Artist Enforced
Album 『Kill Grid』
Tracklist
Album 『Kill Grid』
Tracklist
1. The Doctrine
2. UXO
3. Beneath Me
4. Malignance
5. Kill Grid
6. Curtain Fire
7. Hemorrhage
8. Blood Ribbon
9. Trespasser
メロデス四天王チルボドのカリスマフロントマンであるアレキシ・ライホと新世代メタルの最右翼として期待されていたPower Tripのフロントマンであるライリー・ゲイルの訃報は、近代メタルシーンにおいても稀に見る多大な損失であり喪失で(シャウトの仕方が二人とも似ているのも相まって)、彼らの死はメタルの死を意味するのと同意でもあった。
何を隠そう、このヴァージニア州はリッチモンド出身の5人組=Enforcedの2ndアルバム『Kill Grid』は、決して「Power Tripの生まれ変わり」とまでは言わないが、それこそPower Tripがこの世に遺した歴史的名盤『Nightmare Logic』に肉薄する、ハードコア/パンクと伝統的なスラッシュメタルが組み合わさったクロスオーヴァー・スラッシュを展開している。
もはや亡きライリーが咆哮しているような錯覚すら憶えるほど、フロアのハーコーキッズを煽るハードコア/パンクならではの男臭いコール、殺戮の合図となるチョーキングからツインギターによる流麗なソロワーク、そしてPower Tripに肉薄する切れ味抜群の、まるでライリーへのレクイエムでもあるかの如しキザミにキザミまくるリフとマーシャルの性能を最大限引き出すことに注力したようなサウンド・プロダクションで二重に刻んでくるエッジーな音作り、その唯一無二のプロダクションをもってタイトに刻むミドルパートと殺傷力強めに高速で刻むパートの緩急を活かした楽曲構成までもがPower Tripの正統後継者を襲名するかの如し、とにかく名盤『Nightmare Logic』を意図してオマージュおよびリスペクトしたかのような作品となっている。Power Tripとの違いがあるとすれば、それはEnforcedの方がブラッケンド/デスメタルに精通するブルータルな側面を持っている点。それでも“ほぼ完コピ”に近い。
それもそのはず、というのも前作に引き続き本作にはPower TripやTomb Mold、そしてUnto Othersなどの作品を手がけた今をときめくプロデューサーのアーサー・リザークをエンジニアとして迎え、そしてゴス系メタルコアバンドMotionless in Whiteのギタリストであるリッキー・オルソンがレコーディングに関わっている点からも、本作に賭ける熱量みたいなのが嫌でも伝わってくる。確かに、彼らに対してPower Tripおよびライリー・ゲイルのような圧倒的なカリスマ性を求めるのは酷だし、正統後継者や生まれ変わりと呼ぶのも言葉が違いすぎるけど、少なくともゲイリーが亡くなってロスを感じているメタラーやスラッシャーを満足させるには十分過ぎるほどの存在である事は確かで、それに見合うポテンシャルが遺憾なく発揮された本作は必聴です。