなリズムにノッて、森のせせらぎと共にランランラ~ン♪と鼻歌交じりに妖精さんが舞い踊るクライマックスのシーンを最後に、このラノベ小説『メンヘラ彼女とボク』は盛大に幕を閉じる。このキング・クリムゾンやピンク・フロイドをはじめとしたプログレレジェンドに匹敵する大胆な構成力と抒情的かつ緊張感のある展開力は、なまじハタチそこそこの文学青年が演るレベルをゆうに逸脱している。これはもうスティーヴン・ウィルソンPorcupine Treeの名曲”Anesthetize”をも凌駕する...いや、歴代のプログレレジェンドを過去のモノとするッ!これこそ現代のプログレッシブ(J)ポップ絵巻だッ!・・・ってのは少し大袈裟かもしれないが、この森は生きているの圧倒的なクリエイティビティと若者的咀嚼エネルギーが爆発した名曲であるのは確かで、持ち前のオサレでシュールな歌詞世界をはじめ、フォーク/サイケ/プログレ/アヴァンギャルド/ジャズなどのジャンルを変幻自在に操る、若者らしからぬ大人びた落ち着いたアナログな演奏、とにかくこの曲に彼らの全てが詰まっていると言っても過言じゃあないし、その音楽的素養の深さと"音"に対する"こだわり"が初期衝動的な勢いで伝わってくる。様々なジャンルや過去の偉大なバンドからの影響を自らの音へと巧みに昇華し、それらを洗練されたポップ・ミュージックに仕立て上げる柔軟性の高さはスティーヴン・ウィルソンとダブる。実際、想像した以上に柔軟性の高いバンドで、ヲタク丸出しのプログレからキャッチーなポップスもできるのはバンドとして大きな強みだろう。で、その"影響"といえば→神戸在住のThe fin.もモダンな海外バンドからの影響が色濃くあったが、近代的な彼らより古典的すなわちクラシックでアナログ感あふれるレトロフューチャーボンバーなのが森は生きているだ。この2つのバンドに共通するのは、若くして作曲からミックスまでこなす卓越した才能を持ったYuto Uchino岡田拓郎という未来の邦楽界を背負って立つであろう存在か。ここで少し話は変わるが→最近、自分の中で"いい音楽"を選別する判断材料として→赤い公園の津野米咲がアヒャヒャとブヒりそうな音楽か否か】みたいな謎の測りを設け始めていて、昨年にThe fin.の1stアルバムDays With Uncertaintyを聴いた時も→「あっ、これぜってぇ津野米咲が好きなヤツや」ってなったし、そして今回この森は生きているに対しても同じことを思っちゃったから、だから「これはきっと"いい音楽"に違いないんだ」という結論に至った、というわけです。その将来性はThe fin.以上かもしれない。

ハルキスト ・・・そのタイトルどおり本作の”プレリュード”となる幕開けから、「走り出す少女は 影に惹かれて 風に似て行ってしまったのです」とかいう村上春樹ばりの文学的な歌詞をはじめ、マンドリンやハーモニカ、鉄琴や木琴などの鍵盤打楽器、フルートやパーカッションなど様々な楽器やさり気ないエレクトロニクスを駆使しながら、Voの竹川悟史による斉藤和義風の歌声とバンドの頭脳である岡田拓郎のコーラスが朝焼けの匂いを醸し出す、アルバムのオープニングを飾るに相応しいムーディなフォーク・ソングで、続く2曲目の”影の問答”では、60年代~70年代を想起させるクラシックなギター・リフとビートルズやピンク・フロイドを最高権威者としたUKネオ・プログレッシブ・ロック直系のフェミニンなメロディが織りなすサイケデリックなサウンドに、まるで夢遊病者ように無表情で不協和音のように虚ろなボーカルと幽玄なコーラスがアンニュイに交錯していき、そして江戸川乱歩の短編に出てきそうな【男A】【男B】の会話を描いた一風変わった歌詞からも、異常にセンスフルかつ俄然文学的な彼らのアーティスティックな一面を垣間みせる。一転して陽気な気分でカントリー風のチェンバー・ポップやってのける3曲目の”磨硝子”は、マンドリンとフルートの優美な音色が遊牧民のユル~い日常を描き出し、中盤からは重厚なヴァイオリンを合図に、まるでどこかのデブが「音の宝石箱や~」と言わんばかりのキラキラ☆綺羅びやかでカラフルな音使いとモダンなアンビエント感をもって、それこそ後期UlverKayo Dot顔負けのアヴァンギャルディな文系力を発揮していく。正直、この展開にはプログレ好きは「キター!」って感じだし、まさかVampillia以外の邦楽バンドにコレができる集団が他に実在するなんて思いもしなかったから素直に驚いた。というか、もしかするとKayo DotSteven Wilsonを繋ぐ架け橋となる存在こそ、彼ら森は生きているなのかもしれない。で、ここまでの"知的"な文学青年あるいはハルキスト然とした流れから一転して、"ポスト-くるり"を襲名するかのようなゆるふわ系のポップスを聴かせる4曲目の”風の仕業”岡田拓郎をメインボーカルに迎えたシンプルなサイケ・ロックを披露する5曲目の”痕跡地図”、再びフロイド的なゆるフワッと感と"ポスト-くるり"っぽさを醸しながら、前二曲と同様に比較的シンプルな曲かと思いきややっぱりプログレッシブかつエキゾチックなニクい演出が光る6曲目の”気まぐれな朝”、そして三部作の”煙夜の夢”、まるでモノクロの白昼夢の中を彷徨うかのようなアコギ主体の”青磁色の空”、そして表題曲の”グッド・ナイト”を最後に、全9曲トータル約48分の『夢』は地平線のようにどこまでも続いていく・・・。

アニミズム ・・・おいら、インディとかよく知らないしどうでもいいんだが、この作品だけはインディっつーよりも"プログレ"として聴いたほうが絶対に面白いです。しかし、その森は生きているの郷土愛や自然崇拝に満ち溢れたDIY精神は、自給自足系ブラックメタルに通じるインディペンデント感というか謎のスケール感すら内包している。これはもう一つの純文学であり一つの"文芸作品"と言っていいだろう。もはや音楽界の太宰治賞を与えたいくらいだ。この勢いで今話題のTemplesと対バンしたら面白いと思う。あと赤い公園よりも森は生きているのがSWプロデュースの可能性あるな(願望)って思っちゃったんだからしょうがない。ともあれ→"今の邦楽界は面白い"・・・という一説を裏付けるような、2014年の代表する一枚でした。
 
グッド・ナイト
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森は生きている
Pヴァイン・レコード (2014-11-19)
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宇宙コンビニ 『月の反射でみてた』

Artist 宇宙コンビニ
宇宙コンビニ

EP 『月の反射でみてた』
月の反射でみてた

Tracklist
1. origin
2. EverythingChanges
3. セピア色の車窓から
4. 光の加減で話した
5. 闇には祝福を
6. 成仏してしまった男
7. 足跡

NEXT-ゲスの極み乙女はコイツラだ!

近頃ではtricot赤い公園を筆頭に、「邦楽界にプログレの波がキテる」・・・そんな事がにわかに囁かれ始めているのは読者もスデにご存知のハズだが、その"波"を象徴する最もたるバンドこそ、2012年に結成され先日解散することを発表した京都出身の三人組、その名も宇宙コンビニだ。しかし・・・まさかリッピング真っ最中に解散宣言されるなんて人生初めての経験だった。



その音楽性としては→このMVを見てもらえればわかるように、ギターのだいじろーとドラムのなずおが織りなす、2ndや4thの頃のScale the Summitを彷彿とさせる変拍子を駆使したテクニカルでマスいリズム&グルーヴを刻みながらドリーミーでファンタジックな世界観を構築していくインストゥルメンタルに、ボーカル&ベースの紅一点フロントマンえみちょによる初期YUI顔負けのシロウト臭いヘタウマな萌声が抒情的に絡み合い、その名の通り壮大な"宇宙"を駆け巡るように、しかし"ビニ本"もとい"コンビニ"のように身近で爽やかなキモヲタ一本釣りのプログレッシブ・ポップは、あのツルピカユーチューバーAnthony Fantanoをも唸らせるほどの、平均年齢21才とは思えない宇宙のように無限大のポテンシャルを感じさせる。

結果的に、宇宙コンビニの遺作となった2ndミニアルバムの『月の反射でみてた』は、同時購入して同じタイミングでリッピングしたデビューの1stアルバム『染まる音を確認したら』と比べると、俄然洗練されたスタイリッシュな音使いで聴かせに来ている。それはリード・トラックの”EverythingChanges”やポストロック的なスケール感を持つ”光の加減で話した”を筆頭に、幕開けを飾る”origin””セピア色の車窓から”、そして”成仏してしまった男”などのインストナンバーにギュッと凝縮されている。一つ一つに彼らの魅力が詰まった小宇宙のようだ。そう遠くない未来に、コンビニに行く感覚で宇宙旅行ができる時代がやってくるかもしれない、それを音で実現させようとした宇宙コンビニの解散は残念でしょうがない。とりあえずギターの人はDjent界に来ればイイんじゃあないか?(適当)

てなわけで、お別れはリッピング最中に解散宣言された時の僕の表情↓↓リッピング真っ最中に解散宣言された時

月の反射でみてた
月の反射でみてた
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宇宙コンビニ
No Big Deal Records (2014-08-06)
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The fin. 『Days With Uncertainty』

Artist The fin.
The fin.

Album 『Days With Uncertainty』
Days With Uncertainty

Tracklist

  • 01. Illumination
  • 02. Night Time
  • 03. You Can See It In The Blue
  • 04. Curtains
  • 05. Silver From Over The River
  • 06. Thaw
  • 07. Veil
  • 08. Without Excuse
  • 09. The End Of The Island
  • 10. Till Dawn
  • 11. Days With Uncertainty



・・・驚いた。国内にこんなバンドが存在するなんて、、、更新停止してる場合じゃねぇ!このMVのたった数十秒のスポット映像を目にした瞬間、いわゆる"俺の感性"にズキュウウゥン!!と衝撃が走った。「なんだこいつらッ!?」・・・てっきり初めて聴くバンドだと思いきや、数カ月ほど前に何気なく耳にした"Glowing Red On The Shore"と同じバンドだと知ってリアルに驚いたというか、まさかこんな所で再び出会うなんて思いもしなかった。とにかく、それこそキタノブルーじゃあないが、バブル期というか90年代の邦画というか、それこそ岩井俊二映画をイメージさせる無国籍感のあるエキゾチックでノスタルジックな甘酸っぱい青春ロードムービー風の映像美と、海外のインディ・ロックやシンセ・ポップ、チルウェイヴやシューゲイザーからの強い影響下にある、まるでセピア色に光り輝くドリーム・スケープに、その懐かしい郷愁を纏った白昼夢の中をたゆたうような音世界に、僕は一瞬にして魅了されてしまったのだ。まるで発煙筒の煙のように淡く幻想的な音が空間を支配していくが、しかしサビではボーカルのYuto Uchinoによるフェミニンな歌声と心臓の鼓動のように力強いビートを刻むシンセで音の骨格を現してグッと"聴かせる"。そして、何といってもギタリストのRyosuke Odagakiが奏でる、 (そのコワモテの顔からは想像できない)USガールズ・バンドWarpaintの1stアルバムThe Foolの名曲"Undertow"を彷彿とさせるスウィーティでメランコリックなメロディ/フレーズには(ニヤリ)とせざるを得なかったというか、それもそのはず…なんと本作のマスタリングにはWashed OutWarpaintを手がけたJoe Lambertを迎えてるってんだから話は早い。"俺の感性"にズキュウウゥン!!とキタ理由はコレだったのか・・・どおりで、若干22歳の若者にしては一つ一つの音の完成度やUKミュージック的な音の再現度が新人離れしてるし、このレトロフューチャーなMVからも垣間見れる徹底したビジュアル/コンセプト作りには、彼らの"クリエイティブ!!"に対するリベラル意識の高さが伺える。で、このMVを手がけたのは、映画をはじめ大手企業のCMやミスチルのMVなど数多くの作品で知られる関根光才監督で、ヒロインのガール役を演じているのはEmmaとかいうViViモデルらしく(ポスト玉城ティナといった所か)、このMVでは本場の女優かってくらい、触れられそうで触れられない仲間内のマドンナ的な存在、近くて遠いアンニュイな存在感を刹那的に演じきっている。なんだろう…誰の女でもないんだけど、将来は俳優やってそうなボーカルと恋仲になりそうでならない"あの感じ"というか、あの"絶妙な距離感"で保たれたリア充グループとでも言うんだろうか、男なら誰しもが憧れる青春オーラに色々な意味で胸が張り裂けそうになる。さすがに実績のある監督作品なだけあって、音楽性と映像が絶妙にマッチした、何度もリピートしたくなる中毒性があるし、そして何よりもEmmaちゃんの仕草や表情に、そのkawaiiに胸キュン不可避だ。ともあれ、今年のMV大賞と言っても過言じゃあないアナログフィルムとリンクするような楽曲からは、次世代の邦楽界を担うホープとして期待させる、確かなポテンシャルを感じさせる。

アジア感・・・全体を通して聴くと、先ほどの名曲”Night Time”は少し特別な曲だという事がわかる。まず、幕開けを飾る#1”llumination”から、それこそライアン・ゴズリング主演の映画『ドライヴ』のサントラに入っててもおかしくない、80年代にトリップさせるようなエアロビ感あふれるシンセとリズミカルなクラップが、まるでレトロなナイトクラブの入り口を描き出していく。他にも、シューゲ・アプローチを効かせたエモいインディ・ロックの#3”You Can See It In The Blue”、アコギをフューチャーしたJ-POP型ドリーム・ポップの#4”Curtains”、ゆるふわ系の#5”Silver From Over The River”、再びバンド・サウンドをフューチャーしたグルーヴ感が心地よい#7”Veil”、まるでアイスランドの壮観な雪景色が目の前に広がるような#9”The End Of The Island”、まるでプラネタリウムのような浮遊感のあるシンセとクラップがゆりかごのように揺らめく#10”Till Dawn”など、強引に例えるなら→UKのCHVRCHESStill CornersあるいはスウェーデンのPostiljonenWashed OutとUSのWarpaintが融合したような、ハイブリットなJ-POPを繰り広げるそのロマンティックな姿は、今の時代とレトロな時代を繊細に紡いでいくような、古めかしいんだけどどこか新しいギャップと魅力に溢れている。とはいえ、やっぱり”Night Time”のインパクトったらなくて、事実この岩井俊二映画顔負けの"アジア"感からなる極上のノスタルジーは、洋楽バンドでは決して味わえないだろう。

リズム隊 ・・・このバンド、どうしても中心人物であるYuto Uchinoの卓越したセンス、そのカリスマ性に注目が集まるが、実はリズム隊(特にベース)も侮ることのできない存在で、それはリード・トラックの”Night Time”をはじめ、オープニングを飾る”llumination”のアウトロや#6の”Thaw”や#7の”Veil”で聴けるような、静寂的な空間すら繊細に心地よく”聴かせる”という意識を大事にしたベースとドラムが織りなす、柔らかくてそして濡れている=ソフト&ウェットなグルーヴ感は、それこそEP『Exquisite Corpse』の頃のウォーペイントを彷彿とさせる。音自体はもの凄くシンプルだし、音数も少なくて超わかりやすい、ドラムの残響音すら計算し尽くされているような、新人バンドとは思えない洗練されたバンド・サウンドに驚かされる。とにかく、バンドとして既に完成されているし、この年齢にしてはあまりにも落ち着きすぎている。そこがまた彼らの魅力でもある。

邦楽界の革命児 ・・・確かに、本作のアートワークおよび紙ジャケ仕様をはじめ、その音を聴くだけでは素で海外のバンドだと勘違いしちゃうくらい、ここまで海外志向の強いバンドって国内ではなかなか珍しくて、確かにこの手の音楽は海外では珍しくもなんともないし、この手のバンドはもう飽き飽きだって意見もわかる。けれども、それよりもまず日本にこのようなバンドが出てきた事に対して素直に喜ぶべきだと思うし、日本の音楽リスナーも"洋楽っぽい"とかいう偏見なしに素直に認めてやるべきだと思う。もう"日本人離れした~"という表現は飽き飽きだ。日本の音楽は遂にここまで来たってのが正しい表現だろう。久しぶりに、どうにかして天下を取らせてやりたいと思うバンドの登場だ。既に国内の大型音楽フェスへの参加や来年のSWSWに出演が決まっている事からも、その話題性や将来性は十分だし、次作あたりで大物プロデューサー迎えたら一気に化けそうな予感。。。とにかく、ガラパゴス化した日本の音楽界を次のステージに導くかのような、少し大袈裟かもしれないが邦楽界の革命児と呼ぶに相応しい一枚だ。強いて不満みたいなことを言うなら、MVとメイキングが収録された円盤つけて欲しかった感ある。あとsukekiyoノベンバの対バンがアリってんなら、そのOPアクトとしてこのThe fin.を呼ぶってのも全然アリなんじゃねぇの~?

(僕もひと気のないプールでワイワイしたかった...こんな青春送れなかった人生なんて無意味だ死のう・・・The fin.)
 
Days With Uncertainty
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The fin.
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