Artist Pain of Salvation
Album 『Panther』
Tracklist
とある難病にかかり生死の淵を彷徨ったフロントマン=ダニエル・ギルデンロウの実体験が作風に反映された前作の『In The Passing Light Of Day』は、闘病中の痛みと苦しみで衰弱しきった自分のフィジカルとメンタルを再び鍛え上げるために当時流行りのライザップを成功させ、背中に範馬勇次郎ばりの「鬼の貌」が浮かび上がるほどの強靭な鋼の肉体を手にしたダニエル・ギルデンロウの如し、その音楽性も“10年代メタル総選挙ランキング同率1位”のメシュガー、その同郷メシュガーが編み出した“10年代のヘヴィネス”をPoS流のオルタナティブな解釈をもって取り込んだ、バンド史上最高にバッキバキにメタリックな「メタル回帰」を宣言する復活作に相応しい一枚だった。その前作から3年の歳月が流れ、今度は「鬼の貌」の代わりに陰毛の迷宮蠢く伏魔殿を背負ったダニエル・ギルデンロウは、マーベルヒーローの『ブラックパンサー』へと姿を変え、このディストピア世界に蔓延る『悪』と対峙するのであった。
Album 『Panther』
Tracklist
01. Accelerator
02. Unfuture
03. Restless Boy
04. Wait
05. Keen To A Fault
06. Fur
07. Panther
08. Species
09. Icon
とある難病にかかり生死の淵を彷徨ったフロントマン=ダニエル・ギルデンロウの実体験が作風に反映された前作の『In The Passing Light Of Day』は、闘病中の痛みと苦しみで衰弱しきった自分のフィジカルとメンタルを再び鍛え上げるために当時流行りのライザップを成功させ、背中に範馬勇次郎ばりの「鬼の貌」が浮かび上がるほどの強靭な鋼の肉体を手にしたダニエル・ギルデンロウの如し、その音楽性も“10年代メタル総選挙ランキング同率1位”のメシュガー、その同郷メシュガーが編み出した“10年代のヘヴィネス”をPoS流のオルタナティブな解釈をもって取り込んだ、バンド史上最高にバッキバキにメタリックな「メタル回帰」を宣言する復活作に相応しい一枚だった。その前作から3年の歳月が流れ、今度は「鬼の貌」の代わりに陰毛の迷宮蠢く伏魔殿を背負ったダニエル・ギルデンロウは、マーベルヒーローの『ブラックパンサー』へと姿を変え、このディストピア世界に蔓延る『悪』と対峙するのであった。
前作を堂々の復活作へと導いたキーマンの一人で、中性的な超絶ハイトーンボイスを披露していたアイスランド人イケメンギタリストのラグナルは、ダニエルに言い寄られて逃げ出したのか、あるいは周囲のグルーピーにゲンナリしたのか、はたまた売名行為に成功したから脱退したのかは知る由もないけど、代わりに初期メンバーのギタリスト=ヨハン・ハルグレンが復帰した本作は、そのヨハン在籍時代のPoSを代表する名盤『The Perfect Element, Part I』や『Remedy Lane』を彷彿とさせる、まだPoSがDream TheaterやPorcupine Treeのフォロワー的な扱いをされていたプログレ・メタル時代の叙情的なメロディをフィーチャーしつつも、前作からのモダンな流れを著しく俄然推し進めた方向へと舵を切っている。
あの変態ダニエル・ギルデンロウにもフィジカル的にも精神的にも影響を与えるメシュガーとかいう偉大すぎるバンドが10年代のメタルシーンに産み落とした真の功績って、実はDjentというジャンルを生み出した事じゃなくて、メシュガー流のエクストリーム・ミュージックを正統に受け継ぐノルウェーのLeprousという「真の正統後継者」を生んだ事なんじゃないかって。ご存知、メシュガーの音はトレンドとして10年代のシーンで流行りまくったけど、しかし実際のところメシュガーの変態的な変拍子や精神的なインテリジェンスの面も含めて、単なるフォロワーではない「全く新しいもの」へと再解釈することに成功した唯一のバンドがLeprousだと思ってて、実はその説を証明しているのがPoSの『Panther』なんですね。
まず本作における新アー写のいかにも着馴れていないスーツ姿からしてLeprousのオマージュとばかり、アルバムの幕開けを飾る#1“Accelerator”の近未来感あふれるセンセーショナルなキーボードと無機的でノイジーなポスト・ヘヴィネスが織りなす、それこそDIR EN GREYの“Unraveling”にも通じるPost-Djent以外の何者でもないスタイリッシュな変拍子を刻んでくるインテリ系ポスト・メタルは、Leprousがバードくんというメタル界屈指の天才ドラマーが加入して悟りを開いたアルバム『The Congregation』以降のポスト・ヘヴィネス路線を確信犯でやってのける。また、アコギのアルペジオとクラシカルなピアノ主体のバラードの#4“Wait”では、Leprousのボーカリスト=エイナルのオペラ魂が乗り移ったかのような、それこそダニエル版オペラ座の怪人の如し喜劇役者と化しているのも確信犯。本作でも多岐にわたる楽器は元より、プロデュースやミックスまで何でも一人で全部やっちゃう勢いのマルチプレイヤーこと変態は変態でも変態という名の紳士以前に、もっと基礎的な部分のボーカリストとしてのダニエル・ギルデンロウのエゲツナイ才能に震える。
決して、Leprousフォロワーになったのが良い悪いと言ってるわけじゃなくて、現代エクストリーム・メタル界の裏四天王の一つと言っても過言じゃあないLeprousは、今やPoSという偉大な先人にも影響を与えるまでの変態バンドとなった事実を裏付けていることに他ならない。別に変態同士引かれ合うじゃないけど、PoSが持つオルタナティブかつアヴァンギャルドな側面とメシュガーの正統後継者であり現代エクストリーム・ミュージックの最先端を突き進むLeprousの邂逅、つまりメシュガーからのレプラスは必然的な流れでしかなくて、それ以上にメタル界の異端児の異名を持つPoSというバンドの一貫した軸のブレなさにただただ脱帽する。
前作と同じプロデューサーと本家メシュガーのギタリスト=フレドリック・トーデンダルをドラムテックに迎えてオルタナティブな方向性を更に深掘りしてモダンさを極め尽くした結果→モダンはモダンでもモダン・ヘヴィネスじゃなくてボコーダーやプログラミングなどのモダンな電子音を多用した、それこそ2010年代前半のアルバム『塩1』と『塩2』でヴィンテージなクラシックロックを極め尽くした反動みたいな、そんな本作における改革心を象徴するのが表題曲の“Panther”で、ピコピコ系エレクトロニカをバックトラックにギルデンロウの専売特許であるラップが難なく自然に融解する。その前の#5“Keen To A Fault”〜#6“Fur”のオリエンタルな流れは近年のフォーク・ロック化したOpethを、アコースティックな#8“Species”は中期Porcupine Treeや『A Fine Day to Exit』時代のANATHEMAなどのウェットなUKオルタナをフォローしている点でも、前作のようなモダン・ヘヴィネスというよりは近年のOpethにも精通する現代ヘヴィ・サイケ〜アートロックの側面をなぞった新世代プログレの領域に達している。
そのPoSの初期から一貫して根っこの部分にある叙情性と現代的なポスト・プログレッシブが内包するモダニズムの融合、そんな「今のPoS」を象徴するような曲が13分を超える大作の#9“Icon”で、SWソロやOranssi Pazuzuを彷彿とさせる不協和音的な暗黒サイケ〜アヴァンギャルド然としたダークサイドの一面と、初期作を思わせるピアノと感傷的なダニエルの歌声が織りなす叙情的なライトサイドの一面を交互に切り替えながら、そしてバンドに復帰したヨハンの『塩』大さじ一杯分のブルージーな泣きのギターソロからダニエルのエモーショナルな歌へと繋ぐ終盤のドラマティックな展開は、まだ彼らがプログレメタル界で一線を張ってた時代にタイムワープしたような懐かしい気分にさせる。そして、ここでもイントロとアウトロに【浜辺に寄せては返す美しい波=浜辺美波】のSEが入ってくる、それすなわち名盤説・・・。
そのPoSの初期から一貫して根っこの部分にある叙情性と現代的なポスト・プログレッシブが内包するモダニズムの融合、そんな「今のPoS」を象徴するような曲が13分を超える大作の#9“Icon”で、SWソロやOranssi Pazuzuを彷彿とさせる不協和音的な暗黒サイケ〜アヴァンギャルド然としたダークサイドの一面と、初期作を思わせるピアノと感傷的なダニエルの歌声が織りなす叙情的なライトサイドの一面を交互に切り替えながら、そしてバンドに復帰したヨハンの『塩』大さじ一杯分のブルージーな泣きのギターソロからダニエルのエモーショナルな歌へと繋ぐ終盤のドラマティックな展開は、まだ彼らがプログレメタル界で一線を張ってた時代にタイムワープしたような懐かしい気分にさせる。そして、ここでもイントロとアウトロに【浜辺に寄せては返す美しい波=浜辺美波】のSEが入ってくる、それすなわち名盤説・・・。